somethingをつかめ!   作:とまってみえる

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日常

練習試合があった日から二日後、監督からの命令で本広、荷田の二人は他校の偵察をするために特別に外出することを許され、偵察も終わり学校へと帰る途中にあった。

 

「データも取れたしさっさと帰ろうか」

 

「おいらちょっと買い物によりたいとこがあるでやんす...」

 

「...荷田くん、君の気持ちはわかる、わかるんだけどそんなわけにもいかないんだよ」

 

「でも貴重な外出でやんすよ?どうせ先輩達の世話でやん...あれ?あのカップル...男の方は星英の天道でやんす!」

 

荷田は今いる道のすぐそこを歩くカップルに指を指して本広へと伝えるが、その事に気づかれた気がしたので荷田を急いでやめさせるが時すでに遅し。

 

「え...ええと君は誰だっけ?」

 

荷田のことを気づかないわけもなく、天道は困惑した状態で質問してきた。

 

「親切高校のものでやんすよ。おいらは初対面でやんすが」

 

「...こないだの練習試合で一応」

 

天道もあまり興味なさげであったがとりあえず会ったことの意を伝えると天道は思い出したかのように口を開いた。

 

 

「あっ!君はたしか代打で出てきた人だよねたしか名前は...えーと」

 

少し考え込んでいたので名乗ることはせずに天道へと話しかけた。

 

「何、次会ったときに嫌でも思い出させてやるよ。ちょっと待ってろ」

 

「あははは...名前を覚えるのは苦手で...でも君から打たれたヒットは忘れてないよ。あれだけ捉えられれば」

 

おとぼけ、というよりほんわかな話し口調の天道はその時だけは闘志を感じられるオーラが出ていたことに、本広は気づいていた。少し、話の長さに痺れを切らしたのか天道と一緒にいたピンクの髪の女の子が言葉を発した。

 

「ね~翔馬、早く行こうよ。映画に間に合わなくなっちゃう」

 

我に戻ったかのようにはっとした天道に本広は突っかかる。

 

「まさか練習サボって彼女とデートか?いいご身分だなこのこの~」

 

「今日は練習休みなんだよ。オレとしては練習していたほうが落ち着くんだけど」

 

「練習メニューならあたしがしっかり管理してるじゃない。マネージャーを信用なさいって」

 

マネージャーということに驚きつつも笑って天道へと語りかける姿は、お互いに選手とマネージャーという関係ではないことを物語っていた。

 

「ハハハ、そうだな若菜。じゃあさよなら、駒月高校の貞島くん」

 

「名前間違ってんぞ!......あれ?」

 

そそくさと映画を見に行った二人を見届けつつ本広、荷田の二人は今の心境を語る。

 

「さっきの話からするにあのかわいいマネージャーと二人っきりでデートしてるってことでやんすよね」

 

「休日を返上して先生や先輩にしごかれる中、あいつはかわいい彼女と二人デートか...そう考えるとスゲー腹立つわ~」

 

お互いチームの野球部の愚痴をいいつつ学校へと帰宅する二人。天道のもつスター性を羨ましがりつつ、飽くなき闘争心を一人抱く本広であった。

 

 

 

 

 

いつもの学校生活が始まり、そろそろ目の保養が欲しくなった本広は女子寮へと向かった。

 

 

「わざわざここまで来なきゃならんのは少しだるいなぁー」

 

と嘆いていると少し寒気がした。何故?と自分自身で疑問を抱いていると、草むらよりいきなり神条が現れた。

 

「なら来なきゃいいだろう...君も懲りないな」

 

「あ、神条さん。まさか僕が来るのを待っていたのか?」

 

見つかってならない人にばれてしまうが可愛いものを見てしまうとそんな考えは更々なくなってしまっている。

 

 

「む、私の名を覚えてるあたりカラス並みの記憶力はあるみたいだな」

 

「バカにしてんな?それ」

 

「いやバカにはしてない。カラスは鳥の中でも頭がいいことは有名だぞ」

 

「褒められて...る?」

 

真面目な口調で語りかけてくるが、確実に悪意の笑顔を向けていたと感じたので図にのらないことにした。

 

「いや、鳥の中でって...もうそこだよな?人間と比べられないってどーよ?」

 

「おお!決して頭の回転は悪くないな。安心したよ」

 

今度は確実に嫌みとわかったため本広も別な安心を得た。少し神条のことで笑うとさっさとその場を立ち去るようにしていた。

 

「じゃな、神条さん」

 

手をふり走り出した時、天然なのかただのドジなのかは、わからないが地面に埋もれていた石につまずき、スッ転んでしまう。

 

「(いてて、最悪だ...)」

 

膝を少し擦りむけ血も出ているだろう。野球以外のことでも怪我をしないように細やかな配慮をしていたが、舞い上がっていた今、危機管理を怠っていた。その自分に恥ずかしさと怒りを抱く。すぐ立ち上がろうとすると神条がすぐ横にまで来ていた。

 

「森の中を走るのは危険だぞ。まったく...どれ傷を見せてくれ」

 

言われたままにズボンの裾を上げ傷口を見せると、消毒液とちり紙、絆創膏をポケットから取りだし、軽くだが優しく対処してもらう。

 

「...これでよし。ん?どうした」

 

処置してもらっていることを忘れ、神条に思わず見惚れてたにようやく自分でも気付く。監督生としての立場上、いや規則違反者を見つけた者の対応をきっちりとこなしている。そのために厳しいイメージで捉えていたが、コケてダサいと思われるようなことにも笑いもせずさらには怪我した部分を処置してもらった。そんな優しさを感じられる彼女をただ見惚れてた。

 

「いや、なんでも...」

 

その後反省室ではまた大河内先生に指導を受けていた本広であった...

 

 

 

 

 

「それでは夏のメンバーを発表する」

 

部員全員がこの時を待ち望んでいたのか息を潜める。試合に出たい者が数多くいるなか最高で18人。その中に選ばれるの本当に実力のあるものだけだ。緊張状態の中で本広は一つ心の中で言い続けた

 

「(レギュラーなりてえええ)」

 

心の中で祈願する本広。練習試合をこの日まで何回か行い、口うるさい先輩を何度も圧倒的プレーで黙らせた。理不尽なしごきはいざとなれば反撃できるのもあり、怖くないのであとは監督の発表を待つのみだ。

 

 

 

 

 

 

「元気だすでやんすよ貞島くん」

 

「レギュラーになれねえし、北乃先輩は暴れるし散々な1日だったな昨日は」

 

監督での発表では一年生が選ばれることはなく、同部屋の北乃は選ばれなかったことでやきになり、貞島、荷田に、徹底的に洗濯をやらせた。いつもよりはおとなしめであったものの、理不尽な様は相変わらずで彼の評価は落ちてくばかりだ。

 

「てかなんで選ばれなかったんだ。あんだけ練習試合出してスタメン起用もあったから期待しちまったよ」

 

「ん~強いて言うなら最近貞島くんの素行は悪いからでやんすよ。おいら達からしてみれば男の中の男でやんすけど、先生達からしてみれば立派な問題児でやんすからね」

 

確かにとうなずく本広。プロにおいても素行が悪いと思われる選手はどんなに凄くてもドラフトでは敬遠されたりするのがしばしば。

 

「でも、僕らよりもげっそりした奴がいるなー」

 

わざとらしい棒読みに誰も突っ込むことはない。そんな元気もないのだから。

 

「...こっちは三年生が二人もいたからな。一晩中お通夜みたいになっててよ、俺隠し芸やらされて...」

 

大きなため息をつく官取。彼もまたレギュラーに選ばれなかった先輩に付き合ったため、疲れを取ることはできなかったようだ。同じくといった様に田島と岩田は頷く。

 

「俺もそんな感じだったな」

 

「俺んとこも一晩中愚痴に付き合わされてよ...まったくたまんねえよな~。気持ちはわかるけど」

 

一年生同士で愚痴を言い合う中、いつもはうるさい越後が大人しいため心配してみると、ばたりと倒れこんでしまった。

 

「おい、越後!」

 

「やれ、やれ...だぜ...」

 

「そういえば、こいつの所も一晩中騒がしかったな。ま、一年生だしな、我慢我慢」

 

 

「(...そんなことしてる内はレギュラーなんて、夢のまた夢なんだろうな)

 

 

 

 

 

レギュラーになれなかった悔しさと鬱憤をはらすため、そして女子をみるために女子寮へと向かい、今回も急ぎ足ではあったものの、神条の言ったように怪我をしてしまう可能性があるので繊細な注意を払いながら進んでいた。数分後本広は女子寮へとたどり着いた。

 

「いよおおおし、三回目だぜ。これはもう抜かされん記録の一つになったか?なんてバカ言ってっと神条さんに会っちま...」

 

「......」

 

今回は存在に気づかぬまま出会ってしまう二人。そのためか、本広はもちろん神条もそのことに驚いていた。

 

「どうもよくわからないんだが...どうして私が森に入るとキミはここにいるんだ?」

 

「君がいるからじゃないの」

 

寡黙な口調ではあるが、言葉はどうも驚いているようで冷静に見えるのは外側だけであろう。本広も観念したのか、めんどくさそうに答える。

 

「しかし、不思議なものだな。キミとは何かと縁を感じるよ。きっと前世ではお互い命を狙いあっていたのかも

な」

 

「どうせなら恋仲とでも言ってくれたら冗談でもうれしかったのに...まー、その前世に免じて今回は見逃してくれよな~、頼むよ~」

 

懇願はしてみるものの彼女は甘くないことを知っているので反省室送りは決まったものだろうなと心の中で思っていれば神条は思った通りのことを言う。

 

「私は前世など信じていない性質でね。さっきのは言ってみただけだ」

 

やっぱりなと思いつつ抵抗するのもめんどくさいので本広は大人しく連行されることを選ぶ。

 

「こっちは捕まることはある程度覚悟してるんだ。さあ、どこへでも連れていけぇい!」

 

「うむ!その意気やよし!」

 

制服の第二ボタンをぶちっと取ると本広へと渡す。

 

「今日の記念にこれをやろう。大事にしてくれ」

 

受け取ったはいいものの、第二ボタンの渡す記念のような日でもないので、困惑する本広。

 

「使い道が違うぞ。いや間違っているというわけでもないけどさあ...何て言うかなー」

 

「そ、そうなのか?すまなかった」

 

 

 

 

 

「貞島、お前というやつは性懲りもなくまたやりやがって...後何回やれば気がすむんだ!」

 

「もうやりませんよー。今回はたまたまなんですって」

 

「黙れ!そんな感情の籠ってない言い方で俺を欺けると思うなよ!いいか?お前に大切なのは...」

 

長い説教がまた始まる。

 

 

 

 

 

 

 

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