鯖民がリアルデジタライズしたようです   作:棃音

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ピエロは踊った最期まで⑥

「ねェ、教えテ?こうまデ俺ヲ止める理由はナニ?」

 

「悲しいんですよねぇ?」

 

「その泣き顔見てらんないから」

 

クレイの面は目の位置に円弧が少し

そしてその下にある涙のマーク

対照的な面だ

ニアの面は目が見え、そして十字の線

だがこちらは何も見えない

 

「馬鹿だなァ、単なるマークなのニ」

 

回転しながらの剣舞に合わせながらポツリと呟いた

そのはずだった

 

「なら、お面外せば?」

 

面は外せない

どうかは笑い、笑わせるのが仕事だ

涙を見せることはあってはならない

 

「別に泣いてようがどうだろうが関係ない、単純に、嘘つきの顔を盛大に歪めてやりたいだけでしたが……」

 

「「気が変わった、やっぱり泣かせる」」

 

銃士は武器を捨て腰からスラリとダイヤの剣を引き抜く

 

「やっぱり、これが一番慣れてるのかもしれない、まだゲームなんだ、と信じていたいだけなのかもしれないが」

 

2vs1の剣舞

 

切り上げ、袈裟斬り

突き刺し、斬りおろす

 

お互いにいなし

かわし

鋭く繰り出す

 

「以外…ダナ、銃限定なのかト思ってたヨ」

 

「ライフルよりナイフが有利な間合いもある!」

 

大振りな攻撃

 

スキだらけだ

何を企んでいる……違うな、今ので仕留めるつもりが外しただけだ

連携らしいものは何もない

この攻撃は剣を扱う回数が少なかったから行ったまさに

自殺行為

 

 

両腕を大きくふるった攻撃は体をも引っ張った

体は地面を向き、すぐ切り上げることはできない

そして武器を消した様子もない

少し剣を引いた、突きの構えになる

再度こちらに向けようとその鋭さを最大限に発揮するほどの実力はないとみた

 

「それは剣として扱うならばの話だ」

 

考えを読まれた?

いや、想定通りなのか

 

確かに、突きの構えに見えた

片手が刃に触れ、なぞり、半歩下がる

剣先は上を、クレイを捉えていた

だが

柄には糸が、刀身はしなった木に添えられている

 

理解に時間は必要がない

弓矢だ

まるであの剣を矢にすると言わんばかりの

いや、そのつもりだ、そしてその勢いは想像を絶する鋭さを生み出すだろう

 

バシュッと音がする

これを食らえば、体は持って行かれるな

間違いなく

今ここで死ぬ

 

「紙奏!紙遊戯!」

 

トランプにまみれ、何一つ見えない

前も、後ろも

だがこれでいい、姿を隠した

空中では体制を変えられない

がこの瞬間の紙束は足場として働く

たとえ0.3秒でも0.1秒でも動けるならば

 

放たれた矢は、血を纏った

ほんの僅かな

そして膨大なデータを、奪い去った

 

紙が消え、ドサっと体が落ちる

 

「危なかっタ…本当ニ……!危なイ…だが!」

 

眼前の敵に得物はない!

 

 

 

「そう、僕はもう、武器はないけれど……」

 

 

はっと振り向いた瞬間ダイヤの剣で殴打される

刀身を横に向け、大きく平べったい硬い刀身で殴られた

 

その犯人は空中でひらりと回転し、しなやかに地面に降り立つ

そしてダイヤの剣を投げ返す

 

「どうやら受け止められるらしいなぁ、おっそろしい話しさ、元から2人の相手だってんだから仕方ない事なのかもしれないが」

 

「……」

 

「ちゃーんと忘れずに見てもらわないとね?」

 

剣士と成り果てた銃士は面を拾う

ハッとして顔を触れるがもはやそこにはない

先ほど殴られた時に飛んで行ったのか

 

「面の裏で泣こうが、関係ない、今からは面の外で泣いてもらう」

 

上空に投げた面を叩き斬る

ろ過されたように美しい水滴が際限なく流れ落ちる

 

「……あァ……俺ハ…ここまデ……カ」

 

ピエロは泣かない、泣いてはいけない

けれどもうピエロはおわりだ

ピエロとして生きることはできず、ここで死ぬしかない

溜め込んだデータが解放される、それはすなわち暴走に直結する

 

「貴方はもう十分だ、死ぬより辛いだろう、貴方が剣を向けるのは、もう、剣を向けたくはないのだろう」

 

「戦意なんテ関係ないんダ……俺は……アレガ…最後ノ…瞬間ニ……」

 

大粒の涙をこぼす

声を殺して泣き続ける

 

「涙をためて、恨んで、それを吐き出すなら、相手をしましょう」

 

「hey?落し物」

 

2艇のハンドガンを拾い、片方を投げる

そして片方は太ももの可愛的な鞘に収納する

 

「ネコババはやめとけ、扱いきれんぞ、そんな細腕じゃな」

 

「言ってくれるねー……かなり重いから確かにそうかも」

 

形を崩し、もはや何なのかわからない

憎悪を表したような物質へと変わり、そして地面と同化する

 

「ニアニ…ツタエ……」

 

「モチロン…最期はカッコよく、僕等のために、ニアさんのために、犠牲となった…貴方の恨む相手はきっと…」

 

「きっとじゃなくて間違いなく倒すよ」

 

「そうだったかな、まあ、後はゆっくり寝ててください…後始末は慣れてるんだ」

 

「ア……ガ……トウ…」

 

地面が形を変えドームのように2人を包み込む

この最期を他の者に見られたくない

そんな意地を張っているのかもしれない

ドームの天井からぶらぶらと触手のようなものが垂れ下がる

そして壁の一部が膨れ上がり、丸い球体が転がりでる

透明なそれの中に脈動する赤い玉

心臓だと思いつくのに時間はかからなかった

 

「やれっかなぁ…ま、いけるか」

 

「多分……」

 

ぶんぶんと触手を振るい襲いかかってくる

単純な動きを切り裂き、かわし

距離を詰める

ふた方向からの同時攻撃

剣を突き立てた

しかし心臓は遠すぎる、刃が届かない

2人の答えは一致した

共に剣を殴りつけた

勢いに乗ったそれは心臓を確かに斬り、そして互いの手に収まった

 

「今更ジョブチェンジか」

 

「剣士って初心者職だよね」

 

互いの獲物を不思議そうに持ちながら周りの触手を切り刻む

 

「わかんねー、わっすれたわ」

 

触手は確かに弱い、が数が無限に現れる

次第に追われ始める

 

「ちょっとキツくなってない?」

 

「そっちだけだろコッチは余裕だ」

 

「冗談、余裕はこっち」

 

気づけば銃士の背中に双剣士の後頭部がぶつかる

 

「肩甲骨?痛いんだけど」

 

「勝手にぶつかっといてそれか、背を伸ばすんだな」

 

ばっと離れてお互いの武器を投げ返す

 

「ラチがあかないときは……こうすりゃいい」

 

ニ艇のハンドガンを向ける

先ほど抜き取ったらしい

 

「あっいつの間に!ドロボー」

 

「どっちが…ぐっ…」

 

一瞬気を晒された

だから攻撃を受けたのだろう

ハンドガンを弾き飛ばされた

しかしそれは確実に双剣士へのパスになった

 

「んー…まあいいか、そいつは貸しにしとく」

 

「借り、の間違いでしょ」

 

肩を並べ、銃を向ける

そしてそのスライドの上に寝かせた銃を置く

 

「やっぱ、これに落ち着くらしい」

 

「私は落ち着かないんだけどね」

 

「「jackpot」」

 

会話に挟まれる銃声

そして銃弾は心臓を確実に貫き、消滅させた

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