一楽の件から2ヶ月ほど経過した。あれから2回ほどあのラーメン屋には行ってるのだが、アヤメが出てくることはなかった。最近になって隠れている人の気配が感じ取れるようになったので、物陰に隠れてこちらを見ていることだけはわかったのだが。まあ悲しいですよ、ハイ、ここまで避けられるとは思ってませんでした。まあ一楽はラーメン(父さんのを一口もらった)もつけ麺も美味いから定期的に来ようとは思っているけど。
とりあえず風の性質変化のコツをアスマさんからなんとか聞き出したので、今は演習場に来ています。あとは風のチャクラを忍術として完成させるだけだからね。
まずは手っ取り早く、風の性質変化の入門編である風遁・大突破をやってみるか。
俺は大きく息を吸い込みながら印を組み、チャクラを練り上げ思いっきり風を口から吹き出した。
あ゛
ヤ バ イ
俺が起こした風は木々を木っ端微塵にし、岩をキレイにくり抜くように削り、数百メートル先まで全てを吹っ飛ばした。
おい!こんなになるなんて聞いてねえぞ!本で読んだ限りじゃ風遁・大突破の効力は主として相手の動きの妨害、高度な術者に限って副次的に刃のような攻撃ができるってだけだったはずだぞ!
「くっそ……どうすんだよこれ……」
俺は舌打ちをしながら呟いた。この後は父さんの四代目火影就任の式典に出席しなきゃいけないってのに……マジ笑えねえ。
「これ、君がやったの?」
後ろから声をかけられた。つーか俺背後から突然声かけられること多くね?もう驚くこともなくなったわ。まあ気配が分かっていたっていうのもあるけど。
「ああ、そうだよ。なんかミスったみたい」
そう言いながら俺が後ろを向くと、2人の少年がいた。1人は俺よりも少し年上っぽい天パ×黒目の奴。もう1人はいつか図書館で会った少年だった。
「風遁・大突破をこれほどの規模で起こすなんて、流石は四代目火影のご子息だな」
天パの方が俺の術の痕を見て言った。
「やっぱりあれは風遁・大突破だったのか?本で見た効力と大分違うんだけど」
「ああ、俺も驚いたけど、あれは確かに風遁・大突破だ。ここまでの規模になったのはチャクラの量……というよりも風のチャクラの質をかなり高めた結果だろう」
「シスイさん……まさか」
図書館で会った少年が天パの方に声をかけた。そうか、天パの方はシスイと言うのか。どっかで聞いたことある気がするけど……。
「ああ、この間な、開眼したんだ」
そう言うとシスイの目が3つの勾玉紋様に地の色が赤いものへと変化した。写輪眼ってことはこいつもうちは一族か。
「やっぱりすごい、シスイさんは」
「俺なんてまだまださ。それに実際元々持って生まれた才能ならお前の方が上だと思うぞ」
完全に蚊帳の外になってしまった俺はどうすればいいのか分からず困ってしまった。それに気づいたシスイは俺に自己紹介をしてきた。
「ああ、ごめんごめん。俺はうちはシスイだ。んでこっちが……」
図書館で会った少年も、シスイに肩に手を置かれて気づき、自己紹介した。
「俺はうちはイタチ。よろしく」
なん……だと……
S級犯罪者キターーーーーーーーーー!!!!!!
僕の人生詰みゲーワロタ。
「どうした?」
俺が黙り込んでしまったのを不審に思ったシスイが聞いてきた。あれ?そういえば原作ではシスイってイタチに殺されてたよな?笑えねー
「いや、なんでもない。俺は波風アサヒ。よろしく」
「わざわざ自己紹介しなくても【木の葉の黄色い閃光】の息子の名前くらい誰でも知ってるよ」
シスイは笑いながら答えた。ああ、こんないい人が10年後くらいには殺されるのかと思うと切なくなる。
「そういえばイタチとアサヒくんは同い年だっけ?」
「ああ、そのはずだよシスイさん」
「だから『さん』を付けるのはやめてくれって……アサヒくん、できればコイツと友達になってくれるとありがたい。どうもイタチは友達が少ないらしくてな」
シスイはイタチの頭をぽふぽふと叩きながら言う。あ、イタチがむくれてる。なんかおもしれえ。
俺が笑うと、イタチは更に不機嫌そうな顔になった。思ってたより表情豊かじゃねえか。というよりも、このイタチまだ闇堕ちしてないんじゃないか?そういえば原作でもサスケが小さい頃はいいお兄さんだったよな。
「とりあえずよろしく、アサヒ」
イタチがムスッとしたまま手を差し出してきた。俺はイタチがまだ悪い奴ではないと認識し、笑いながらその手を握る。
「こちらこそよろしく、イタチ」
「はっはっ!仲良くしてくれよ。ところでアサヒくん、この後はお父さんの火影就任式典だろう?この演習場は俺たちがやったことにしてあげるから、早く行っておいで」
「え!?悪いですよ」
俺がシスイにそう言うと、イタチが口を開いた。
「火影就任式典の日にその火影の息子が問題を起こしたとなっては良くないだろう。その代わり……」
イタチは無表情のまま続けた。
「貸し1だ」
「そんなこと言ってるから友達できないんだろ」
シスイがイタチの頭を小突く。俺はまたおかしくなって笑った。
「わかった!ありがとう!この借りはいつか返すよ、イタチ」
俺は小突かれてまたムスッとしたイタチと笑っているシスイに手を振りながら、走ってその場を後にした。
「父さん」
俺は金髪の男に声をかけた。その男の羽織には【四代目火影】と紅い文字で描かれている。
「なんだい?」
「もし未来に罪を犯すと分かってる奴がいたとしたら、父さんならどうする?」
俺は先ほど火影就任の式典を終えた父親に問いかけた。大して深い意味はない。ただ、気になったのだ、火影の答えが。
「どうしたんだい急に……そうだね、僕なら全力で止めるかな」
「それは殺すってこと?」
「いや、違うな。その方向に行かないように頑張るってことだよ」
「それでも止められなかったら?」
俺がしつこく訊くと、父さんは少し顔を引き締めた感じにして口を開いた。
「それでも僕は決して諦めないよ」
少しの静寂。そして父さんは頭をポリポリと書きながらはにかんだ。
「いやー、今読んでる小説の主人公のセリフを借りようと思ったんだけどね、ちょっと上手く決まらなかったかな」
そう言いながら、父さんは椅子から立ち上がり、本棚から一冊の本を取り出した。その本の表紙には『ド根性忍伝』と書かれていた。
「この小説の主人公なんだけどね、頭もあまり良くないし忍者としての才能にも恵まれたわけじゃないんだけど、決して諦めないド根性で運命を切り開いていくっていう物語だよ。君も暇なときに一度読んでみるといい」
「へえ……わかったよ」
「ところで君、今日演習場をめちゃくちゃにしただろう」
「うっ……」
突然の詰問に思わずどもってしまった。イタチの野郎、結局バラしたのか?
「今日うちは一族の少年2人が謝りに来たらしいから式典の後に見に行ったけど、あの演習場の荒れ方は風のチャクラのものだ。しかもかなり高練度のね。あのレベルの術だとアスマやカカシ、ダンゾウさまとか片手で数えられるくらいしか考えられない。でもその人達が子どもに罪をなすりつけるとも思えないから君だってわかったわけだ」
まあ確かにそうか。だって聞いていた効果の数倍くらいの力が出たからな。
「まあ君が罪をなすりつけるような子じゃないとは思うから向こうの好意でやってくれたんだろうけど、今度しっかりお礼をしておくことだね」
「はい……ごめんなさい」
俺は首を垂れた。するとガチャっと玄関が開く音がした。
「ただいまー!ミナト、アサヒ!来て!」
母さんの声だ。いつもよりどこか興奮の色を含んでいる。
「どうしたんだろう?アサヒ、一緒に来なさい」
そうして父さんと一緒に母さんのもとへ行くと、母さんはお腹に手を当てながら言った。
「ミナト……できたってばね!」
父さんはキョトンとしていたが、少しの間をおいてハッとしたように答えた。
「できたって……そういうこと?」
「うん!子どもができたってばね!」
「おお!2人目だ!やったねクシナ!」
歓喜する2人を見ていると、母さんが俺に声をかけてきた。
「アサヒも、お兄ちゃんになるから、よろしくだってばね!」
その瞬間俺は全てを悟った。ああ、子どもがもう1人できるのか。俺は兄になるのか、と。
「名前はどうするの?」
俺は2人に訊いた。すると父さんが答えた。
「いい案はあるんだけど、まだ男の子か女の子かもわかってないから、決められないかな」
「あ、そっか」
俺がそうだったと言うと、2人は笑った。俺もそれにつられて、笑ってしまった。
「じゃあ今日は僕が赤飯を作るよ。クシナはあまりムリをしないようにね」
俺はそう言って台所に向かう父さんを見送りながら、少しの不安をかかえて、これから生まれてくるであろう命に思いを馳せるのであった。
そろそろ主キャラとの関わりが増えてきました。オリキャラもそのうち出します。