【凍結】 真・恋姫†無双    これはひとりの仙人無双   作:成瀬草庵

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第25話

忘れられているかもしれないが、紅龍の本来の戦闘スタイルは二槍流ではない。

あくまでそれは本来の戦い方を隠すための戦闘スタイルであり、普段から使っている武器であるというだけだ。

彼の本来の戦闘スタイルは二刀流である。

そして、対人戦では久々に紅龍が二本の刀を手に持ったのである。

「紅龍・・・・・」

ただ勝つだけなのであれば、妖夢も華扇の前に紅龍と共に立つべきなのだろう。

だが、何かを教える。何かを魅せるためには紅龍のあの背中の方が・・・・・・・・・。

自分が紅龍の横に立つことができないということに悔しさを感じたのか、それとももどかしさなのか、妖夢は知らず知らずの内に唇を噛み締めていた。

 

 

 

 

神速の斬撃が舞い散る。

しかし、華扇からはその程度で勝利をもぎ取れるほどは甘くない。

そこらの武官の首であればあっさりと殺れたであろう斬撃は華扇の右腕一本に弾かれる。

だからといって紅龍の攻撃は止まったりしない。

弾かれた右の刀に続いて左の刀が鋭く突きを放つ。

だが、これも届かない。

銃弾の如く飛び出た突きすらも華扇は見切り、顔をわずかに横にそらすだけで完全によけきってみせる。

そんな華扇の姿を見て紅龍は唇を歪めた。

その唇の歪みは躱されたことに対する悔しさではない。狙い通りに華扇が回避した事への歓喜だ。

左の刀は大地に対して横に寝かせたようにして突きを放っていた。

そして、横に寝かせているということは左右のどちらかに刃が向いているということになり、今刃は華扇の方向に向いている。

左の刀は横に振られる、まさに華扇のいる方向へ。

「くっ」

思わず華扇の口から苦悶の声が溢れ出た。

彼らの攻防はもはや一瞬の隙が勝敗を決める状況だというのに、自分めがけて横なぎが振り払われている。

これをどのように回避するのが一番いい道なのかを一瞬で判断しなくてはならない。

少しでも間違えれば今度は右の刀が襲いかかってくる。

華扇は距離を稼ぐためにだろうか。後ろに宙返りをして刃の隙間をぬって後方に飛び去る。

だが、彼らにとってたかだか一回の宙返りで取れる距離はないに等しい。

そして、今紅龍の右手の剣は空いているのだ。

「『燕返し』」

神界で習得した紅龍の剣術においての最高クラスの業、『燕返し』。

空間を屈折させるほどの斬撃であり、三連撃の、いいや三撃同時の剣術だ。

華扇は既にその斬撃を躱すことができない位置に居り、そのことに気がついた彼女は身体中に気を纏い、少しでも受けるダメージを軽減させる手を打った。

だがしかし、いくら防いだとしても、紅龍のこの一撃は強力である。

速度とは力となり、威力に直結する。

紅龍は自分に気を纏って速度と力を上昇させている上に、元々の速度もとてつもないものである。

挙句の果てには次元が屈折する程に達しているのだ。

その攻撃の速度はもはや・・・・・・・。

華扇に三つの斬撃が直撃し、足が先ほどまで踏みしめていた大地から離れてから

ドゴッ

というまるで何かを殴ったかのような音が辺り一帯に鈍く響き渡る。

そして、それとほぼ同時だったのだろうか?

華扇の体は先ほど強く斬られた衝撃で吹き飛ばされており、その吹き飛ばされた射線上にあった木にものすごい煙を巻き上げつつ直撃した。

「凄い・・・・・・・」

それを見ていた関羽の口からは思わずそんな言葉が出るが、それに対して紅龍の顔は苦いものだった。

その理由は簡単である。

斬撃が華扇にあたった瞬間に手に来た感触である。

まるで、暖簾を強く叩いたかのようで・・・・・・・。

「自分から後ろに下がられたな・・・・」

そう、斬り合っていたからこそ分かることだった。

華扇は受ける瞬間に気を纏うだけでなく、バックステップで宙に浮き上がりつ後ろに下がることで受けるダメージをさらに軽減させているのだ。

「まさに天賦の才なのか、それとも仙人として生きた悠久の時の間に身につけた技術なのか・・・・。どっちにせよ、まだ終わってないんだろ?」

そう言った直後だったのだろうか?

言っている最中だったのだろうか?

未だに消える気配のない煙の中から紅い気弾が放たれ、紅龍に襲い掛かった。

 

 

 

紅い気弾が飛んでくるということを、正しく言うならば攻撃が放たれることを読んでいたのだろうか?

紅龍は両手の刀を十字に振り抜き、紅い気弾を切り裂く。

だが、紅龍の顔はその瞬間に歪んだ。

先ほどの歓喜の笑みによる歪みではない、完全に・・・

「っっ!!」

うすうす、こう来るのではないかという推察はあったのだろう。

だがまさか今の華扇が自分の推察通りに完全に動いてくれる自信がなかったが故に、下手に動けなかった。

それがここでは紅龍の首を絞めることになった。

気弾が4つに割れた瞬間に現れたのは華扇だ。

華扇は紅龍が自分のはなった気弾を刀で切り裂くと判断し、その気弾を影に潜んで紅龍に接近して攻撃するという手段をとったのだ。

そしてその策略は成功し、右腕が吸い込まれるようにして紅龍の体を捉えて、掌打が決まる。

その容赦のない一撃は先ほどの一撃の鬱憤を晴らすためだろうか?

まさに先ほどと逆転したということを除くとほとんど全く同じことが起こったのだ。

紅龍の体が大地から離れ、吹き飛ばされる。

空中で体勢を整えられるわけもなく、勢いを残したまま体は宙を駆け抜け射線上にある木にぶつかる。

もちろん、華扇がぶつかった時と同様に周囲には大量の砂煙が舞い上がる。

「詰めが甘い」

華扇の顔が笑みに染まる。

「まだまだ甘いですよ紅龍。私が衝撃を殺したのに気がついたのはさすがだけど、読めないわけではない私の攻撃をまともに受けるだなんて・・・・・・」

ゆっくりと、流れるように華扇はその手を動かし、次の一撃が来ることに備える。いいや、それは違うのかもしれない。華扇の右腕には気が圧縮されていて、今にでももう一度気弾を放てそうな勢いだった。

だが、その一撃は許されない。

「はぁぁぁぁぁ」

その斬撃は、声は妖夢のものでも紅龍のものでもない。

そして、鳳凰たちのものでもなかった。

地に伏して、倒れ、最も近くから二人の戦いを見ていた関羽のものであった。

「なっ?」

まさか関羽がここで動くとは思っていなかったのだろう。

突如自分の視界に侵入してきた青龍偃月刀に焦りつつもギリギリで弾く。

だがしかし、悪手であった。今の一撃を弾くときに集中が乱れ、纏っている気も乱れた。

当然、乱れている状態で気弾として放てるわけはなく、それは反撃が不能の最大の隙となった。

関羽はこの隙を逃すまいと青龍偃月刀を薙ぎ払う。

その斬撃にもはや迷いはない。

速度が遅くなるようなこともなく、それどころか加速しているのではないかという勢いだった。

「もうっ!!」

華扇がそんな関羽に鬱陶しさを感じてイラついたせいか、攻撃が大振りになってしまった。

腕は大きく後ろに引き戻され、当たれば確かに骨が粉々に砕けるであろう量の気が右手一点に集中して、その拳は関羽に向けて振るわれた・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に甘いのはどっちだろうな?」

いつの間にか華扇の背後には紅龍が現れており、右手だけにしかない日本刀が先ほど以上に加速して振られる。

「『燕返し・陽炎』」

「っ!?」

右腕の刀は次元を屈折させ、六回の斬撃を一度に華扇に叩き込んだ。

それは華扇の必殺の拳が関羽の体に叩き込まれる前であり、その斬撃によって華扇が気を失ったことで気が霧散し、拳も関羽からはそれて当たらなかった。

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