作品内では人へと転生した機龍が主役です
義人「機龍ぅぅぅぅ!」
空中に投げ出された男性がそう叫ぶ先で、怪獣王を抱えた鋼鉄の龍
『機龍』が水しぶきを上げながら、海中へと没しって行った。
機龍『SAYONARA YOSHITO』
そう思いながら、機龍は海中深くに、ゴジラと共に沈んでいき、
眠りにつく……はずだった。
次に機龍が目を覚ました時
そこはどこかの部屋の中だった。
機龍『……どうして?僕、眠ったはず』
機龍は上から当てられた照明の光に顔をしかめ、遮るようにゆっくりと
右手を翳した。その時、機龍は違和感を覚えた。
『これ……義人と同じ手?……何で?』
それは人の手だった。やがて機龍が頭を巡らすと、近くにあった
鏡が機龍の顔を映した。
見るからに龍だった顔は消え、首元まで伸びた銀髪、黄色味がかった瞳、
頭から枝分かれした2本の癖毛を持つ、大体7、8歳くらいの顔をした
少年の顔が映し出されていた。
『これ……僕?……』
それを見て、立ち上がり、ベッドから降りた機龍。
今の機龍は病院の手術着のような物を着せられていた。
立ち上がって辺りを見回していた時、無機質な部屋の扉が開いて、誰かが入って来た。
???「やぁやぁ!お目覚めかな!?」
入って来たのは二人。
一人は機械のうさ耳をした格好の女生と、機龍と同じような銀髪の女の子だった。
機龍「……誰?」
首を横に傾げる機龍。今の彼の中にはその人物のデータが入っていなかった。
少なくとも、自分の最もたる友人の義人ではない。
束「うん?相手に名前を聞くときは、自分から名乗るのが礼儀じゃないのかな~?」
機龍「僕は……3式、機龍」
束「ふ~ん、機龍君かぁ~……。それでは、私こそ!世界に名高い天才!
篠ノ之束である!はい、拍手!」
『シ~ン』
……ぽく、ぽく、ち~ん……。どこかで木魚の生る音が聞こえた後
束「も~~!何でしてくれないの拍手!?」
クロエ「いえ、それが当たり前ですから。」
束「クーちゃんもひどくない!?」
クロエ「申し遅れました、私はクロエ・クロニクルです。どうぞよろしく」
束「さらに無視とかひどくない!?……ふぅんだ、良いもん、お姉さんもう
拗ねちゃうもん」
と言って部屋の隅で体育座りを始めてしまう束。
それを無機質な瞳で見つめている機龍。
機龍『こんな人間もいるんだ』
これまで人を見る事しかしていなかった機龍にとっては新しい感じの
人種だった。
「それで、ここ何処?」
クロエ「ここは私達2人が生活しているしせ……」
束「秘密基地だよ!」
クロエ「だ、そうです……。はぁ……」
隅で座っていたが復活してそう言う束と、それを見てため息をつくクロエ。
機龍「……僕は海底で『あの人』と寝ていた……。なんで僕はここに居る?」
クロエ「実は、数日前にこの人がレーダーで日本海に沈んでいる
未知のエネルギーを発見したので……」
束「さくっと回収してきました!ブイブイ!」
機龍『回収した!?そんな……!?』
「僕のほかに……ゴジラは!?ゴジラは居なかったのか!?」
束「ゴジラ?何それ?私が君を見つけた時は裸の君が海中に沈んでた
だけだったよ?」
機龍『ゴジラが、いない?それに……ゴジラを知らない?そんなはずは……』
「それ、本当?ゴジラ、いないのか?」
『そんな!?そんなはずはない!?あの時確かに……!』
はぁはぁと息を荒らげる機龍。
クロエ「大丈夫ですか?落ち着いて、深呼吸です。吸って、吐いて……」
ベッドに機龍を座らせ、落ち着かせるクロエ。
機龍「そんな、僕は……。ゴジラと、眠りについたはずだったのに……
何で起きて……『人になってるんだ』」
束「ん?んんん!?今の最後の言葉はどういう意味かな機龍君!」
ずいずいっと機龍に顔を近づける束。
クロエ「待ってください!今彼は混乱しているんですから、あまり不安を
煽るような事は控えてください」
束を強引に押しやって、機龍を落ち着けるクロエ。
そして数十分後
「落ち着きました?」
機龍「うん……」
クロエ「できれば、私達に教えてください……。あなたが何者なのか?
できますか?」
機龍「わかった」
掠れた声で返事をした機龍。やがて語り出したのは
自分の記憶……。核によって生み出され、消えた一番最初のゴジラ、自分……。
やがて再び目覚め、銀の龍……機龍となって同族と戦い……
一度はそれを退け……二度目の決戦の最後に自分の自我が戻り……
義人と別れを告げ、同族と共に海中で眠りについた自分の過去を……。
それを聞いた束とクロエは身勝手な人に生み出され、翻弄され、
同族とまで戦った機龍の話を聞きながら涙を流した。
特に、束はハンカチを片手にわんわん泣いている。
そして機龍自身も
「義人……会いたいよぉ……義人ぉ」
自分を整備し……最後まで共にいてくれた大切な人、中条義人。
そう思いながら機龍も涙を流した。
束「うぅ……何て、なんて儚いなお話……!おいで機龍ちゃん!お姉さんの
胸で泣いて良いんだよ!」
そう言われ、束の抱き着いた機龍は声をあげながら泣いた。
それはまるで、全てから解放された子供のようだった。
暫くして、落ち着きを取り戻した機龍。
クロエ「機龍?もう大丈夫なのですか?」
機龍「うん……もう大丈夫……ありがとう。」
クロエ「そうですか……。それにしても、解せない話ですね……。
核で生み出され、苦しめられた挙句……、死して今度は兵器にされて同族と
戦わされるなど……、私だったら願い下げです。」
束「ホントホント。ひどい話だよね~」
機龍「それでも、義人は機龍に優しくしてくれた……義人……」
束「機龍君はその人が好きなの?」
機龍「うん、機龍、義人好き」
その発言を聞いた束は勝手に妄想を始めてしまった。
~束妄想中~
少年機龍と再会した義人。
義人「機龍!?お前、機龍か!?」
機龍「そうだよ義人、会いたかった。」
義人「俺もだぜ!」
そう言ってハグをする機龍少年と義人。
しばらくすると顔を赤くし、トロンとした目の機龍が義人を見上げた。
束『ぐへへ......そして次は少年機龍と義人の...♪』
と考えた瞬間。
『スパァァァン!』
「痛ったぁぁぁぁぁ!」
後ろには、今しがた束をぶっ叩いたハリセンを持ったクロエが立っていた。
クロエ「何か破廉恥な事を考えて居そうだったので、とりあえず引っ叩いて
おきました」
束「予測でお姉さんを叩くの禁止!」
クロエ「では、今さっき頭の中で考えていた事を口に出して、大きな声で
教えてください」
束「ゔ!?そ、それは……」
クロエ「それは?」
するとクロエに耳打ちをする束。
それを聞いたクロエは耳まで真っ赤にして。
「何てことを考えているのですかあなたは!?信じられません!?
と言うか、やっぱり如何わしい事だったじゃないですか!」
束「仕方ないんだ!束さんの腐女子脳の一部はどうしても先ほどの
言葉に反応してしまうんだよ!」
クロエ「だったら今すぐその頭をかち割って脳みそを修正してあげます!」
と言って何処からか調理用のフライパンを取り出すクロエ。
束「ちょっとクーちゃん!それを水平に喰らったら私の頭が壊れちゃうよ!?」
クロエ「違います!これは垂直に振り下ろすんです!」
束「それってますます危ないよ~!」
と言いながらドタバタと機龍そっちのけで鬼ごっこを始める束とクロエ。
それを見た機龍は。
機龍「ふふ...あはははは。」
小さくはあるが、確かに笑い出した。
しばらくして鬼ごっこも終わり落ち着いた束とクロエ。
その後、束によって体を調べてもらった機龍。
クロエ「どうですか?彼は?」
束「驚く事ばっかりだよ……。あの子の体、中身は機械と筋肉が
融合したみたいなってるね……。骨格自体は人だけど……強度が
人間のそれとは大違いだ。戦車砲を生身で喰らったって無事な強度だよ」
クロエ「ゴジラの強度、ですか?」
束「そうとしか考えられないだろうね……それに、どうやら機龍は
『元の姿に戻れる』みたいだね。細胞が形状記憶合金の役割をしているみたい」
クロエ「それはつまり、60メートル級のサイズに戻れる、と言う事ですか?」
束「ううん、サイズ自体は大体5,6メートルまで。でも武装も
ちゃんと備わってる。口と胴のメーサー砲に右手のドリル、両手のレールガン、
体のスラスターに武装兼用のバックパックまでね」
クロエ「彼は、人と龍の姿を使い分けることができるのですか?」
束「たぶんね。……でも、本人は戦う気はないみたいだし、よほどの事が
無い限りはあの姿にはならないでしょ」
2人がそんな事を話していた時、機龍はふと、部屋の隅に置かれていた
物が気になった 。
布がかかっていて何かはわからなかった。
束『あぁ、それはISだよ。』
その時、スピーカーを通して束の声が聞こえてきた。
機龍「IS?...束が作った?」
束『そう!この天才束さんが一から作り上げた傑作である!』
と、部屋で息巻いている束を無視して布を取っ払う機龍。
そこには薄汚れたISが転がっていた。
『リュウ君、さっきからどうしたの?』
機龍「少し……何だか、ここから呼ばれたような……そんな気がして……。
それより……リュウ君って僕の事?」
束『そうだよ……あ。後それは束さんが初期の頃に作ったISの試作品だよ。』
クロエ『って、何でこんなことろに第一世代を置いたまんまなんですか!?』
束『いや~、処理がめんどくさくて……テヘペロッ♪……ごめんなさい、だから
そのチェーンソーをしまってください』
そんな風にコントをしている二人を無視して機龍がISに手を伸ばして
触れた時。
ISから機龍の中に情報が流れ込んできた。そして次の瞬間……。
機龍はISを纏ってしまった。
機龍『成程……これがIS……』
この時、機龍はISの生みの親が束なのは知っていたが、男性がISを
動かせない事を知らなかった。
束『って!?束さん達が目を離した隙に何てことしちゃってるのリュウ君!?』
クロエ『これは!?男の機龍がISを!?』
機龍「?……驚いているの?」
束『……あぁ!?ISが男は動かせない事説明するの忘れてた~!』
クロエ『って!実際に動かしてるのを前にそれ言っても遅いですから!』
その後、再び検査されてしまった機龍だった。
それでも……。
束「ダメだ~……。この天才を持ってしても理解できないよ~
クーちゃん頭マッサージして~」
クロエ「はいはい……。それにしても、どうして機龍がISを動かせたの
でしょうね?」
束「あ~多分だけど、機龍は外見は男だけど、中身は無性みたいなもんだからね……、
そこが関係してるんじゃないかな~……。まぁ、わかんないけど……」
結局機龍がISを動かせた理由はわからないまま、検査は終了。
機龍は束たちと共に生活することになった。
こうして、何の因果か、知らずのうちに異世界に迷いこみ、人となった
機龍は第二に人生をどのように歩むのだろうか?
鋼鉄の銀龍 プロローグ END
プロローグは原作開始前、モント・グロッソの事件後、
一夏がISバレする前です。