全員が口を開くことをやめた
固まり、迫る敵のみを倒した
離れた敵は無視した
追う気力はない
城の中へ入る前に倒れる、そう確信した
進むことをやめ、ただ、生きながらえる
それだけを目的とした
撤退はなぜかしなかった
ここで退けばもう来ないことはわかっていた
人として生きる、最後の渇望だ
最後の足掻きだ
それを理解し、立ち尽くした
神様、ワタシは、あなたのみに仕えます
私は意のままに、脚を乱さぬ兵を使えます
あの様な王などワタシには目障りでしかないのです
あなたの影など…あなたの光のみをみていたいのです
これはわがままです、プライドです
のこされたNo.は3つ…あなたに仕えるものです
最期の、戦いを…!
神よ!ワタシを使ってください!
…ありがとうございます、彼女たちも喜ぶでしょう
悲鳴を聞きたいと、言ってましたので
「なあ…」
「そうだな、大したもんだよ、こんなに酷いところは見たことない」
「大バカ者め…奴はどうだ?」
「完全に死んでるな、跡形もなく蒸発しているようだな、これがその証だ」
溶けた、黒い鉄塊を拾い上げる
「あらら」
「ここで激戦があったのは間違いないな、気を引き締めろ」
「そいつ自身は?」
「問題ない」
「なあ、そろそろ、頼むわ」
「よし、こいつは10秒しか持たないからな」
「他の先に頼む、この大盾がどれだけ持つかはわからん」
「よし、バフをかけろ、先行部隊は進撃開始!かけたと同時に飛ばすぞ!」
「かけながら飛ぼうや!」
「そいつはいい!」
「進め!!!」
「!敵が減った!突破できる!」
「どこ!?」
「そこだ!」
「行きます!疾風双刃!」
確かに、確かに、入り口に穴が空いた
敵兵の塊に通り道ができたのだ
「いまだ!突っ込め!」
「っしゃ!」
広場に出た、がらんと、誰もいない広場だ
ここの中心で再度自分の身を守る戦いを繰り返す
同じことの繰り返し…
そうとはいかなかった
「…ッ!マズイ!」
「囲まれてる!?」
城壁に所狭しとカービン銃を持った兵士が並ぶ
その銃口は言わずもがな己に向けられている
「……ここまでか…!?」
「いや、弾ける!」
「スピードが売りなんだ!やるしかない!」
己を鼓舞し、士気を上げる
動かない体を引きずってでも振り回す
発砲音と同時に鉛玉が降り注ぐそれを切り落とし、弾き落とす
何方向からも来る、それを全て破壊し尽くすのは容易ではない
追い詰められたからこそ、限界点を超えたのかもしれない
「そろそろリロードするはずだ!」
「走るか!」
その考えは甘い、甘すぎたのだ
発砲音が減り始めた
それに安堵したが故に絶望が大きい
城壁の人影が入れ替わりまた発砲を始める
リロードを行う者と射撃を行うもの
別れていたのだ
増える銃声に絶望し、身体が震え始める
泣きたくなるとはこんな感情か?
そう思った直後鮮血が迸る
ここまで共に戦った双剣士の脚が止まったのを視認した
何もかもが止まった世界に感じられた
その瞬間に全てを見ることができた
絶望しきった目にだらりと力なく垂れた腕
もう諦めたのだ
彼女はもう諦めた、抵抗をやめた
そして脚を貫かれた
彼女にもう、動く気力はない
このまま前方に倒れ、蜂の巣になるだろう
わかっている、いや、わかっていたと言うべきか
いつかは、折れた
自分さえもが折れるとわかっていた
常人ならこの絶望で折れた、当然だ
当たり前だ
だが、しかし、負けたくはない、ここを耐え、守り切る
それだけが頭によぎる
ただ、ただ、疲れた、それさえも吹き飛ばしてやりたくなった
「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
咆哮
獣の雄叫びだ、一瞬敵が怯んだのがわかる、発砲がやんだ
大きく息を吸う
暑くて、苦くて、マズイ空気だ、異物が口の中に入った気がした
唾を吐き捨てる
「来いよ…何びびってんだ?雑魚ども」
クレリックはただただ立ち尽くしていた
「動け、早く回復しろ」
その言葉で油の刺されたゼンマイ人形のようにヒールをかけ始める
それとほぼ同時か
一斉発射
スロウに、ゆっくり
弾道を見た
難しい計算なんていらないのだ
神速のごとき速さで全てを叩き落とす
弾き飛ばすのだ
ビリヤードの玉のように他の弾にあたり勢いを失うものも多かった
しかしそれ以上に多い
玉は無限のように迫り来る
わかっている
一瞬でいいんだ、どうにかこの間をしのぎ、進まなくては!
ふと、何を察知したのかわからない
味方の方は目をやると
かわせない、止められない位置に弾丸が迫っていた
脳は理解した、悟りもした
ああ、すまない、ただ、すまない
轟音と共に土煙が上がる
視界を失い跳び下がろうとしたとき襟首をつかまれ壁に叩きつけられる
いや、こんなど真ん中に壁なんかあっただろうか
そして誰につかまれたのか…
刹那その壁から爆音が鳴り響く
いや、まるで銃弾を受けているかのような…
土煙が晴れ、ようやく一寸先見えようかと言うとき、見知った顔を見ることができた
「……もっと、早く来いよ…」
「マジシャンの登場は遅い方が映えるんだ」
そんな馬鹿みたいにキザなセリフに安心しきってしまう
「お疲れ、今まで、ここからは俺たちも戦う」
ガーディアンと呼ぶにふさわしい大盾で銃弾を防ぎながら言った
「gesso…hakurou…」
「俺らを忘れんなよ!」
そんな声と共にもときた道から数人が走り込み的に攻撃を始める
「エクスプロージョン!」
敵兵を城壁ごと木っ端微塵に吹き飛ばす
落ちようが侍に斬られ、逃げようが弓士に撃ち抜かれる
大太刀をかわす間も無く斬り刻まれる
それでも逃げたとしたら忍びが憑いている
数瞬にして敵の指揮統制は乱れ、バラバラと動き
殲滅されていく
「……流石だな」
敵を倒しきった広場に堂々と乗り込みながらニアは言った
「だから、これだからいいのだ、なあ」
「ああ」
「……みんな、これたのか」
グラップラーの問いにニアは笑顔で答えた
「ああ」
「今、お前がどんな表情をしてるのか見れないのが残念で仕方がない」
傀儡士はどこか悲しげに笑いながら言う
「言わなくてもわかるだろう、満面の笑みだ」
「そう、だな」
彷徨う魂はとても楽しげだ