【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~   作:秋風

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遅れました
最近、孤独に巻き込まれた転生録を描き直していて、遅れてしまいます
申し訳ありません



09「お話」

聖祥大学付属小学校3年生にして魔法少女『高町なのは』は今日が休日と言うことで、実家の経営する喫茶店『翠屋』の店員として手伝いをしていた。しかし、そんな彼女にはとある悩みがあった。その悩みは、彼女自身が自分の家族、親友、学校の先生に至るまで、あらゆる人物に対して打ち明けていない、大きな悩み。

――世界を滅ぼすかもしれない本を完成させようとする人達とお話がしたい

色々な前提が存在して成り立っている今回のなのはの悩み。『魔法』という人々がおとぎ話にしか思っていない存在と、そこから生み出された世界を破滅に導く本。それらを完成させようとする本の守護者たち。目的や理由を教えてもらえずただ戦わなくてはいけないという現状。なのはにとって、密かに悩んでいたことだった。

 

(ヴィータちゃん達だって、人間じゃなくても意思がある。だったら、何か目的があるはず…その目的さえ、分かることができれば…)

 

守護騎士と呼ばれた彼女達が闇の書と言う名の爆弾を完成させることに何の意味があるのか?なのはは知りたかった。彼女達は“騎士”を名乗り、その闇の書の完成へと近づいている。だが、なのはには世界を滅ぼそうというような悪意を彼女達から感じることが出来ない。自分と同じく、魔法を行使して戦う親友フェイト・テスタロッサも、守護騎士の一人と戦って彼女達に明確な悪意を見ることが出来ないと言っていた。そして何よりも、なのはには気になる存在がいた。

 

(あの、ゼロって言う人…どうしてヴィータちゃん達に協力するんだろう)

 

闇の書の守護騎士達とは別に存在する『ゼロ』と名乗る男。自分が協力する人物たちからは彼は人間ではなく高性能なロボットであるという話を聞いた。自分や管理局の知りえない、まったく別の世界から来た次元漂流者。そんな彼が何故闇の書の完成にこだわるのか。そんなことを考えながら皿を洗っていると、母の桃子から声がかかった。

 

「なのは、お客さん!案内をお願いね」

 

ケーキを作るのに忙しいらしく、桃子や父の士郎が手を離せないことを確認したなのはは手を拭いてお盆を持ち、店内へと移る。すると、扉から入ってきたのは自分の学校にいる親友たちだ。

 

「いらっしゃい!すずかちゃん、アリサちゃ…」

 

言いかけて、そこでなのははギョッとした。いつも通りの二人の親友の後ろには、男が立っていた。そこにいたのは長く美しい金髪を一つに結い、黒く強い瞳をした一人の男。間違えるはずがない。男は今、自分がもっとも会いたいと思っていた男、ゼロなのだ。自分の仕事が終わるのを待っていたもう一人の親友、フェイトから念話が送られてくる。

 

「(な、なのは!あの人は…!)」

 

「(う、うん…!)あ、あの、すずかちゃん…う、後ろの人誰?」

 

「えっとね、こちらはゼロさん。私の友達の親戚の人で、さっき私たちのことを助けてくれたの」

 

「……」

 

と、にこやかにすずかがゼロを紹介するも、なのはとフェイトの背中には嫌な汗がビッショリと流れていた。自分たちが追っている犯人が目の前にいる。フェイトはすぐに念話で自分が所属しているアースラスタッフ達に連絡を取ろうとする。その間に、なのははぎこちなくゼロたちを席に案内する。その際、ゼロもなのはやフェイトに気が付いていることが分かる。

 

「(フェ、フェイトちゃん…!どうしよう…!)」

 

「(リンディさんも、クロノもまだ帰ってきてない…ここは、私達で対処するしか…)」

 

「(そ、そうだね!)」

 

リンディ、クロノは今おらず、アースラスタッフは一時的に時空管理局の本局で情報を集めている最中だ。いるのはアースラスタッフのエイミィだけ。彼らがいない今、自分たちで何とかするしかない。そんなことをしていると、ゼロがとっとと立ち上がり、ケーキを持って店を出てしまった。

 

「(なのは!追い掛けよう!)」

 

「(う、うん!)」

 

桃子に休憩の許可を得て、なのははアリサ、すずかにばれないように裏口から出てバリアジャケットを纏い、ゼロを探す。すると、途中からユーノ、アルフが合流し、フェイトからゼロ発見の報告を受ける。場所は、海鳴市の臨海公園

 

「(あの、フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさん…お願いがあるの)」

 

「(何?なのは…)」

 

突然のなのはの言葉にフェイトが困惑しているようだが、なのはは決意して言う。

 

「(ゼロさんとお話させて)」

 

なのははゼロとの対話を望むのだった。

 

 

 

海鳴市臨海公園

 

 

「あ、あの!私、高町なのはって言います!」

 

時間を戻し、場所は海鳴市の臨海公園。結界を張ったことで周囲には自分たちしかいない。ゼロから放たれる鋭い殺気が、なのはに突き刺さる。言葉に詰まるが、なのははその場に踏みとどまってその視線を受ける。

 

「……」

 

「えっと…その!どうして、闇の書を完成させようとするんでしょうか!あれは世界を破滅させる危険な物って聞きました!なのに、なんで…」

 

「お前達には関係ない…失せろ」

 

なのはが言いかけて、ゼロはそこでなのはの言葉を切るかのように遮った。しかし、なのははそれにくらいつく。

 

「関係ないなんて、そんなことない!私達に理由さえ、目的さえ教えてくれれば!私達はきっと協力できると思う!」

 

「…目的を言った所で、お前らが協力するとも思えん。管理局という組織を知らない俺には…「違うよ!」…何が違う?」

 

ゼロの言葉を、今度はなのはが遮った。そして、彼女はバリアジャケットを解除し、一歩前に出た。

 

「何のつもりだ?」

 

「私は、管理局の人達といるけど…管理局の人間じゃない。地域協力者。私は、高町なのはは…私個人として、ゼロさん達のことを知りたい」

 

「……」

 

ゼロはその目の前の少女、高町なのはの行動に驚く。いつ戦闘が起きてもおかしくないこの状態で、自らの武器と、防護服を解除した。その様子に驚いたのはゼロだけではなく、なのはの味方であったフェイトたちも驚くことになる。

 

「ヴィータちゃんが言っていたの…“和平の使者は槍を持たない”って…だから、私はゼロさんに武器は向けない。私は、ゼロさんとお話がしたいから」

 

「……何故だ」

 

「え?」

 

「何故、お前はそこまでする…」

 

ゼロは疑問を投げかける。例え地域協力者であろうとも、なのはは管理局側につくいわば“正義の味方”なのだ。それならば世界を滅ぼすかもしれない本を持つ相手に対して普通なら容赦なく止めようとするだろう。だが、なのははそれをしない。武器を捨て、話をしたいと望む。するとゼロの言葉に対して、なのはがニッコリと笑みを見せた。

 

「さっき、すずかちゃんに教えてもらったんだ。ゼロさんとすずかちゃんはお友達だって…ううん、きっとアリサちゃんもそう思っている。だから、きっと私もゼロさんとお友達になれるかなって…友達の悩んでいることだったら協力したいもん。ゼロさんだけじゃない、ヴィータちゃんや、他の守護騎士の皆とだって友達になれる…そんな気がするの」

 

ゼロは感じていた。なのはの優しさ。そしてその言葉に秘める、なのはの強さを。小さな少女が、今自分の目の前で武器を構えずにただひたすらに対話を望んでいる。

 

「…高町なのは」

 

「は、はい!」

 

「お前は、確かに信頼に値する。俺が今まで生きた中で、数少ない…強い意志と、真っ直ぐな心を持った、本当の意味で強さを知る人間だろう」

 

元々、ゼロが会ったことのある人間の数が少ないことはさておき、この真っ直ぐな意思を宿すなのはの目は誰かに似ている…そう感じていた。そう、例えるなら自分の親友に。悩んで、悩んで、いつも悩んでばかりの意気地なし。そんな自分の大親友に。そんなゼロの言葉に対し、なのはの表情は明るい笑顔へと変化する。

 

「じゃあ!話してくれるんですね!」

 

「…悪いが、そう言うわけにもいかない」

 

「えっ…」

 

なのはがようやく話をしてくれると喜んだが、ゼロはその言葉を否定する。

 

「確かに、お前を信頼することは出来るだろう。だが、お前の協力する組織や、お前の仲間に対して信頼をしているわけではない…こちらにも、事情がある」

 

確かに、理由さえ話せば彼女は協力を申し出るかもしれない。だが、ゼロとしてはそうもいかない。理由は自分を狙っていた謎の襲撃犯たち。現在、ゼロはそれが管理局と言う組織内部にいる誰かではないかという考えがあった。ならば、繋がりがある彼女にその理由や情報を流すことも出来ないだろう。

 

「で、でも…!」

 

「……それに、お前が無理に巻き込まれる必要が無い」

 

そう言うも、なのはの表情は諦めたという表情ではなかった。ますます似ている。自分の親友に。何度も、何度もぶつかってきた親友。ゼロは小さくため息をつくと、近くのベンチに買い物袋とケーキの箱を置き、Zセイバーを抜刀する。

 

「ならば、こうしよう…今から俺とお前達4人が戦い、勝てたらな…お前に、いや…お前達に全てを話してやる」

 

「そんな…「高町なのは」…!」

 

「お前や、お前の仲間たちに譲れないものがあるように…俺にも、譲れないものがある。ならば、わかるな?」

 

そこまで言われ、なのはは理解する。もうこれ以上、自分の話は聞いてもらえない。自分の言いたいことは全て言った。そして、相手も理解してくれた…でも、ゼロや守護騎士たちが抱えるソレは、もう対話では解決できないということも。なのはも今一度バリアジャケットに身を包み、レイジングハートを展開した。ゼロも同じくクロワールの能力でヘルメットと装甲が転送され、装着された。

 

「なら、私達が勝って…お話を聞くの!」

 

「…来い!」

 

 

――WARNING!――

 

 

4対1というゼロにとっては圧倒的不利の戦闘。最初に動いたのはなのはの後ろにいたフェイト。なのはとゼロの距離の事を考え、フェイトは前に飛び出したのだ。鎌のような形状、ハーケンフォームでゼロに接近戦を仕掛ける。前回、たった一撃でやられたが、今回は違う。パワーアップによって耐久性や攻撃力が向上している。

 

「…なるほど、シグナムの話どおりか」

 

互いの刃がぶつかり、火花が周囲に飛び散る。そのフェイトの攻撃を防ぎながら、ゼロはポツリと呟いた。ゼロもシグナムから管理局側の二人の少女が自分たちと同じくカートリッジシステムを採用して挑んできた。という話を聞いていた。それによりゼロは油断なくフェイトに構えていた。拮抗していた両者だったが、ゼロはZセイバーを上へ振り上げてその拮抗していた状態を崩すと、隙が出来たフェイトに対して左手のバスターを構えた。

 

「させないよ!」

 

「…!」

 

バスターを構えるも、横から彼女の使い魔、アルフが拳を突き出す。それを避けながらゼロはその連携プレイに感心する。そのアルフのフェイトに合わせた動き方は何年もかけて作られた連携である。一歩、バックステップで下がって距離を取ろうとするが、アルフは地面を蹴ってそのままゼロへと詰め寄る。

 

「もらった!」

 

「……甘い」

 

バスター、そしてZセイバーを素早く収納すると、その突き出された拳をゼロは素早く受け止めた。正しくはゼロが『武器を換装した』というのが正しいかもしれない。魔力が込められた拳を素手で受け止めるという行動にアルフが驚くも、それは無理もない。ゼロの手の平にZと刻まれた刻印が光る。そう、彼が持つ武器は何もZセイバーからの派生だけではない。彼自身の腕に宿る武器もまた存在する。名をゼロナックル。ゼロナックルは『敵の武器を奪取する』というのを念頭に置いた武器である。相手の武器を引き剥がすことでその武器をゼロ自身が使用できる強力な武器である。別に武器を奪うことがなくても、その握力によって相手を確実に掴むことも可能だ。ゼロはその掴んだ腕を引っ張り、二の腕を抱えて投げる。背負い投げの要領で投げ飛ばされるアルフ。

 

「うわぁ!?」

 

「アルフ!」

 

「フェイトちゃん下がって!アクセルシューター!」

 

なのはが叫ぶと、フェイトがそれに反応して下がる。なのはが無数に光る桃色の光弾を出現させる。

 

「シューット!」

 

なのはの言葉と共に発射される桃色の光弾否、アクセルシューター。ゼロを追うように飛ぶも、地面へと着弾。無数の爆発が起きる。それはゼロが全ての弾丸を間一髪で避けたことを示していた。

 

「よ、避けられちゃった!?」

 

「はああっ!」

 

煙の中からゼロが飛び出し、Zセイバーで地上にいたフェイトへと斬りかかる。フェイトも突然のゼロの出現に慌てる。その前にアルフがフェイトを庇うように前へと出て拳を突き出す。

 

「このっ…」

 

「…甘い」

 

Zセイバーを振るのでは間に合わないと判断したゼロは、アルフの拳を右足で踏ん張り、その足を軸にして回るように避け、その回った反動から蹴りを繰り出しアルフを吹き飛ばす。

 

「ガハッ…」

 

「これでどうだ…」

 

アルフは吹き飛ばされ、公園にある木へと激突する。そこへゼロがバスターをすかさず発射する。片手と片足のそれぞれにそれが着弾すると、それはアルフの腕と木をくっつけるかのように凍りついていた。ゼロの使うアイスチップによるバスター『アイスショット』の効力で、アルフは腕と脚を封じられる。

 

「うぐっ…と、取れない…!」

 

「しばらくはそれで動けないはずだ。これで、後3人」

 

「ストラグルバインド!」

 

空中でなのはを援護していたユーノがストラグルバインドを放つ。魔法の鎖が、ゼロを囲むように迫っていた。しかし、ゼロは一瞬で状況を判断すると、上空へとジャンプして離脱。その高くジャンプしたことで空中にいたユーノよりも高く上昇。空中からユーノを捕えるとそのまま抑えつけて地面へと落下した。

 

「ぐああっ!」

 

「お前も大人しくしていろ」

 

そう言ってゼロは彼の腕に二発チャージされていたアイスショットを放つ。少しゆるいかもしれないが、それでも相手を抑えるのには十分だ。

 

「これで、後二人」

 

「ディバイン、バスター!」

 

ゼロがユーノから離れて地上で構えていたフェイトに向かおうとすると、そこへ桃色の砲撃が飛んできた。それはかつて戦った敵、クラフトの砲撃と似ている。いや、威力はそれ以上であろう。ゼロはそれを避けて上と下を見た。どちらも厄介な相手だ。遠く離れて射撃をしようとすれば、なのはからの容赦ない砲撃が来る。かといって、それを潰すためになのはに接近しようとすれば恐らくフェイトが大鎌を持ってこちらを襲ってくる。どちらに対応するのも難しい。

 

(さて、どうするか…)

 

そんな風に考えていると、ゼロの頭にクロワールの声が響く。

 

「(ゼロ、コレを使って…彼女達にまだ見せてない武器ならば、あるいは…)」

 

「(…試してみる価値は、あるかもしれん)」

 

そう言いながら、ゼロは再びZセイバーを握り、フェイトへと接近する。フェイトもそれに素早く反応してバルディッシュを構え、振りかぶった。横への一閃をゼロは避けると、そのままフェイトの肩を踏み台にそこから大きく跳躍した。

 

「わ、私を踏み台に…!?」

 

「フェイトちゃん!くっ…!」

 

ゼロが高く飛び上がり、Zセイバーを構える。なのはもヴィータとの接近戦を経験してか、すぐに防御の姿勢を取る。しかし、次の瞬間、Zセイバーの刀身がばらばらと崩れた。

 

「ふぇ!?」

 

その事態に一瞬なのはが戸惑いを見せる。しかし、ゼロはそのままなのはへとZセイバーを振るった。バラバラになった刀身はそれに反応して動き、まるで鞭のような動きを見せる。シグナムの持つレヴァンティンに似たソレの名はチェーンロッド。ゼロが使っていた武器の一つだ。そして、その崩れて鞭のように繋げられた刀身はそのままなのはの持つレイジングハートを絡み取る。

 

「はああっ!」

 

ゼロがそれを確認して地面へとそのまま叩きつけた。なのははレイジングハートを離さなかったため地面に落下、そのまま叩きつけられる。

 

「きゃあ!?」

 

「なのは!」

 

一瞬、その事態にフェイトが動揺する。なのはが叩きつけられたことで起こった砂埃によってなのはの姿を確認できない。その瞬間をゼロは見逃さなかった。

 

「隙だらけだ…」

 

「しまっ…!」

 

いつの間にか接近を許したフェイト。しかし、それに気がついた時にはもう遅い。ゼロの拳が、フェイトの鳩尾へと叩きつけられる。

 

「ガッ…ハッ…」

 

「…これで、後1人」

 

そう言いながらフェイトを抱え、その場に優しく降ろすゼロ。煙が晴れたことで改めてZセイバーを構えたが、そこになのはの姿が無い。その代わりに、晴れかけた煙を突き破って彼女の放ったであろう魔力弾が無数に飛んでくる。

 

「っ…!」

 

バックステップを使って距離を取ろうとするも、その弾丸はゼロを正確に追尾してくる。

 

「追尾…!」

 

ゼロはバスターに持ち変えてその魔力弾へ向けてバスターのエネルギー弾を発射。相殺する。しかし、その相殺を終えた瞬間、ゼロの体に桃色の鞭のような物が絡みつき、ゼロを拘束した。

 

「ぐっ…これは、バインド…!」

 

シグナムたちからある程度魔法を聞いているゼロも知る拘束魔法「バインド」それによってゼロは身動きが出来なくなる。

 

『ゼロ!上!』

 

「上…っ!」

 

クロワールの言葉に頭上を見上げるゼロ。そこにはなのはが既に足元に魔法陣を描き、収束法を撃つ発射態勢となった光景だった。

 

「ゼロさん!受けてみて!コレが私の、全力全開!」

 

『Load Cartridge』

 

ガシャン、とレイジングハートにカートリッジが補給され、魔力が充填される。身動きが出来ないゼロ。それを見て、なのははそのまま勝利を得ようとその魔力をゼロに向けて砲撃を放つ。

 

「スターライトォ…ブレイカーァァァァ!」

 

なのはから巨大な砲撃が発射された。星の光を砕く力の名を冠するスターライトブレイカー…その攻撃は10歳の子供が放つような砲撃とは思えない威力を見せる。そんな砲撃を発射した本人、なのはが勝利を確信して地上へと降下した。バインドで縛られ動けない以上脱出は不可能。さらに今まで以上に力を込めた彼女の必殺技である『スターライトブレイカー』…正直のところ、無事であるはずがない。だが、そんななのはの予測は大きく外れることとなった。煙が晴れた場所にゆらりと立ち上がる人影。そこにいるのは赤い閃光…ゼロ。その体にバインドなどなく、手にはシールドブーメランが握られている。無傷ではないにしろ、その彼の意識は健在だった。

 

「嘘!?」

 

「今のは、効いたな…」

 

「どうやって、スターライトブレイカーを…」

 

「…この世界の魔法とやらは、プログラムを組んで形成されるもの。クロワールはサイバーエルフ…プログラムだ。バインドに逆に入り込み、それを破壊。さらに防御力をクロワールで底上げすれば、耐えることはできる」

 

そう、クロワールはナース、アニマル、ハッカーの全ての能力を引き出せるサイバーエルフだ。その中にはゼロ自身の防御力を二倍にまで上昇させるというものがある。それに、クロワールのような高性能のエルフならバインドのプログラムを破壊することなどわけがない。

 

「これで決着だ」

 

「っ!」

 

再びレイジングハートを構えようとしたが、ゼロのほうが早かった。ゼロは地を蹴り、素早くなのはの後ろにまで回り込む。その圧倒的な早さに、なのはは追いつくことが出来ない。そのまま、ゼロは手刀でなのはの首を叩き、なのはの意識を奪う。

 

「あっ…」

 

「…これで、俺の勝ちだ」

 

ゼロはなのはとフェイトを抱きかかえ、その辺のベンチへと寝かせる。そしてホルスターから再びバスターを取り出して構え、発射。凍りついて身動きが取れなくなっていたアルフとユーノの氷を破壊した。それを確認し、ゼロはベンチに置いた買い物袋とケーキの箱を手に取った。

 

「さて、これで終わりだ。俺は帰る」

 

「ま、待ちな!まだ勝負は…」

 

と、アルフがゼロを止めようとする。しかし、次の瞬間アルフはその恐ろしいほどの殺気に押された。

 

「まだやるというのなら…次は手加減しないぞ」

 

「っ…!」

 

その強い殺気に、ユーノは展開していた結界を思わず解いてしまった。直感したのだ。このままアルフと戦いを続けても、勝てないと。殺されると。だからこそ、自分を、アルフを、なのはたちを守る意味で、ユーノはゼロを行かせるという判断をする。それを理解したのか、ゼロはそのまま買い物袋を手に走り去り姿を消す。この日、2人のエースとそれを支える2人はたった1人の戦士に敗北することになるのだった。

 

八神家

 

「帰ったぞ」

 

「遅かったじゃん、お帰り…って、お前どうしたんだよ!」

 

帰ってきたゼロに対し、ヴィータが驚いたように叫んだ。買い物に言ったはずの男の髪や肌、そして服がところどころ黒こげになっているのであれば驚くのは間違いないだろう。しかし、ゼロはそれに対して冷静に対処する。

 

「食品を整理してから話す。お前も手伝え」

 

「お、おう…」

 

この後ゼロとヴィータが買ってきた食品を整理し終えてから、はやての付き添いでいないシャマル以外のシグナム、ヴィータ、ザフィーラに事の顛末を話すことにした。

 

「なるほどな…町で偶然」

 

「ああ、これからは今以上に警戒を必要とするだろう」

 

「でも4人相手でも負けないってやっぱりゼロはギガ強いな」

 

ヴィータのギガ強いという単語に対してゼロは首を傾げるが、これだけは言える。ゼロは管理局側の相手に対して圧倒的な強さを見せた。これ以後、彼女たちはゼロに対してさらに力を付けて戦いに臨んでくるはずだ。

 

「まあなんにせよ、お前が無事だったんだ。よしとしよう…」

 

こうして、この話は終わる。各自、はやてが帰ってくるまでに待機することになるのだが。ゼロは一人、ソファーに座って感がる。

 

(この先、どうしたものだろうな…)

 

ゼロは必死に自分を説得した少女のことを考えて、眠りにつくのだった。

 




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