文章力落ちたなぁ。
少なくとも五ヶ月程前よりかは。
Art 1 クリスマスイブ
12月。午後4時。
俺は35層転移門広場に設けられた喫茶店のテラス席に座り温かいコーヒーを啜っていた。熱い。
「……クリスマスかぁ」
吐いた息が白の雲となり瞬く間に溶けて消える。
つい先程までほろほろと雪が降っていたからなのかとても寒い。
おそらく夜にはもっと降り出すんだろうけど。考えるだけで暗鬱たる気分になる。
「これだから……」
「寒いのは嫌い……」
突如耳元で聴こえた声に身体がビクりと跳ねる。
この声の主を睨みつけるとニャハハハと笑いのけると向かいの席にドカッと座り、手早くコーヒーを注文した。
「……メリークリスマス」
恨みがましげに言うと。
「メリークリスマスだナ♪」と楽しげにニヤニヤと笑いながらと無駄に可愛らしく言った。
「……はぁ」
溜息を吐いて最後のコーヒーを喉に流し込んだ。
「……で」
「お待たせ致しましたー」
ウェイトレスのNPCが俺の声を遮り女――アルゴのコーヒーを机上に置いて去っていく。
「……おい笑ってんじゃねぇよ」
「笑ってない笑ってない」
「笑ってんだろ」
「笑ってないヨー」
「笑ってんだろ」
「笑ってない」
「真顔!?」
閑話休題。
「……んで、手に入ったんだろうな」
気だるげに問うと。
「手に入ったケド……売りたくはないナァ」
いつもの調子で喋りながらもその声音は、その顔色は泣きそうだった。
「だろうな、けど、アルゴ」
「わかってるよ……貸しを返せっ……ダロ?」
一瞬だけ見せた素の声。俯いた。
「……渡す前に1つだけ教えてクレ」
俯いていた顔を上げて力強く問うた。
「……なんだ」
「タクトは、会って、どうするんダ……?」
俺はその質問に――答える事は出来なかった。
同日午後9時。同層。《迷いの森》
ラビットファーで装飾された黒灰色のコートに身を包みその上に1振りの剣とその鞘。
1歩雪を踏みしめる旅に腰から下げたチェーンやベルトがチャリチャリと音を立てる。
実体化させた地図には迷いの森の地図が映されている。
数分間隔でエリアの繋ぎ目が変化する。
簡単に言うとワープポイントが変化する。
だから、変化するその前に移動するしかない、地図が無ければ出るのすら一苦労だろう。
「グルルル……」
モンスターもでるのだしな。
「ウラアアアアアアアア!!」
凄まじい金属音。
雪が捌けた地を蹴って懐に跳び込む。
右手を下げると右手に持った剣が黄色に発光し剣が目にも止まらない速度で打ち出された。
片手用直剣三連撃ソードスキル「シャープネイル」
全ての攻撃を終え硬直が生まれる。
「ギギギギギ!」
元々狂った瞳を持った聖人――ニコラスの瞳が更に狂った様に色を変えてグリグリと両の目が違うところを捉え続けニコラスの頭上に表示されたHPバーがぐぅぅん、と減少し終にはHPバーが消滅した、直後。
ニコラスが不自然な体勢で硬直し――四散した。
「……はぁ……っ……はぁ」と肩を上下させながら剣を握り締めたまま硬直を続けること凡そ数秒。
そして視界に紫色のリザルトウィンドウが表示される。
経験値、通貨のコルそして――ドロップアイテム。
サンタクロースの袋、総称などに目もくれずその中身を漁る、肉、古の金貨、見たこともない武器、防具、高価な回復アイテム。そして、その中の還魂の聖晶石に手が止まった。
還魂。
還る魂。
震える指でそのタブをクリックし実体化タブをクリックする。
実体化されたソレを両手で強く握る。
喉で声がくぐもり反響する。出てもおかしくはないのにその言葉はなかなか出てはくれない。
「んっ……ぁっ……」
何かが突っかかった様な喉をんぐんぐと動かしてようやっとその名を出す。
「サ……チ……」
震える手でもう一度タップしてアイテム説明を開く。
死亡後10秒
「っ……ぁっ」
視界が滲む。
死亡後10秒以内。
その時間制限は、あまりにも速すぎて、遅過ぎて、2度と彼女を見ることが出来ないとただ一つの希望だった、石ころに突きつけられた。
「っあ……うっ……ああっ! ああ!」
石を地面に叩きつける。
「っああ! あああ! あああああ!」
石を、脚で幾度となく踏み付ける。
掴んで木に投げつける。
けれど、蒼石には傷一つとして付いてはいなくて。
それがこの行いどころか今までの行いも全てを否定された気がして。
俺は、膝から地面へなだれ落ちた。