ああ、こんなことになるなら!
全員がそう思う
ただひたすらに波をかき分け
もがき、戦い、進む
「くそがッ!!」
一言一言でどんどん体力を磨耗して行く
喋ることは無駄だ
限りなく無駄だ邪魔なことだ
今の自分を苦しめるだけなのだ
それを理解しても
もがくために
足掻くために、それだけのためだけに
ただひたすら吠え続ける
誰にも届かない声で吠える
たった4人の小隊は
ただ、ただひたすらに______
_______城へ
「嗚呼、嗚呼、哀しきかな、姫君、狂王を放り置いてはただ寝るだけか?」
「………そのような言い回しは似合わないな」
「ははは、のう…姫君よ、いや、西洋にこんな言葉がある、『メシア』、それになるだけの器が、あなたにはあるだろう…なあ、当主様?」
「………」
「てん、てん、てん、じゃない、考えても分かるわけがない、自由気ままな貴方なのか?今、寝てた間に考えて何かを高めたとでもいうのか?」
「…わかっている、何1つ、わからない、私には……もう何もできないのだ」
「違う、できるではないか……そうだ、私がここに来た理由を知っているか?」
「なぜ私が知っていると思う」
「これを返しに来た」
傀儡使いはカケラを取り出した
燃ゆることのない魂のカケラ
「……ハハハ…面白いものだな、私に返すべきものではないだろう、人を間違えるほどその包帯の奥の眼は腐りきったか?!そんなもの!そんなもの…!」
「その小さな頭では何もわからぬか、仕方ない、このガキめ」
「ガキだと!?貴様!第1貴様よりはまだマシな頭を持っている!」
「ふっ…」
「…………何がおかしい」
「まだ……元気そうで、安心した、このカケラを受け取り、呑み込め」
「だからさっきから何を…」
「いいか、よく聞け、この世の電脳世界はお前のカケラだ、その器がある、先代は素晴らしい王だったかも知らん、しかし、その器はない」
「私の父を侮辱したいのか?」
「違う、お前にこそ、やって欲しいのだ、ならねばならぬ、なるしかないのだ、偽物にこの世界を手中に収められるのは気に食わないのだ、お前なら動ける、だろう、お前の体はもう、治っているのだろう」
すらりと音を立て太刀が傀儡使いの首筋にふれる
「姫はまだ動ける身体ではない、貴様にそのような判断をする資格などない」
「やめろ紫蘭、こやつの言う通りだ、私が甘えていただけなのだ、彼女らの強さに、人形師、それを寄越せ」
「……忠告しておこう」
「なんだ」
「貴女は……貴女ではなくなるかもしれない、得体の知れない何かになり、悪と成り果て、正義に討ち倒される、そんな存在になるかも知れない」
「……何を今更、覚悟の上だ、さらにその時は…なぁ、紫蘭」
「ええ、私は姫がどうなろうと、お側にあります、今迄なら見限りかねませんでしたかも知れません、しかし、今回の一件で素晴らしい成長を垣間見ることができました、側近として幸せな限り、もう悔いはありません」
「…素晴らしい従者がいるのだな…私の従者なぞ、心もない、話もできないものだけだ」
「お前に従者などおらん、お前は孤独だ、しかしそのカケラはお前のカケラでもある、私は、お前とも、永遠を過ごすのだろう」
「辛辣なお言葉だな」
「私は…もう覚悟は良い、いや、覚悟なんかじゃない、これは願いだな、ただただ、成長を、強さを、優しさを願う」
「ッ!」
「後方!敵増援!」
「無視だ無視!ただただ前に進め!」
「応!」
銃使いの掃射が付近の敵を払いのけ双剣士と拳闘士の2人が狭き道を作り上げる
回復が続くことによりなんとか持ちこたえるが全員の精神が摩耗し、喉が枯れ始め、足取りが重い
「進むんだ!進め!進めぇぇ!」
いつの間にか分断される
後衛の銃使いの姿は見えず
しかし発砲音は途切れない
妙な安心感を感じたと同時にそれは轟音を立て崩れ去る
後方で大爆発
大きな雲が出来上がるのがみえる
誰もが一瞬動きを止めた
まるで時を止めたような瞬間だった
そしてさらに遠く、遥か遠くからの大爆発
比較にはならない威力だった
まるで街1つを破壊し尽くすような範囲の爆発に全員が吹き飛ばされる
所狭しと並んだ敵と一緒に吹き飛ばされるのだ
そして次の瞬間宙を見て全員がソレを察知した
「オイオイ…なんてもん作ってたんだあいつ…いや、敵の武器か?」
全員が息を飲む
爆発の後から立ち上るその特徴的な雲
キノコ雲と呼ばれるそれから導き出された答えは1つ
「…核爆…」
「放射線の影響、こっちでもあるのかな…」
その考えをした次の瞬間第二波の熱風が吹き荒れる
身体が溶けそうな熱さに悶え、そばの物陰に隠れる
化け物なんぞにそんな知識は当然ない
熱風に焼かれ、消滅するのだ
呻き声は全てが死の灰となった後も止まない
魂がただ彷徨うかのような世界と化した
まだ、気温は高いが決して死ぬような熱さではない
一口水を口に含み吐き捨てる
さあ、あの玉座へ狂王を討つべくして