少し切ないファンタジー。

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愛は哀を生む。

『愛している』

昔はこんな言葉があったらしい。それは、自分にとって一番大切な人に言う言葉。家族や子供、そして恋人。

2年前、私はこの言葉を知った。今、この世界でこの言葉を知っている人は多分いないのだろう。

私はこの言葉を一度だけ使った事がある。でも、いつ、誰に使ったのか覚えていない。そして『愛している』の言葉の意味も。でも、それはとても大切なモノだった気がする。ただそれだけ覚えている。

 

ある日、近所を散歩していると突然声をかけられた。知らない人だった。その人は、とても哀しそうな顔をしていた。そして、その人は私に「哀(あい)している。」と告げた。何を言っているのか解らなかった。

 

数日後ニュースでその彼が自殺したと報道されていた。

 

「藍(らん)……。」

私はそう呟いた。誰の名前か分からなかった。でも、段々と記憶がよみがえる。

「あぁ、そうか……愛(哀)している。か……。」

200年ほど前未知の病が人々をおそった。その病にかかった者は《一番大切な人を忘れてしまう》という。

《愛している》という言葉をその人にとって《一番大切な人》に使った時、その言葉を使った人がその病にかかってしまう。その病にかかると二度と《一番大切な人》を思い出す事が出来ない。人々はこの言葉が世に出回らないように《愛》を《哀》にし、時がたち、《愛》は消えた。

しかし、ただ、一つだけ思い出す事が出来る方法がある。それは、

《一番大切な人》が死ぬことだ。

 

 

僕は《一番大切な人》に「愛している。」と言われた。その言葉は僕が教えたものだった。僕はその言葉を母に教わった。

「この言葉はとても素晴らしい言葉。でも、決して使ってはいけない。」

でも僕は使ってしまった。そして母の事を忘れてしまった。僕が母をわすれて一年位たった時母の事を思い出した。母は事故で亡くなった。

そして、しばらくして僕は高校生になり、《一番大切な人》が出来た。そして、あの言葉を教えた。そして僕は忘れられてしまった。

そして二年が過ぎ、彼女に再開した。二年間ずっと僕はことを想っていた。ただ、あの一言を言いたかった。「愛している。」と。

そして僕は彼女に言った。「哀(あい)している。」と。君は首をかしげて微笑をして去った。そろそろ僕の事を思い出して欲しい。でも、きっと君が僕の事を思い出した時君は哀しむだろう。それでも、忘れられたままは辛い。だから、どうか許して欲しい。君が僕の事を思い出す事。そして、僕が「愛している。」ではなく、「哀している。」といったことを。僕が君を覚えている事を。

 


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