あれから3年が経ちました。
え?なんで時間が飛んでるっかって?赤子の時はほとんど寝てたからです。なにかしら考えようとしてもボーッとしていつの間にか寝てることが多くて、正直何やったかもあまり覚えてないです。
寝る子は育つ。というより子どもは寝る。ということなんでしょう。
まあそんなどうでもいいことは置いておくことにする。そのボーッとしてる中でも断片的な記憶はあるわけだ。まず、俺は間違いなく転生した。これは揺るぎない事実だ。こんな長い夢があるとは思えないし。
んで2つ目、俺はどうやら忍者の世界、NARUTOという漫画の世界に転生してしまったようだ。これは俺の住んでいる里にそびえ立つ顔岩を見て判断した。受験勉強前まではNARUTOは見ていた。そろそろ勉強に本腰入れようかなと思っていたタイミングで第一部が終わったので、それ以来は見ていない。
3つ目、俺の親は波風ミナトと波風クシナと言うらしい。2人とも忍らしいが、特に父親の方は【木の葉の黄色い閃光】と呼ばれる程の凄腕の忍らしい。でも波風という性のキャラクターは登場しなかったはずなので、原作とそこまで深く関わることはないのであろう。
それと言い忘れていたが、俺の名は元の世界と同じ【アサヒ】であるらしい。
これからの目的であるが、元の世界に戻る方法を探そうと思う。
俺の母は子どもが全てみたいな人だったから、早く帰らないと心配しているはずだ。下手したら自殺しかねない。
で、元の世界に戻るために、いくらか決め事を作ろうと思う。
・感づかれない
これはかなり大事だ。もし転生者だと気づかれた場合、スパイと疑われて尋問や拷問、果ては研究のために人体実験されかねない。主に蛇っぽいオカマに。
・死なない
これも大事である。もしまた死んだ場合、他の世界に転生できるとはかぎらない。NARUTO原作ではほとんど人が死ぬ描写はなかったが、原作のカカシ曰く毎日のように相当数が死んでるらしい。
これらを踏まえて、まずはこの世界について知らなければならない。でも両親にいきなり「この世界ってなんなの?」とか言ったら頭おかしい子なので、とりあえずは図書館に行こうと思う。
「かーさん、ちょっと外に出てくるね」
「あら、どこへ行くの?」
キッチンで洗い物をしているクシナがこちらに振り向いた。俺を生んだのは19の時らしいが、この世界ではさして珍しいことでもないらしい。
「ちょっと遊びに行ってくる!」
俺は嘘をついた。この歳で図書館に行くとか言ったら変に思われかねない。
「そう。日が暮れるまでには帰ってくるのよ」
「はーい!」
そして俺が外に出ようとすると、ミナトが起きてくるのが見えた。クシナが寝起きの遅いミナトを軽く叱る声を聞きながら、俺は外へと駆け出していった。
「まったく……遅いわよミナト。いくら昨日まで長期の任務だからと言っても限度ってものが……」
「ごめん、だからごめんって」
ミナトはクシナの小言を聞きながら、パンを頬張っていた。今は11時なので、いわゆるブランチというものである。
「ところでアサヒはどこへ行ったんだい?」
「まーたそうやって話題をすげ替えようとする。外に遊びに行くって言ってたわ。たぶん違うけど」
「やっぱり何か違和感を感じるのかい?」
「ええ……あの子はあの歳ですごい賢いけど、どうも何かを隠してる感じがするのよね……」
クシナは顎の下に拳を当てて、目を細めた。
「そうか……もう少し気をつけて様子を見る必要があるかな」
「自分の子どもを疑うことなんてしたくないけど、何をしたいのかくらいは知りたいわ」
「わかった。僕に任せて」
ミナトはそう言うと、クシナに向かって軽くウインクをした。
図書館に来た。木の葉隠れの里の中でも一番大きい図書館だ。ここで調べたいものが見つからないとなると、火影邸に忍び込まないといけないレベルになる。
「あら、アサヒくん。今日もお勉強?」
受付のお姉さんが話しかけてきた。俺は1人で外出を許可されるようになってから、この図書館に通い詰めているので、すべての受付の人に顔を覚えられている。
「うん。なんか術についての新しい本ある?」
「うふふ、実はね、今日は前から君が言ってた時空間忍術についての本を仕入れたのよ」
「え!?ほんと!?それちょーだい」
「しーっ、図書館ではお静かに。ちょっと待っててね。取ってくるから」
そう言うとお姉さんは席から立って関係者onlyと書かれた扉の奥に消えていった。
それよりも俺は興奮していた。時空間忍術。これはこちらの空間から亜空間に干渉する忍術である。簡単に言えば、別々の世界を繋げる忍術だ。これは仮説でしかないが、この術を突き詰めれば元の世界に帰れる方法も見つかるかもしれない。
あと、忍術には魂に関するものもあるらしい。口寄せ・穢土転生は時空間忍術というよりこちらに分類されるようだ。木の葉にある古本屋で1冊だけ見つけたことがある。著者は二代目火影様だった。まあ簡単な理論しか書いてなくて、よっぽどの才能がある人じゃないと使い物にもならなそうな本であったが。魂に関する忍術はほとんどが禁術扱いされており、市場に出回ることはないらしい。あるとすれば火影邸の禁術の巻物が保管された部屋である。
魂に関する方もなんとかして知識を得ないとと考えていると、お姉さんが本を持って出てきた。
「はい、お待たせ。借りる?」
「ううん。ここで読んでく。他に読みたい人もいるかもだし」
「そう、優しいのね」
そう言ってお姉さんは俺の赤く煌めく髪をぽふぽふと撫でた。今更であるが、俺は髪の色だけは母親譲りであり、毛質、容姿などは全て父親似である。まあ髪の色は多少独特だが、いわゆるジ◯ニーズ系のイケメンになっていた。
俺は図書館の奥まで移動し、本棚と本棚の間にある1人用の椅子に座って本を開いた。
ふむ。時空間忍術には才能が必要であるらしい。簡単なものでは口寄せの術、これができれば少なくとも才能はあるってことか。でも中忍レベルの術か……まだ俺には早いか?一応チャクラ量を上げるために普段から身体を虐めて身体エネルギーと精神エネルギーは上げているが、それでもまだ早いだろう。まずは下忍レベルの術をいくらか習得しなければな。
「ちょっといい?」
「うわあ!!!」
思わず大きな声を上げてしまった。周りの人からの目線が刺さる。
「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだけど……」
申し訳なさそうに言う声の主を見ると、サラサラした黒髪に真っ黒な眼をした俺と同じくらいの歳の男の子が立っていた。
「ああ、いや、別に周りを気にしてなかった俺も悪いし……ところで何の用?」
そう聞くと、男の子は俺の隣に立てかけてある脚立を指差しながら言った。
「それ、貸してもらいたいんだけど」
「ああ、俺は使ってないからご自由にどうぞ」
そう言うと男の子はありがとうと言って、脚立を本棚の前まで運んで本を探した。あの場所は手裏剣術の本がある。俺は少年の背中にうちわの紋様が刻まれているのを見て、うちは一族の者だと認識した。
確か原作じゃうちは一族はうちはサスケを残してうちはイタチが全滅させたんだっけか。イタチがサスケだけ残した理由もなんかワケわかんない理由だった覚えがある。
まあ今のところ関係はない。俺はなるべく原作に関わることなくこの世界を出て行くつもりなのだから。彼には悪いが俺は関わるつもりはない。そうして俺は手元の本に再び目線を落とした。
時空間忍術とは大きく分けて2つの種類がある。1つは自分以外のものを時空間から出し入れするもの。もう1つは自分自身を時空間から出し入れするものであるらしい。前者は才能さえあればある程度は使いこなせるようになるらしい。しかし後者になると術の会得難易度が跳ね上がり、自分自身の身体感覚、繊細なチャクラコントロールが必要となるらしい。
また、理論上は空間を無理矢理こじ開けて直接2世界間の干渉を可能にする忍術もあるらしいが、これは血継限界レベルの術らしい。
なるほど……これからはチャクラコントロールの修行も必要だな。確か木登りの行と水面歩行の行がこれにあたるはずだ。
そして一通り本を読み終えると、本の裏表紙に見覚えのある顔があった。
著者:波風ミナト
ま じ か
どうやらこの世界での俺の父親は時空間忍術の使い手だったらしい。確かに思い返してみれば家で飛雷神とかなんとか言ってたな。帰ったらちょっと聞いてみるか。
そして本を閉じて顔を上げると、先ほどのうちはの子どもが立っていた。
「どうした?まだ何か用?」
「いや、それ君のお父さんの本でしょ?なんで直接お父さんに訊かないで本なんか読んでるのかなって」
「これが親父の本だって知らなかったんだよ。じゃ、もう俺行くから」
俺はポーカーフェイスな少年との会話を手短に済ませると、さっさと外へと出た。あれ、そういえばなんでアイツ俺の父親が波風ミナトだって知ってんだ?
外に出ると、父さんがいた。
「あっ……父さん」
「アサヒ……母さんに嘘をついただろう」
俺はその言葉に大きく動揺した。感づかれてたか。ヤバイ。どうしよう。
「……」
「アサヒ、理由がどうあれ親に嘘をつくのはよくない。さあ、帰って母さんに謝ろう」
「……うん」
俺は小さく頷き、父の手を取り家に向かって歩き始めた。
「……」
「……」
俺は下を向きながら歩いているため、父さんの様子を見てとることができない。ただ、どうやって言い逃れしようかとばかり考えていた。
「……アサヒ」
「……はい」
「何か僕たちに隠してることがあるね?」
俺のしてたことはすべてお見通しってことか。流石は木の葉の黄色い閃光の二つ名を持つだけはある。
「……」
「言いたくないんだったら言わなくてもいい。君は賢い。何か考えがあってのことなんだろう。ただ、これだけは覚えておいてほしい」
そうして俺が顔を上げると、父さんは柔和な微笑みを顔に浮かべながら言った。
「なにがあっても、父さんと母さんは君の味方だよ」
そう言うと自分の言葉に恥ずかしくなったのか、父さんははにかんだ。
俺はなんとなく嬉しくなって、今度はまっすぐ前を向いて家へと向かった。