【習作】羅刹天魔王   作:十月の金糸雀

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初投稿作品になりますので、皆々様のお目汚しになってしまうかもしれませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。



旧一話


 『僕らは誰かと出会った瞬間から、一人ではいられないんだ。』

 

                            ――――――――――有馬公生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間は自分ひとりだけでは生きていくことができない。

家族、恋人、友人、同僚、上司…………

誰もが誰かしらと関わりを持って生きていて、社会の歯車の1つとして存在している。

学園都市の第一位『一方通行』も認めるように、社会という共同体が存在するからこそ文化的に生きることができる。

 

 社会の中で、社会に貢献し、大切な誰かと共に生きる。

それが正しい人間のあり方であり、そうすべきであり、そうしなければならない。

 

 

 社会に適合できない人間はどうなるのだろうか?

適合しようと必死に足掻く、それが正しい。努力して、努力して、精いっぱい頑張って生きる。それが正しい在り方なのだろう。

 しかし、それができる人間がどれだけいるだろうか?

現実は社会に適合できない人間に、適合することを強要するが、実際に適合しようと頑張れる人間が、適合できなかった人間の中にどれだけいるだろうか?

 

 

 一方で、早々に適合することを諦めて、現実から目を背け、自分の世界に閉じこもる者もいるだろう。そして、現実から逃げ出すために死を選ぶ者もいるだろう………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 

 

 

 自分は現実から逃げたのだ。

 普通の家庭に生まれて、普通に大学まで進学し、就活で挫折し、現実に打ちひしがれて、自殺した。

 鬱病とパニック障害を併発して、毎日、毎日、泣き続け、現実に押しつぶされて、自殺した。

 生み育ててくれた両親には悪いとも思はなかった。

なぜなら、自分は自分だけがどこまでも可愛くて、大切で、自分のことが大好きすぎて、現実から自分だけの世界に逃げ込んでいたからだ。誰よりも自己愛を肯定していた人格破綻者だったからだ。

 

 

 そんな自分に転生しろという。あぁ、神よ、あなたはどこまで残酷なのだ?

 

 

 自分は逃げだしたのだ。現実から。社会から。人間関係から。

そんな、ちっぽけで、自分勝手で、矮小で、なさけない、そんな自分に転生しろというのか?

どうせまた自分は逃げ出すに決まっているのに。自分は情けないのに。自分は、自分は、自分は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――まず感じたのは果てしない自分への『憎悪』

 

 

 あぁ、なぜ自分はこんなにも弱いのか。情けないのか。矮小なのか。

 

 そんな自分は許せない。自分は徹頭徹尾、どこまでも自分自身だけを愛しているから。こんな弱い自分なんて認められない。

だから、「()()()()()()()()()()()()()()()」。

 

 

 

 

 ――――――――――求めたのは終わることない『超越』

 あぁ、どこまでも「強くなりたい」。そして「()()()()()()()()()()()()()」。

 この世の全ては平等に、無駄で無用で無意味で無価値だ。自分以外のすべてがどうでもいい。自分さえ良ければすべてがどうでもいい。

 

 正義を貫くためとか、何かを得るためとか、何かを打ち破るためとか、何かを乗り越えるためとか、何かを守るためとか。そんな「()()()()()()()()」など必要ない。

 

 理由なんていらない。目的なんていらない。

 

 ただ強くなりたい。一重に強くなりたい。とにかく強くなりたい。誰よりも強くなりたい。一重に、ひたすら、とにかく、誰よりも強くなって、ひたすら強くなって、今よりも強くなって、どこまでも強くなり続けたい!

 

 戦いを。殺し合いを。命を懸けた闘争を!ただ強くあるために!誰よりも強くあるために!ひたすら強くあるために!今より強くあるために!どこまでも強くあるために!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 

 

諸余怨敵皆悉摧滅(しょよおんてきかいしつざいめつ)!」

 

 

 生と不死の境界。欧州ではアストラル界や妖精境、中国では幽冥界もしくは幽界、ギリシアではイデアの世界、ペルシアでは霊的世界(メーノーグ)とも言われる世界。現世と不死の領域の境目に存在する世界で、女顔の男が、金髪碧眼の男の腹に槍を突き立てた。

 

「がっっ!」

 

 ゴポリ。と音を立てて金髪碧眼の男は口から血を吐き出す。少年は憤怒の形相で金髪碧眼の男の胸へと追撃を食らわせる。

 

 

「滅・侭・滅・相!」

 

 

 決定的な致命傷を食らい、金髪碧眼の男の瞳から光がだんだんと消えていき、力なく声を出した。

 

 

「見ているのであろう。忌々しき魔女よ。」

 

「ええ、全て見ておりましたわ、Y・H・V・H様。」

 

 そこに現れたのは、魔女パンドラ。

 ギリシア神話に登場する不死者エピメテウスの妻で、あらゆる災厄と一掴みの希望を与える魔女にして全てを与える女。幼く見えるものの蠱惑的な、『女』を感じさせる容姿をしている女神。

 神と人のいる所に顕現し、神を殺した者に神を生贄にすることで初めて成立する儀式を行い神殺しの魔王へと転生させ、その称号を与えるもので、「神殺しの魔王の元締めにして支援者」にあたる彼女が、異例の事態に困惑していた。

 

 

 

 

 

 

 

 この世界には神がいる。

原初の時代、彼らに名前はなかった。ただ漠然とした災害だった。しかし、歴史と共に人間たちが神々の猛威と恵みに備えるために名と神格を与え祭ったことで、神々は自分の神格に沿ったことしかできなくなるようになった。

 しかし、そんな人々の紡いだ神話に背いてに流離(さすら)い、その先々で人々に災いをもたらす神が現れる。

 そんな災害、天災とも呼べる莫大な力の塊。それが『まつろわぬ神』。

 

 決して朽ちない肉体を持ち、一部の例外を除き化学兵器を含めた地上の武器や魔術も通じず、闘神であれば人類最高峰以上の武技を持つうえ、神格によっては不死の能力を持つこともある。ただの人間では抵抗すらできない。

 しかし、運だけでは決して成しえない様々な意味での実力と奇跡によって、ただの人間が神々を弑逆することに成功した場合、神々が持つ力である権能を簒奪し己の物にすることが出来る。

 それこそが後に『カンピオーネ』と呼ばれる神殺しの魔王であり、まつろわぬ神々に唯一対抗できる覇者である。

 

 

 だからこそ、魔女パンドラは困惑する。

 少年がまだ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに困惑するのである。

しかしながら、彼は神殺しの偉業を成し遂げたのだ。であれば、彼女のすべきことは一つである。新たなる神殺し誕生の儀式を行うのだ。ゆえに女神は高らかに宣言する。

 

「さあ皆様!新たに生まれ落ちた神殺しに祝福と憎悪を与えて頂戴!神殺しとなる運命を得たこの子に聖なる言霊を与えて頂戴!」

 

その瞬間だった、

 

滅侭滅相(いいから、さっさと死ね)

 

 

空を奔る雷電のように迅速に、正確に、およそ迷いや雑念などなく少年が槍を振るい。金髪碧眼の男(Y・H・V・H)の首を跳ね飛ばした。

 

「お前のような糞が博愛を語るな、気持ちの悪い偽善者め。博愛は『黄昏』にこそふさわしいんだ。」

 

「え~っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして天文15年(1546年)、織田 信長は、義母となる魔女パンドラにドン引きされながら、神殺しの魔王になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公の外見は型月の沖田です。
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