【凍結】 真・恋姫†無双 これはひとりの仙人無双 作:成瀬草庵
「紅龍が嫌がるのもわかるかなぁ・・・・・・、あなたをこのまま崑崙山から出すとすぐに死ぬ気がするわ」
華扇は露骨に嫌そうな顔をしながら関羽を見る。
関羽の顔は驚愕といったというよりもなんのこと?
といった疑問の方で染まっている感じがするので、おそらくは気がついていなかったのだろう。
「刃がほんとにわずか、私に向かって振られてる最中に寸止めが必要な距離まで近づくと減速してる」
「え、そんなことは・・・・」
「あなたが気がついていないだけ、無意識の内にそうしてるわ」
「そんなっ!?」
・・・・・・・・・・・・・・・。
ダメだこりゃ。
まさしくそれを身振りだけで華扇は表す。
片手は額に当てられており、もう片方の手はぷらぷらと振られる。
この態度だけでもわかるかもしれないが、華扇は案外態度に出たり、露骨にしたりと、感情を隠さないタイプである。そのせいか、この山の人員を拾った初期の頃から話すのを嫌がられていたりもする。
はっきり言うその態度を嫌がらないものは数が少ない。
紅龍や妖夢、鳳凰と蔵六程度のものだ。
残りの者たちは悪い人ではないとわかっていても、とちょっと敬遠しがちであり、関羽もそうである。
確かに優秀な人物ではあるのだが、こんなに露骨にされると、イラッとくるものだ。
ほぼ八つ当たりだったのだろうか?
やれやれと手をぷらぷらとしている華扇に向けて強烈な一撃を放つ。
華扇はと言えば、寸前で体をひねって躱していた。
「へぇ・・・・・・」
まさに黒い。
黒い笑みを浮かべた華扇は体中に気をまとい始める。
そんな華扇に対し、関羽も光を反射して輝く青龍偃月刀を目の前に構える。
「この関羽雲長が青龍偃月刀のサビにしてくれる」
「上等、この茨歌仙、名を茨木華扇。殺せるものなら殺してみなさい」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「たぁぁぁぁぁぁぁ」
神がかった速度の青龍偃月刀と、華扇の無いはずの右腕が轟音を立てて激突した。
「始まったな」
「あれすら狙いだったのですか?」
鍛錬場の近くの高い木から紅龍と妖夢は二人で関羽と華扇の激突を観戦していた。
まあ、観戦しているのは二人だけではなく、彼方此方で鳳凰を筆頭に後輩衆が観戦しているのだが・・・・。
こうも皆が皆集まって一つの闘いを観戦するというのは珍しいことだ。
ではなぜ彼らはそんなことをしているのだろうか?
理由は簡単だ。
華扇が久々に本気になって戦っているからである。
あくまで仙人という術者でありながら、武官をあっとうする武力を持つ華扇は滅多に本気にならない。
紅龍は彼女のことをおそらく仙人でありながら鬼の血族であるのではないかと勝手に思っているのだが、あっているのやらどうなのやら・・・・・・。
とまあそんな話は置いておくとしても、華扇は紅龍がそう疑うほど素で力が強いうえに、格闘戦が強い。
今まさに関羽を圧倒しているように・・・・・。
最初でこそ武器の長さと、刃物であるという特性を生かして華扇と互角近く渡り合っていたものの、それは本当に最初の数合のみ。
それ以降は華扇もわざわざ青龍偃月刀を弾きにかかることはなくなり、掴んでそのまま力まかせに振り回したり投げ飛ばしたり、体に直接掌打を叩き込んだり、気を纏った足で蹴り飛ばしたりと、まさに一方的な攻撃となっていた。
「でもこれは想定外なんですよね?」
「・・・・・・華扇がここまで本気になるとは思ってなかった」
「・・・・・・・・ですよね」
紅龍の最初の狙いからはだんだんとずれてきている。
というよりも大幅にずれてきているのだが、今の華扇の前に立つ気にもなれない。
立ったが最後、邪魔したとかで怒られて・・・・・・・・。
「最悪だ・・・・・」
「最悪です・・・・」
華扇を除いた状態でのツートップが介入できない以上、他の人員にも介入できるわけがなく。
関羽は一方的に攻撃され続けていた。
「がっはっ・・・・・」
関羽は華扇の止めの一撃といった感じの掌打を受け、ついに動けなくなった。
転がされたまま華扇は軽蔑する視線を関羽に向け、それを憎々しげに睨みつける関羽の姿といえば無残なものであった。
体中に怪我を創り、その美しい横で束ねられた黒髪もボサボサになり、汚れきっている。
服もあちこちが裂け、13歳という年頃の少女にとってはキツめの状態であった。
「わからないの?」
「何を・・・だ・・・・」
「これだけやっても無駄かぁ・・・・・・・」
じゃあ、しょうがないかな?
華扇の口が音もなくそう動いた。
「!!!、紅龍っ!!」
「分かってる」
妖夢が、紅龍が、そして崑崙山の関羽と華扇を覗いた全員の顔が驚愕に染まった。
華扇の音のない言葉とともに彼女の纏っていた気質が変わったからだ。
このまま放置すれば・・・・・・
紅龍は久々に二本の十字槍を掴むと、一気に木を駆け下りる。
垂直での駆け下り、そう簡単にできる芸当ではないが、できるようになればその加速力は半端のないものとなる。
華扇の完全に関羽を殺すために振るったであろう大量の気を纏った右腕と、紅龍の右手の十字槍が激突した。
「やっぱり邪魔をしますか?」
「当たり前だ」
まさに鍔迫り合い。
華扇はただの気を纏っただけの右腕であるはずなのに、鉄で出来ているかのように火花が飛び散っている。
しかし、どちらもいつまでもそのような体勢で決着がつくわけがないことは分かっているので、どちらも同時に大きく後ろに下がる。
紅龍は手がうっすらと汗ばんでいることを感じながら華扇から一切視線を動かさない。
紅龍は両手の十字槍を手放す。
そして、腰に帯びていた2振りの日本刀を構える。
「愛紗。いいや、武人関羽雲長。人を斬る覚悟っていうのがどういうものなのか見ていろ。そして、
俺の本気を久々に見せてやるよ、華扇」
紅龍がそう言った途端だった。
彼の周囲で高圧的な気が発生し、風の流れすら大きく変わる。
彼を中心に一瞬風の爆発のようなものが起こり、関羽の髪や、木々の葉、それぞれの服が大きく揺れる。
「楽しめそう」
「軽口が叩けるのも今のうちだけだ」
鋭い紅龍の双眼はさらに鋭くなっていく、同じように濃密な殺気も鋭く、強烈なものとなっている。
突如、轟音が周囲に巻き散らかされたのであった。