【凍結】 真・恋姫†無双 これはひとりの仙人無双 作:成瀬草庵
紅龍は一体何が言いたいんだ
私の刃のどこに迷いがあると・・・・・・・・・・。
関羽は一人青龍偃月刀を振るう。
彼女の戦い方は紅龍や妖夢とは違う。
後述の二人は舞うように、流れるように戦う柔の戦い方だ。
それに対して、関羽は力をメインとした剛の戦い方である。
どちらのほうが強いという明確な区分はないうえに、そんな格付もない。
だが、この崑崙山においては柔の戦い方をするものが多い。
関羽を抜いた剛の戦い方の代表例といえば、この山でならば華扇なのだが、普段は誰とも戦おうとしないうえに、武器を使わないから手本とするわけにはいかない。
「私の、私の何がおかしいのだ・・・・・」
力任せに振るわれた青龍偃月刀が近くにあった樹に当たり、刃が深々と突き刺さる。
そのことに一瞬はっとした関羽は、抜こうとするものの、よほど上手く突き刺さったのだろうか?
それとも関羽の迷いの大きさを表しているのだろうか?
一向に抜ける気配はない。
「くっ」
次第に関羽の顔も歪んでいき、苛立ちのと悲しみの混ざったような不思議な表情になっていた。
「関羽、どうしたの?」
「華扇様・・・・・・・」
そんな関羽の様子を見かねたのだろうか?
華扇がどこからともなく現れていた。
彼女の移動法は仙術による瞬間移動のようなもののため、突如後ろから現れたりすると紅龍ですら察知できずに心臓に悪いと呟くのだが、今の関羽にとってはそんなことはどうでもいいらしい。
「紅龍に、刃に迷いがあると言われました・・・・・・・」
「迷い、かぁ・・・・・・・」
華扇もこっそりとこの山の全域を見渡しているとは言っても、あくまで仙人であって武人ではないために、紅龍がなんのことを指して迷いと言っているのかがわからない。
ただ、ひとつだけ分かっていることと言えば、先ほどの立会い稽古の最中にそれを指摘したということ。
つまりそれは、関羽の刃の迷いが彼女の武に何らかの悪影響を施しているということなのだろう。
「仕方がないですね」
華扇はそう言うと樹に刺さったままの青龍偃月刀を右手で掴み、力任せに引っこ抜く。
自分の抜けなくて苦戦したものをあっさりと引き抜いてしまった華扇の力に、関羽はこの人は仙人であって常識で当てはめてはダメだと言い聞かせながら、何をするのかと彼女の様子を伺う。
華扇はそんな関羽の視線に気がついたのか少しだけ微笑むと、関羽に向かって青龍偃月刀を投げた。
「私に向かって振ってみなさい。そしたら私でも何かわかるかもしれないわ。あくまで私は仙人であって武人ではない。だから私では紅龍が何を言いたかったのか理解できないかもしれないけれど、やってみないよりはましでしょう?」
「は、はいっ」
華扇の行動は回避行動にしては僅かに遅れていた。
それは、華扇の思い込み、油断が招いた結果だったのだが、簡単に言うと関羽の斬撃をあたる寸前まで自分の体に近づけてしまったことだ。
見ているのと、実際にやるのとではやはり違うところもあるのだと華扇は思い、関羽は関羽でやはり華扇様は強いと実感しなおす。
だが、関羽がそんな風に思っているのと裏腹に、思いのほか華扇は困っていた。
今の初撃で分かったものの、想像以上に強かったために自分がどう対処しようか悩んでいるのだ。
本気になるわけにはいかないし、かといって中途半端ならば自分が死ぬ。
「・・・・・・・・・紅龍はこれのどこが気に入らないの」
確かに多少の違和感はあるけど・・・・。
人間としては十分のはず。華扇の頭の中には一番最初にこの言葉が出てきた。
だが、紅龍はそこまで大それたことを言うような人物ではないことを知っている。
だから、この小さな違和感に何かがあるのだろうと判断する。
だったらそれを見極めてこそ、と思い立ち、関羽の2撃目を待つ。
華扇の首めがけて青龍偃月刀が振るわれ、ギリギリになって彼女はよける。
「ああ、紅龍が気に入らないのはこれか・・・・・・」
まさに一瞬だった。
仙人としての身体能力のハイスペックと、ただの人間の身体能力のノーマルスペックの間に生じる差のお陰か、それとも華扇が聡明なおかげなのか、しっかりと関羽の斬撃を目で追った彼女には一瞬で理解ができた。
理解ができた理由は違えど、出てくる結論は同じである。
「関羽、人を斬れないんでしょ」
「はいっ?」
華扇の言葉に、なんともとぼけた感じの関羽の言葉が漂った。