【凍結】 真・恋姫†無双    これはひとりの仙人無双   作:成瀬草庵

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少年のひと時

風がゆるやかに吹きわたる中、おおよそ30m程先の的を狙って弓を構える。

弓の形状は弓道をやっていた頃のものとは全くの別物だ。

だが、そこまで困ることもなかった。というのも、狩りの時に使用していた弓と形状がほぼ同じだったからだ。

2つの的が並んでおり、左側の的は秋蘭が使っている。そこからは先ほどから乾いたいい音を鳴っていてほぼ真ん中に全ての矢が命中している。

未だ2桁に及ばない年齢で8歳。だというのによくもまあこんなに命中させるものだと思う。

俺は10歳だがな・・・・・・・。

武器を持たされてからなん年も経っている。賊の討伐に参加して人も殺した。どうやら我らが当主殿は俺を出すことをあまり良しとしていないようだったから、大方本妻殿の策略だろう。

俺が初陣を飾ることになった理由の大きな点が文官系の者たちの推挙だったようだしなぁ・・・・・。

まあ、俺の使う弓という武器は当然のことながら遠距離からの攻撃が可能な武器であるから、人が死ぬ瞬間の姿を間近で見るということはなかった。これまでに、人以外の生き物ならなんども殺しているから慣れているつもりだったが、わずかに体が震えていることに気がついた時は驚いたものだ。

今更命を奪うことに・・・・・・・・・。

などと自嘲してみたものの、しばらくは震えが止まらなかった。

とはいえ、既に慣れた。賊といっても、今のところは50人以下の賊の集団しか領内にはいない。

それ故に、前線の兵士が激突する前に敵を減らし、激突してからも的確な狙撃で少しずつ減らしていけばいいだけだ。

だから俺のいる後方まで敵が来ることはない。

まあ、来たら来たで腰に帯びている短剣で喉笛を刈っ裁くけどな・・・・・・・・・・・・・。

また乾いた音、と言ってもこれまでとは多少違った音だったので横の秋蘭の的を見ると、中央に刺さった矢を二つに引き裂いて新たな矢が刺さっている。

「ほぉ・・・・・・・・・」

感嘆の声が自分の喉から溢れ出ていた。

なんども射っているとはいえ、一度だけでなくなんども中央に当てているということは事実だ。

「紅龍さまは撃たなくてよいのですか?」

「いや、撃つさ・・・・・。ただ、お前の射る姿が綺麗だったから見とれていただけだ」

さすがにそろそろ射ろうか。

完全に感覚も戻ってきたことだが、さすがに本気で射る姿を見られるのは拙い。

適度に外すか・・・・・・。

左で固まっている秋蘭はとりあえず放置だ。

紅龍は矢をつがえると、最初ぐらいはいいだろう、と心の中で呟き、風を肌で感じながら目を的に向ける。

弓を引き絞り、手を離す。

そこから放たれた矢はまるで光線のように直進し、的の中央に突き刺さる。

第二射は、外すか・・・・・・。

今度は先ほどとは違って中央ではなく、円形上の的の左斜め下を狙う。

動作の全てがつながり、流れていくかのように弓が引き絞られ、放たれる。

矢は一瞬の躊躇もなく飛び立ち、紅龍が狙ったとおり、的の枠ギリギリに突き刺さる。

この鍛錬の本来の目的は的の中央にどれほど寄せて射ることができるかというもの。紅龍が撃った今の矢は、良いとされるものではない。

しかし、一切の感情を顔に出すことはなく、また次の矢を掴み取り、つがえ、放つ。

そしてまた次の矢を、また次の矢を・・・・・・・・・・。

と、一切流れが止まることなく射続ける。

飛び立っていった矢は的から完全に外れ、地面に刺さっているものある。

だが、それら全ては紅龍が狙ってやったことだった。

「なぜ、的から外すのですか・・・・」

紅龍の背中に問いかけが投げかけられる。

「なんのことだ?」

「わざと外しているではないですか、周囲の人たちはあなたを馬鹿にしますが、実際はあなたは賊の討伐時にも味方への誤射もなく、賊から外した矢もない。そして今も外しているように見せているようで全て狙ってやっている。一体何が目的で・・・・・」

やっぱりごまかしきれないか・・・・・・。

華琳や春蘭なら誤魔化せるし、ほかの家臣団も見事に騙されてくれていた。

ただ、残念ながら弓矢の名手までを誤魔化すことは出来なかったらしい。

どうせ手の動かし方だけで射線を見極めているのだろう。俺もよくやるが、それはあくまであの神界で身につけた技術だ。

たった数年でそこまで到れるような技術ではなかった。

やはりこの世界の武将は恐ろしい。

「秋蘭、他の奴には絶対に言うなよ。たとえそれが華琳であったとしても、だ」

「はぁ・・・・・・・?」

どこか腑に落ちないんだろうが、今はこれでいい。

何もまだ年若いこいつらに家督とかそういったものを気にさせる必要はないからな。

 

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