蘇生輪廻   作:招代

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全体の文字数は2万4千程。
おそらく5話くらいだと思います。

それと、
タグの残酷な描写は念のために。
無くても大丈夫だと思うんですけどね……あのくらいなら。

……では投稿します。


前日、未来

 文化祭前日、出し物の最終準備を終えて帰り道を歩く。あたりは既に薄暗くなっており、1人で歩いていることも含めて風が少し寒く感じた。

 ななちゃんがいれば違うのだろうが、残念ながら別の準備係なので先に帰ってもらったので今は家か。

 個人的には一緒に帰りたかったけど……待たせるのは悪いので仕方がない。

「さぶっ……」

 1人寂しく呟いて、そのまま家を目指す。

 

 

「……ん?」

 すると、ふと道端に落ちているある物が目に留まった。

 薄暗くてよくは見えないが、何となく存在感を出しているような薄い長方形の物体。

「何だ、これ? ……本?」

 拾い上げて見ると、ページがめくれて本だという事が分かる。ページ数は少なそうだ。

 明かりが無いために内容は分からないが、書かれているのはどうやら日本語らしい。誰かの落し物だろうか?

 

「……」

 暫く悩み、明日交番に届けようと決める。今から届けるとなると大分学校の方に戻らないといけないしな…………持ち主には申し訳ないかもしれないけど。

 かといってこのまま放置すれば雨などで汚れるかもしれない。確か夜に降水確率が少しあった気がするし。

 そうして本を鞄にしまい込むと、再び家を目指し歩きはじめた。

 

 

 

 

 

 家に到着し、夕ご飯を食べて部屋に戻る。

 そして先ほど拾った本の内容が気になったので取り出して広げてみると……。

「何々……人体蘇生術? これ黒魔術書か何かか?」

 中には必要な材料とか図形とか手順が注意書き付きで分かり易く書かれている。

 正直胡散臭いなぁ……と心の中で笑いつつも読み進めていると、どうやら必要な材料は全てこの部屋で手に入る物であることが分かった。

「……やってみるか」

 文化祭前夜という事もあってどうにも手持無沙汰な感じがするし、風呂があくまではまだ時間がある。

 どうせ誰かが真面目に厨二病的なものを書いただけのものだろう。暇つぶしにやってみるのも良いかもしれない。

 そうと決まれば材料集めか。まずは紙とペンと――――

 

 

 

 ――――準備が終わり、さっそく儀式に取り掛かり始める。

 まずは魔方陣的なものが書かれた紙を広げ、中心に人型の人形を置く。そしてその手前に爪の欠片を乗せた小皿。人形挟んだ反対側に髪の毛を数本乗せた小皿。最後に蘇生した人間が着る為の服を上から被せ、呪文を唱える。

「死した魂 死にゆく魂 輪廻の輪より呼び来りて現れん 我は我 汝は我 我の導きに従い宿りたまえ さすれば汝に生を授けよう 死を定められた者よ 今ここに 蘇りたまえ」

 なんとかつっかえずに言い切り、一息つきながら儀式セットを見るが特に変化は無いようだ。

「ま、そりゃそうだ。流石に何も起きるわけな――――――」

 ――――――いだろ、と言いかけた瞬間。急激に魔方陣が光始める。

 

「うおあああっ!?」

 そして部屋の中は光にのみ込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……収まった、か?」

 目を閉じていても分かる光が無くなったのを感じ、恐る恐る目を開けて儀式セットを見る。

「一体何だった、ん、だ……あ?」

 するとそこには何者かが――いや、それは見間違えるはずも無い人間が――魔方陣の上に準備してあった服を着た状態で座っていた。

「お、おおおおおおおおおお俺!?」

 おおお俺が2人!? いいいや偽物? いやいやいやそっくりさん!? と言うかコレってマジもんだったのかっ!!? え、いや、マママジで人体蘇生しちゃったの? ……いやいや、じゃぁ何で俺なんだよ! 蘇生術じゃないのかよ!? タイムスリップ? タイムトラベルなの!?

 おおおお落ち着けけけけけ…………今はそれどころじゃないぞぞ。まずは現状を確認せねばばば。

「お、お、お前は、俺、だ? ……あいや、誰、だ?」

「あー……そうか。駄目、だったか……」

「? 話、聞いてるか?」

 俺の問いかけに対しての返答とは関係の無いことを呟くそいつに、心配しながら再び問いかける。

 するとそいつはこちらに顔を向けた……正面から見るとますます俺にそっくりだ。何だこの妙な感じは。

 

「……あぁいや、すまん。取り乱すのも分かるが落ち着いて聞いて欲しい」

「お、おう」

「俺は……未来のお前だ」

 そう言ったそいつは真剣な目で俺を見てくる。そこに嘘のようなものは感じない……とは言えあまりにも突飛な話である。

「み、未来の、俺?」

「ああ」

「……の割には見た目が全然変わってないんだけど」

 半信半疑で問いかける。

 自称未来の俺があまりにも落ち着いているもんだから、こっちまで少し落ち着いてきた。先程よりは頭が動きそうだ。

「……まぁ、未来って言っても明日だからな。見た目が変わらないのは仕方がない」

「明日の俺って……え、文化祭中に呼んじゃったのか?」

「いや、文化祭が終わって家に入ろうとしたところだな」

「ああ、そうなのか」

 文化祭を楽しんでいる最中に呼び出していたらどうしようかと思ったけど、終わった後で良かった。

 ……いや、全然よくはないんだけど。

 

「というか、あれ? この本が本物だったとして、蘇生術じゃなかったのか……?」

 未来の自分を呼び出すとか、蘇生術と言うよりも召喚術だろ。充分ヤバい事には違いないけど、まったくの別物なんだが。

「いや……あってるぞ」

「は?」

「これが一番大事な話なんだが落ち着いて聞いて欲しい。お前が呼び出したのは……明日死んだ俺の魂だ」

 未来の俺の口から今までとは比にならないくらいの衝撃発言が飛び出す。

「え、ちょ、冗談だろ? 俺が明日死ぬとか……」

「冗談じゃない。冗談と思うかもしれないが事実なんだ」

「そんな――――! そんな、ことって、ない、だろ……あり得ないだろ」

 不思議と本当の事だと分かってしまうその言葉に、動悸が激しくなる。

 だってあり得ないだろ……俺、こんなに健康的なのに。まだ告白もしてないしやりたいことだって……。

 

「俺も最初はそう思った。だから嘘じゃないという事が分かってしまっていることも分かる。けど今は落ち着いて話を聞いて欲しい……これ以上過去の俺を死なせない為にも」

「……どういう、ことだ?」

 なんとか心を保ちながら、顔を上げる。

 そこに居た俺は立ち上がり、悔しそうな顔で拳を握っていた。

「俺もお前と同じように未来の死んだ俺を召喚したっていうことだ」

「え……」

「そうして明日死ぬという事を聞かされた。その時は俺も今のお前と同じ反応だったよ」

「そうだったのか……でも、だったらどうして――――」

 その先の言葉が出ない。その事実は自分で口にするにはあまりにも重すぎる。

「……言おうとしてる事は分かる。どうして俺が死んでしまったのか、という事だろ」

「ああ……」

 そう、死んだ後の俺ならどうして死んだか分かるはずだ。だったら回避する方法だって分かるはずなのに。

 

「どうやら明日における俺の『死の運命』と言うのはかなり強いらしい。俺が呼んだ未来の俺の話によれば、いくら行動を変えても俺たち(みんな)は死んでしまったらしい」

「そうだったのか…………じゃぁ俺も…………」

「だが未来の俺たちは諦めなかった」

 未来を諦めかけた俺に、未来の俺の力強い言葉が響く。

「何としてでも過去の俺を生かすために、行動のパターンを一本化した。そして『どうして死んだのか』『どうすれば助かるのか』を過去の俺に伝えていったんだ。そのおかげで俺はついに家の直前という時間まで生きることができた」

「だけど死んじゃったんだろ……?」

「ああ。だが後少しかもしれないんだ……それさえ乗り切れば助かるかもしれないんだ」

「どうしてそんなことが言えるんだよ」

 うなだれたまま自暴自棄に訊ねる。

 そもそも「死の運命」だか何だか知らないが、確証なんてあるはずがないんだ。言い切れるわけがない。

 

「……確かに確証はない。だが、もし時間制限があるのだとすれば……可能性は有るんだ」

「時間制限?」

「最初に未来の俺が死んだのが午前7時。その前に死んだという例はないらしい。そして俺が死んだのが午後7時少し前。この時間が丁度12時間なんだ」

「……」

「もしかしたら12時間ではないかもしれない。それでも、午前7時より前に死ぬことが無いという事は、時間は関係しているはずなんだ」

「そうなのか……」

 全く以て根拠が無いような話ではあるが、少しだけ希望が灯ったような気がした。だがそれでは弱すぎた。

 依然、俺はうなだれ続ける。

 

「それに……仮に時間が関係なくても諦めるわけにはいかないだろ?」

 しかしそんな俺の肩を掴みながら、未来の俺が言う。

「だって……だって諦めたら過去の俺は死に続けるんだぞっ!! そんなの嫌じゃないか……! それに俺が死んだら母さんや父さんが…………何よりななちゃんだって悲しむ!!」

「……!」

 ななちゃん、その言葉にハッとする。それだけで絶望する俺の心に灯っていた僅かな希望が燃え上がる。

「たとえ過去だろうとなんだろうと、 ななちゃんに悲しんでほしくないんだよっ!! 分かるだろ!? 好きなんだろ!! 絶対に嫌なんだよ……そんなの、絶対に」

 言い終えて未来の俺が泣き崩れた。

「……」

 そうだ。絶対に嫌だ、そんなのは。認めるわけにはいかない。諦めるわけにはいかない。

 ……だったらやってやろうじゃないか。何処までも足掻いてやるよ。たとえ俺が死んだとしても、足掻いてやる。過去だろうと悲しませるわけには無いかない。

 

「ああ、ああ! 俺はやるぞ! やってやるぞ!!」

 決意し、立ち上がる。

 そうと決まれば未来の俺の話を聞かなければならない。絶対に諦めない為に!

「未来の俺! 教えてくれ、俺はどうすればいいんだ」

「やってくれるのか……?」

「当たり前だろっ! 俺もお前と気持ちは一緒だ!!」

「…………ありがとう、ありがとう」

 未来の俺は袖で涙を拭って立ち上がった。

「だけど少し時間が欲しい。多すぎて紙にでも書かないと覚えきれないだろうから、書き出す時間が欲しい。とりあえずそろそろ風呂の空く時間だから、行ってくるといい。その間に書いておく」

「ああ、分かった。紙とペンの場所は分かるよな?」

「あったり前だろ? 俺はお前なんだからな」

 冗談めかして言うと、未来の俺も笑いながら答えた。そのことに俺も笑う。

「だな。じゃぁ俺は風呂に行ってくる」

「ああ、行ってこい」

 未来の俺に見送られ、部屋を後にする。

 さて、明日に備えてしっかりと温まらないとな。

 

 

 

 

 風呂から上がり、部屋に戻る。

 すると未来の俺は椅子に座って俺を待っていた。

「書き終えたから、しっかりと確認して欲しい」

「ああ、ありがとう」

 受け取り、ベットに座る。

 そして明日の俺の死ぬ可能性リストを、未来の俺の補足を聞きながら確認する。

 

・7:00くらい。通学中、2つ目の信号で信号待ち中に車に突っ込まれる。

・その後、歩道橋を降りる際に死角にあった空き缶を踏みつけて落下。

・4つ目の信号を渡っている最中に信号無視の車に突っ込まれる。

・文化祭のゲートの飾りの一部が落下し頭に当たる。

・出し物の最終確認で家庭科室に向かう際の階段で、後ろから他の生徒が運んでいた際に落下した荷物が当たり、落下。

・家庭科室で火のチェック中に服に引火。

・文化祭が始まってすぐ、客の煙草の吸殻が服について引火。

・お化け屋敷へと向かう途中で階段にこぼれていた水により足を滑らせて落下。

・お化け屋敷の中、驚いたはずみでガスの線が開き室内に充満。それによる酸欠。

・バスケの最初の試合中、反対側コートの選手のパスが後頭部に直撃。

==================〔中略〕======================

・川のあたりで散歩中の大型犬に襲われる。

・公園付近で走行中の車のタイヤがとれて直撃する。

・3つ目の信号でトラックの横転に巻き込まれる。

・保育園近くの交差点を過ぎたあたりで電線が切れて当たる。

・家への最期の曲がり角、バイクに追突される。

・家の玄関手前で通り魔に首を刺される。

 

 読み聞き終えて、あまりの多さに頭が痛くなる。

 しかし俺はこれを全て回避し続けなければいけない。死んだ未来の俺たちの為に、今の俺の為に、これからの俺たちの為に。

 そしてななちゃんや、母さん父さんの為にも必ず成功させなければいけない。

「……よし、分かった。絶対に乗りきって見せる」

「ああ、頼んだ。ちなみに明日はななちゃんが迎えに来てくれるけど、1分待ってもらう事。そうやって最初の車は回避し続けてるから」

「分かった。でも明日迎えに来てくれることを先に言われて少し残念な様な嬉しいような……複雑だ」

 言われなければ明日の登校中は最高の気分だっただろうなぁ……とは思いつつも、贅沢言っている場合ではないか。

「全く以てその通りなんだが……すまん。早めに言っておくべきだと判断してな」

「まぁ仕方ないだろ。少し嬉しさが減っても嬉しいもんは嬉しいし、やっぱり嬉しいよ」

「だよな~。思い出すだけで頬がぁ……うへへへ」

「うんうん、分かる分かる。朝からあの笑顔を見れるだけで幸せだよなぁ~……うへへへへ」

 互いに頬を緩めて気持ち悪いくらいにニヤける。

 

 でもそれも仕方のないことだ。それくらいにななちゃんは天使、いや女神だ。もう内面も外見も可愛すぎて可愛すぎて……あぁ、思い出すだけで癒される。

 だからこそ本人にこの「好き」という気持ちを悟られないようにするのは大変だ。もう隠してもあふれ出ているようで周りにはバレバレみたいだけど、幸い本人には気づかれてないしセーフ。

 それでもいずれは告白を――――

「……」

 ――――告白を、したいよなぁ。

 でもそれは明日じゃない。明日は俺がやるべきことをしっかりとしないといけないからな……それに、万が一死ぬ可能性もある。だったらなおさら告白するわけにはいかないだろう。

 

「よし。今日はもう明日に備えて寝ようか」

 浮つく気持ちを切り替えて、引き締める。

 いつまでもフワフワしているわけにはいかないからな。

「だな。それが良い。体調は万全にしとくべきだ」

「……ちなみにお前はどこで寝るんだ? 俺はベットで寝るつもり満々だが」

 体調の事を考えれば俺がベットで寝るのが一番のはずだ。そこは未来の俺も意義は無いだろう。

「もし母さんとかに見つかると不味いしな。押入れの中で寝させてもらう」

「そうか。じゃぁ電気消すぞ」

「ああ、おやすみ。明日は頑張ってくれ」

「もちろんだ。おやすみ」

 そう言って電気を消す。

 当然のように辺りは闇に包まれ、未来の俺が押入れに入った後は静寂が訪れた。

 

 ……起きた時には明日だ。明日で全てが終わってしまうかもしれない。

 それでも今までの未来の俺たちの死を無駄にしない為に、俺たちの未来を繋ぐ為に、明日をやり抜かなければいけない。

 決意を胸に、眠る事に意識を集中する。

 そうして次第に意識は眠りに落ちていった。

 




全部書き終えているので、
今日中にすべて投稿できればと思います。
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