ハーメニア   作:秋月 俊

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十二話目です

うん、それだけ


黒幕発覚

 鎌を構えたIAが加速し、東北へと肉薄する。東北の武器は弓、懐に飛び込まれればその実力を発揮するのは難しいはずだ。IAはそのまま袈裟斬りを放つ。まるで獲物を狩る獣の牙のように鋭い刃が、東北へと迫る。

 

「弓なら接近すれば勝てると思ったんですかぁ?残念でした」

 

驚いたことに、東北は弓の胴の部分で防ぐ。流石に驚いたのか、IAがそのまま固まってしまう。東北はIAの腹狙って蹴りを放つ。反応が遅れて、そのまま直撃してしまう。なんとか踏ん張って屋根の上から落ちはしながったが、ダメージは大きかったのか、そのまま跪いてしまう。俺は急いでIAのもとに走り、身体を支える。

 

「嘘…」

「驚きました?私の弓は『ずんだアロー』という名前でずんだの神のご加護が備わっているんです」

 

……は?なんだって?ずんだの神様?

 

「ずんだってあのずんだ餅の?」

「そうですよ。ずんだ神のご加護によって普通の弓とは違って、強度に精密さ全てが凄いのです」

 

神様……。キリスト様とか仏様とか、そういうのじゃなくてずんだの神様だって?なんと言って良いのか。反応に困る……

 

「あ、ずんだ神を馬鹿にしてますね?ずんだは偉大なんですよ?今から約450年前に生まれた伊達政宗が」

 

あ、これやばい。委員長と同じで、説明させたらめんどくさいやつだ。

 

「悪いけど…私はそういうの信じてないの」

 

IAが腹を抑えながら立ち上がる。鎌を持ち直して、再び突撃する。

 

「あら、まだ来るんですか?」

 

後ろに飛び下りながら、矢を放つ。

 

「フッ!」

 

IAはそれを回避し、追うように飛び上がる。

 

「はぁ!」

 

IAが右切り上げを放つ。東北はそれをうまく受け流し、弓を引いて反撃しようとする。

 

「まだ…終わってない!」

 

IAは受け流された鎌を回転させ持ち直し、袈裟斬りを放つ。弓を引きしぼる引き絞っていたために先程のように防ぐことができずに、鎌の刃が東北の身体を斬りつけた。しかし、当たる前に後退していたのか、衣服を切り裂く程度のダメージしか与えられなかったようだ。

 

「くっ、当たってしまいましたか。回避が遅れていたら身体が斜めに切り裂かれてましたよ」

「運が良い…。でも、あなたの音はわかった。次は…裂く」

 

IAが着地しながら言う。裂くって、待て待て!

 

「IA!せめて動けなくなるように拘束する程度にしてくれ!そいつには聞きたいことがある!」

「マコト…わかった。ということだから…おとなしく捕まって?」

「嫌ですよ。捕まるとか、何されるか分かったもんじゃありません。どうせエッチなこと考えてるんでしょ」

 

何を言ってるんだ、こいつは。やっぱり少し感じがつかめんな…

 

「だったら、無理矢理にも…捕まって?」

「話し聞いてないんですかあなたは。嫌だって言ったんですよ」

 

弓を構えながら答える。その時だった、ブルンブルンと重低音が聞こえ始めた。東北とIAが何事かと辺りを見回す。この音は……やっぱりあの音か。

 

「マコトさん!IA!」

 

チェーンソーを持ちながら、ゆかりが俺達のそばに着地した。

 

「ナイスタイミングだゆかり!」

「少し遅れたみたいですけど。なんとか間に合ったみたいですね」

 

ゆかりが右手を差し出しながら言った。俺はその手を握り、もう片方の手に『紲月歌』を顕現させる。その時にゆかりが足の傷も治療してくれたようだ。これで俺も戦闘に参加することができる。

 

「さて、どうする?こっちは三人、そっちは一人」

「玉砕覚悟で…くる?」

 

東北は少し考えたようだが、弓を下ろした。

 

「やめときます。それにこれだけの戦いは契約にはありませんからね」

「契約?」

「あなた達には関係ないことです、おっと」

 

東北の携帯が鳴る。ちょっとお待ちをと言ってその電話に応答する。

 

「あ、はい。あ、もう時間でしたか。でもあれですけど……あっ、そうですか。わかりました。では、はい、そういうことで。はい、はい、失礼します」

 

東北が携帯をしまって、こちらを向いた。

 

「流石に三対一は不利ですね。ここは撤退させてもらいます。では」

 

そう言って東北は姿を消した。ステージが次第に閉じていくことが分かる、どうやら本当に撤退していったようだ。まだ少し身体強化の恩恵が残っているうちに家へと戻る。丁度家にたどり着いた時に、ステージが完全に解除され身体から力が抜けていくのが分かった。

 

「大丈夫かIA?」

「うん…。なんとかマコトは守れた」

「それでなんですけど、一旦家に来ませんか?お父さんにも話しておきたいですし」

「そうだな。それでいいか?IA」

「うん…。マコトのお父さんには…挨拶したいし」

 

なんか変なニュアンスを感じたが……まぁ、良いか。

 

                 PM20:10

 

「只今戻りました」

「ただいま」

「お邪魔します」

 

三人で玄関をくぐる。すると、慌ただしくリビングのドアが開き、そこから一人の女性が現れた。その人はそのままバタバタとこちらに走ってきて、ゆかりに抱きついた。

 

「良かった!無事だったのねゆかり!」

「ちょっとお母さん!は、恥ずかしいよ!」

 

ああ、どこかで見たことがあると思ったらゆかりのお母さんか。通りでどこかで見たことあると思った。

 

「あら、あなたマコト君?」

「お久しぶりです」

 

すると、ゆかりのお母さんはゆかりから離れ、俺のもとにやってくる。そして下や横からと、色々な方向から観察してくる。うう、あんまりジロジロ見られるとすこし変な気がする……

 

「やっぱり!かっこ良くなっちゃって!それでそれで、お隣は彼女さん?」

「いいえ。でも…近々」

「変なこと言うな」

 

隣で馬鹿を言ったIAの頭を小突く。話もそろそろに、リビングに向かう。親父は座ってコーヒーを飲んでいた、なんかくつろいでた。敵の襲撃には気づいてるはずなんだが。

 

「おう、来たか」

「来たかって、襲撃は分かってたんだろ?」

「ああ、しかし問題でもないだろう。こうしてここにいるってことはな」

 

椅子から立ち上がりながら言った。もしも殺られてたらどうするつもりだったんだよあんたは。

 

「で、その子は協力者か?」

 

IAを見ながら言った。IAが一歩前に出て、挨拶をする。

 

「マコトのお父様ですね。私、IAといいます」

「IA…IAか。確か、アメリカの部署の資料に同じ名前の子がいたな」

「多分…私です。アメリカに…いましたから」

 

部署って、そんなのあるのか。というより、今思うと親父たちがどうしてハーメニアとかのことを知ってるのか、全く知らないな。

 

「なぁ親父。親父達ってどうしてハーメニアとか知ってるんだ?」

「ああ、そういえば肝心なことを話していなかったか。まぁ、とりあえずは座れ。立ちっぱなしもキツイだろう」

 

親父が席を立ち、ソファに移る。俺達もソファに座り、話を続けた。

 

「俺達の組織は元はただの医療機関だったんだ。しかしある時、俺たちの研究施設で謎の異変が起こりだしたんだ」

「異変?」

「ああ、今は音怪とよんでるアレだな。そしてそれを引き起こしたのが、俺たちが見た最初のハーメニアだ」

 

最初のハーメニア……。

 

「そいつが今回お前たちの命を狙った黒幕……名前はカイト。俺たちの後輩だったやつだ」

 

親父が神妙な面持ちで言った。カイトか、当然だが初めて聞く名前だな。

 

「でも待てよ。そいつが黒幕ってのは分かったけど、なんで俺たちを狙ってるんだ?」

「さぁな。自分以外のハーメニアを殺そうとしてると最初は思ったが、それだったら初音を生かしている理由が見つからん」

 

確かに。そう考えると、何故狙われたのか全くの見当もつかない。

 

「少なくとも…まだそいつはマコトたちを狙ってる。気は抜けない」

 

IAの言うとおりだ。訳もわからないまま殺されるのなんてゴメンだからな。

 

「あら、物騒な話してるのね。はい、お茶を飲んで息抜きしましょ」

 

ゆかりのお母さんがお菓子とお茶を持ってきた。しっかりとしたゆかりとは違って、のほほんとした雰囲気の人だな。でも薄紫の髪とか、ゆかりと一緒だな。

 

「マコトさん、何お母さんをじっと見てるんですか?」

「いや、ゆかりと同じで綺麗な髪だなって」

 

そういった瞬間、部屋が凍りついた。えっ、なに。なんか変なこと言った俺。

 

「なななななななな、何言ってるんですか!?」

【挿絵表示】

 

「マコト…。一回爆死したがいいよ」

【挿絵表示】

 

「あら、マコト君ってそういうことサラッと言っちゃうのね」

 

ゆかりは顔を真っ赤に、IAはジト目で、ゆかりのお母さんは口元を隠して笑いながら言う。やっぱ変なことを言ったのか俺は。

 

「とりあえずだが。三人とも敵からの襲撃には気をつけてくれ」

「わ、分かりました」

「はい…」

「分かった」

 

作戦会議はそこで終わり、その後は軽いお茶会のようなものをして解散となった。

 

                 PM21:00

 

「それじゃまた明日、マコト」

「おう、またな」

 

IAと別れて自分の部屋に戻る。

 

「にしても東北ずん子か」

 

さっきの出来事を思い出す。ずんだの神とかを崇めているらしいが、なんとも個性的なやつだったな。

 

「そういや契約とか言ってたな。一体誰と……って十中八九カイトってやつだろうな」

 

理由は分からないが俺達を狙う、カイトと呼ばれる人物。親父曰く親父の後輩で、最初に確認されたハーメニアらしい。

 

「あー、よくわからん!とりあえず、そのカイトってやつをひきづり出さなきゃわかんないな」

 

隠れて他のやつに任せて自分だけ安全圏で、高みの見物なんて許すわけがないだろう。

待ってろよ、カイト!すぐに俺達の前に顔を出させて、洗いざらい吐いてもらうからな!

 

続く

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