「しっかし寒いなぁ……」
箒にまたがって空を飛ぶ魔理沙が口を開くと霊夢も同意した。
「ほんとね、冷房病になっちゃう」
そんな話をフワフワと空を飛びながら聞いていた縫螺は笑いながら聞いていた。縫螺は妖怪なので寒かろうが暑かろうがほとんど問題はない。
え?何で空飛んでるのかって?妖怪だもん。空くらい飛ぶさ。霊夢や魔理沙は能力でだけどね。
「ただ霊夢、ほんとにこっちで良いのか?」
「何よ魔理沙。私の勘を疑ってるの?」
「お前の勘がすごいのは知ってるけどさ……それでも大丈夫か気にはなるもんだぜ?そもそもこっちの方に何かあったっけ?」
魔理沙の言葉に縫螺もそう言えばそうだと縫螺は思案した。確かにこっちの方には何もなかった気がする。
無論……異変の張本人が堂々と住処を晒してるのかと言うとそうでもないかもしれない。しかしこの規模となると相当強い妖怪だろう。そうなると恐らく隠れはしない。妖怪は自分の力に自信を持っている。それが強ければ強いほどだ。となると態々こそこそしない。何であろうと掛かってきなさい精神だ。しかももし隠れてこそこそやるならここまで大規模じゃない。もっと少しずつ……そして静かにやる。まあようは結構派手好きなんだろうってことだ。
「ん?」
何て考えていたところだった。遠くの方に紅い西洋風の屋敷が見えてきたのだ。縫螺たち三人は首をかしげた。あんなデカイ屋敷この一体にあったのかと……
「初めて見るわね……」
「最近幻想入りしたのか?」
と、霊夢と魔理沙は言う。縫螺も確かに……と同意した。そんな話をしながら三人は陸地に一回降りると徒歩でその紅い屋敷に向かった。
すると突然三人の行く手を遮るように何者かが道を塞いだ。
「何かご用ですか?」
目を細め聞いてくる少女……この屋敷と同じ紅い髪に蒼い目……中華服と帽子に身を包むがそのスタイルのよさは良く分かる……そして一見すれば人間に似ている姿だが……人間じゃない。体から発するその力は明らかに人間ではない……縫螺と同じ妖怪だろう。
そんな彼女は明らかな警戒の色を瞳に帯びて聞いてきた霊夢が答える。
「この紅い霧……多分だけどここから出てる気がするのよね。知らない?」
そう言うと紅い髪の少女は口を開いた。
「確かに……この紅い霧は我が主……レミリア・スカーレット様が出したものだが……何か問題でも?」
「問題しかないのよね……こんな風に寒いんじゃ洗濯物が乾かないわ……だから」
そう言いながら霊夢は首を軽く回す。
「この霧消せって言ってくんない?出ないと……」
「力付くですか?」
「ええ」
霊夢は頬尻をあげた……
「うちの父さんがね」
「いやお前が頑張れよ」
縫螺がビシッと突っ込んでおく。サラッと父に面倒事を押し付けようとするんじゃないよこの娘は……
すると霊夢はうつむくとそのまま少し顔をあげた……いわゆる上目使いと言うやつである。
「お父さん……お願い」
ふふ、霊夢よ……そうやって甘えた顔と声出したっていかんぞ……父はそこまであまくない!もうお前だって良い年なんだ……厳しく行くからな!
「了解、ぜーんぶ面倒なことは父ちゃんに任せておけよ」
「おっちゃんは霊夢に甘すぎだぜ……」
と、魔理沙ちゃんが言うけど仕方ないじゃん!霊夢かわいいもん!親バカとでもなんとでも言うが良い!
「と言うわけだからここの主に文句言いに行くから案内してく──っ!」
案内してくれないか……そう聞こうとした次の瞬間だった。次の瞬間紅い髪の少女手にオーラのようなものが集まったかと思うと丸い球のようになり縫螺たちに突っ込んできたのだ。
『げっ!』
三人は慌てて回避した……次の瞬間爆発したが全員無事だ……あっぶねぇ~。
「成程……ならば私はあなたたちを排除します……この紅魔館の門番として……」
そう言って構えた少女……構えを見るに中国拳法か……しかも妖怪……どんな能力だかは分からないが妖怪+拳法……正確には技術。
肉体の強度は人間は妖怪に大きく劣るが肉体駆動……つまり自分の体を効率的に動かし効率的に力を伝えると言う点においては拳法と言う技術体系に変えることで脈々と磨いてきたそれは妖怪にはないものだ。
しかし彼女は妖怪としての力に加え拳法と言う技術をプラスして戦うタイプ……こう言うのってシンプルだけどその分厄介なんだよね……仕方無い、
「霊夢、魔理沙ちゃん……このまま二人は空飛んであの屋敷に入ってろ……叔父さんはこの妖怪嬢ちゃんと戦ってから行くわ」
『了解!』
二人は同時に飛び上がる。それを見た紅い髪の少女は止めようと力を込めた……が、
「ツツゥ~っと」
「あひゃあぁ……」
突然後ろにたった縫螺が少女の背中を指先でなぞるとゾクゾクっと独特のくすぐったさが少女を襲い慌てて振り返りそのまま裏拳……しかしその時には縫螺は距離をとっていた……
「いつの間に後ろに……」
「一応能力でね……相手の背後取るのは得意なんだ」
そう言いつつ縫螺は煙管を懐から出し、刻みタバコを少量出してギュギュっと摘めるとマッチを出して火を着けた……
「スゥ……ハァ……」
ゆっくりと紫煙を肺に取り込み口から出していく……
「娘の前だと口うるさくてねぇ……あいつ煙管の吸いすぎは体の毒だとか言うんだぜ?妖怪が体に気を使ってもしょうがな──うぉ!」
そこに飛んできたオーラをタマにして飛ばす技……咄嗟に縫螺は横に体そらして躱した……
「あのねぇ……人が話してんだから待ちなさいよ……しかも貴重な一服なんだからさ……」
「ふざけないで貰えますか?」
スゥっと目を細めた少女を見て縫螺はやれやれと肩を竦めた。
「あなたに時間をとられる気は……」
ドン!っと紅い髪の少女は踏み込むと縫螺との間合いを詰めた。
「ありません!」
「あっぶね!」
少女の拳を紙一重で躱す縫螺……だがそこからさらに回し蹴りが放たれる……それを縫螺は鞘にしまったままの刀で受けながら衝撃に逆らわずそのまま吹っ飛ぶ……
「やれやれ……こりゃ老体に響きそうだねぇ……」
と、老体と言うにはまだ妖怪的にも若い筈だが縫螺は笑いながら言う……とは言えだ。
「しゃあない。ほれ、掛かってこいよ」
縫螺は刀を抜かずにそのまま肩をトントンっと叩く。
「俺の名前は縫螺……名字はない。まあ別になくたって良いんだ。どうせどこにでもいるような妖怪さ」
そう言うと少女も口を開く。
「紅美鈴です……この紅魔館門番をしている妖怪です」
そう軽く言葉を交わし縫螺と美鈴は腰を落とす。明らかな臨戦態勢……と言うやつである。互いに意識を全身へ持っていく……そして、
「んじゃ、いざ尋常に勝負……なんてなぁ?──ごべ!」
と、縫螺おちゃらけていった次の瞬間……紅美鈴の拳が縫螺の顔面を情け容赦無しで叩いたのだった。