インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

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今回はほのぼの系です。あと、もう本編が完結してるので、日常編は
ホントに日常しか描きません。バトル描写は皆無です。
アイデアが出る限りは続きますが、投稿頻度は低いと
思います。



日常編第5話 『新たな家族』

それは、いつも朝の事だった。

3式機龍こと篠ノ之機龍は、いつも通りに

寮からIS学園校舎へと続く通学路を簪や

セシリアと歩いていた。

 

一夏「お?おはよう機龍」

そして、そんな彼らに気づいて後ろから

追いついて来た一夏や箒たち。

機龍「あ、おはよう一夏お兄ちゃん。

箒お姉ちゃん達も」

箒「あぁ、おはよう機龍。みんな」

挨拶をかわすと、再び歩き出す機龍や一夏達。

一夏「にしても、昨日の雨凄かったな~」

セシリア「そうですわね。風も強かった

ですし」

と、昨日の夜の天気の話をする一夏達。

鈴「おかげでこっちは寝不足よ。私なんて

音がうるさ過ぎて夜中に目ぇ

覚めちゃったんだから」

一夏「まぁ今朝は晴れたからまだ良いけどな。

あんな大雨の中傘をさして通学なんて、

考えただけでも億劫になるぜ」

シャル「アハハ、確かにね」

簪「確かにびしょ濡れのまま授業は受けたく

  無いかな」

と、談笑していた時だった。

 

   『……ミィ』

    『……ゥン』

機龍「ん?」

どこからか、機龍の耳に、人の聴覚を遥かに

超える機龍の聴覚に、微かな鳴き声のような声が

聞こえてきた。

足を止め、声のした方。海へと視線を

向ける機龍。

一夏「あれ?どうした機龍」

立ち止まった彼に気づいて、一夏達も足を

止め彼に声をかけるが、機龍は声がした方に

目を向けたままだった。

 

そして、一瞬だけそれを見た。

 

それは、波の合間に浮かぶ小さなダンボール。

そしてその淵から顔をのぞかせる子犬と子猫だった。

機龍「ッ!」

   『ダッ!』

それを見た瞬間、機龍はカバンを地面に落とすと海岸線に

向かって、それも常人離れした速度で駆け出した。

一夏「え!?ちょっ!?機龍!?」

   『バッ!』

   『ザッパァァァァンッ』

突然の事に一夏達が戸惑う中、機龍は砂浜から大きく

跳躍して海の中に飛び込むと、かつてのゴジラと同じ

泳ぎですぐさまダンボールの下まで回り込んだ。そして

ダンボールを慎重に下から支えつつ、彼はすぐさま

海岸線まで引き返した。

 

   『バシャバシャッ』

海水をかき分け、海岸線から砂浜に上がる機龍。

一夏「機龍~~!」

そこへ一夏や簪たち、さらに何事かと、他の生徒たちも

集まってきた。

やがて、砂浜に上がってから数歩歩いて波の来ない場所まで

歩くと、機龍は抱えていたダンボールを砂浜の上に

おろした。

   『ミィッ』

   『クゥゥンッ』

ダンボールの中にいた子猫と子犬が、機龍のほうを見て

小さく鳴き声を上げる。

機龍「良かった。間に合った」

二匹が無事な事に、心から安堵した表情を浮かべる機龍。

簪「機龍ッ」

そんな彼の元に歩み寄り、ダンボールの中を覗き込む

一夏達。

鈴「ね、猫と犬?何でダンボールに入って、それも海に

  なんて……」

そのことに戸惑う鈴。

箒「む?これは、防水仕様の強化ダンボールか」

一夏「それで海の上を漂っていられたのか」

ラウラ「まさか、捨て猫と捨て犬か?」

シャル「けど、何だって海になんか」

モーラ「……昨日の天候を考えると、もしかしたら学園島

向かいの町の近くを流れる川のそばに、二匹は

捨てられていた。それが昨日の大雨で氾濫。川の

水がこのダンボールを攫い、結果的に海まで

運んできてしまった。という所でしょうか?」

疑問符を浮かべる二人に答えるように推察を述べるモーラ。

 

そんな中、機龍は子猫と子犬が震えているのに気づいて、

彼は自らが持つエネルギー変換機構を使って毛布を

作りだし、それで子猫と子犬を包み込んだ。

更に……。

機龍「ふぅぅ……」

内なる力を呼び覚まし、自らの体からエネルギーを

熱気として放ち、周囲の温度を上げていく。

子猫と子犬をその熱気が暖める。

暖める事数分。

更に、己が視覚にサーモグラフィーとしての効果を掛け、

子猫と子犬の体温を測る機龍。

  「良かった。低体温症の症状は無いよ」

そこまで調べて、ようやく一安心して発熱機能を

解除する機龍。

 

その後、更にボロボロな段ボールに変わって周囲を透明な

アクリルの壁で覆ったケースを作り出し、そこに布を

敷いてから子猫と子犬を入れる機龍。

 

箒「しかし、この二匹は運が良かったのかもしれないな。

  もし機龍が気づかなければ……」

ケースに入れられる二匹を見ながら静かにつぶやく箒。

一夏や鈴が彼女の言葉の意味を考え、身震いする。

一夏「あぁ。マジで機龍が見つけて無かったら……。

   最悪な事になっていただろうな」

彼の言葉に、セシリア達が頷く。

ラウラ「しかし、この二匹はどうする?」

シャル「う~ん。とりあえず教室に行かない?

    それにミルクか何かもあげた方が良いんじゃ

    無いかな?きっとお腹をすかせてるよ」

モーラ「そうですね。私、食堂の人からミルクか  

    何か貰ってきます」

機龍「うん。じゃあ僕たちはとりあえず教室に」

そう言って、ミルクを取りに行ったモーラ以外は

子猫と子犬を連れて教室へとやってきた。

 

教室に入り、机の上にケースを置いた機龍は、まず

子猫を優しく取り出してその胸に抱く。

  『ミィ、ミィ』

機龍を見上げながら子猫が小さく鳴く。

  「ごめんね、少しだけ君のことを見させて」

そう言うと、視覚を強化した機龍は改めて、子猫に

異常が無いかを調べ始めた。

それを近くから見ている一夏たち。そこへ……。

 

本音「ね~ね~おりむー。あの猫ちゃん達って

   どうしたの?」

猫たちをつれて入ってきたのを訝しんだのか、

本音や数人の生徒が彼らに近づいて声を掛けた。

一夏「あぁおはよう布仏さん。あれはさっき機龍が 

   拾ったんだよ」

静寐「拾った?どこで?」

箒「先ほどまで、あの二匹は防水仕様の強化ダンボールに

  入れられたまま海の上を漂っていた。

  モーラの話では、昨日の大雨で対岸の街の  

  辺りから海へ流されたのだろう、との事だ」

ラウラ「そして、海の上を漂っていた二匹を機龍が

    見つけ、保護したという訳だ」

本音「そんな事あったんだ~。でも、助かって  

   よかったね~」

そう言いながら、ケースを見ようと機龍の机の

前に屈み込む本音。

 

そして、話をしている間に機龍は子犬の検査の方も終え、

二匹をケースに戻した。

一夏「どうだ機龍?」

機龍「肉体的な怪我や病気の兆候などは一切なし。

   雨ざらしだった事と空腹で少し元気が無い

   けど、それ以外は問題なしだよ」

そう言って、安堵した表情を浮かべる機龍。

彼の言葉に安堵した一夏達は、改めて子猫と子犬に

目を向けた。

 

一夏「猫の方は、黒に白と茶色だから三毛猫か」

箒「あぁ。犬のほうは、柴犬だろうか?」

簪「どっちも、まだ生後一か月くらいだね」

セシリア「ひどい話ですわね。こんなにも可愛いのに、

     捨てるなんて」

と、同情の言葉にラウラ達がうなずく。

そんな時。

   『ミィ、ミィ』

子猫、三毛猫の方がカリカリとケースを引っ掻いている。

それを見た機龍は……。

機龍「……」

   『パカッ』

無言でケースを開け、三毛猫を机の上に置く。

   『ミィ』

三毛猫は机の上をトテトテと歩き回り、機龍が指を

差し出すとそれに体をすり寄せ、ペロペロと指先を

舐める。

   『クゥゥン』

柴犬も、やがて恐る恐るケースから出てきて、機龍の

前でお座りする。それを見た機龍が、左手で

柴犬の頭を撫でる。

三毛猫や犬をやさしく撫でながら、笑みを漏らす機龍。

そして……。

 

  「大丈夫。もう、大丈夫だから」

 

そういって、聖母もかくやと言わんばかりにやさしい声色と

表情で三毛猫と柴犬に語り掛ける機龍。

そこへ。

モーラ「機龍」

食堂の方にミルクを貰いに行っていたモーラが戻ってきた。

その手にしていたミルクはすでに哺乳瓶に入れられ、ある程度

温められていた。

機龍「ありがとうモーラお姉ちゃん。お姉ちゃんはそっちの

   柴犬の子をお願い。こっちの三毛猫の子は僕が」

モーラ「はい」

そう言って、二人はそれぞれ胸に仔猫と子犬を抱くと、

二匹にミルクを与え始めた。

 

二匹とも、お腹がすいていたのかすぐにミルクを

飲み干してしまった。

食事を終えた二匹をケースに戻す機龍とモーラ。

すると丁度その時、千冬と真耶がやってみた。

千冬「ほら。全員席に着け。朝のHRを……」

と、言いかけて二匹に気づく千冬。

それを見た彼女は……。

  「……理由を聞いてやる。誰か説明を」

機龍「えっと、実は……」

 

数分を掛けて説明する機龍。

 

千冬「なるほど。事情は大体分かった。

   しかし授業中に鳴かれては話にならん。

   ……とりあえず、束の邸宅にでも置いてこい」

機龍「え?良いんですか?その、追い出したり、

とかは……」

千冬「学生寮にペット禁止の項目はないし、奴の家なら

   問題無いだろう。それより、授業が終わる前には

   戻ってこいよ?」

機龍「は、はい!ありがとうございます!」

そう言うと、機龍は二匹を入れたケースを手に一旦教室を

後にした。

 

そして一旦は束とクロエに事情を説明して三毛猫と

柴犬を預かって貰った。

 

更に時間は過ぎてお昼時。機龍は一度束の邸宅に

戻ってから一夏達と共に屋上へと向かった。

そこでは一夏を始め、簪達や楯無、マドカや

クロエと言った面々が集まっていた。

ケースから出された三毛猫と柴犬を囲む機龍達。

二匹には、先ほど機龍とモーラがミルクをあげた。

一夏「どうやら二匹は大丈夫みたいだな。所で

   こいつらの家とか、部屋ってどうするんだ?」

機龍「うん。そこは束の邸宅の一室を貸してもらえる

   ようにお願いしてあるから大丈夫。

   必要な道具やご飯は束とクロエが用意してくれるって

   言っていたから」

と、話をしている間も、三毛猫は機龍の手に体を

すり寄せ、犬は胡座を掻いて座っている機龍の

足の上で眠っていた。

  「よ~しよし」

その様子を見ていた一夏たち。その時。

一夏「所で機龍。こいつらに名前か何か

   付けてやったらどうだ?」

機龍「え?名前?」

シャル「そうだね。何時までも名無しじゃ

    かわいそうだよ」

彼女の提案に簪達が頷く。

機龍「名前、かぁ」

改めて、三毛猫と柴犬を見つめる機龍。

柴犬も起き上がり、二匹とも機龍の瞳を

不思議そうに見つめている。

 

やがて……。

  「じゃあ、柴犬のこの子は、『アヌビス』。

   こっちの三毛猫の子は、『テトラ』、かな」

シャル「アヌビスって言うと、ジャッカルの頭を

    したエジプト神話の神だね」

簪「アヌビスとテトラ。うん、良いと思う」

一夏「あぁ。良い名前だと思うぞ」

機龍の考えた名前に、皆笑みを浮かべながら

頷く。

鈴「じゃあちょっと試してみようかしら。

  テトラ~。来なさ~い」

鈴が名前を呼び、手を差し出すと……。

   『ニャァ~~』

機龍にすり寄っていたテトラが鈴の手に

すり寄り、体や鼻先を擦りつける。

 「へ~、可愛いわね~」

セシリア「では私も。アヌビス」

それを見ていたセシリアが名前を呼ぶと、

アヌビスが機龍からセシリアの方に視線を

移し、彼女の方へと歩み寄った。

そして、ペロペロと彼女の指先を舐める

アヌビス。

    「うふふ、くすぐったいですわ」

 

そうして、一夏達はアヌビス、テトラと

戯れていた。

そして、それを興味なさげな表情をしながらも

チラチラと見ているマドカ。

その時。

   『クゥゥン』

アヌビスがマドカにすり寄る。

マドカ「……」

それに、彼女は無言だったが、やがて……。

   『スッ』

静かに手を差し出し、アヌビスの頭を撫でる。

   『クゥゥン。ワンッ♪』 

撫でられ、嬉しそうに鳴くアヌビス。

マドカも、つられて微笑を漏らした。

ちなみに……。

 

   『ニヤニヤッ』

それを見ていた鈴やモーラが何やら笑みを

浮かべていて……。

   「はっ!?み、見るなっ!」

それに気づいたマドカが顔を真っ赤にしながら

叫ぶ一幕があったのだった。

 

 

そうして、アヌビスとテトラは束の邸宅の

一室に住むことになった。

休みともなれば、学園の敷地、芝生の広場に

行き機龍と戯れている事が多い二匹。

一緒にひなたぼっこをしたり、ボールで

遊んだりと、すっかり学園での生活に

なれた2匹。

 

しかし、事はまだ始まったばかりだった。

 

 

ある日の休日の事。機龍は趣味の料理のための食材を

買うため、学園島向かいの街へと足を運んでいた。

機龍「食材は、こんな物かな。さて、帰ろうっと」

目的の品を買い終えた機龍は、モノレールの駅に

向かって歩き出した。

 

そして、歩いていた時。

   『クゥゥン……』

  「ッ」

不意に、近くの路地から声が聞こえてきた。

一瞬、足を止めてからすぐに路地の奥へと

進んでいく機龍。

そして……。

 

見つけてしまった。

   『クゥゥンッ』

   『ニャ~~』

先日のアヌビス、テトラと同じように。

ダンボールの中に捨てられた一組の猫と犬を。

灰色と黒のツートンの、

スコティッシュフォールドの子猫と、

ドーベルマンの子犬。両方とも、生後1ヶ月

程度のようだ。

ダンボールには、拾って下さい、の文字がマジックで

描かれていた。

二匹は、機龍を見て怯えているのか、震えていた。

機龍「……かわいそうに」

ダンボールの前に屈み込み、優しく

スコティッシュフォールドを撫でようと

手を伸ばす機龍。その時。

   『ウゥゥゥッ!ワンッ!!』

   『ガブッ!』

怯えるスコティッシュフォールドを守るように、

ドーベルマンが機龍の右手に噛みつく。

  「ッ!」

一瞬、顔を歪める機龍。しかし、彼は

ドーベルマンを振り払おうとはしなかった。

  「……憎いよね、人間が。君たちを

   身勝手に捨てた、飼い主が」

噛まれた箇所から、血が流れる。しかし、

今の機龍にはその程度の痛みなど、

痛みとも思っては居なかった。

そんなことよりも、彼は二匹を救いたいと

考えていたからだ。

  「それでも、僕を信じて欲しい。

   君たちを悪いようには、絶対にしない。

   だから……」

声を荒らげる事無く、優しく語りかける機龍。

 

やがて……。

   『ウゥゥッ、ウゥ。……クゥゥンッ』

ドーベルマンが静かに口を離し、謝罪の

つもりなのか、彼の傷口を舐める。

  「良いんだよ。そんな事しなくて。

   ……行こう」

そう言うと、機龍は二匹の入ったダンボール

を抱え、路地を出て学園へと帰っていった。

 

夕方。IS学園。篠ノ之邸。

今、束の家の廊下を一夏達が足早に歩いている。

やがて、一つの部屋を見つけてそこに入ると……。

一夏「機龍っ。また捨て猫とかが見つかったって

   クロエから――」

機龍「し~~っ」

入った一夏が言い切るよりも先に、機龍が

唇に人差し指を当て、静かにとジェスチャーで

遮る。

 

床に足を崩して座る機龍のすぐそば、クッションの

上であの二匹がすやすやと眠り、テトラとアヌビスが

近くでそれを見守っていた。

それを見て、手で口を塞ぎ、静かに機龍の側に

腰を下ろす一夏達。

  「さっき、ごはんを食べて眠った所なんだ」

一夏「……そうか。なぁ機龍、こいつらは、どこで?」

機龍「向かいの街の路地に、捨てられたんだ」

悲しそうな表情をしていた彼が、静かに二匹の寝顔を見つめる。

  「見捨てられなかった。見捨てたくなかった。

   だから、拾ってきたんだ」

そう言いながら、彼は静かにドーベルマンと

スコティッシュフォールドの頭を撫でる。

僅かに二匹の耳がピコピコと動く。

  「この子達も、この世界で生きている命だ。

   だから僕は、この子達の事も守りたい

   って思うんだ」

一夏「そうか。……お前らしいよ、機龍」

彼の言葉に、周囲の箒や簪達が頷く。

  「ところで、そいつらはその、大丈夫

   そうなのか?」

機龍「うん。二匹とも至って健康だよ。これといった

問題は無し」   

一夏「そっか。そういや、機龍は二匹の名前決めたのか?」

と、話を振る一夏。

機龍「うん。スコティッシュフォールドのこの子が

   『コロン』。ドーベルマンが『フェンリル』

   だよ」

セシリア「フェンリル。北欧神話の狼ですか」

一夏「へ~。カッコいいな」

と、そっちの話題に移っていく彼ら。

 

やがて……。

  「それじゃあ、俺達は行くわ。大勢で

   居ても騒いじまうし」

機龍「うん、ありがとう一夏」

一夏「あぁ。あと、俺等にも出来る事が

   あったら言ってくれ。俺らも、そいつらを

   助けたいって思ってるからな」

機龍「うん」

頷く彼を見て、一夏達は部屋を後にした。

ちなみに、その日の夜。機龍は4匹と

共に眠りについた。

 

それから、既に数日後。

休日の午前中。機龍は学園敷地の芝生の上に

寝っ転がっていた。

彼の周囲には、アヌビスとテトラ。更に

スコティッシュフォールドのコロン。

ドーベルマンのフェンリルが集まっていた。

機龍のお腹の上で眠るコロン。胸の上で

眠るテトラ。アヌビスとフェンリルは彼の両脇を

固める形で眠っている。

そして、機龍もまた静かに目をつむり、心と

体を落ち着けていた。

 

日の光が彼と4匹を祝福するかのように

照らしだし、そよ風が時折彼らの肌を撫でる。

その光景はどこか神秘的であり、絵画の

ように美しかった。

 

そして、それを遠巻きに見ていた者達が居た。

一夏達だ。

丁度草原に寝そべる機龍達が見える位置の

ベンチに座っている一夏達。

一夏「……。あいつら、気持ちよさそ~

   に眠ってんな~」

シャル「そうだね~。それにしても

    珍しいな~」

箒「珍しい?何がだ?」

シャル「ドーベルマンって、性格上飼い主には

    大きな忠誠心を持つんだけど、逆に

    それ以外の人間や他の犬には警戒心が

    強いんだって。でも、あのドーベルマン、

    フェンリルはアヌビスと喧嘩をしてる

    様子も無いし」

モーラ「恐らくですが、フェンリルにとっては

    既にアヌビスやテトラ、コロン達が

    家族なのでしょう。ドーベルマンは

    縄張り意識が強いとも聞きますが、

    恐らくアヌビス達3匹はフェンリルに

    家族と認められているのでしょう」

一夏「だから喧嘩したりしない、って事か」

モーラ「はい。彼らの仲を取り持っているのが、

    恐らく機龍なのです」

と、話をしている彼らだったが……。

 

ラウラ「む?おい、あれは……」

何かに気づいたラウラが視線を向けた先では、

ソロリソロリと機龍達の元へと向かう

カメラを持った女生徒達の姿があった。

セシリア「あれは、写真部の方達ですか?」

他の面々も気づいて、そちらに目を向ける。

 

写真部部員「グフフッ、機龍君の激カワ写真。

      撮ってみせるわよ~」

そして、写真部の面々が機龍に近づいていくが……。

   『ピクッ!』

   『バッ!』

フェンリルの耳がピクついたかと思うと、すぐに

立ち上がった。

   『ウゥゥゥゥゥッ!』

そして、近づいてくる写真部の面々に威嚇のうなり声を

上げるドーベルマン。その時。

機龍「大丈夫だよフェンリル」

眠っていたはずの機龍の手が、優しくフェンリルの

頭を撫でて、落ち着かせる。

  「すみません、この子達はまだここに

   来たばっかりなので、撮影とかは……」

首だけを動かして、写真部の部員達の方を向く機龍。

写真部部員「う、ううん。こっちこそごめんね~」

そう言うと、彼女たちはそそくさと去って行き、

機龍達は再び眠りについた。

 

はたまた、ある日のお昼。

 

その日機龍は一夏たちと一緒に食堂でお昼を

食べていたのだが……。

   『ニャァ~』

機龍「え?」

彼の耳に聞き慣れた声が聞こえ、そちらを向く機龍。

見ると、食堂の入り口にテトラとコロン、アヌビスが居た。

そのすぐ側には、まるで3匹を護るようにフェンリルの

姿もあった。

  「テトラ!コロン!アヌビス!フェンリル!」

慌てて名を呼ぶ機龍。

   『『ニャ~~!』』

すると二匹が機龍の元にトテトテと歩み寄る。

機龍がその場にしゃがみ込むと、二匹が彼の

足や手に体をすり寄せ始めた。

 

機龍「も~。みんなともダメだよ~。

   ちゃんとお留守番してないと」

   『『ニャ~~』』

   『ワンッ!』

優しくたしなめる機龍に、テトラとコロン、

アヌビスが声を上げる。

  「全くも~」

困った表情を浮かべる機龍。そんな中、

彼は3匹の後ろでお座りしているフェンリル

に気づいた。

  「ありがとうフェンリル。フェンリルは

   みんなを守ろうとしてたんだね」

笑みを浮かべながら、フェンリルの頭を

優しく撫でる機龍。

   『クゥゥンッ。ワンッ!』

するとフェンリルは、喉を鳴らし、嬉しいのか

一声鳴くと、尻尾を左右にブンブンと

振っていた。

 

すると、他の3匹が『構って』とばかりに機龍

の手や足にすり寄る。

  「あぁちょっと。慌てないの」

と、対応に困っていた機龍だったが、ここが

食堂だと言う事を思い出した。

  「ごめんみんな。僕この子達を家に

   戻してくるよ。悪いんだけど、食べ

終わった食器、片付けておいて

もらって良いかな?」

一夏「あぁ、良いぜ」

機龍「ありがとう。じゃあちょっと

行ってくるね。ほら、みんな行くよ」

   『『ニャ~~』』

   『『ワンッ!』』

機龍が歩き出すと、4匹は彼の後を付いて

歩き出した。

 

ちなみに、食堂を出て行く彼らを見送った

女子達は……。

   『『『カメラ、持ってくれば良かった』』』

とか思って居たり居なかったりしたと言う。

 

そうして、機龍と4匹は次第に仲を深めていった。

 

そして、なんやかんやで時間は流れ……。

 

数ヶ月後には、4匹は一般的な大きさへとなっていた。

 

ある日の休日。学園の草原に立つ機龍の側には、

大きくなったテトラ、コロン、アヌビス、

フェンリルが集まっていた。

 

機龍「それじゃあ、行くよ!アヌビス!フェンリル!」

そう言うと、機龍は手にしていたフリスビー2枚を

続けざまに投げる。

   『『ワンッ!!』』

するとそれを追ってアヌビスとフェンリルが駆け出す。

そして、二匹は同時にジャンプ。フリスビーを

咥えて機龍の元に戻ってきた。

  「ははっ。二人ともすごいよ!よく

   取れたね~」

機龍はその場に膝を突くと、二匹の頭を両手で

撫でながら、自分の事のように喜び笑みを

浮かべる。

更にそれが嬉しいのか、二匹もクゥゥンと

声を漏らす。

すると……。

『『ニャ~~』』

機龍に構って貰っている二匹を見ていた

コロンとテトラが機龍の足にすり寄る。

機龍「ふふっ、二人も遊んで欲しいの?

   しょうがないな~」

そう言って、機龍は笑みを浮かべると両手で

コロンとテトラの頭や顎。更に寝っ転がった

二匹のお腹などを撫でていく。

 

   『『クゥ~~ン』』

しかし今度はアヌビスとフェンリルも少し

悲しそうな声を漏らす。

機龍「大丈夫だよ。二人ともちゃんと遊んで

   あげるから」

そう言いつつ、機龍は4匹を撫でる。

 

その後も機龍は、テトラ、コロン、アヌビス、

フェンリルの4人と遊び続けた。

そして、夕暮れ時。

 

束「お~~い!リュウく~~ん!みんな~!

  ご飯だよ~!」

邸宅の方から束がやってきて、機龍と4匹に

向かって歩み寄って来た。

機龍「あっ。は~い!」

彼女に気づいて立ち上がった機龍。

  「それじゃあみんな。行こうか」

   『『ニャ~』』

   『『ワンッ』』

彼の言葉に4匹は尻尾を振り、彼と並んで

歩き出した。

 

そして、待っていた束とも合流し歩き出す

機龍達。

束「みんなもう、すっかりリュウ君に懐いたね~。

  何かもう家族って感じがするよ」

と、歩きながらそんな事を話す束。

機龍「うん。そうだね」

そして彼は、並んで歩く4匹を見ながら彼女の

言葉を肯定した。

そして……。

 

  「もう、君たちも立派な僕の家族だ」

彼は、4匹を見ながら笑みを浮かべそう呟いた。

そしてその4匹も……。

 

   『『ニャ~』』

   『『ワンッ』』

嬉しそうに、どこか、笑みを浮かべているようにも

見える表情で鳴くのだった。

 

そして、機龍と束、4匹たちは彼らの家へと

戻っていくのだった。

 

 

一度は人間に捨てられた命たち。しかし4匹は、

この世界で最も神に近い存在と出会い、その

庇護の元、王の家族となった。

 

それもまた、一つの運命なのかもしれない。

 

機龍にとって、仲間は、家族は、人だけではない。

 

テトラ、コロン、アヌビス、フェンリル。

 

名を与えられた彼らもまた、怪獣王の家族と

なるのだった。

 

     拾う神 END

 




って事で、新たな家族を迎えた機龍たち!
ちなみに私は犬と猫、どっちかって言うと猫派です!
でも犬も可愛いって思ってます!
と言うか甲乙付けられないっす!
家では拾った三毛猫飼ってます!

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