【凍結】 真・恋姫†無双    これはひとりの仙人無双   作:成瀬草庵

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吹雪の中で

猛烈な吹雪が視界を遮る。

 

一寸先は闇という言葉があるが、目の前に広がっているのは闇などというものではなく、完全に白い世界。

この領域に入ったときは転生した時にあった神のいた場所に飛ばされたかと思ったが、体中にぶつかる軽い雪の衝撃と音でそうではないと判断できた。

今やっていることは正直言って鬼畜な所業だといえる。

この全く見えない状況下の中、幻獣の攻撃を躱しているからだ。

「っ!!」

なぜいるのかわからないものの、ケルベロスのような三頭犬が横から飛びかかってきて、紅龍はしゃがみ込んで回避する。

そして、そのすぐあとに頭上を巨体が通り過ぎていった。

紅龍はケルベロスの着地した場所を吹雪の音の中にわずかに紛れ込んだ足音から判断して一気に詰め寄り蹴り飛ばす。

今残念ながら彼は武器を装備できていない。

あくまでここにいる獣は全て茨木華扇のペットや友人たちだから、殺すわけにはいかないために武器の装備は禁止されている。

紅龍は足に感じた感触で正確にケルベロスを捉え、戦闘不能にできたと判断すると、新たに頭上より現れた敵と、横から飛びかかってきたケルベロス以上に巨大な敵を感じ取り、雪を撒き散らしながら仙術を使った高速移動を行う。

 

ズドォォォォォォォォォン

 

壮絶な音と振動が紅龍を襲うが、彼は全くとして動じない。

ただ彼はそこから現れる敵に対して警戒を解くことはなかった。

『GOOOOOOAAAAYAYAAYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA』

『GUWOOOOOOOOOOOOOO』

吹雪が二匹の獣のすさまじい咆哮によりかき消される。

時折、こういうことがある。この吹雪は自然によるものではなく、神達や華扇によって作られた仙界で、作られた天候であるために意図的に消されることがある。

そして、こうやって消えるときは敵が強力な場合が常である。

「おいおい、冗談だろ・・・・・」

紅龍ですら思わず背中に冷たいものが走り、言葉が漏れていた。

目の前に相対する敵は二匹で、一匹は真っ白な体毛で包まれた通常の猿の数倍の巨体を誇るドドブラ〇ゴ、もう一匹は虎柄にも見えその凶暴な性格により恐れられる轟龍ティガレ〇クス。そう、某怪物狩りのゲームで登場する怪物たちだ

「いくらなんでも、武器なしで同時にかよ」

気や仙術による大火力攻撃は殺してしまう可能性があるために使うわけにはいかない。

回避などには使っても大丈夫だろうが・・・・・、火力がなぁ・・・・。と紅龍の顔は物語っていた。

それ以前に、彼の心の中は華扇がなぜこんな凶暴かつ危険なペットもしくは友人を持っているのだろうかということでもあった。

「まあ、嘆いていてもしょうがないか」

紅龍の両腕に気の鎧が今までよりも一層濃くまとわりつき、黄色く発光するほどのものとすると、再び仙術を使用して一気に接近しその右腕をおおきく振りかぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁーくそったれ」

紅龍は一面の銀世界の中雪の中にばったりと倒れ、青い空を見上げながら小さくつぶやく。

そんな彼の隣には、白い巨猿ド〇ブランゴと、獰猛な轟龍ティ〇レックスが倒れていた。

開戦してから何時間たっていたのだろうか?

朝この区域に入った時には太陽はまだ上ったばかりだったというのに、かなり西に傾いてしまっている。

「そもそも武器なしでなんでこんな危険な奴らと戦うんだか・・・・・」

彼の説明をしたときにも書いたが、紅龍はオタクである。

そして、またまた綿月の影響によりゲームなどもやっていたためにこいつらの危険性はよく知っていた。

それ故に、まず相対した時に背中に冷たいものが走ったのである。

「お疲れ様です紅龍」

ふと彼の視界に影が入り込み、声がかかる。

「ありがとう。それと悪いんだけど妖夢、背負って行ってくれ・・・・・・」

紅龍は仙術や気を使いすぎたせいか、もはやつかれきっていた。

少々、眠気も意識の中に混ざってきており、妖夢と一緒に華扇の待つ屋敷にまで帰るのは危険だと判断したからだ。

普段なら、木を蹴っ飛ばして木から木へと飛び移るようにして進むことができるだろうが・・・・・・。

今日やると途中で落ちて、それに気が付かなかった妖夢に置いて行かれるという状況が容易に想像できた。

そんないつもと違ったセリフに妖夢の顔は呆れたといった感じではあった。

「しょうがないですね・・・・・・・・・」

とはいえ、妖夢も心のねじれ曲がった人物ではない。

いくら呆れても、彼をおいていくわけにはいかないと判断したのか、手をつかむと衝撃を与えないようにゆっくりと背負い、吹雪の降っていた領域を抜け出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢が鍛練を終えた紅龍のところにやってきていたのには二つの理由があった。

一つはいつもと同じく、やさしく迎えるため。

もう一つは、この仙界に、崑崙山に侵入者が現れたからである。

初めて紅龍がここを訪れたときにも指摘したように、この仙界を包み込む結界は非常に不安定だ。

そのため、全然関係ない土地を歩いていたらここに飛ばされる可能性もある。

もしくは、意図的に結界の合間を通って紅龍のように仙界にやってきたのか・・・・・・・・。

そうなればなぜやってきたのかということや、どうして入り方がわかったのかということが問題となる。

とりあえず、侵入者であることには変わりないので、華扇から紅龍を連れてくるように頼まれたのだ。

「とはいえ、今の状態の紅龍はあまりたたかわせるべきではないと思いますけどね」

妖夢は背中に背負った紅龍を顔を動かして一瞬だけ見た。

・・・・・・・・・、寝ている。

神界でも別に拳法には別段重視した鍛練をしていなかった。

それは気に関しても同じことだ。

仙術でどうにか勝利したようではあったものの、なれない方法であれだけの強さを誇る獣に勝ったのだ。

こうなっても仕方がないといえる。

「まあ、今回の侵入者が敵である可能性は極度に低いんですけどね・・・・・」

外敵に敏感な最高峰の仙人の笑顔を思い出し、思わずため息をついてしまった妖夢であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは・・・・・・・・・」

私は賊の襲来で兄を失い、村の人たちからも見放され、ただ一人荒廃した土地を歩いていたはずだった。

ここ数日何も飲まず、何も食べていなかった。

街道沿いに歩いていけば何かあるかと思い、歩いたものの、あったのは無残な人の骸だけだった。

何かを口にしなければ死んでしまうと思ったとき、運よく水の流れる音が聞こえて、川があることに気が付いた。

とりあえず水を口にしようと判断した私だった・・・・・・・。

水を一口飲んだ後は再び涙がこぼれていた。

兄さんにはもう二度と会うことができないのだということを、水面に映った私の姿を見てなぜか実感した。

そして、これ以上生きながらえても何もできないと思った私は川の流れの中に飛び込んだ・・・、はずなのに。

「なぜ山に私はいるんだ?」

そう、木々が青々と生え、動物や鳥の鳴き声も聞こえる大きな山の中にいた。

 

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