【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~   作:秋風

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作品もようやく後編です
後編ではオリジナル要素を多く取り入れる予定ですが…まあ、未定です

遊戯王の他に、なのはの転生物も企画中です
4月ごろには投稿作品が4つくらいになってるんじゃないかな…気が遠くなりそう


10「迫りくる時」

ゼロが高町なのは、そしてその仲間達と戦ってから数日。蒐集は順調に進みつつある。今日、ゼロはヴィータと共に無人世界へと足を踏み入れていた。

 

「…暑い」

 

「ああ、そうだな」

 

その世界は一帯が砂漠に覆われた世界。灼熱の太陽と、風によって巻きあがる砂埃が二人を襲う。身体が機械であるゼロにとってこの世界は厳しい。無論、ヴィータもその暑さに参ってしまい、苦しそうにしている。

 

「やっぱ夜の方がよかったんじゃ…」

 

「いや、今日はアイツが検診の日だ。…いない時に蒐集をする方がお前達もいいだろう」

 

ここ数日はさらに家を開けることが多くなった守護騎士一同とゼロ。なるべくはやてと長い時間一緒にいることが出来るようにしているのだが、それでも一家団欒の時間は少ない。

 

「そ、それは、あたしらもはやてと一緒にいるほうがいいけど…」

 

「……?」

 

そんな会話をするゼロとヴィータだったが、歩いていたゼロは急に足を止めてZセイバーを抜刀した。

 

「どうした?ゼロ」

 

「…砂漠の地面が動いた」

 

「そうか?お前の見間違いじゃ…」

 

ゼロが言うも、ヴィータの目には蜃気楼が見えるだけ。彼の見間違いという点もある。しかし、突然地面が鳴り響いた。

 

「キシャアアアアアア!」

 

魔物がその砂の中から突如として出現する。砂の色とほぼ同じ鱗を持ち、全長10mはあろうという大蛇だ。そしてその蛇の各所から繰り出される触手が、ヴィータを絡み取ろうとする。

 

「うわぁ!?」

 

「……!」

 

ゼロはそれに反応していち早く行動する。走って跳躍すると、Zセイバーを一閃。ヴィータについていた触手を薙ぎ払う。ヴィータはそれを機に脱出。ゼロと共に距離を取る。

 

「ゲホッ、ゲホッ!」

 

「大丈夫か」

 

「…ちょっと油断した」

 

ゼロの言葉にそう返すと、ヴィータも同じように武器であるグラーフアイゼンを構えた。

 

「ここにいろ、すぐに片付ける!」

 

「あ、おい!ゼロ!」

 

ゼロは言って、Zセイバーを構え直し、バスターを手にして突撃した。

 

「セアッ!」

 

「キシャアアアアアアアアアア!」

 

ゼロのZセイバーと、魔物の頭突きがぶつかる。しかし、ゼロの愛機であるZセイバーでも、その硬い鱗を斬ることは出来ない。

 

「チッ!」

 

ゼロは空中へ舞うと、二回転ほどして地面に着地。改めてその大蛇を見る。

 

「硬い…」

 

砂漠の砂の中にいる生物だからか、その甲羅は非常に硬い。恐らく、ゼロのバスターでも弾かれてしまうだろう。大蛇はそのまま地面へと潜り、ゼロは周囲を見渡す。これだけ広い場所では、どこから飛び出してくるかわからない。

 

「キシャアアアアアア!」

 

「何!?」

 

一度潜ったかと思うと、尾が飛び出てくる。それを避けるも、今度は頭部が出てきてゼロに襲い掛かる。尻尾の攻撃を避けた隙を見て大蛇は攻撃を仕掛けてきたのだろう。しかし、ゼロはそれを受け止めるようにシールドブーメランを展開。ゼロはその大蛇の突進に押され、吹き飛ばされる。

 

「クッ!」

 

大蛇は触手を展開してゼロへと迫る。反撃するも、触手が斬れるだけで本体に対してはまったくダメージが通っていない。硬い甲羅はゼロの攻撃を簡単に防いでしまうようだ。

 

「(クロワール、一時的に俺のほうへエネルギーを全力で回せ)」

 

「(駄目よ!あれをやって、この前一時的に動けなくなったのを忘れたの!?)」

 

以前、結界を破壊するためにクロワールが蓄積するエネルギーをゼロの右腕に宿し、無理やり結界を破壊することをした。シャマルにすぐ転送されたからよかったものの、その莫大なエネルギーはゼロに対して悪影響を与えていた。それにより、ゼロの回路は一時的にストップするという事態を引き起こした。クロワールの力もあって復活したが、そう何度も続くわけがない。ましてや、今の敵を倒すのにそれをやることはあまり得策ではない。相手は地の利を得ているため、その全力の攻撃が必ずしも当たるというわけではないからだ。ゼロは内心で舌打ちをしつつ、クロワールにさらなる要求をする。

 

「…ならクロワール、あの武器は出せるか?」

 

「(やってみるわ!)」

 

直後、Zセイバーが変化を始める。ゼロが持っていたZセイバーの刃が消え、その反対の方から翡翠の刃が形を変えて姿を現した。形作られたのはトンファーのような武器。ゼロがZセイバーなどと併用して使う武器の一つ、リコイルロッドである。

 

「はああああああっ!」

 

ゼロが狙ったのは鱗ではなく、大蛇の目。ここはどうあっても防ぐことが出来ない部分だ。ゼロはリコイルロッドで空中へと大きく跳躍し、Zセイバーでその眼に目がけ、刃を振り下ろした。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

大蛇が悲鳴を上げる。ゼロはさらにそこからサンダーチップをZセイバーへ装填。Zセイバーに電撃が走った。目玉から強力な電撃を浴びる大蛇の悲鳴が大地に響きわたる。

 

「ギャアアアア……ガッ…ア…」

 

電撃を浴びた大蛇はノックアウト。死んではいないらしく、ピクピクと痙攣してその場で動かなくなった。

 

「ヴィータ、今のうちに蒐集しろ」

 

「お、おう!」

 

今までその戦いに驚かされていたヴィータがようやく我に帰ると、ゼロの元へ闇の書を抱えて近寄ってきた。こうしてヴィータが蒐集する。

 

「どうだ?」

 

「6ページちょい…もうちょっと行けると思ったんだけどな」

 

「仕方がないことだ。次に行くぞ」

 

「お「ヴィータちゃん!ゼロさん!」!?」

 

ゼロ達が移動しようとするが、そこで声が掛った。そこにいたのは白いバリアジャケットを着た少女…そう、高町なのはだった。

 

「またおm「先に行け、ここは俺が食い止める」ゼロ!?」

 

「あいつは、俺に用があるらしい…お前は蒐集を続けろ」

 

「わ、わかった…気をつけろよ?」

 

ゼロの言葉に頷くヴィータ。ヴィータは足元に魔法陣を展開した。

 

「ああ・・・・後で迎えに来てくれればいい」

 

「了解、終わったら迎えに来る」

 

こうして、ヴィータが転移し、ゼロは視線をなのはに移した。

 

「またお前か…高町なのは」

 

「あ、名前…覚えてくれたんですね。その、ゼロさん…」

 

どうやら前回のことを気にしているのだろう。しかし、ゼロはそのままZセイバーを抜刀。なのはへと向けた。

 

「…お前とはコレ以外では語れまい。俺に勝てば全てを話す。それだけだ」

 

「わかったの…今度こそ勝って、お話聞くの!」

 

なのはも、ゼロの言葉に頷いた。最早、ゼロには何を言っても無駄。戦って勝ちを得ることで、ようやく話すことが出来る。なのはもその全てを理解してレイジングハートを構えた。

 

 

――WARNING!――

 

 

「アクセル…シューット!」

 

「はっ!」

 

ゼロに向けて、いくつもの桃色の魔力弾が飛んでくる。しかし、ゼロはそれをモノともせずにZセイバーでアクセルシューターを斬り落とすと、リコイルロッドを構えて下へチャージした攻撃を放った。その衝撃によってゼロは大きく跳躍した。

 

「と、飛んだ!?」

 

そう、リコイルロッドをチャージした状態で下に向けると飛ぶことができる。正確にはジャンプなわけだが、それでもなのはが現在飛んでいる位置よりも高く飛び上がっていた。そこからゼロはZセイバーを構え直し、その重力と体重を乗せた一撃ででなのはに斬りかかる。

 

「セアッ!」

 

「きゃあ!」

 

それを避けきれず、なのははレイジングハートでその一撃を受けるが、そのまま地面に叩きつけられた。ゼロも着地してからすぐに距離を取る。前のようにバインドされてはたまったものではない。

 

「や、やっぱり強い…」

 

言いながら立ち上がるなのは。この前戦った時、4人がかりでも駄目だったのだ。1人で戦って勝てるわけがない。しかし、それでもなのはには譲れないものがある。だからこそ立ち上がり、レイジングハートを手に取った。

 

「必ず勝って、お話聞かせてもらうの!行くよ、レイジングハート!」

 

『Yes, of course! My Master!(もちろんです!マイマスター!)』

 

「…やってみろ」

 

ゼロは少しだけ笑みを浮かべる。ゼロは静かに思う。何故だろうか、今この瞬間がとても楽しい。そう感じる。自分より強い相手と知りながらも、真っ直ぐ正面から向かってくる少女、高町なのはの相手をすること。それによって伝わってくる、彼女の負けたくないという己の誇り…その二つを感じ取ることと、彼女と戦うのが、ゼロにとっては嬉しくて仕方がなかった。そんなことを思うと、不意に自分と戦った4人の戦士達のことを思い出した。

 

「あいつらのが伝染でもしたか」

 

『ゼロ?』

 

「こっちの話だ…このまま一気に行くぞ」

 

そんなことを言いながら、再び地を蹴りなのはへと向かって行くゼロ。なのはもそれを迎撃しようと愛機レイジングハートを構えた。

 

「来るよ!レイジングハー…え、きゃあ!?」

 

しかし、突然そこで異変が起きる。なのはの体に、謎のバインドが巻きつく。当然、ゼロがバインドなどを使うことはできない。殺気を感じ取り、ゼロはバスターを抜いて、感じた気配へ向けてバスターを撃ち放った。

 

「ぐっ…まさか、気配を消しても…」

 

そこにいたのは仮面の男だった。ゼロは無言でなのはを背に、Zセイバーを構えて仮面の男に向ける。

 

「……」

 

「どういうつもりだ?私は君の味方をしたのだが?」

 

ゼロはそれを無視し、一歩、また一歩男に歩みを進める。もちろん、Zセイバーを構えたまま。それは横槍に対する怒りと、ここでこの男を捕獲し、その真意を知るためでもある。

 

「ほう…」

 

「悪いが決闘の途中だ…」

 

「そんなことをしている場合でもあるまい?時間もないだろうに」

 

確かに、仮面の男の言うとおりなのはと戦っている暇は正直ない。闇の書の完成は近いとはいえ、時間を有効的に使わなければこの先どうなるかはわからない。しかし、そんなことはゼロもわかっている。

 

「そろそろ追いかけっこも飽きていたところだ。悪いが、色々と吐いてもらうぞ」

 

そうゼロが言った瞬間、仮面の男が煙のようにその姿を消した。逃げるつもりなのだろう。しかし、ゼロはそれを逃がさない。

 

「はあっ!」

 

「ぐあっ!」

 

その気配を追ったのか、ゼロは正確に仮面の男へとバスターショットによるエネルギー弾を命中させる。しかし、仮面の男も体制を立て直してゼロへととび蹴りを放った。

 

「…遅い!」

 

飛んできた蹴りを避けると、その背後にチャージしたリコイルロッドをぶつけた。

 

「ぐはっ!」

 

通常のなのはの飛翔高度よりも高く跳躍できるほどの力であるそれを生身でぶつけられれば、相当な威力が仮面の男を襲う。仮面の男が崩れ、膝をついた。ゼロがゆっくりとZセイバーを構えながら仮面の男に近づこうとするが、別の気配にゼロが気づく。背後からもう一人、ゼロへと別の仮面の男が拳を繰り出していた。ゼロはそれをヒラリと避け、その避けた勢いを載せたまま別の仮面の男に蹴りを入れ吹き飛ばした。その一撃は浅かったのか、空中で体勢を整え、膝を突く仮面の男へと駆け寄る。

 

「大丈夫か…」

 

「ああ、あいつはやはり計画に支障をきたす・・・」

 

仮面の男が倒れる男の前に立つ。それぞれが同じような構えをしている。2対1。ゼロにとっては不利といえるだろう。しかし、それでもゼロはZセイバーを降ろさない。

 

「今日こそ倒させてもらうぞ」

 

「我らの計画のために消えろ」

 

「・・・・・・やってみろ」

 

 

――WARNING!――

 

 

「ゼロさん!」

 

襲い掛かる仮面の二人組み。すると、そんな様子を見たなのはが必死にバインドを抜け出そうとしていた。ゼロを助けようとしているようだろう。しかし、バインドはなかなか取れそうにない。

 

「死ねぇ!」

 

男が瞬時にゼロの背後へと回りこんで蹴りを繰り出した。しかし、その攻撃は空振りに終わる。そして次その瞬間、ゼロは仮面の男を素手で殴り飛ばした。さらに、ダッシュを使って殴り飛ばした男とは違う仮面の男に対して接近し、同じように殴り飛ばす。

 

「が・・・あ」

 

男は短い悲鳴を上げて吹き飛ばされる。

 

「ゼロナックルに換装して正解だったな」

 

ゼロの手の平にZの文字が浮き上がっていた。ゼロナックルは本来相手の防御を抜いて武器を奪い取る武器だが、その拳には莫大なエネルギーが集まるため、それを撃ちだせば強力な威力を持った拳となる。その一撃を受けてか、無傷の仮面の男もやはりゼロには勝てないということを理解する。

 

「駄目だ、撤退するぞ!」

 

「逃がさん!」

 

ゼロがバスターを撃ち放つ。だが、そのバスターから放たれるエネルギーが当たる前に、仮面の男たちは転送し、その二人は姿を消えた。

 

「……逃がしたか」

 

「ゼ、ゼロさん…大丈夫ですか?」

 

「……ああ」

 

仮面の男達が姿を消したためか、バインド消えたらしく、なのはがゼロのところへ駆け寄った。そして、無傷であったゼロに対し、安堵のため息をつく。

 

「よかったぁ・・・」

 

「…お前は変わっているな」

 

「ほぇ?」

 

「俺はお前の敵だぞ?」

 

事実、ゼロとなのはは敵同士である。しかし、なのははまるでゼロに対して味方であるような振る舞いである。そんなことを言われ、なのはは少し慌てた様子になる。

 

「え、えと、その、ゼロさん…なんだか優しいし、敵って感じじゃなくて…それに、友達になりたいからなの!」

 

「……それは、俺に勝ってから言うんだな」

 

「むー…ゼロさんの意地悪」

 

なのはは頬を膨らませて怒っているようだが、そんな様子にゼロは少しだけ口元を緩めて笑う。今まで戦った中で、敵がここまで自分に説得をしようとすることに少しだけ可笑しくなってしまうゼロ。するとそこへ、少しボロボロになった様子のヴィータがやってきた。どうやら、蒐集を終えたようだ。

 

「ゼロ!」

 

「…ああ、転送を頼む」

 

ヴィータはゼロの言葉に頷き、ゼロの元へ近づき魔法陣を展開する。

 

「あ、ゼロさん!」

 

「今日は横槍があったから引き分けだ。だからいずれ、決着を付ける」

 

「の、望むところなの!」

 

こうしてゼロは転移し、戦いを終えるのだった。

 

 

 

 

帰ってきたその日の夜、ゼロとヴォルケンリッターは再び会議をしていた。もちろん、議題は仮面の男についてである。はやてはクロワールと共に皿洗いをしており、その話の内容はジャミングもかけられていて聞こえていない。

 

「今日の戦いで私の方にも仮面の男が現れたがゼロ、お前の方にも現れたようだな」

 

「ああ、二人ともな」

 

「ゼロ、お前はどう思う?」

 

実は、シグナム達の蒐集場所にはフェイト・テスタロッサが向かっていたという。戦っている最中にこれも同じく横槍が入る。そして、フェイトのリンカーコアを蒐集したのだという。確かに、一見見れば味方と取れるが、ゼロは首を振る。

 

「あいつらを信用すべきでない」

 

ゼロが言うと、シャマルが首を傾げる。

 

「どういうこと?」

 

「あの男の目的は闇の書の完成なのだろう。だがやはり、それが最終目的ではない」

 

「やっぱり、はやてちゃんを封印しようと?」

 

「おそらく闇の書を…だ」

 

力を解放した瞬間を押さえ込み、封印する。確かに覚醒した後より、覚醒の瞬間のほうが力が完全に解放されていないため、封印するには丁度いいのだろう。

 

「…家の周りには厳重なセキュリティを張っているし、ゼロの見張りのおかげでまったく察知されなくなったし…大丈夫、だと思うけど」

 

「それでも念の為だ。シャマルはなるべく主はやての傍を離れん方がいいな」

 

「そうね」

 

闇の書の完成も間近だ。今後の予定を話していた一同だったが、そんな話をしていると、ヴィータがこんなことを言い出した。

 

「なぁ、闇の書を完成させてさ、はやてが本当のマスターになったら…それではやては幸せになれるんだよな?」

 

「どうしたんだ? いきなり?」

 

シグナムが何を今更というような声でいう。

 

「闇の書の主は大いなる力を得る。守護者である私たちが誰より知っているだろう?」

 

「そうだよ。そうなんだけどさ…アタシなんかさ、大事なことを忘れている気がするんだ」

 

ヴィータの言葉に、困惑する他の3人。しかし、そんな様子にゼロはヴィータの頭にポンと手を乗せる。

 

「俺にはよく理解できないが、あいつを助ける方法はここまで来たら蒐集を完結させるのが最善のはずだ。忘れたことは、その時までに思い出せばいい…」

 

「うん…」

 

「そうだな、それで少なくとも闇の書の侵食は止まる」

 

ヴィータが頷き、シグナムもゼロに同意する。そんな時だった。

 

――カランカラン…ガタンッ!ガシャン!

 

突然何かが落ちる音がした。お盆が落ちる音と皿が割れる音。キッチンにいるのはたった一人。それから、大きな音がもう一度、ドサリと音が鳴る。答えはもう出ていた。

 

「はやて!」

 

クロワールの悲鳴が聞こえる。一同は急いではやてのいるキッチンへと駆け寄り、ヴィータが悲鳴上げた。ゼロもはやての元に駆け寄り、倒れているはやてを仰向けに寝かせる。

 

「シグナム!救急車を呼べ!」

 

「ああ!」

 

はやてを寝かせた傍らにシャマルが寄り添い、シャマルがはやてに回復魔法を掛ける。効果があったのかは不明だが、若干はやての顔色が少しは良くなった。数分後に救急車が到着し、はやては病院へと搬送された。

 

 

 

 

はやてが病院に搬送されてからだいたい数時間が過ぎた。検査が終わるまで心配だったはやての容態は良くなったようなので、意識を取り戻したはやては今は一般の病室にいる。

 

「うん、もう大丈夫みたいね」

 

「ありがとうございました」

 

石田医師がはやての検査を終え、立ち上がる。主治医の観点からも、彼女の容体は正常だと判断されたらしい。ヴォルケンリッター一同は小さく安堵のため息を漏らす。

 

「はぁ、ホっとしました」

 

「せやから少し目眩がして、胸と手が吊っただけやって言うたやん」

 

「心配させるには十分すぎる理由だ。無理をするな」

 

「そうですよ、ゼロの言うとおりです」

 

「何かあっては大変ですから」

 

「はやてが無事でよかったよ、本当に」

 

ゼロの言葉にシグナム、シャマルが同意し、嬉しそうに抱きつきながらヴィータが言う。そんなヴィータの頭をはやてが撫でて喜んだ表情になっている。ヴィータが一番心配していたので、当然ではある。

 

「まあ来てもらったついでに少し検査とかしたいからもう少しゆっくりしていってね」

 

「はぁい」

 

「シグナムさん、シャマルさん少しいいですか?」

 

「はい」

 

こうして石田先生によばれた二人は退出。ヴィータは飲み物を買いに外へと出掛けるのだった。残ったのはゼロとはやてだけ。ちなみに、クロワールはヴィータについて行った。

 

「まったく、みんな大げさや」

 

「…うすうす、気がついてはいるようだな」

 

ゼロがいうと、はやてが顔をこわばらせた。そのゼロの言葉と視線に動揺しながらも、はやては口を開く。

 

「な、何がや?」

 

「とぼけるな。自分の体のことは、自分でわかっているはずだ」

 

「……そ、それは」

 

自身の体のことは、自分で一番わかる。それは人間にもレプリロイドにも言えることであった。だからこそ、無理をして笑顔を作るはやてに対し、ゼロは言った。

 

「今は、無理をしなくていい」

 

「ゼ、ゼロ?」

 

言いながら、ゼロはポン、とはやての頭に手を当てて撫でる。以前のゼロでは考えられなかったことかもしれない。

 

「今だけだ…ここには俺しかいない」

 

「ゼ、ロ…」

 

「今は、強がらなくていい…」

 

ゼロの言葉に、とうとう抑えられなくなったのか、はやての目からはボタボタと大粒の涙が零れ落ちていた。そして、はやてはゼロに強く抱きついた。

 

「あ、う…わ、私…まだ、まだ生きていたい…死ぬのなんて、絶対嫌や…」

 

はやてはゼロに抱きつき、精一杯、心からの本音を言った。はやては分かっていた。いつか、別れの時が来るのではないのか…と。自分の命は、長くはないと。だからこそ、精一杯無理をして、家族の前では笑顔でいたかった。しかし、はやても子供。そんな無理をいつまでも通すことが出来るわけがない。ゼロの前で、はやては本音をぶちまける。

 

「せっかく…せっかく家族ができたのに…死んだら、また独りぼっちになってまう」

 

「……」

 

「うう…ひっぐ…」

 

ゼロはただ、泣き続けるはやての涙を拭っていた。自分はレプリロイド、涙は出ない…かつて遠い記憶に、最愛の友に自分が泣けなかったという怒りをぶつけていた記憶もあるが、そんなことはどうでも良い。今泣く少女のために、ゼロはこう言った。

 

「お前は俺が死なせない…」

 

この後、はやてが泣き疲れて眠りにつくまで、ゼロははやてと共にい続けるのだった。

 

 

 

 

「入院?」

 

はやてが目を覚ましてから、シャマルがはやてに説明をする。一応、念のために…と。ゼロはシグナムから「要するに、時間が無い」と説明を受ける。

 

「はい、そうなんですよ」

 

「そうなんか…」

 

「あ、でも念の為にというだけですので心配はありません」

 

シャマルがフォローをするが、それが最早時間のないということを物語るには十分である。

 

「それはええんやけど…」

 

「どうしました?」

 

「いやな、私が入院しとったら料理とか全部ゼロやクロワールに任せてしまうことになってしまうんやない?」

 

「確かにそうですね…」

 

「もう何言ってるのはやてちゃん、ヴィータちゃん。そこは私とクロワールの交代でやります」

 

シグナムがソレは困った、と考えるも、シャマルは笑顔で料理の担当を申し出る。そんなシャマルの言葉を聞いたヴィータとシグナムが抗議の声を上げた。

 

「「シャマルが作るのだけはやめてくれ!!」」

 

ヴィータとシグナムによる間髪いれずのツッコミ。二人はどうしてもシャマルの手料理は食べたくない。シャマルの作る料理はマズ過ぎるというわけでもないが、味付けが微妙で、八神家の中ではシャマルの料理は不評。それなら、はやての横で手伝い、一通り「普通の料理」を作ることのできるゼロに任せてしまった方がマシなのだ。そんな二人の抗議に言いかえすシャマル。

 

「二人とも酷い!ゼロ、この二人に何か言ってあげて!」

 

「……」

 

ゼロは言われて、シャマルから「フイ」と目を逸らす。どうやら、シャマルの料理はレプリロイドであるゼロでも理解を得ることが出来ない料理ということらしい。

 

「ゼ、ゼロまで…」

 

「まぁシャマルはさておき、家に戻って主の着替えと本などを持って来ます」

 

「他に持って来て欲しい物があったらなんでも言ってくれよな、はやて」

 

病室の隅でいじけているシャマルを放置し、シグナムとヴィータが言うと、はやてはいつも通りの笑顔を2人に見せる。しかし、ゼロにはその顔がシエルと重なる。

 

「そやな…あ!すずかちゃんからメールとか来るかもしれん」

 

「それは俺が連絡しておく、お前はもう寝ろ」

 

「うん」

 

闇の書完成まで、あと少し……全てが終わるときは、刻一刻と近づいていた

 




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