【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~ 作:秋風
それにしても、手直しをしていて思うのですが、この文章でよく小説として投稿できたな…と
まあ、今もそんなに変わりませんがね…
では、どうぞ
感想、評価、ご指摘、お待ちしております
11「覚醒」
はやてが入院して数日が過ぎた。シグナムたちは入院が決まったはやてのために、眠らず蒐集を行う。ゼロの協力もあってか、蒐集による闇の書の完成は予定通りクリスマスには終わりそうである。現在ははやてのお見舞いへ行く途中である。
「あ!」
八神家から病院まで半分くらいの位置で、シャマルが思い出したかのように声を上げた。
「どうした?」
「はやてちゃんに頼まれていた本、忘れてきちゃった」
はやてが退屈だというので、シャマルは暇つぶし用に本を頼まれていたらしい。そんなうっかりな様子に、ヴィータがため息をつく。
「何してんだよ、シャマル」
「うぅ、ごめんなさい」
普段ならこんなミスをしないだろうが、ここ連日は無理をした蒐集を行っている。うっかりというのも仕方がないように思える。すると、ゼロが来た道を戻り始める。
「俺が行く。お前たちは先に行け」
こうしてゼロは走って家へと戻ることにした。本は食卓のテーブルの上に置かれていたためすぐに見つかり、ゼロは病院への道をたどった。だが、そこで異変が起こる。周囲に人の姿が無い。この時間帯はまだ人がいなくなるはずがない時間帯なのだが
「人が、消えた?」
「ゼロ、これ…結界じゃない!?」
そう、周囲を囲むドーム状の何か。この現状をゼロは経験している。嫌な予感がゼロを過る。ゼロは持っていた本を放り投げると、病院への道をひたすら走る。そして聞こえるのは悲鳴。ゼロは近くのビルへと飛ぶ。そこで目にしたのはヴォルケンリッターが磔にされている姿と、その姿に涙を流し、呆然とするはやての姿だった。次々と消えるヴォルケンリッター。ゼロはヴィータの磔を破壊し、ヴィータを抱きかかえる。
「ヴィータ!」
「ゼ…ロ?」
「しっかりしろ!」
「ごめん、ゼロ…あたし…はやてを…守れ、な…」
涙を流すヴィータ。最後まで言いかけて、そこでヴィータが消えた。そこに、なのはとフェイトが現われる。
「残念…ちょっと遅かったね」
「守護騎士の人形は消滅、死んだよ」
なのはとフェイトが少女には相応しくないような邪悪な笑みを浮かべた。その瞬間ゼロは理解する。あいつらは仮面の男だと。そしてゼロの脳裏に、一つの記憶がフラッシュバックした。
『ゼロ…』
『しっかりしろ…!アイリス』
その記憶は、失われた遠い記憶。ゼロは一人の少女を抱え、必死に叫んでいた。
『お願い…レプリフォースに手を出さないで……一緒に、レプリロイドだけの世界で暮らしましょう』
『アイリス、レプリロイドだけの世界なんて幻だ!』
『そうよね…でも信じたかった…レプリロイドだけの世界で、貴方と…』
少女がゼロに微笑み、ゼロを握る手が力なく地面へと落ちる。そして、少女は目を閉じた。似ていた。『あの時』と今の状況が。その時のことを詳しくは覚えていない。しかし、これだけは言えるのだ。
――マタ、マモレナカッタ…
ゼロの体をどす黒い感情がゼロの体を支配していく。目の前の者達は何をした?自分を家族と呼んだ者達を消した。ならばどうする?今のゼロに、答えは決まっていた。
――コワシテヤル
そして、ゼロが吼えた。
「…き、さ、ま、らああああ!」
「ゼ、ゼロ!?」
その豹変ぶりにクロワールが驚きの声を上げた。そして…
「破壊、する…!」
その表情はいつもの冷静な表情をしたゼロではなかった。その怒りに歪む表情。そして体から溢れるエネルギー…彼の今までにはなかった『怒り』という感情が、ゼロの中で眠っていた力を呼び起こす。その力はゼロ自身のかつての強敵を思い出させる姿だった。
それは破壊神と呼ばれた、ゼロ覚醒の瞬間だった。
*
とある所に、1つの家族がいた。3人の幸せな家族。そして、それを支える男と、その使い魔。彼らの時間は1つの本によって狂い始める。闇の書と呼ばれたその本によって降り注いだ厄災。それによってその家族を支えていた夫は死に、妻には深い悲しみが刻まれる。そしてその家族を支えていた男は自らの失態と闇の書に怒りを燃やす。
――罪滅ぼしのためにも、何としても闇の書をこの世から消滅させる
どこか遠くに消えた闇の書を追って、男は復讐に燃える。使い魔達もその主のために全力を尽くした。そして見つけた闇の書の場所と、その主。その主はたった独りの少女だった。両親を早くに亡くし、脚を不自由にしたその少女。その少女に対し、虚しさと憐れみが男の復讐に降りかかる。闇の書は破壊不可能。ならば、闇の書と少女ごと封印するしかない。それが仕方のないことだと、少女1人の命でその復讐は果たせるのだと。自分にそう言い聞かせる。だが、トラブルが起きた。少女に家族が出来た。どこからか来た謎の男。金髪の髪を揺らすその男は自分たちの障害となった。だが、それでも男は使い魔に命じる。
――闇の書を封印するため、最後の仕上げをしろ
その言葉に頷く使い魔達。己が顔を仮面で隠し、その少女とその闇の書の生み出した守護騎士達の前に立ちふさがる。そう、それで全てが上手くいくはずだった。だが、誤算があった。完璧であった計画に支障をきたす1人の男がいた。金髪の髪を揺らし、紅き体を輝かせた男。その男が今、少女のために、少女の守護騎士達のために怒りを燃やす。
彼女達の最大の誤算…それは、彼の怒りに触れたことだと言えるだろう。
*
「なんだ、この威圧感は!?」
仮面の男達は暴走したゼロの威圧感に押される。今まで幾度として戦った男。敗北をしてきたが、今回はそれ以上に強い殺気が両者を支配する。そしてゼロが再び獣のように吼えると、地面を蹴る。
「ウオオオオオオオオオオオッ!」
「がはっ!」
ゼロは武器を持たず、全力でなのはに化けた仮面の男を殴り飛ばした。その衝撃で変身が解けたのか、そこに姿を現したのは獣の耳と尾を持った女性。
「アリア!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
狂気と化したゼロが、今度はフェイトに化けた使い魔を蹴り飛ばす。その戦い方に、いつものゼロはいない。いるのは野獣。
「ゼロ!落ち着いて!ゼロ!」
「ウガアアアアアアアッ!」
クロワールの声を振り切り、Zセイバーを持つとそのまま二人へと突っ込んだ。しかし、彼女達もまだ意識はあるらしく、その目の前にいる恐ろしい化け物に抵抗を試みた。
「こ、この!」
変装が解けた女性、アリアと呼ばれた女性はバインドでゼロを縛り、その場から空中へと離脱する。だが、その瞬間だった。
「ウガアアアアアアア!」
クロワールのサポートもなしに、ゼロは力任せにバインドを引きちぎり、チャージされたセイバーを振り下ろした。その衝撃でビルがまるで焼き菓子が砕けたかのように砕け、ビルが崩壊した。そして、その破片が二人にぶつかる。
「ぐああ!」
「ハア…はあ…アアアアアアアアアアアアアッ!」
今の一撃はゼロ自身にも反動が大きかったのだろう。先ほどの勢いはなかった。しかし、その一撃の余波を受けた二人も瀕死。それでもゼロは止まらない。今度こそ逃がしまいと、その手にZセイバーを握りながら、ゼロが二人に襲い掛かった。しかし、倒れる二人を前に、ゼロの動きはそこで止まった。
「ゼロ…ゼロ…!お願い、止まってゼロ!」
「クロ、ワール…」
「落ち着いてゼロ!彼女達を倒しても、何にもならないわ!」
ゼロの体は自然と落ち着きを取り戻していた。それもそのはず、クロワールはゼロの内部へと侵入。強制的に力を発動させてゼロの抑制力を強化。その暴走を止めた。彼女、クロワールの名より由来した、『想い』という意味。彼女だからこそ、その行動をできたのかもしれない。すると、遠くから声がする。
「ゼロさん待ってぇ!」
「お願い、待って!」
白いバリアジャケットと、黒いバリアジャケットの少女。どうやら、なのはとフェイトが飛んできたらしい。その表情には焦っている様子がうかがえた。どうやら、今度は本物のようである。彼女達も遠くからゼロの暴走を見ていたらしく、それを止めに来たようだ。しかし、そこでゼロの背に悪寒が走る。それは強烈な力。
「っ…!これは!?」
思わずその力を感じる場所に目を向ける。そこにいたのは銀髪の女性。紅い瞳に黒い甲冑を来た女性だった。女性は静かに空を仰ぎ呟く。
「また、すべてが終わってしまった…」
「…?」
「一体幾度、どれだけ同じ悲しみを繰り返せばいい…」
「はやてちゃん!」
「はやて!」
なのはとフェイトの言葉、そして彼女が傍らに持つ闇の書から、ゼロも彼女がはやてであることが確認できる。しかし、ゼロは思う。彼女ではない、と。はやてはあんな悲しい表情を浮かべたことが無い。そして彼女自身の雰囲気を感じることはできない。
「私は闇の書…この力は全て主のため、そして…御身の願いのままに…全てを、終わらせましょう」
そう呟きながら、彼女、闇の書は膨大なエネルギーをその腕に込めた。こんなところでエネルギーを放出されたら、周りに膨大な被害が起きる。それを悟ったゼロが叫ぶ。
「待て!あいつはそんなことを望んでいない!」
ゼロが叫ぶが、闇の書はゼロの言葉に耳を貸さず、その力を解放する。
「デアボリック…エミッション…」
攻撃を加えて止めると言うのもゼロは考えたが、その考えをすぐに打ち消す。ゼロからすれば、その姿はかつてエルピスがダークエルフを取りこんだときのように、闇の書がはやてを容れ物としてその力を解放している。下手に強力な攻撃を加えた場合、はやてがどうなるかはわからない。魔導師には非殺傷という設定が存在しているとシャマルに教わったが、ゼロにそんなものはない。
「あれって!」
「空間攻撃!?」
そうなのはとフェイトが言いながら焦った様子を見せた。ゼロからしても、それは危険着周りない。
「闇に染まれ」
闇の書の言葉と共に、その攻撃が解放される。彼女の周囲が謎の黒い波動と共に崩壊していく。その速度にゼロは避けようとするが、なのはとフェイトがそれに反応していないことに気がつく。今のゼロはクロワールの補助を受けているため反応速度は高いが、ゼロが避けた後に反応するであろうなのはとフェイトがこの攻撃を避けることが出来ないことをゼロは悟る。それを理解したゼロは咄嗟に二人を抱えて飛ぶ。
「「え?」」
「掴まっていろ…!」
ゼロは闇の書を背にし、自分の後ろにいたなのはとフェイトを掴むと、そのままビルからビルに飛び移り、逃げる。ある程度の距離を得た所でその攻撃が停止したことを確認し、別のビルの上で止まる。
「…無事か」
「う、うん…」
「なんとか…」
と、答える二人だが、なのはとフェイトがどこかぎこちないようにゼロは見てとれる。
「…どうかしたか?」
「えと…」
「その…」
そこでゼロは気がついた。この二人は先ほどまでの自分の行動と戦いを見ていたのだと。自分をレプリロイドと理解している二人からすれば、ゼロに何か異常が起きてしまっているのではないかと不安になっているのだろう。それに気がつき、ゼロは小さくため息をつく。
「安心しろ、今は特に異常は起こしていない…俺は正常だ」
「そっか、よかったぁ…」
と、なのはがホッとしたような表情になった。そんな彼女の表情に、ゼロはこんな時によく笑顔になれるものだと、少しだけなのはを感心する。
「あ、そうだゼロさん…その、はやてちゃんを…」
「分かっている。アイツを救うのは俺の役目だ」
「私も手伝います!」
「はやてを助けるために」
ゼロは一度家に帰っていたため知らないが、病室でなのはとフェイトははやてと面会し、すずかの紹介で友達となっていた。友達を助けたい。だからこそ、そうゼロに申し出た。時空管理局の局員とその協力者としてではなく、友達として、彼女を救いたいのだと。そんな彼女達にゼロは少しだけ表情を和らげる。
「…お前たちが味方なら助かる」
ゼロはZセイバーを抜刀し、遠く先にいる闇の書を見つめる。
「…お前達はアイツを救う解決策を探せ。それまでの時間稼ぎは俺がやる」
「え、ええ!?」
「あ、危ないよ!?」
ゼロの作戦になのはとフェイトが驚きの表情を見せるが、ゼロはそれを無視して言葉を続けた。
「魔法は専門外だ。お前たちの方がはやてを救う方法は浮かぶだろう。俺は戦うことしかできない」
そう、それがゼロの役割。レプリロイドである自分には戦うことしかできない。だから、それ以外のことが出来る人間、なのはとフェイトに解決策を任せた。
「で、でも…それじゃあゼロさんが…」
「なのは!」
「フェイト!」
心配するなのはたちの元へ、彼女達の友人であるユーノ・スクアイアと、フェイトの使い魔、アルフが駆けつけた。
「二人とも無事かい!?って、あんたは!」
ゼロの存在に気がついたらしく、アルフが思わず身構えてしまった。そんな彼女に対し、フェイトが制止をかけた。
「待ってアルフ!今のゼロは敵じゃないよ!」
「え!?一体どういうことだい?」
と、ゼロに視線を向けるアルフ。どうやら、かなり疑っているらしい。
「今の俺は、お前達と敵対するつもりもなければ、敵対する理由もない」
「……ほんとかい?」
「嘘をつくメリットがない」
「アルフ、それにユーノも…彼を信じて。今の彼は、私達の味方だよ。私となのはを助けてくれたの」
と、フェイトがいう。そんなフェイトの言葉に、使い魔であるアルフは使い魔であるが故に、その主の感情を読みとったのか、その拳を降ろした。
「わかったよフェイト…ユーノ、あんたもいいね?」
「うん、フェイトがここまで言うんだ…それに、味方なら心強い」
アルフの言葉に頷くユーノ。そんなことをしていると、遠くからゼロは強烈な殺気を感じ取る。
「…!」
「ゼロさん?どうしたんですか?」
遠くを見つめ、表情を険しくしたゼロになのはが首を傾げる。
「ここがばれた。すぐにでもこちらに攻撃が飛んでくる」
「も、もう!?」
「そんな、今クロノたちも対抗策を練っているのに!」
と、慌て始めるなのはたち。確かに、現在隠れるまでとは行かないが、それなりに離れた場所にいた。それがバレるということは、闇の書の探知能力がよほど高いということなのだろう。
「さっきも言った通り、俺が時間稼ぎをする…それまで、頼む」
「は、はい!」
「うん、貴方も気を付けて」
ゼロの言葉に、なのはとフェイトが頷く。そしてゼロは駆け出した。自分を家族と呼んだ、孤独だった少女の元へ
ゼロにとって、この星で最後の戦いが始まろうとしていた
NEXT「友達」