やはり俺が元スプリガンなのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
ようやくここまで来ましたが、
今回はあの人物が登場します。
本日は晴天なり。
良い職場見学になりそうだ。
その日は、あらかじめ用意されている、カモフラージュ用された表向きの施設と設備を見学する事になっている。俺はじーさんが用があるらしいので、コッソリ抜けて会いに来ていた。
じーさんの指定ポイントに着いた。もちろん、一般人は立ち入り禁止だ。ちなみに職員も高位のパスがないと入れない区画だ。
待ち合わせ時間ピッタリにじーさんが現れた。
「久しぶりじゃな、優。」
「じーさんは元気そうだな。あと、優じゃねーよ。八幡でいいぞ。」
今回の呼び出しの内容は、紹介したい人がいる事と、この前送った鉱物(クッキー)の成分結果が出たらしい。わりと冗談で送ったのに、この人も大概お茶目だ。
「まずは会わせたい人物とはこの方じゃ。」
じーさんがそう言うと、目の前にその人物は突然現れた。こんな芸当が出来る人物は俺の知る限りじゃ一人しかいない。アーカムの創始者にして、スプリガンの最古参でもあり、大魔導士マーリンの弟子。
「久しぶりね、優。今は八幡だったかしら?」
ティアだ。ティア・フラット。正式名はT・F・アーカム。色々と言いたい事はあったが、今は再会の言葉を交わそう。
「久しぶりだな。相変わらずの神出鬼没っぷりで。」
「まさかこんなにすぐに転生しているなんてね。あれから随分と色々とあったわ。聞きたい?」
「いや、いい。もう今の俺はアーカムのスプリガン御神苗優じゃない。今はただの高校生、比企谷八幡だからな。」
ティアは残念そうな顔をすると、スプリガンにスカウトしたかったと話していた。一時は内部で荒れていたアーカムも、現在では元の勢いを取り戻し、遺跡の封印に破壊に保護にと、日夜勤しんでいるらしい。
「昔のよしみよ。受け取りなさい。」
ティアから免許証みたいな物を受け取った。ティアが言うには、アーカムの力が及ぶ場所では、絶大な効力のあるライセンスらしい。俺の顔写真もいつの間にやら撮られていたらしい。眼の腐り具合までバッチリだ。
そんな訳で、アーカムというバックボーンを手に入れた。ティアは、何かするなら援助は惜しまないと言ってくれた。それだけの功績を俺は遺していたらしい。
「せっかく欲しがっていた、平和な日常だものね。大事にしなさい、八幡。」
「ま、貰えるもんはありがたく貰っておくよ。サンキュな。」
じーさんが微笑ましいものを見る眼でこっちを見てくる。恥ずかしいからやめてくんない?
「それから、例の鉱物じゃがの。なかなか面白い物が出来たわい。」
じーさんの話だと、賢者の石との合成比率次第で、精神を増幅させる事が出来るそうだ。元からA・Mスーツにあるサイコブローの機能の向上が見込めるそうだ。どこでこんな代物を手に入れたのか聞かれたが、まさか市販の食材から作ったとは言えないから伏せておいた。由比ヶ浜がこの世界に足を踏み入れても困るしな。
懐かしい顔とも別れを告げて、職場見学に戻る事にした。
他のクラスの連中が楽しそうに騒いでいるのを見つけた。どうやら女子生徒がマーガレットさんに色々と質問をぶつけているらしく、お互いの専門知識を遺憾無く発揮しあっているようだ。
その渦中の女子生徒が見えると、見知った顔だった。てゆーか、雪乃だった。
俺の視線に気付くと、小さく手を振ってきた。マーガレット女史もだ。刹那、周りの視線は俺に収束される。
忘れていたが、雪乃は有名人である。その容姿もさることながら、国際教養科の所属であり、学年第一位の秀才である。マーガレット女史も年齢不詳ながらも穏やかな雰囲気を持つ才女であり、少なからず綺麗な部類に入る。そんな二人が手を振ると、周りの視線は俺に刺さってくる。
「比企谷さん、もう博士の用事は終わりましたか?」
マーガレットさん!空気読んで!お願い!
「あら?比企谷くん、お知り合いなのかしら?」
今はやめてくんない?ほら、周りが見てくるでしょ!
幸か不幸か、周りは女子ばかりの花園だ。状況から考えると国際教養科のJ組の面々だろう。確か雪乃シンパも多かったと思う。男の嫉妬の視線がないだけマシか?うん、割り切ろう。
「もう用事は終わりましたよ、マーガレットさん。ところで、雪乃と何を話してたんですか?」
「それはもう色々ですね。
将来も有望なので、スカウトしたいぐらいですわ。」
マーガレットさんは微笑んでいた。
おいおい、お世辞だろうがスカウトは止めておこう。雪乃も疑問に思った事をツッコんできた。
「比企谷くん。あの、こちらの女性と、その、どういう
関係なのかしら?」
俺達の一連のやりとりを見て、余程それが気になったのか聞いてきた。にしても周りの視線が好奇の眼に変わっている。あれ?なんかイベントクリアしたっけ?
「俺は博士とマーガレット女史と旧知の間柄ってだけだ。」
「そ、そう。それならいいのだけれど。けれど、友達として、比企谷くんの女性との関係を把握しておきたかっただけだから。友達として。」
大事な事なので2回言いました。いや、言われたんだけどね。
だいぶ足止めを喰らったらしく、もう俺の班は終わってしまったのか、広いエントランスには誰も居なかった。ただ一人を除いては。
由比ヶ浜は一人で待機の姿勢を崩さずに待っていた。そういえばコイツの事を忘れていた。そろそろ元に戻してやらないと、学校生活も難儀なものになるだろう。家ではどうなっているのか興味を惹かれたが、今は忘れよう。
「由比ヶ浜、ここで何してたんだ?」
「サー!教官殿を待っていました!サー!」
…コイツは優しい女の子だ。
優しいから、クッキーを作って御礼を言いに来たのだろう。ボッチになった俺の事を自分の責任に感じてたのだろう。行軍の時に、短い期間でありながら従順な兵士へと変貌を遂げたのも、優しいから責任を感じて俺に隷属したのだろう。優しい女の子は勘違いをさせる。
だから…優しい女の子は嫌いだ。
と、以前の俺なら思っていただろう。関係をリセットしようと。トップカーストである由比ヶ浜と離別しようとしたはずだ。今の俺は御神苗優の記憶を持っている。前の俺よりは1歩も2歩も踏み出せる。少しだけ、関係をリセットすることも出来るのさ。
「なぁ、もう無理をして俺に合わせなくていいぞ。俺は教官じゃない。あの事故のことをまだ引き摺ってるならやめろ。」
「っ!あたしは、そんなつもりじゃ……」
「もう無理をして俺の相手をしなくていいと言っている。」
由比ヶ浜はいつもの口調ではなく、年頃の女の子のような喋り方に戻るが、その眼には涙を湛えていた。
「どうして、そんなこと言うの…?」
「それはな…て、おい!」
まだ俺が話している最中なのに!人の話も聞かず、由比ヶ浜は大粒の涙を流しながら、エントランスを走り抜けて去って行った。
更新ペースがどうしても遅れてしまう~。
とゆーわけで、次回は人員補充です。