IS<インフィニット・ストラトス>~不死鳥の羽ばたき~ 作:火の鳥
悠人は倒れた美帆の元まで走った。
「母上、母上っ!!」
悠人は傷に響かない程度に身体を揺すりながら身体の状態を診た。
(逆袈裟に切られた傷が不味い!幸い、重要臓器は傷ついていない。これならまだ止血は出来る筈!とりあえず、僕の血で出血を止めて、治癒符と治癒魔術で傷を塞がないと手遅れになる!)
悠人は先ずは美帆の着物の帯を緩めて傷口だけを外に晒す。次に浄化を傷口周りの血だけに使用して外に流れた血を綺麗にする。更に血液操作の魔術を使って、綺麗にした血液をまた身体の中に戻す。
次は水系統の魔術を使い、傷口周りを綺麗にする。次に自分の両手の平を短刀で浅く切り、自分の血を傷口に沿うように塗る。
最後に治癒符を傷口を覆うように貼って、治癒魔術を掛ける。普通の刀傷ならば、これで良くなる筈。
そう普通の傷ならば・・・・・。
「そ、そんな!?出血が止まらない!!?なんで?手順は完璧だった筈!?」
美帆の出血は悠人の血で抑えられてはいるが完全には止まらなかった。しかも、
「くっ!傷も塞がらないなんて、どうしてっ!?」
そう、何かが治癒魔術を阻害していて治癒魔術が傷口まで届かないのだ。
「まさか、これはっ!?」
悠人が原因に気づいた時、
「そうっ!!その傷は治らない!ははははははははっ!!!!」
アヴァロンはそう言い、狂ったように嗤うのだった・・・・・。
三者視点side out
アヴァロンside
私は不死鳥 美帆を切った後、直ぐに後ろに退いた。
「はあっ、はあっ、はあっ!」
息がしづらい、呼吸が苦しい!汗が止まらない、身体が震えている!!
私が勝ったはずなのに、この言いようのない気持ちはなんだ!?
まさか・・・これは、この感情は・・・!
「この私が恐怖したとでも言うのか・・・・・?」
あの時、あの朱金の瞳に!
(バ、バカな!?ありえない!!私が恐れただと!?たかが人間如きに!!!)
認めない!!認めるわけにはいかない!!!彼の地の王たる私が矮小なる人間なんかに、恐怖したなど断じて認めない!!!
そうだ!そんな存在は消してしまえば言い!無かったことにしてしまえばいい!
そう決め、前を向くと誰かが美帆の治療をしているではないか!
そして、よく見ると最優先捕獲対象の不死鳥 悠人ではないか。
(態々、向こうから来てくれるとは手間が省けますね。これで任務は完了ですね。しかし、彼は本当に5歳の子供か?あそこまで見事な治療方法は私ですら見たことがない)
アヴァロンは驚きながら、治療を見ていると。
「そ、そんな!?出血が止まらない!!?なんで?手順は完璧だった筈!?」
(そうだ、私が手を下さずともあの女は死ぬ。なんせ、閻神流の技を受けたのだから)
(そうだ!恐れる必要は無い。あの女は不死鳥 美帆はもう、助からなのだから!)
だから私は彼にこう言うのだ。
「そうっ!!その傷は治らない!ははははははははっ!!!!」
アヴァロンside out
悠人side
「傷が治らないとはどうゆうことだ!そして貴様は誰だ!」
僕は前方の男をいや、敵を睨んだ。
「ははははっ。子供にしては良い殺気を放ちますねぇ。まあ質問に答えましょう。傷が塞がらない理由は閻神流の技を受けたからですよ。そして私の名はアヴァロン」
「閻神流?聞かない、流派だな。それにアヴァロンだと!?なんでお前のような危険人物がここにいる!」
「何でここにいる、と言われましたら契約でここに来ました。契約内容は貴方の拉致と彼方の持っている『不死鳥』の強奪、後この里と関係者全ての抹殺です。それと貴方と母親は最優先で捕獲と抹殺しろと言われています」
敵はいや、アヴァロンはここを襲った理由を嬉々として語った。更に。
「閻神流は知らなくても仕方ありませんね。これは元々、流派など無く、私が古い文献を漁って、独自に作った物ですから。しかし、貴方の一族はこの技をよく知っている筈ですよ。古の時代からこの技を使う存在と戦っていたのですから」
(まさか・・・・。いや、そうじゃなければこの傷の原因は説明出来ない。くそっ!もう、存在していないのに、技術と技はまだ残っているとは)
「そうっ!闇の神と契約した闇の王たちですよ。古き時代から闇の神とこの世界の神々は争っていました。しかし、決着が着くことはなく膠着状態が数千年も続いた。業を煮やした闇の神は下界の人間から協力者を求めました。それが最初の闇の王、あの伝説の不死鳥 祐介の親友にして懐刀と呼ばれていた、神龍 裕也ですよ。彼は当時、まだ形が無かった力の形を作り、技としての基礎を作りました。そして、皮肉なことにこの技を実践レベルまで上げたのが一時期、闇側に離反し、2代目の闇の王になった不死鳥 祐介なのですよ」
奴は己が成したことのように嬉々として、狂気をその瞳に宿して語った。
「一族でも極秘の内容を良く知っているな。まあ、何処かから情報が漏れたんだろう」
「流石は幼くとも不死鳥一族の次期当主でいらっしゃる。不気味な位、冷静ですね。まあ、私はここでゆっくりと待ってますから悔いの無いようにお別れをすまして下さい」
僕は訝しんだ。何のことだと思ったが、その時
「ゆ、悠人・・・・・」
母上の声が聞こえたのだから。
「悠人・・。こ、ごほっ、ごほっ!こ、これから大切な事を話すわ。心して聞きなさい。不死鳥一族が背負っている宿命とその闇を、そして悠人に掛けていた封印を解くわ」
そう言い、母上は語った。不死鳥の意味と覚悟。一族が生涯、背負うことになる宿命。一族が過去に犯した罪。父上のこと。そして、僕のこと・・・。
「悠人が生まれて、直ぐにお告げが降りたの。それも、悠人が祐介様の生まれ変わりという、とんでもなく大きなお告げをね」
「かふっ・・・ふっ・・・ふっ・・・・!後は、封印だけね・・・」
母上は血が混じった咳を吐きながら、僕の額に手の平を当てた。
「不死鳥 美帆の名において紡ぐ。この者、不死鳥 悠人の枷を外し給え・・・・」
母上がそう唱えると頭の奥の方が軽くなった。まるで、忘れていたものを取り戻したような感覚だ。
「こ・・これで封印は解けたわ。祐介様の記憶や知識は数年で・・統合・・される・・・と思うわ。これで・・・肩の・・荷が・・・ふぅ・・・降りたわ」
「母上・・・・・・」
母上が話している間も血は流れ続けており、地面の血溜まりも止まることなく広がっていく。僕の年相応ではない、冷静な思考が告げている。もう、助からないと。
「母上、大丈夫だよ。千草おばあちゃんならこんな傷、直ぐに直しちゃうよ!」
それでも・・・どうやったって助からないと分かっていても・・・認められない・・・認めるわけにはいかない。
もう僕の顔は涙で、ぐちゃぐちゃだろう。やっぱり、どんなに大人びた性格をしてても、所詮は子供だと実感させられる。
「悠人・・・泣かないで、大丈夫だから。私は大丈夫」
そう言いながら、僕の頭を撫でてくれる。
「は・・・母・・・上・・・。死んじゃやだぁ、良い子にするから・・いっぱい勉強するから・・・だから、だから死なないでぇ・・・うっ・・・ひっく・・・・・・」
母上は泣きじゃくる、僕をあやしながら。
「悠人・・・・彼方は闇に堕ちてはダメよ・・・。怒りに・・呑まれず・・憎しみに・・・支配されず・・・決して・・自分を・・・見失わないこと・・・理性じゃなく・・・理屈でもなく・・・心で・・感じなさい・・・だから・・・悠人・・・約束して・・・必ず・・守ると・・なにものにも囚われないと、約束して悠人」
僕に言い聞かせながら、母上は頭を撫でていない方の右手の小指を持ち上げた。手を動かすことすら辛い筈なのに。
だから、僕は自分の右手の小指を母上の小指に絡めた。
「うん・・約束するよ・・母上。僕は・・怒りを呑みこみ・・憎しみを支配して・・ただ一つの自分を形作り・・理性も・・理屈も・・それら全てを心で感じ・・心で治める・・・。約束する・・・母上・・・僕は約束するよ。もう二度と過ちは犯さない」
そう言い、母上と指切りをする。
「悠人なら・・・出来る・・・いえ、悠人じゃないと・・出来ない。なぜなら、悠人は・・伝説の英雄<レジェンド・マスター>の生まれ変わりなんだから・・・・!」
そう言い、母上は僕が今まで見たことない、笑顔を浮かべる。
(母上でも、こんな笑顔をするんだ・・。でも・・何だろう?僕はこの笑顔を知っている?でも、どうして?)
ザザッ・・・・・・・・
「美帆っ、美帆っ!!起きろ、起きてくれ!!!なんで、何で俺なんかを庇った!!!」
ザッ・・・ザザッ・・・・ザッ・・・・・・
「祐介・・・良かった・・・無事だったんだね・・・・。」
これは・・・記憶・・・・?僕の前世の・・・祐介様の記憶・・・・?
ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
裕也が逝って、お前も俺を置いて逝くのか!美帆!!
「祐介・・・人間は弱い生き物なんだよ。一人では生きていけなくて、寂しがり屋で、怖がりで、泣き虫で、怒りっぽくて、彼らは力を恐れているの。力の形は何でも良いの、唯の純粋な力でも、権力でも、何でもね。彼らは臆病だから力がある人には先ず、その者の傘下に入るか、味方に引き込もうとするわ。もし・・どちらも出来なければ、彼らは攻撃するの。自分に従わない存在を、自分の味方のならない存在を」
そう言い、美帆は俺の頬を撫でる。
「だから・・・祐介・・・彼らを憎まないで・・・怒らないであげて。彼らは弱いわ。だからこそ、悪意ある存在から護らないといけないの。そんな、彼らを利用する闇から・・・祐介のような力ある存在は護らないといけない・・・・・」
「分かった・・・分かったから・・・・俺を置いて逝かないでくれ!!!友も逝き、愛する人まで逝ってしまったら、俺はどうすればいいんだ」
「大丈夫。大丈夫だよ。祐介ならきっと大丈夫。だって・・彼方は私の恋人なんだから」
そう言って美帆は笑った・・・。
ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
そうか・・。僕がそうであったように、母上も・・。なら、僕がやることは1つだ。
(お願い・・届いて!祐介様・・聞こえますか?聞こえたら・・僕の願いを聞いて下さい・・・お願いします!!どうか・・・・!!)
僕は願った。今まで神様なんて信じたことは無いけど。今だけは叶えて欲しい!!
その時・・・・・・
(まさか・・・俺にまで声を届かせるとはな・・驚いた。しかも、無意識とはいえ、俺の存在に気づくとは恐れ入ったよ。悠人)
奇跡は起きた。
(祐介様・・?)
(おう。しかし悠人お前、運が良いな。後1年もしたら俺の人格はお前と統合していたからな。タイミングが良いと言うかなんと言うか、末恐ろしい後継者だよ。悠人)
祐介は溜息混じりにそう言った。
(とりあえず、俺が表に出ればいいんだな?)
(はい。そうなんですけど、出来ますか?)
(問題ない。この位は簡単だ。悠人、俺に続けて唱えろ)
(分かりました)
(我は唱える、古の言霊を)「我は唱える、古の言霊を」
いきなり、詠唱を始めた僕に母上は、
「え?悠人・・何を・・・?」
困惑した表情をした。
(我は夢幻を司る魔神なり)「我は夢幻を司る魔神なり」
(心の泉を開いて、光を掴む)「心の泉を開いて、光を掴む」
(心は鏡、魂は剣、体は勾玉なり)「心は鏡、魂は剣、体は勾玉なり」
ア マ テ ラ ス ア マ テ ラ ス
(天照大神の鏡よ、今こそ我が命に答えよ)「天照大神の鏡よ、今こそ我が命に答えよ」
(陰陽鏡<ミラー・マインド>)「陰陽鏡<ミラー・マインド>」
悠人side out
祐介side
う・・・・、光を浴びるなんて、数十年振りだな。しかし何とか、成功したようだな。
(祐介様。成功したんですか?)
(成功だ。自分で身体を動かせないだろう?)
(あ、本当だ)
(じゃあ、ここからは悠人の望み通りに俺が話すな)
「こほっ・・ゆ・・悠人?いきなり、魔術を使うなんてどうしたの?」
美帆はまだ、俺だとは気づいていないようだな。
「こほん・・・久しぶりだな、美帆」
「え?美帆って!?ええっ!!」
おーー、おーー、いい感じに混乱しているな。
(祐介様って実は悪戯好き?)
「まあ、混乱するのも分かるが少し、落ち着け。美帆」
「こ、コラ!母親を呼び捨てにするんじゃありません!」
「とりあえず、治癒<リーラ>」
「こらー、スルーすんじゃ・・・・えっ!?」
美帆は驚いてるな。まあ、いきなり出血が止まれば驚くか。
だが美帆の身体はもう、手遅れだ。身体の8割近くが呪いに蝕まれている。
「美帆・・・これから話すことは全て、真実だ。心して聞いてくれ」
「えっと・・・うん」
「よしっ。先ずは俺は悠人ではない。不死鳥 祐介だ。今は悠人と人格を入れ替わってもらっている」
「その証拠はあるんですか?」
美帆が、疑わしそうに聞いてくる。
(まあ、疑って当然か)
「良いだろう。俺が祐介だという、その証拠を見せよう。お前の本当の名を当てよう・・。旧姓、田村 美帆・・お前の前世の名前だ」
祐介side out
美帆side
「良いだろう。俺が祐介だという、証拠を見せよう。お前の本当の名を当てよう・・。旧姓、田村 美帆・・お前の前世の名前だ」
え?何で!?何で、悠人が私の前世の名前を知っているの!?
「ざ、残念でした。私の旧姓は田村じゃありません。私の本当の旧姓は・・・」
「知っている。今世の旧姓は山里 美帆だろ?」
な・・何で、分かるの!?
「そりゃあ恋人だからな。その位、分かるさ」
「いきなり、心を読まないで下さい!」
一体、何なの!?この子、悠人じゃないの?じゃあ、一体誰なの?
「まだ戸惑っているみたいだが、もういい加減に気づいているのではないか?」
「そ・・それは・・。ほ・・本当に祐介なの?幻覚じゃないよね?」
「幻覚や夢でもなく本物だ。それでも、信じられないなら・・・・」
そう言い、顔を右手で覆い、退けるとそこには両眼を蒼眼にした悠人が私を見ていた。
「その瞳・・・まさか」
「神龍一族の蒼き眼、俺の力を継いだ悠人でもまだ瞳の完全開放は出来ない。仮に出来たとしても数分が限度だろう。神龍一族の力を完全に扱えるは現時点では俺だけだ。」
「ゆ・・祐介!」
そう言うと、私は祐介にゆっくりと抱きついた。
「美帆・・・・・」
祐介も私の背中に腕を回しくれた。(子供の身体だから完全には届かなかったが)
「美帆・・・再会していきなりだが、君の身体についてなんだが・・・・」
祐介が悲しそうに言っているが・・・・私は。
「分かってる・・・。私の身体がもう長く持たないことも・・・・」
「知っていたのか・・・・」
祐介は驚きながら、言ってくれた。
「うん・・・。いきなり、出血と痛覚が消えた時は驚いたけど、段々と自分の身体が何かに蝕まれていくので気がついたわ。ねぇ、祐介・・・そうでもしなければ、満足に身体を動かせないほど酷いのでしょう?私の身体は」
「その通りだ・・・。外傷は問題無いが身体の中が問題だった・・・。普通はこんなにも早く、闇の呪いが進行するのはありえない。推測だが美帆が斬られた時に切っ先が僅かに心臓を浅く切っていたのだと思う。幸いにも、脳に行くまえに呪いの進行を止められたが、もう身体は・・・・・」
祐介は悔しそうな顔でそう言った・・。
「祐介・・・気にすることはないよ。どのみち、斬られた時点でもう助からなかったのだから・・・・・」
「だが・・・君をまた、救えなかった!!もっと早い段階で悠人と入れ替われていたら、君を助けられた!助ける・・・ことが出来た・・・・・」
祐介は辛そうに・・後悔するように・・声をだす。
「それは祐介の・・・いいえ誰のせいでもないわ。ただ・・・私が未熟だっただけ・・・」
そう言って、私は微笑む。全て・・・許すかのように。
「何で君は・・・美帆はそんな顔が出来るんだ・・・笑えるんだ・・・。また、死ぬんだぞ?何で・・・何で、そんな満足そうな笑顔が浮かべられるんだ!」
「何で?それは簡単だよ」
私は祐介の眼前に右手の人差し指を掲げて見せて
~また、大好きな人に看取られて逝けるからだよ~
それを聞いた、祐介は・・・静かに・・・涙を流した・・・。
「全く・・・お前は今も昔も・・変わらないな。自分が死んでしまうというのに・・・・」
「ごめんね・・・こんな役回りをさせて」
「ふ・・まあ、良いさ。前と同じだ。だが・・・今回は前と違って・・・・」
~笑って、お前を看取れるからな・・・~
祐介は・・・悲しそうだけど、吹っ切ったかのような笑顔でそう言ったくれた。
その時・・・。
あれ・・・?おかしいな・・・なんで・・祐介の顔が曇って見えるんだろう?
どうしてこんなにも胸が苦しいの・・・痛いの・・・・?
あ・・そうか・・。私、泣いているんだ・・・悲しんでいるんだ・・・・。
「そっか・・・私・・祐介とまだ、生きていたいんだね・・・。一緒の居たいんだ・・・」
あれ?なんか、祐介「珍しい物でも見た」ような顔をしている・・。失礼ね。私だって、人並みに泣いたり、悲しんだりするわよ。
「全く・・やっと泣いてくれたな・・・。美帆はいつも悟ったように、自然に感情を隠してしまうからな。その感情を引っ張り出すのは一苦労だったよ」
「そ・・そうなの?し・・・知らなかったな・・・・」
私は・・涙腺が決壊したかのように泣いた・・・。
これまで泣けなかった分まで泣いた・・・。
悲しいけど嬉しいという矛盾を抱えながら・・・・・・・。
「落ち着いたか・・・?」
祐介が私の髪を撫でながら聞いてきた。は、恥ずかしい・・・///
「あ・・ありがとう。祐介・・・」
「この位、別に良いさ」
そうやって、お互いに静かに笑い合っていると・・・。
私の身体からゆっくりと力が抜けていった・・・。
「祐介・・もうお別れみたい・・・」
「そうか・・・・」
「随分、あっさりしているね・・・」
「そうでもないさ・・・。これでも叫びたいほど、悲しんでいるよ・・・」
その時・・私の頭の中になにかが降りてきた。
「祐介・・もう、あまり時間は無いけど今、私の中に『託』が降りてきたから伝えるね。」
私がいきなり、そう言うと祐介は驚いていたがしっかりと頷いてくれた。
汝が道、決して平坦ではないことを知れ
強き刀と出会い、汝は家族を得る
ライバル
硬き刀と出会いし時、汝は強敵を得る
奇天烈なウサギと出会う時、汝は将来、その者の子供を得る
脆き刀と出会う時、汝は最初の親友を得る
これから語る道は汝と結ばれる者たち也
蒼き雫、猛き龍、優しき風、臆病な兎、茨の姉妹
この者たち、等しく心に闇を抱える存在也
そして、先の未来で汝が戦う闇に気をつけろ
その者、高き巨人也・・・・・
「なるほど・・・それが今世の『託か』」
「うん・・祐介の・・いえ、悠人の託ね」
「しかし、我が後継者も大変だな。確実に厄介な未来だな」
「そうね・・・・ん・・」
何だろう・・凄く・・眠くなって・・きた・・・。
「眠いのか・・・?」
「うん・・・」
でも・・最後に・・・・。
「悠人・・・」
「なんだ・・・?」
「最後にキスをして・・・」
「唐突だな・・・・」
「ダメ・・・?」
「いや・・俺も言おうと思っていたところだ・・・」
「じゃあ・・・?」
そう言い、祐介は私の方に顔を近づけて来て・・・・。
私の唇と祐介の唇が重なった・・・・・。
数秒、重ねた後・・・ゆっくりと離れた・・・。
「心残りは・・?」
「多分、もう無いかな・・・」
「まだあるなら遠慮なく言っていいんだぞ・・・・」
「じゃあ、膝枕して髪を撫でて・・・」
「わかった」
祐介は私に膝枕をして、髪を撫でてくれた・・・。
「ゆう・・すけ・・・は・・暖かい・・・ね・・」
「そうか・・・?」
「う・・ん・・・あ・・たた・・かい・・よ・・・」
いつの間にか、日が出ていた・・まだ少し・・雲があるけど・・。
「祐・・・介・・あり・・・がとう・・・」
「・・・・・・・」
「こ・・ん・・な・・穏やかな・・・気持ち・・・で・・逝かせて・・・くれて・・」
「美帆は湿っぽいのは嫌いだもんな・・・・」
段々、瞼が重くなってきた・・もうお別れだね・・祐介・・・。
「さようなら・・・だね・・」
「それは違うぞ・・美帆」
「え・・・・?」
「おやすみだよ・・美帆」
祐介は穏やかな顔をして言った・・・。そうだね・・祐介。最後まで湿っぽいのは無しだね。
私は最後の力で・・・・・。
「ありがとうね。祐介・・」
「いいさ・・・」
「祐介・・・大好き、愛してる・・・」
「俺も・・愛してる・・美帆」
彼方の顔を目に焼き付けて眠ろう・・・
「祐介・・・」
「ん・・・・」
「風が気持ちいいね・・・」
「そうだな・・・・」
穏やかな風が辺りに吹く・・・・。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
お互いに無言・・もう余計な言葉はいらないみたいに・・・・・。
「祐介・・・」
「何だ・・・・?」
「おやすみなさい・・・・・・」
「ああ・・おやすみ。美帆・・・・」
私は眼を閉じる・・・頬に風を感じる・・だけど音が徐々に遠のいていく・・・・。
もう・・眼も開ける力も無い・・・ただ・・最後まで・・想うのは祐介と悠人ことだけ・・。
私の最愛の人であり、息子・・・彼方に逢えて良かった・・・・。
悠人・・・この先・・彼方の未来は決して楽なものじゃないけど頑張れ・・・。
お母さんは応援しているからね・・・。
「悠人・・・祐介・・・おやすみなさい・・・・」
美帆side out
「悠人・・・祐介・・・おやすみなさい・・・・」
そう言い、美帆は静かに眠りについた。
「お疲れ様・・・美帆」
そう言って、祐介は美帆を労う・・・。
それと同時に美帆の身体に憑いている呪いを破壊した。
だが・・・・その空気を破るかのように。
「フフッ。ハハハ、ハァ~~~~~ハハハハハハハッ!!!!!!」
アヴァロンは声を張り上げた。闇の呪いを破壊したのは気づいていないようだ。
「はぁ~~~~~。お別れはどうやら、済んだみたいですね。しかし、甘甘な三文芝居には退屈でしたよ。好きだの愛だの、下らない。そんな、邪魔にしかならない物より戦いの方が何よりも必要でしょうに」
アヴァロンは態とらしく、大げさに溜息を吐く・・・・。
「全く、少しは面白いかと思って待っていたのですが何も面白くも無かったですね・・・」
「あんな、下らないことなら取っとと殺しとけば良かったですね。」
「そもそも・・・・「黙れよ・・・」はい?」
祐介は美帆を静かに横たえると、顔を俯けながら小さくだがはっきりと言った。
「黙れと言ったんだよ・・クズが・・・・」
「ふ・・口の利き方がなっていないガキですねぇ。依頼人から貴方を殺すなと言われていますが、痛めつけるなとは言われていませんからねぇ。連れて行く前に少し躾けが必要、みたいですねぇ」
そう言い、手に魔力を込める。
「ふふ・・・躾けか・・・そうだな・・・・この俺自ら貴様を躾けてやるよ」
「貴方は何を言って・・・・」
アヴァロンの言葉が終わらない内に立ち上がり、右腕を上げて
「潰れろ!」
何かを握り潰すように右手を握り締めた。
その瞬間・・・。
「ぎゃ――――!!!」
アヴァロンの左腕は唐突に潰れた。
「ぐはっ!な、何ですか!?これは!!」
アヴァロンは左肩辺りを押さえながら混乱した。
「何をそんなに慌てているのか・・・。ちょっと、お前の左腕がある空間に干渉して握り潰しただけだぞ?そんなに驚くようなことじゃない」
「な――――っ!!!」
アヴァロンは絶句した・・・。
祐介は何とも簡単そうに言っているがアヴァロンには分かる。それがどんなに難しいことか。
空間に干渉するだけでも難しいのに、遠隔操作で空間に干渉、更にはアヴァロンの腕だけを空間ごと押し潰したのだから。極めつけには、特定の空間のみにしか影響を与えないという超高等技術。
「貴様は限界まで痛ぶって殺そうと思ったが止めた・・・・圧倒的な実力差というものを分からせてから殺すことにした」
「く・・この程度で調子に乗ってもらっては困りますねぇ・・。私が子供の貴方に劣っているとでも?」
「ふ・・まだ、実力差が分からないとは・・。やはり、2流だな・・。それと・・いつまでも頭が高いぞ・・下郎が・・『平伏せ』」
祐介がそう言った瞬間、アヴァロンはいきなり膝を着いた。
「な・・何だ!これは・・この重圧感は・・まさか・・?」
「これもちょっとした小技だ・・。言霊の応用で脳に直接、言霊をぶつけて強制的に命令しただけだからな・・・」
「これが、ただの小技だと?巫山戯ないで欲しいですねぇ。貴方が使った技はどれも高等技術でしたよ。ただの子供が使えるはずがない」
アヴァロンは目に憎悪を込めながら祐介に問うた・・・。
「ふ・・まだ、思い出せないのか?まあ・・もう100年以上も前だしな。覚えていなくても仕方ないか・・・」
祐介はそう言いながら、アヴァロンの前まで歩いて来た。
「俺の名は不死鳥 祐介。100年以上前に貴様を倒した者だ」
「な・・・っ!」
アヴァロンは思い出した。忘れもしない。115年前の私の初陣の時・・・。
初めて敗北した、男であり、人生初の屈辱を味あわされた憎き敵。
「思い出しました・・・。突然、戦場に現れて敵味方問わずなぎ倒した非常識な男ですか」
「久しぶりだな・・。小僧・・・。そして・・・さようならだ!」
たった一歩でアヴァロンの懐に潜り込んだ祐介は・・・。
「無限流体術 奥義『金剛剣・突』」
アヴァロンの心臓に貫手を繰り出し、心臓を掴むと・・・・。
「砕!!」
躊躇わずに握りつぶした・・・・。
(何が・・どうなっている・・?)
一瞬で懐に入られ、手の動きすら捉えられずに心臓を潰された・・・・。
(強くなったつもりだったのですが、未だ足元にすら及ばないとは・・・)
あの日、敗北してから血の滲むような努力が一瞬で砕かれた・・・・。
圧倒的すら生ぬるい次元の違う強さを見せつけられた・・・。
(全く・・・こうまで実力差があると恨む気にもなりませんね・・・)
どこか清々しい気持ちになりながら、アヴァロンは前を見た。
(やはり・・私が心臓を砕かれた程度では死なないことは見抜かれていましたか・・)
そこには『不死鳥』を鞘に入れたまま構えた、祐介がいた。
「では、さらばだ、アヴァロン。無限流 奥義『神速剣』」
(任務失敗ですね・・・)
身体に何かがまとわりつく様な、感触を感じながら・・私の意識は闇の落ちた・・・。
「ふん・・・それなりの努力はしてきたようだが、敵の実力を瞬時に見抜くことが出来なかった時点で貴様の敗けだ・・・・」
祐介はアヴァロンの返り血を拭おうともせず、後方を睨んだ。
敵はアヴァロンがあっけなく殺されたことに呆然としているようだ。
そんな敵を見て祐介は溜息をこぼしながら言う。
「敵を前にして、ぼーーっとしているとは随分と余裕だ・・諸君。いや、150年前に滅ぼされた元・闇の組織『ダーク・オリオン』の残党と言った方がいいかな?」
祐介の言葉に敵、ダーク・オリオンの人間たちは戦慄した・・。
この部隊を任されていた、鎌足に至っては恐怖に顔を引き攣らせていた。
「何故って、顔をしているな?それはな・・・俺が生前の頃に組織の中枢を滅ぼした時に当時の生き残った幹部の奴らと交渉してな。{今後一切、闇に手を出さず、我ら一族にも無干渉を貫くこと}と誓わせたんだがな・・・。どうやら・・俺は甘かったらしい・・・」
そう言い、祐介は『不死鳥』を引き抜いた。
「所詮、クズはクズ、悪は悪だということが良く分かった。だから・・・二度とこんなことが出来ないように跡形もなく消してやる」
祐介は『不死鳥』を自然体で構える、次の瞬間・・・祐介の姿が前触れもなく消えた・・。
鎌足は驚いたが直ぐに冷静になった。義昌と同じ、原理だと思ったからだ。
そう思った時、鎌足たちの前から一陣の風が駆け抜けていった・・・・。
鎌足たちは風を手で押さえながら、気配を探った。すると・・・・。
「もう、貴様らは終わりだ・・・・・」
鎌足たちの背後から祐介の声が聞こえた・・・・。
「どういうことですかな・・・?」
「言葉通りだ・・・」
祐介はそう言い、『不死鳥』を鞘に納める。
チンッ!
その瞬間、鎌足を含めた全員の首が飛んだ。
祐介は後ろを振り向くと・・・・。
「言ったろ?終わりだと・・・・」
「さてと、後はこの里にいる残りとこいつらに命令を下した、クズを消すか」
いつの間にか、空はまた雲に覆われ、風が吹いてきた。
雷鳴も鳴り響き、いよいよ雨も降ってきた。
「さて・・消えろ。クズども・・・・」
「古の盟約に従い、我に従え、雷の神。空を覆う、雷雲よ。我が行く手を阻む、敵を駆逐せよ。<滅亡の雷>」
祐介が勢いよく手を振り下ろすと、里全体に神鳴りが落ちた・・・・・。
三者視点side out
??? side
私は今、車を使って不死鳥の里に向かっている。
勿論、今日招いているお客様を迎えに行ってだ。
「しかし、折角の休日なのに態々来て頂いてすみません、千冬さん」
「いや、休日にやるとしたら剣の鍛錬位しか無かったので私としては助かる。徹さん」
「そう言って頂けると、こちらとしても助かります。それに美帆様や悠人様も喜びますから」
「一夏も連れて来られれば良かったんだが、友達と約束があるみたいだから、行けないことを残念そうにしていた」
「はははっ。悠人様も同年代の友達が出来て嬉しそうにしていましたよ。ところで、束嬢が今日来ないのは研究か何かですか?」
「ああ。束の奴はどうしても外せない用事があるみたいで、行けないのを残念がっていたな」
「なるほど。しかし、私としても残念です。同じ、研究者としてなかなか為になることが多いものですから」
唐突に雨が降ってきた。
「雨が降りそうとは思いましたが、やはり降ってきましたか。少し、急ぎましょう」
「そうだな。雨も強くなっているようだし」
私はアクセルを強く踏み込んだ。
それに何か、嫌な予感がしますね・・。何でしょう?この胸騒ぎは・・・。
雨だけではなく、雷鳴も鳴り始めましたか・・・。これは近くに落ちそうですね。
「千冬さん。少し揺れますのでしっかり、捕まって下さい」
「わかった」
その時、一際強く空が光ったと思ったら無数の雷が大地に落ちた・・・。
ガガーーーーーンンッ!!!!
雷が落ちた瞬間、地面が冗談なく揺れた。
「・・・・・・っ!」
「く・・・・・っ」
嫌な予感がますます強くなった。しかも、私の予想が当たればこれは・・・・!
「千冬さん。胸騒ぎがしますので最高速度で急ぎます」
「ああ。私も嫌な予感がするから急いでくれ」
そうお互いに言って、私は車の速度を更に上げた・・・。
徹side out
「<滅亡の雷>」
~里の周辺~
「く・・・敵の数が多すぎる・・。ここまでか・・・」
ドドーーーーーンンッ!!!!
「「「「「ギャーーーーーー!!!」」」」」
「何だ?いきなり、雷が降ってきて敵が消された・・・・・」
~ヨーロッパ某所~
「ははは!!今頃、不死鳥一族は御終いだろう。高い報酬も支払って、あのアヴァロンも雇ったのだからな」
「不死鳥 祐介が居ない今、何を恐れることか」
「奴も今頃、地獄で後悔しているのではないかね?」
「違いない・・・・・」
「「「「フフ、ハハハハハハハッ!!!!」」」」
ドガーーーーーーン!!!!
「な、何だ?」
「何が起こった?」
「も、申し上げます。ただ今・・外で・・・」
ガガーーーーーーーーン!!!!!!
「「「「ギャーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」
「これで全部、終わりだ」
俺は全ての敵の気配が消えるのを確認すると美帆の元まで戻った。
(終わったの?祐介様?)
「ああ。これで完全に終わった。もう、組織の欠片も無いだろうよ・・・」
美帆の頭を膝の上に乗せながら、祐介は答えた。
(ごめんなさい・・祐介様。僕たちの世代の問題なのに祐介様の手を借りてしまって)
「俺はただ・・自分のツケの後始末をしただけだ。礼を言われる程のことではない。」
(でも・・・・)
「俺が手伝えるのは今回だけだしな・・・。知っているだろう?俺は本来、もうここには居ない存在だ」
(そう・・ですね・・)
「これからのことは今を生きている、お前たちが決めなくてはならない」
(はい・・・・)
「まあ・・お前は・・・悠人は俺の後継者だからな。今が弱いと思うなら努力して強くなれ」
(はい!!!)
「お・・そろそろ、俺も眠る。流石に次はないだろうから、今日でお別れだ」
(祐介様・・今回のことも、母上のこともありがとうございました!)
「いいさ・・俺も前世での後悔を帳消しに出来たからな。プラマイ・ゼロだ」
(それでも・・ありがとうございます。)
「ふ・・まったく・・真面目な奴だ・・・」
(これが性分ですから・・・・)
「そうか・・・悠人・・・またな・・・・・」
そう言って、祐介様は僕の中に消えていった・・・。
「母上・・僕が祐介様の生まれ変わりだって聞いた時は驚いたけど、母上も美帆様の生まれ変わりだとわかった時はもっと驚いたよ」
僕は母上の身体だけ、雨で濡れないように魔術をかけて空を見上げた・・・・。
ザァーーーーーーーーーーーー。
「母上・・・世界は悲しいね・・・なんでこんなにも憎しみと悲しみが多いのだろう・・・・」
自分を濡らす雨を見上げながら・・。
「まるで・・世界が・・泣いているようだね・・・・・」
そう思っていると・・。
「悠人様!!ご無事ですか!?」
その声がする方に顔を向けると・・・。
「悠人様!!」
「悠人!!」
焦った表情をしながら走ってくる。御鏡と千冬さんがいた・・・。
三者視点side out
千冬side
さっきの大きな雷が落ちた後から徹さんの様子がおかしい・・・・。
今も私に聞こえない声でどこかと連絡を取っている・・・。
やっぱり・・嫌な予感がする・・・。
一体、何が起こったのだ!
里の近くまで来た時、徹さんは車を止めた。
何故、里まで行かないんだ・・・?
その時、私の予感は確信レベルまで上がった・・・。
「千冬さん・・すみませんがここで少し待っていて下さい」
「それは何故だ?」
徹さんは僅かに躊躇したが、答えてくれた。
「さっきまで里が敵の襲撃を受けていたようです。さっきの大きな雷の後、急に敵がいなくなったようですが、まだ残党がいるかもしれませんので千冬さんはここで待機して下さい」
「徹さんはどうするのだ?」
「私は行方が分からなくなっている、悠人様の捜索です。幸い、敵の捜索部隊の人手は足りているみたいなのでこちらは私が担当することになりました」
「宛はあるのか?」
「はい。どうやら先程から美帆様と義昌殿の部隊と連絡が取れないらしく、もしかすると戦闘中或いは何かあった可能性がある事と、敵の狙いが悠人様の身柄ならその場にいるのかもしれませんので」
「な・・・悠人が狙いとはどうゆう事ですか?悠人に何かあったのですか?」
私は徹さんに詰め寄った。
悠人が何かされているのではないかと思うと心配だった。
「落ち着いて下さい。こちらも現状ではどうなっているのか分からないのです。だから、今は迅速に動くことが重要です。なので先ずはこれから美帆様の部隊の連絡が途絶えた地点に行き、そこを中心に辺りを捜索する予定です。なので千冬さんにはここで待機していてほしいのです」
「いや、私も行こう。私とて剣の腕には自信がある。それに人手は多い方が良いのではないか?」
私はそう、徹さんに言うと少し考えていたが、頷いてくれた。
「分かりました。実際、人手はいくらあっても足りませんから此方としてはありがたいです。しかし良いのですか?此方の問題ですので無理に手伝ってもらわなくてもいいのですが」
「私は悠人や美帆さんを弟や母親のように思っている。家族を助けるのに理由は要らないだろ?」
「どうやら、無粋な真似をしてしまったようですね。分かりました。そういう事なら直ぐに行きましょう」
「ああ!」
私と徹さんは夫々の得物を持つと、森の中を里に向けと走った。
「徹さん、探す場所は里の何処ですか?」
「里の中央にある、すこし開けた広場です。通信が途絶えたのがその地点なので、そこから探します」
「分かった」
そう言って、私たちは森を駆け抜けていった・・・・。
暫く走ると、遠目にだが広場が見えてきた。
「徹さん。見えてきました」
「ええ。急ぎますよ」
近づくにつれて周り状態が分かってきた。広場は酷い状態だった。植えてあった木は吹き飛び、遊具は壊れ、近くに家屋は壊れていたり、この雨の中でも燃えていたりした。
その酷い状態の広場の中央の人影が見えた。あれは――。
「悠人様!!ご無事ですか!?」
徹さんが大声を出す。
悠人は俯いていた顔をゆっくりと上げた。
私は猛烈に嫌な予感を感じながら駆けた。
「悠人様!!」
「悠人!!」
私たちが声を掛けると、悠人は此方に顔を向けた。
その顔を見た時、私の頭の中は一瞬、真っ白になった。
隣を見れば、徹さんも「まさかっ!」という顔をしている。
悠人は・・・何処か途方に暮れたように、悲しいのか怒りたいのか泣きたいのか分からない顔していた・・・・・・。
私たちは悠人の元に着くとそこには悠人の膝の上に横になっている、美帆さんがいた。
その表情を見ると穏やかな顔で眠るように横になっていた。
だがなぜか、違和感がこれは――?
「悠人様、美帆様!お怪我はありませんか!?」
徹さんは悠人たちに声をかけた。
そして私は違和感の正体に気づいた。気づいてしまった。
だって――、
「御鏡・・・母上・・・母上が・・・・」
美帆さんの胸の鼓動は――、
「死んじゃった・・・・・」
止まっていたのだから・・・・・。
千冬side out
千冬たちが無言でいると・・・、
「御鏡・・・母上を英霊の泉に運ぶのを手伝って・・・」
悠人は御鏡のそう言った・・・。
御鏡は一瞬、硬直したが直ぐに元に戻り、悠人に返事をした・・。
「分かりました。その命、謹んでお受けします」
千冬も手伝って美穂を御鏡の背中に乗せた。
その際に美帆の身体に触った時、千冬は疑問に思った。
何で、身体が冷たくないのだろう?と・・・・。
間違いなく、呼吸も止まっているし、心臓も動いていない。
それなのに何故?
そう疑問に思ったがとりあえず今は美帆を運ぶのが優先、なので疑問は後回しにした。
それから千冬たちは美帆を運びながら、森の奥まで来た・・。
そこには、大きな湖が広がっていた・・・。
「ここは・・・・」
「英霊の泉・・・代々、不死鳥一族の当主とその妻たちが眠る・・私たち一族の者に取って神聖な場所です」
「そして、僕の父上もまた・・ここに眠っています」
「そうか・・悠人の一族は皆ここに眠っているのか?」
「いいえ・・この泉に眠っているのは不死鳥一族の直系だけです。私や他の分家は普通のお墓ですよ」
「そして、唯一人の例外を除いて歴代の当主と妻たちはこの泉で眠っています」
千冬はその一人の人物が気になった。
「その例外の人物とは?」
「不死鳥一族31代目当主 不死鳥 祐介。この泉には彼の肉体は眠っていますが、魂は何処にも無いのです」
「魂が無い?」
千冬は疑問に思った。聞く限り、当主と妻たちの肉体と魂は例外なく泉に眠っているのに、不死鳥 祐介の魂だけが泉に無い。それはどうしてかと。
「彼はどうやったのかは分かりませんが、この泉に眠る際に魂だけを輪廻の輪に送ったようなのです」
御鏡は泉の前にまで歩きながら。
「当時の長老たちも驚いたみたいでね。祐介様の魂を捜索するために世界中を探したみたいだよ」
そう言った・・。
「だが、見つからなかった・・・そうだろう?」
「はい・・。その後、10年間は探したようですが何処にも探知出来なかっため・・諦めたそうです」
「そして・・・今世でやっと、魂が見つかったのです」
「不死鳥 祐介の魂は誰に宿った?」
悠人は自分に指を差して、言った。
「僕です。不死鳥 祐介の魂は次期当主の僕に宿ったのです」
「悠人に魂が宿ったと?」
「はい・・僕こそが祐介様の魂を継承した、不死鳥一族34代目次期当主 不死鳥 悠人です」
そして、遂に泉に着いた。
悠人は右手を泉に向けた。すると・・・・。
「これは・・・・」
泉の表面が輝きはじめた。
「行きましょう・・」
そう言って、悠人は泉に足を踏み込む。
「な・・これは・・・・」
悠人の足は水の中に落ちることなく、泉の表面に立った。
「大丈夫ですよ。千冬さん・・儀式が終わる時まで泉の表面には足場が出来るのです」
「そ、そうか・・・」
そう言い、悠人たちは泉の中心まで歩いて行く。
「着きました。ここが儀式の中心であり、歴代の当主と妻が眠る聖地です」
中心に着いた後、先ずは美帆を背中から降ろし寝かせた。
悠人は御鏡の方に向き直ると。
「御鏡 徹・・・次期当主として命じる。この場に分家を含めた、全ての一族を集めろ。後は怪我人も全員だ」
「御意!」
「悠人・・これから何をするんだ?」
「さっきも言いましたが、魂を見送る儀式ですよ・・・唯、それを一族全員で執り行うだけです」
「いつもは全員ではないのか?」
「はい・・普通は直系と分家の長、儀式を管理する巫女たちだけで執り行うのが習わしでしたから・・今回、行う儀式が不死鳥一族の歴史上、最大規模になるかと」
30分後・・・・・。
「悠人様!一族全員この場に集めました。さあ、悠人様・・始まりの宣誓を」
ミナ
「皆の者、宣誓の前に聞いてくれ。此度の戦いで我が母、不死鳥 美帆が無くなった・・。母を殺めた敵は闇の剣技を使う者だった・・・・」
悠人がそう言った後、周りからは「美帆様が!?」「そんな・・」「俺たちに力が無かったから。」など声が上がった。
「その者が使う剣技は我らとっては因縁のある者の剣技だ・・・闇の王たちが使っていた技法・・・敵の者は閻神流などと言っていたが・・・おそらく、古い文献を読み独自に会得したのだろう・・・」
周りからは「また、闇の者か・・」「また、15年前のような悲劇が・・」と声がした。
「そうまたしても、闇の者が来た。15年前のように・・・。我らの大切な者を奪っていった!」
「今回、敵の目的は私とこの一族の秘宝である『不死鳥』だった。私の母は私を護る為に命を落とした。その時、その場にいた私は神に奇跡を願った。母を・・里の皆を助けてくれと・・そして、願いは届いた。神ではなく、ある人物に・・その名は不死鳥 祐介。我が魂に宿っているもの者也」
「彼が全ての災厄を薙ぎ払ってくれた・・・だが代償は大きすぎた・・・。だが我らは悲しみに暮れることは許されない!今まで一族の使命の下に死んでいった同志たちの為に我らは立ち止まれないのだ!!」
「だが今この時だけは共に悲しもう、泣こう!私はここに宣誓する。魂の眠りの儀式をここに執り行うことを宣誓する!!!」
悠人は皆に向かって宣誓した・・・・。
それから・・儀式は滞りなく進んだ。巫女たちが美帆の体を清めて、儀式用の着物を着せたこと・・・・。
巫女たちが神楽を舞っているなか祭主である悠人が祝詞を読み・・・。
全員が一人ずつ美帆の前に行き別れの言葉を言った・・・。
そして・・とうとう美帆を泉に入水させる段取りになった・・・・。
「これから、美帆様を入水させます。皆様、御神酒が入った杯を掲げて下さい」
今回の儀式のまとめ役の巫女は皆にそう言った。
「では当主、お願いします」
全員が杯を掲げるのを確認してから、巫女は悠人にお願いした・・。
悠人の力でゆっくりと美帆は宙に上げられた。泉の中心、入水させる場所までゆっくりと持っていく・・・。
「母上・・たったの5年ちょっとだけど今までありがとう・・・」
泉の真上まで来たところで・・・。
「これより、入水させます」
巫女が軽く頷くと悠人も頷き返した。
悠人は慎重にゆっくりと入水させる。
皆、泣いていた。徹も怪我をした義昌も千冬も全員、泣いていた。
仲間として友として家族として・・・それぞれ理由は異なれど皆、泣いていた。
だけど、悠人は泣けなかった・・・いや、泣かなかった。幼いながらもこれから、一族を率いて者として泣くことは出来なかった・・・・。
ゆっくりと足が、腰が浸かっていった・・。肩まで浸かったところで、
「母上・・・お疲れ様・・・・おやすみなさい・・・・・・」
そして、美帆は泉の中で眠りに着いた・・・・。
「皆、御神酒を飲んで下さい」
巫女がそう言って・・全員が御神酒を飲んだ・・・・。
儀式は終わった。
巫女たちが儀式の後片付けをしている横で怪我人を含めた一族の者たちはこれからの指示を待っていた。
悠人が全ての指示を巫女に言い終わると皆の前に歩いてきた。
悠人が皆の前に着いた時、千冬を除く、全員が跪いた。
皆を代表して、徹が言った。
「我らが王にして主よ。我らに命をお与え下さい。我ら一同、彼方に生涯忠誠を誓う身なれば・・・・」
そして全員、顔を上げて悠人を見た。夫々、色は違うが皆、覚悟を秘めた瞳をしていた。
「皆の思い、しかと受け取った。私も未熟だが精一杯、やっていくつもりだ。」
「ではこれから皆に、命を与える。謹んで受けよ。先ず、怪我人は大人しく治療と療養に専念せよ。怪我が治ってからは里の復興に尽力せよ。救護班は怪我人の治療と同じく里の復興だ。神凪、周郷、姫咲は外に散っている、一族の元へ出向いて今回の件を説明しておいてくれ。斎藤、松上は今回の襲撃に関する事の情報を全て洗い出せ。鷹宮は暫く、里の周りを警戒せよ。御鏡は当主を除く皆は奴らの入国を手引きした組織と関係者は全て、消せ。 これで以上だ。皆の働きに期待する」
「「「「「「「御意!!」」」」」」」
皆が夫々、自らの命を果たすための散って行った後、この場に残ったのは悠人、千冬、徹だけだった・・。
「悠人様、お勤めご苦労様です」
悠人の隣に立ちながら徹は悠人を労った。
「うん・・流石に疲れたよ・・・」
悠人はそう言って、少し苦笑した。
「ふ・・・しかし、悠人。私は初めて見たが公の場はいつも、あのような感じなのか?」
「え・・と、はい。大体、あんな感じです」
「ふふっ、そうか・・・・」
そう言い、この場に沈黙が降りる・・・・。
千冬は悠人の歳不相応の横顔を見つめながら思った・・・。
(悠人はこんな世界で生きてきたのか・・・。まだ子供だというのに・・・)
「悠人は・・強いな・・・・」
「強くなんてないですよ・・・僕は・・弱い・・・・」
「何故だ・・・・?」
「力が幾ら強くても・・心が弱い・・・弱いままなんですよ!今回の襲撃を解決したのも僕じゃない!!祐介様が解決してくれた!僕が弱いから!無力だから!」
悠人はそう言って叫んだ。
その顔はまるで泣きたいのに泣くのを我慢して、全部自分一人で抱え込もうとしている、そんな顔だった・・・・。
千冬はさっきから感じていた違和感がなんのか分かった・・。
達観しすぎているのだ・・・いくら、考えや中身が大人に見えても・・・心と身体はまだ子供・・・無理に背伸びをすれば、それだけ心に負担が掛かる・・・このままだと危険だと・・千冬はそう思った・・・・。
だから・・・・。
気がついたら、千冬は悠人を抱きしめていた・・・・・。
「え・・・・・・?」
「悠人・・・・泣きたいときは泣け・・・・」
「でも・・ぼくは・・・!」
「一族の次期当主だとか英雄の魂を継いだ存在だとかはどうでもいい・・・・私が見ているのは、そんな肩書きを抜いたお前自身だ!」
「・・・・っ!・・でも・・・でもぉ・・・・」
「どんなに大人振っても、お前はまだ子供だ・・・。笑いたいときに笑い、泣きたいときに泣けば良いんだ・・・・だから、泣け・・・今はいっぱい泣け!私の胸を貸してやる。だから、遠慮せずに泣け」
「あ・・・あ・・・」
悠人の目から――。
「う・・・あ・・・」
一筋の涙が――。
「うっく・・・ひっく・・・・」
溢れた・・・・・。
「・・・・っ!うああああああああああんっ!!」
「母上ぇ・・何でいなくなったの・・・ひっく・・・・何で死んじゃったの・・・・?」
「母上・・と行きたい・・場所が・・あった・・・うっ・・・のに・・・ふっ・・・・」
「お話・・・したい・・・ひっ・・・ことが・・あった・・・うぇ・・・のに・・・・」
「どうして・・・うっ・・・・?どう・・して・・っ・・・なのぉ・・・何で・・・・」
悠人は泣いた。
心のままに。
感情のままに。
全ての悲しみを吐き出すように。
一生分の涙を出し切るかのように泣き叫んだ。
「母上ぇ・・・・母上ぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
千冬に抱かれながら、天にいる母に届けとばかりに・・悠人は泣いた・・・・。
「すみません・・・千冬さん・・・」
「悠人、この場合はすみなせんではなく『ありがとう』だ・・・」
「えっと・・・ありがとう・・・・」
「そうだ・・・それでいい・・・やっと、素直になったな。」
「ねぇ・・・千冬さん・・・」
「何だ・・・?」
「何でここまでしてくれるの・・・?僕は他人なのに・・・・」
「寂しいことをいうな・・・私は悠人のこと家族だと思っているぞ・・・・」
「家族・・・そう言えば・・・僕・・・母上を亡くなってしまったから・・・天涯孤独になっちゃった・・・・・」
千冬は「しまった!」と思った。折角、良い雰囲気だったのにと・・・。
だが直ぐに閃いた。
「ならば・・悠人・・・私の弟にならないか・・・?」
「え・・・・?千冬さんの弟・・・・?」
「ああ・・・私は悠人ことを本当の弟のように思っているからな。ならばいっそ、仮初ではなくて本当の家族になってしまおうとな」
「え・・・でも・・・」
「それは名案ですね」
「「わあーーーーーーーーーーーーー!!」」
いきなり、声を掛けられたから二人は大声を出した・・・・。
「失礼ですね。私、少し傷つきましたよ・・・・・・」
「ご、ごめん。御鏡・・いきなりだったから・・・・・」
「全く・・・徹さんはイタズラが過ぎます」
「はははっ。すみません、ついついやってしまって。それより、さっき千冬さんが提案した案ですが採用です」
「え?ええっ!!?」
「いえ・・・前から思っていた事ですから。いずれはちゃんと継いでもらいますが、今はまだ早すぎます。それに美帆様が亡くなってしまって益々、我々は悠人様に構えないのです。なので、千冬さんのところに預ければ万事解決です。信用出来ますし、何より外の事を学べます」
「まあ、確かにそうだけど・・・でも他の皆が何て言うか・・・・」
「大丈夫です。他の分家も今、継ぐことには反対しています。だから、問題無しです」
「では・・・・!」
「はい。悠人様をお願いします。」
「ちょ・・・ちょっと・・・」
「任せて下さい」
「人の話を聞けーーーーーーーー!」
悠人の声が空高く、響いた・・・。
「はははっ。すみません、悠人様。少々、盛り上がってしまいました。」
「ですが真面目な話、今ここにいては危険です。敵を撃退したとはいえ、何時また敵が来るか分かりませんから」
「そうだな・・・悠人は未だに狙われているから、里から離すのは正しいな」
「ええ。だからこそ悠人様を千冬さんのところに預けたいのです」
千冬と徹は話を詰めていく。
「悠人はどうだ?私が姉では嫌か?」
「え・・・嫌じゃないよ・・。寧ろ、嬉しいかな・・・・・・」
「ならば問題無いな」
「そうですね。早速、書類を作らないと。一夏君がまだ小学校に上がっていないので比較的、工作は楽です。とりあえず、悠人様が年上ですから一夏君の兄という事で良いですか?」
「ああ。それで構わない」
「えっと・・・こんな大事なことをあっさり決めていいのかな?」
悠人の呟きは話に集中している二人には聞こえないのだった・・・。
「悠人・・・これからは家族として、私の弟としてよろしく」
「うん・・・よろしくお願いします・・千冬さ・・・・千冬姉さん・・・・」
この時、千冬の胸に何かが突き刺さった。
「・・・・・・・・っ!!」
「千冬姉さん・・・何で泣いているの?」
悠人は首を傾げた・・・。
それから1時間後・・・・・。
悠人の荷物の準備が出来たので出発することになった。
「二人とも準備は良いですか?」
「大丈夫だよ、御鏡」
「私も大丈夫だ」
「分かりました。では出発します。」
徹は車を発進させた・・。
「千冬姉さん、都会ってどんなところ?」
「都会か? 都会はな・・・・」
遂に動き出した運命。
大きな宿命を背負った少年。
この先に待ち受ける運命とは何か?
また、美帆の『託』の意味とは・・・。
IS<インフィニット・ストラトス>~不死鳥の羽ばたき~
序章 完
は~~~~~~っ。
やっと終わった。原作キャラも出せたし。
でも、やっぱこの回で終わらたいからって一気に詰めたのは失敗だったな。
反省(^_^;)
いやしかし、20000文字超えはやり過ぎたかな?
まあ、過ぎたことは気にしないことにしよう。
後は閑話を数話入れたら一章に入りますので次の投稿をゆっくり待ってやって下さい。
感想をお待ちしております。