「やっぱ…キツイか!」
拳と炎が合わさる
明らかに劣勢になり始める
「……!」
互いの目には殺意が篭る
「っらぁぁぁぁぁ!」
「アァァァァァ!!」
右ストレートがNo.0の顔面にクリーンヒットする
しかし左ふくらはぎを焼かれた
ガードをする余裕なんてない
左や右、上下
いろんなところから拳が襲う
そして同時に炎も剣となり襲いかかる
ノーガードの殴り合い
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
「アァァァァァァ!!」
左フックが敵の脇腹にあたる
炎の攻撃が止まった
勝ったのか?
だがまだ終われない
連続の攻撃を繰り出す
「アァァァァァ!!!」
鳩尾に衝撃を受ける
燃えるような熱に鋭く鈍い痛み
ゴホッと何かを吐き出す
口の中が鉄の味しかしない
一瞬で理解した
炎を纏い殴ってきている
わざわざ同じ土俵に立ってくれる
これで負けたらやってらんねぇ
≡≡≡≡≡
鈍い音はなり続ける
互いにアザだらけだ
どちらかが膝をついてもおかしくない
いや、両者がそうなるだろう
そう見える
だが膝をつくにはまだ早い
互の眼が死なぬ限り
互いの気力がなくならない限り
どこかで妥協してしまうか?
これで満足すればあるのは死
相手が倒れなければ死ぬ
だから倒れられない
なによりここまで本気の敵に対して妥協して斃れるなんてありえない
互いの拳が体にぶつかる
もう足がガクガクだ
こんな状態では体重をかけた拳は放てない
おそらく次が今出せる全力
そしてその拳を耐え切れなかったものは
斃れるだろう
互いの顔面をとらえ拳を振り抜く
炎に焼かれ鉄に砕かれる
互いに地面に横たわる
立ち上がった方が生き延びるのだろうかそれとも
援軍がした方が生き延びるのか
いや、援軍以前にまだいた
この戦いに何も口出しせず見ていた2人が
さてと呟きニアがフラフラと立ち上がる
しかし遠くから足音がした
No.0の目は誰をも捉えずに虚空をにらんだ
足音は全員に聞こえるまでに近づいた
「……やァ…やはリ、いたんだネ……クレイ…」
ジャックだった
見るからにボロボロでふらふらと歩きながらクレイに近く
その足は5歩と進まず止まった
「……」
何も言わなかった
仮面の奥の眼光が見えた気がした
「……ァァ…」
「…!…逃げろ!」
一瞬迷ったようなそぶりを見せジャックが叫ぶ
No.0かクレイか
炎に起こされゆらりと立ち上がり爆炎で周りのものを吹き飛ばした
ニアもガラスの壁に叩きつけられた
そばにいたグラップラーとクレリックの姿は、ない
床が消滅していた
「チッ!面倒ったらありゃしないネ!」
凄まじいスピードで迫り剣を向ける
刃が届こうかという瞬間に剣が弾かれた
弾かれた剣を数瞬で炎が奪う
ケケケと笑うような狂った笑みを浮かべ目を見開く
そしてニアの方に向き直る
「……ァァァァ!」
奪った剣を向けつき刺す
肉を裂く音がして血が飛び散る
ニアが唖然とした表情で立ち尽くした
「……まダ、生きてル相手を無視しちゃダメ……デショ……」
ジャックの脇腹に突き刺さっていた
短剣を持つその手を両手で掴み力を込める
「オレ…だってサ、半身だってサ、全力尽くせば……お前ヲ……傷つけることくらいはできるんだヨ……ボロボロになるまでナァ!!」
「アァァァァァ!!」
つかまれた腕が青い炎に焼かれる
黒い炎と青い炎は交わらない
≡≡≡≡≡
「……ごめんなさいね…」
「いえ!問題ありません!」
清々しい顔の少女が歩く手伝いをする苦しそうな顔の女性は静かに歩く
「むしろ私が撃たれた足を更に切らなければよかったのに」
「えぇと……あなた…いや、もう何も言わないわ」
何があったか
簡単だ、あのあと棃音は居なかった
血だまりだけが生々しく残りその姿はなかった
おそらく死んだと見て間違いないと
もし生き返るにしても数日後
生き返らなければどうなるかわからない
それをきいたネロは嬉々として
「じゃあ生き返ったら好きなだけ殺せるし生き返らなかったら面倒な兄はいないんですね!」と笑ったという
爆音が鳴り響いた
「……!」
「何の音…?」
「行きなさい、私がいたら手遅れになるかもしれない」
「……わかりました」
地面を蹴り壁を蹴る
素早く音に向かう
≡≡≡≡≡
「アァァァァァァァァ!!!」
「ゴフッ…」
青い炎が消えかかる
「怪我してたのは……大きい、カ?」
一歩後ろに下がると同時に傷口から血が噴き出す
「アァァァァァ!!」
大きく振るわれる剣にニアを守るように広げられた右腕が飛ぶ
ニアが膝から崩れた
血が線を描き回転しながら飛んでいく右腕をみた
ズバズバと切り裂かれた
しかし笑っていた
「…ハハハ…クレイ……ナぁ…自分ヲ……完成させようヨ…ナア!」
体が炎に包まれる
「俺ハ俺ヲ咎めはシナイ!だからお前は俺とシテ生キロヨ!ナァ!」
どういう意味か
そう問う前に炎は弾けた
その炎の中からもう一つの短剣が現れクレイを斬りつけた
その傷口から血がだらりと垂れる
炎がその傷口に入り込む
焼けるように傷口が塞がり始める
燃え盛る黒い炎が紫色の業火へと姿を変えた