It's impossible to love and be wise.   作:蒼鋼

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今日の昼に気づいてしまったのです。

そういえば、この前の活動報告で超先行カットもといネタバレを挟んでしまったと。
えがった、予約投稿した勢いでやってしまった……


/腕試しに撃ち抜いて

 

 (ヨウ)が指名を受けた後、笑顔で深雪が衛兵(モリト)を連れて戻ってきたことで、今日は取り敢えず帰ろうということになった。

 レオと晶に紛れ込んでこっそり帰ろうとした鷹は、いつの間に背後を取っていたのか達也に奥襟を掴まれズルズルと引きずられるようにしながら彼らと帰路を共にした。

 

「なぁ、俺だけ疎外感が半端ないんだが……」

 

 何とか衛兵の隣を取った鷹が、歩調を合わせつつ呟く。

 彼の横では、真由美が達也に腕を絡めてウキウキした表情になっている。そして深雪は深雪で恥ずかしそうにしつつも衛兵の手を握っていた。それも、指を絡め合う『恋人つなぎ』という奴だ。

 

「……スマン」

 

 達也も「それが何か?」という様子で全く意に介していない。

 一人、鷹の隣を歩く衛兵のみが小さな声で詫びるものの、かと言って深雪と手を離すつもりもないようだ。

 

「えと。このバカップル二組はそれぞれ婚約者同士の関係、なんだっけか」

「バッ……!」

「ええそうよ♪ ラブラブっぷりは見てわかるでしょ♪」

 

 気恥ずかしそうに視線を下に向ける深雪と、対照的に世間話のように答える真由美だった。

 

「「ほう」」

 

 達也と衛兵が言葉を発したのは同時だった。

 

深雪()に──」

深雪(俺の女)に──」

「「恥をかかせるとは、いい度胸だな」」

 

 達也の細めた双眸から絶対零度の圧力が溢れ、衛兵が空いている手の五指をゴキリゴキリと鳴らす。

 

「あ、それじゃ私も便乗しよ♪ 可愛い義妹への口撃は、許さないゾ☆」

 

 二人に乗じて真由美がブレスレット型CADのコンソール上で指を走らせる。

 

「くっそ、シスコンと首っ丈野郎め……!」

「「それがどうかしたか」」

「少しは否定しやがれ畜生!」

 

 鷹が崖っぷちに追い込まれている一方。

 

(バカップルということは、私と衛兵がお似合いに見えていることですよね……? それは、すごく、すごく、嬉しいですわ!)

 

 原因とも言える深雪は、一人恍惚の表情を浮かべていた。

 

「「……」」

 

 達也(シスコン)衛人(首っ丈野郎)がしばし深雪の幸せそうな表情を見つめる。

 

「「褒めて貰えて良かったな、深雪」」

「はい!」

「おいコr……ぬぐっ」

 

 二人の笑みを浮かべて直前までの怒気はどこへやら、という豹変ぶりに物申そうとした鷹だったが、深雪の素直な笑みに思わず口を(つぐ)んでしまった。

 

「やっぱり深雪ちゃんは可愛いわね~♪」

 

 深雪の隣を歩く真由美が、深雪に抱きついて頬ずりしつつ髪を優しく撫でる。深雪も特に抵抗することなく受け入れていた。

 

「……仲のよろしいこって」

 

 もう何も言うまいて。

 入学早々、何かを悟ってしまった鷹だった。

 

 

「なぁ達也。早速だけどツッコミ入れていい?」

「なんだ?」

「どうして、個人の自宅の地下にこんな広大な訓練室があるんだよ」

 

 親に連絡を入れ、実家に帰らず制服のまま鷹は達也たちの家にお邪魔している。

 彼ら以外の住人は外出中のようで、帰宅途中に昼食を済ませた五人はそのまま地下へ移動していた。

 

「なんでって聞かれてもな」

「CADと魔法式の研究を実験するには、このくらいの広さは必要だろ?」

 

 さも当然とばかりに衛兵が答える。

 

「いやいや、まずご家庭でそんな研究すんなよ。危なっかしい」

「まぁまぁ、細かい所は気にせず」

「細かくありませんよ!? ……はぁ、もういいや。ツッコミ切れねぇよ」

 

 鷹も色々と思うところはあったが、それ以上は何も言うまいと決め黙りこくった。

 

「諦めが良くてよろしい。それじゃ、まずは実演から始めましょうかしらね。達也」

 

 真由美が制服の内側からCADを取り出す時間で達也がリモコンを操作する。すると、床の一部がスライドしてそこから訓練用の標的が十個ほど出現した。

 

「最も、伝授と言ってもやることはそう多くはないけれどね」

 

 銃の形状をしている、特化型であろうCADの銃口を標的に向け引き金を一度だけ絞る。その動作に合わせて真由美のサイオンがCADに吸い込まれ、CAD内部の起動式が魔法式に変換され真由美に送り込まれる。

 現代魔法のプロセスを恙なくこなして現実に作用した魔法は、先ほどと同じ『ドライ・ブリザード』だった。

 だが、恐るべきことに真由美は標的の数だけドライアイスの弾丸を展開し、ほぼ同時に標的を撃ち抜いた。

 

「ループ・キャスト、ですか」

「そうよ。流石に、ループ・キャスト(それ)無しで同時に大量生産はできないものね」

「でも、よく同時にあれだけの数を捕捉(ロック)できますね」

「そこはホラ、経験よ。これから君に叩き込む最重要事項かしらね」

 

 

 ループ・キャスト──CADで『魔法式』をデジタル信号の『起動式』として保存する際に、式の最後に同じ式を展開する命令を組み込む技術だ。

 これで魔法師の演算能力の限界まで同じ魔法を繰り返せる。だが、ただ同じ魔法では進行方向も同じで複数を狙えない。

 一つ一つの進行方向を変えるのはやはり魔法師の分担で、同時に十回分の処理を行って尚も涼しい顔をしている真由美は、さすがは十師族の人間だと思わせるだけの技量を有している。

 

「さて、今度はタカくんの番よ」

「うっす。あ、始まるまで目を閉じた方がいいですか?」

 

 真由美が達也にアイコンタクトで指示を出し、標的を再出現させる。

 

「どちらでもいいわよ。最初は現状の能力把握だけだから、気負わずに一個ずつ撃ち抜いてね」

「……ハイ」

 

 制服の内側から、特化型と思われる銃型のCADを取り出した鷹の表情は真剣そのものになっていた。

 

「それじゃ、スリーカウントで始めてね。スリー」

 

 真由美のカウントダウンと共に、前方に広がる標的群をざっと見渡す。

 

(数は八。背中に隠れている標的もなく、全部がこの位置から射線を取れるな)

「トゥー」

 

 位置を確認した鷹は目を閉じ、集中を高める。

 

「ワン」

 

 高めた集中をそのままに、イメージで脳内に状況を再現する。

 

「ゼロ!」

 

 合図と同時、先ほどの真由美と同様に引き金を一度だけ絞る。

 その動作から一秒が経過するかしないかの時間で、八個の標的全ての頭部が吹っ飛ばされた。

 

「フゥ。ま、こんな所か」

 

 まるでかつての西部劇のように、鷹は煙こそ立ちこめていない銃口に息を吹きかけた。

 

 

「やるな」

 

 衛兵が鷹に歩みより腕を頭上に持っていく。

 

「へっへへ、まぁな」

 

 笑顔の鷹も同様に腕を上げ、ハイタッチする二人。

 真由美と深雪は目を大きく開いているが、達也は興味深げに鷹を見つめていた。

 

「まさか『ニトロ・ブリット』とはな。少しマイナーじゃないか?」

 

 今度は鷹が目を大きく開いて数回だけ瞬きした。

 

「驚いた。よく見抜いたな」

「魔法の分析は得意でな」

「衛兵、『ニトロ・ブリット』とは圧縮窒素弾のことですか?」

「その通りだ、深雪」

 

 空気を弾丸として使う魔法は一般に『エア・ブリット』や『圧縮空気弾』が使われている。『ニトロ・ブリット』はそれと類似の魔法で、『収束』した窒素を直線に『加速』させるだけの魔法だ。前者の二つのマイナーチェンジと言っても差し支えないだろう。

 

「窒素単体だったら、着弾して拡散する時に呼吸しづらいじゃん?」

 

 笑みを崩さない鷹に、達也が微かに肩を竦める。

 

「人が悪いな」

「初見で魔法の内容を見破る奴に言われたくないね」

「それもそうか」

 

 達也が納得の表情を浮かべる。そんな時、鷹の隣で見ていた真由美が満足げな笑みを鷹に向けた。

 

「タカ君。合格も合格、特待生レベルの合格ね!」

「おっ、ということは?」

「流石に『魔弾の射手』は七草の秘術だから教えられないけれど、『ドライ・ブリザード』『ドライ・ミーティア』『ダブルバウンド』『サイオン弾』を教授しましょう」

「よっしゃ!」

 

 満面の笑みの鷹が、やや大げさガッツポーズで喜びを表現する。

 そんな鷹を見守っていた衛人は鷹のCADについて、あることに気づいた。

 

「タカ、お前のCADはシルバー・ホーンだったのか」

「ん? ああ、そうだぜ」

「成程。だからあんなにスムーズにループ・キャストが使えたのね」

「へっへへ。お恥ずかしながら、まだループ・キャストはCAD頼みですね」

 

 大事そうに自分のCADを撫でる鷹。そんな彼を見ている達也の表情も自然と緩くなっていた。

 

「大事にしているんだな」

「ああ、魔法師として当然だな」

「そうか。……ありがとう」

「何か言ったか?」

 

 達也の礼は小声になってしまい鷹には聞こえなかったが、それでいいと自分に言い聞かせた達也は首を横に振った。

 

「いや、なんでもない。それより、早速修行を始めよう」

「そうしたいのは俺も山々なんだが、如何(いかん)せんカートリッジの替えを持ってきてなくてな」

 

 シルバー・ホーンは拳銃での弾倉(マガジン)に当たる部分が起動式保存のカートリッジになっており、そこを交換するだけで使用する魔法を変更できるようになっているのだ。

 

「それなら心配しないでくれ。少し待っててもらえるか」

「オーライ」

 

 踵を返した達也がエレベーターに向かうと、当然とばかりに真由美も付いて行っていた。

 数分して戻ってきた達也の手には、シルバー・ホーンのカートリッジが握られていた。

 

「えっ。まさか達也も……?」

「そのまさかだ。俺もシルバー・ホーンが一番しっくり来てな」

 

 有難くカートリッジを受け取った鷹はその場で交換した。

 

「真由美のCADの調整の時に登録してそのままにしていたんだが、役に立ったな」

「さあて、それじゃ修行開始といくわよ。と言っても、ループ・キャストをあれだけ使いこなせるなら殆どやることも無くなっちゃうけどね」

「そんなことありません。よろしくお願いします!」

「元気があってよろしい。それじゃ、まずは肩慣らしから始めましょうか」

「ハイ!」

 

 真由美がマンツーマンで指導する場面を初めて見た達也たちは興味半分でその場に残った。

 慣れない魔法だというのに鷹は根気よく発動し、時折真由美の言葉をメモに取りながら、一射一射に集中した。

 

「はい、それじゃ今日はここまで!」

「あ、ありがとう、ございました……!」

 

 鷹がサイオン切れで息が上がり、初日の修行が終了になるまで気づけば二時間近く経過していた。

 そのことに気付いた達也は、感情に忠実に驚愕の表情を浮かべた。

 

「今、純粋に驚いた。初めて使う魔法でここまで連続使用できるタカも、かなり凄いじゃないか」

「そりゃ、ゼェ、ハァ、どう、も……!」

 

 膝に手を置いた鷹が、荒い息で答える。激しい運動の後のように、髪の毛から汗が滴り落ちていた。

 そんな鷹の頭を柔らかい布が覆った。手で触って確かめるまでもなくそれはタオルだ。

 

「お疲れ」

 

 見れば、三十分ほど前から深雪と一緒に姿を消していた衛兵がスポーツボトルを手にしていた。

 

「ホレ」

「さ、サンキュ」

 

 有難くそれを頂戴した鷹はゆっくりと口の中に流し込む。

 熱すぎず冷たすぎず、温めで作られたスポーツドリンクが疲れた体に程よく染み渡る。

 

「……美味いな。絶対市販品じゃないだろコレ」

「当然だ」

「私が作りましたが、お口に合いましたか?」

 

 衛兵の後ろに立っていた深雪が心配そうに鷹の様子を伺う。

 疲労感はあるが、それでも鷹は笑みを浮かべた。

 

「ありがとう、すごく美味しいよ」

「それは良かったです」

「良かったな、深雪」

「はい!」

 

 衛兵に頭を撫でられ、深雪が気持ちよさそうに目を細める。

 

(……この二人、別々のクラスにして良かったのか?)

 

 そんな様子を微笑ましく見る一方で、鷹の脳裏にはそんな一抹の不安が(よぎ)った。

 

 

 せめてシャワーだけでも浴びていけばいい、と達也たちには言われたが鷹はそれを丁重に断り自宅へ帰った。

 それから三十分ほど経って、司波家の住人の帰宅を告げるチャイムが鳴った。

 リビングにて端末で読書していた達也がいち早くそのことに気づき玄関のドアを開け、笑顔で迎える。

 

「お帰り、()()()

「ただいま、達也」

 

 笑顔ではあるものの、杖で体を支え儚げな雰囲気を醸し出す女性は、三十代どころか二十代と言っても通用しそうな柔肌をしているが、この女性こそ紛れもなく。

 

 

 

 達也と深雪の実母にして真由美と衛人の義母。

 

 

 

 

 司波深夜(みや)その人である。

 




死んでる筈の人が生きててもツッコまんでくだしあ……
なぜなら、それが

御・都・合・主・義☆

あ、ごめんなさいニブルヘイムは勘b……(カチン、コチン
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