区切りの都合上少し少なめ。
「ん……」
翌朝、起床。
時計を見るといつもより少し早めだが、申し分のない良い気分の目覚めだ。体調に問題はないだろう。
とりあえずカーテンを開けて部屋に光を入れる。
「……さて」
未来の俺はまだ寝ているんだろうか? ……というか、未来の俺は何も食べなくて平気なのだろうか? 昨日は何も食べずに寝たはずだしな。
とりあえず起きたら聞いてみよう。
「それよりも今は……今日の行動の確認か。なるべく覚えておかないと咄嗟に反応できないかもしれないし」
……それに、もし俺が死んだ際に次へと繋げないといけないからな。頭の中に全て記憶する位しないと。今までの俺たちの行いを無駄にするわけにはいかない。
大丈夫。未来の俺にできたんだ。今の俺にできないわけがない。
「そうと決まれば早速……」
机に向かって昨日の紙を見直す。
どれもがこれから起きえる事なのだと、未来の俺たちが経験したことなのだと、心に言い聞かせながら頭に刻み込んでいく。
そして、暫く経ち。
「ふぅ……そろそろ朝飯か」
大方覚え終わったところで時計を確認すると、良い時間だ。少し早いけど朝飯を食べに行かないと。
未来の俺は寝てるのか起きてるのか分からないが、まだ押入れから出てきていない。しかし自主的に下に行かないと母さんが起こしに来るしな。未来の俺がいる以上、なるべく部屋に人はいれないべきだろう。
でも一応声はかけてから行かないとか。
「起きてるかー? 俺は朝飯食べに行くしなー」
「おー。しっかり食べとけよー」
「……起きてたのかよ」
「まぁ、なるべくお前が下に行ってから出た方が安全だと思ってな。なにより未来の俺たちがそうしてたし」
「そうなのか……あ、そう言えばお前は何も食べなくて平気なのか?」
危うく聞き忘れるところだった。覚えるのに必死で忘れかけてたな。
「あぁ、大丈夫だ。原理は知らんけどお腹が減る様子はないぞ。もしかしたら人形使ってたし、元が人形みたいなもんなのかもしれないな」
「あー……そういえば使ったな。アレか」
「そうそう。アレ」
儀式の時に使った人形を思い浮かべる。確かにあの後、皿と魔方陣以外はなくなってたしな。人形が含まれていることは確かかもしれない。
……ってことは人体蘇生と書きつつ、完全に「人体」と言う訳ではないのか。もしくは「人体」だったものを蘇生するとか? まぁ、さして気にすることではないと思うけど。
「ん~……ま、とりあえず飯食ってくる」
「あぁ。しっかり食っとけよー」
未来の俺の声に送られて部屋を後にする。
少し引っかかる事はあるけど今はこれからの事に集中しないといけないしな。しっかりと食べて、英気を養うとしようじゃないか。
リビングに下りると、当たり前の事だがすで母さんが朝飯の支度をしていた。
「おはよ~」
「あら、おはよー。今日は少し早いじゃない」
「……まぁ、ちょっと」
何と言っていいものか……いや、単純に「何か早く目が覚めた」と言えば良かったのだろうけど。
「あー、もしかしてぇ……」
「な、何?」
すると母さんが何を悟ったのか知らないが、意地の悪い笑みを浮かべている。
……嫌な予感がするのは気のせいか。
「今日の文化祭、ななちゃんとまわるのが楽しみ過ぎて寝つけなかったんでしょー」
「ぶっ! ななん何で知って――――」
このことは誰にも言っていないはず! いや友人たちには言わなくてもバレてたけれどもっ!! ……はっ、なら友人たちが発生源か!? 口止めはしたはずなのに……。
「この前、買い物の帰りにななちゃんにバッタリ会ったのよー。その時すごく嬉しそうに話してくれたわよ~」
「ぐっ……そう、なんだ」
ななちゃんなら仕方がない……いいやむしろ、嬉しそうに話してくれていたことがものすごく嬉しくて堪らない!
しかし表情に出るのは我慢しないと……! さらに弄られてしまう……!
「と、言ってる間にもご飯で来たわよ。運んじゃってくれるー?」
おお、俺を弄りながらもちゃっかりと朝ごはんの支度をしてくれていたみたいだ。
矛先を逸らす意味でもしっかりと返事をしておこう。
「りょーかーい。そう言えば父さんは?」
「今日は休みだからまだ起きてないわよー?」
「そうなんだ」
言いつつ、しっかりと母さんと俺の分の朝飯をテーブルに運んでいく。
そして朝飯の準備が整った。
今日はマーガリンを塗ったトーストと、ハム2枚。牛乳とバナナ1本。おおよそいつも通りの朝飯だ。
「「いただきます」」
テレビのニュースを見ながら、黙々とトーストを齧る。若干焦げている部分が香ばしく、美味しい。
これがもしかしたら最後の……晩餐? 晩じゃないから朝餐? いやこの際どっちでもいいんだけども……兎に角、ただのトーストと侮ることなかれ。しっかりと味合わなければ。
「……」
しかし食べ終わるのは早いもので、10分もしないうちにすべて食べ終わってしまった。
「ごちそうさまでした」
「はーい」
食器を流し台に持って行き、水を目一杯入れておく。
そして心の中でもう一度、「ごちそうさまでした」と呟くのであった。
洗面所で歯磨きも念入りにして再び部屋へ戻ると、未来の俺がベッドに寝転がりながら漫画雑誌を読んでいた。
……いやいいけど。
「おー、食べ終わったか」
「あぁ、美味かったぞ」
「知ってる……っと!」
未来の俺が反動をつけて起き上がり、胡坐をかいて座る。
俺はその正面の椅子に座った。
「とりあえずまだ時間はあるだろ? これからの行動の確認でもするか? それともリラックスの為にゲームでもやるか? どっちでも付き合うぞ」
「……未来の俺的にはどっちにしたんだ? なるべく行動は合わせた方が良いんじゃないのか?」
その為にわざわざ俺が部屋から出るまで押入れにいたわけだし、そう言うのって大事だと思うんだが。
「まぁー俺は行動の確認をしたけど、覚えるのが1つ多い分、根を詰め過ぎると逆に駄目になるかもしれないし。1つとは言え大きな差だと思うぞ」
「確かにそれはあるな……」
1つ多い時点で、すでに未来の俺がたどった
「つっても、逆にゲームするには時間が少ない気がするんだが」
ななちゃんが来てくれるまで後10分くらい。ゲームをするには足りなすぎる時間だと思う。せめて30分は欲しいかな?
「言われれば確かに。じゃあ漫画でも読むか?」
「中途半端になると気になっちゃいそうだしなぁ…………と言うか、そうこうしているうちに時間が迫っているんだが」
時計を見ると既に3分は経っている。このままだと結局何もせずに終わりそうだ。
「ならもう忘れものとか無いか確認してればいいんじゃないか? 念入りにしておく分には問題ないだろ」
「そうだなぁ……そうするか」
無理して何かをすることもないし、だったら念には念を入れるべきかもしれない。
なにより、もし忘れ物があったら大変だ。周りに迷惑をかけるだけでなく、行動が大きく変われば全てが水の泡になる可能性だってあるしな。それは避けなくてはならない。
そうと決まれば一から確認していくか。まずは鞄の中身をすべて出して――――。
「つーづーるー! ななちゃんが迎えに来てくれたわよー!」
時間が来たようだ。
しかしすぐに出発するわけにはいかない。
「ちょっと待ってー! 1分くらいー!」
「早くしなさいよー!」
「わかってるー!!」
準備は既に終えているのにななちゃんを待たせることを心苦しく思いながら、今すぐに玄関へ行きたいと焦る気持ちを抑え込む。
早く顔を見たいし、速く声を聞きたい。それでもここは我慢しなければ……。
「とうとう時間だな」
「あぁ」
時計を見て、未来の俺の真剣な顔に頷く。
あの秒針が一周すれば始まりの合図だ。不安が無いと言えば嘘になるが、やりきる以外の道は既に無い。
「俺にできたんだからお前にもできる。まぁ、項目は1つ多いけど……大丈夫。
「ははっ……そうだな。
冗談ぽく言いながらも力強い、その言葉に励まされて決心を強くする。
「あぁ、その通りだ」
「……ちなみに、俺が学校に行ってる間はどうするんだ?」
「誰かに見つかったらまずいかも知れないし、大人しく部屋で待機してる」
「そうか。それじゃぁ……」
時計を見ると後10秒。
「行ってくる」
俺は右手を差し出した。
「あぁ」
その手を未来の俺が握る。
「行ってこい!」
手が離され、声に見送られ、俺は部屋を後にした。
玄関に到着!
扉を開ければその向こうにななちゃんがいる。そのことを想像しただけで気持ちは浮ついてしまう。
しかし、ここからは周りに警戒しつつもななちゃんに心配をかけないようにいつも通りを心掛けないといけない。ならばしっかりと気持ちを引き締めていかないとな。
「……よし」
いざ、ななちゃんのもとへ――――。
次は昼食後かな……。