【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~   作:秋風

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物語がようやく終盤に近付きつつあります…長かった

感想、指摘、評価待ってます



13「理想郷」

再び闇の書に攻撃するため、ゼロはZセイバーを構え、エネルギーをチャージしていた。すると、そこでゼロに待ったと、声がかかる。

 

「あ、ちょっと待って」

 

ゼロを止めたのはフェイト。その彼女は今、何やら耳に手を当てている。その様子から、フェイトが誰かと連絡を取っていることを理解する。

 

「…どうした?」

 

「今、エイミィ…アースラの人から連絡があって、クロノが闇の書に投降と停止を呼び掛けて欲しいって」

 

「奴が言うことを聞くとは思えないが……」

 

と、ゼロが言う。ゼロが言うことももっともだ。現在、闇の書はゼロやなのはたちを敵と認識し、攻撃を行っている。

 

「時間稼ぎと、念話ではやてと連絡が取れれば、はやてが解決策を教えてくれるはずだって…闇の書は資料の宝庫…それなら、暴走を止める手立ても見つかるかもしれないし」

 

つまり、時間を稼ぎながら、闇の書の器である彼女の意識を呼び戻せばこの暴走を止めることが出来るのではないかという考えだ。その意図を理解したゼロはZセイバーを再び構え直す。

 

「わかった、時間稼ぎは俺がやる。お前達は念話で呼びかけ続けろ」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

そう言って二人とも何かに集中し始めた。おそらく、念話を使っているようだ。ゼロも駆け出そうとするが、その瞬間に二人の顔色が変わる。

 

「どうしっ…!」

 

二人の周囲に触手のような物が出現した。しかも数が多い…交渉は決裂したのか、それとも、はやてへ向けた念話は闇の書に妨害されたのか。突然のことに反応できなかった二人をゼロは再び抱え、壁を蹴ってビルの屋上まで跳ぶ。

 

「くっ!」

 

しかし、その触手はある程度距離を離してもピッタリと追尾を行い、ついてくる。それを理解したゼロは二人をビルの屋上で降ろした。

 

「二人とも、一度離す」

 

「え、はい」

 

「だ、大丈夫」

 

ゼロは触手の方に向き直り、Zセイバーを持って駆け出し、そのままチャージを終えたZセイバーを振りおろした。

 

「はあっ!」

 

Zセイバーの衝撃波で、触手を消滅させる。しかし、それは斬っても後から後から湧いてくる。そしてそれに気を取られたせいか、闇の書が接近している。

 

「消えよ」

 

「チィッ…!」

 

ゼロは魔力弾を避け、バスターで応戦する。だが、それだけでは時間稼ぎにはならない。周囲の触手を一掃し、再び闇の書を見つめる。

 

「闇の書、お前は自分の行動をアイツの願いだと言った…お前はアイツの願いを理解しているつもりか?」

 

「そうです。私は主の願いを叶えるだけ…」

 

頷く闇の書に対し、ゼロは首を振る。

 

「貴様もアイツや、守護騎士と時間を共にしたならば分かるはずだ。あいつは人を傷つけることを望んだことはない」

 

「……」

 

そう、今までゼロや守護騎士たちが何よりもはやてに言われたこと。それは他人に迷惑をかけてはいけない。彼女の優しさから生まれた家訓である。そのゼロの言葉を聞いてか、黙る闇の書。すると、闇の書の目からは溢れるような涙が出ていた。

 

「お前も心のどこかで、その歪んだ使命に抗おうとしている…その証拠が、その涙だ」

 

「…違います、ゼロ。先ほども言いましたが、この涙は主の涙…私の涙ではないのです」

 

自分の涙を拭いながらそう言ってきた。

 

「……」

 

「私はただの道具。悲しみなど…感情など、そんなものは存在しない…あってはならない」

 

言いながら闇の書が周囲に再びブラディダガーを生成する。

 

「…ならば闇の書、お前は何を迷う?」

 

「迷う…私が?」

 

「そうだ、お前はその眼に迷いを持っている…だからこそ、お前はその使命を遂行しきれていない…もし、本当に使命を全うしようというのなら、俺の戯言になど耳も貸さないはずだ」

 

そう、ゼロが闇の書から感じ取っている物。それは“迷い”。戦いながら、ゼロは闇の書がどこか迷っている様子を確認していた。彼女自身が、本当にこれでいいのかと、迷う姿を

 

「それは……」

 

「そうだよ!ゼロさんの言うとおりだよ!闇の書さん!」

 

ゼロの言葉の後に、後ろにいたなのは、そしてフェイトが叫んだ。

 

「さっきゼロに言ったよね?悲しみなどないって…でも、そんな言葉をそんな顔で言われたって!そんな涙を流している顔で言われたって!私達は信じない!」

 

「あなたにも心があるんだよ!私達と同じように!だから!」

 

彼女達も時間稼ぎのため、そして自分達の本心を闇の書にぶつけ、説得する。しかし、突如大気が揺れ始めた。

 

「!?」

 

「早いな……もう崩壊が始まったか」

 

「…?」

 

「私はじきに意識を無くし暴走を始める。そうなる前に……意識のある内に…私は主の望みを叶えたい」

 

そう言いながら、闇の書は持っていた杖を上に向けて魔力を練り始める。

 

「それが本当にアイツの願いなのか…もう一度考えろ!闇の書!」

 

そう言い放ち、ゼロがバスターをチャージして闇の書に発射した。しかし、その放たれたエネルギー弾は突如目の前に開いた空間に吸い取られた。

 

「…!?」

 

「……」

 

いったい何をしたのか、ゼロには到底理解が出来ない。しかし、なのはがあることに気がついてゼロに叫んだ。

 

「ゼロさん、後ろ!」

 

ゼロが後ろを確認すると、そこには先ほどエネルギー弾を吸い取った空間に穴が出現していた。それの意味を理解したゼロは咄嗟にその場から跳ぶ。その空間からはゼロの放ったバスターのエネルギーが出現していた。つまり、彼女が使ったのはゼロの知るサイバー空間のような、異空間と現実を繋ぐ扉を出現させる技術。その隙を見て、闇の書はさらに追撃を行う。

 

「ディバイン、バスター…」

 

「っ…!」

 

なのはの持つ技、ディバインバスターが発射される。それをゼロは再びシールドブーメランで防御。段々と、闇の書の意思をゼロは感じ取れなくなっていた。それと同時に、ゼロの体も戦闘の長期化で疲弊している。そんなゼロを見てか、フェイトがバルディッシュによる接近戦を仕掛けようとした。空間を開いて遠距離攻撃を防御するのであれば、それぞれの攻撃の主体は必然的に接近戦がメインの戦い方になる。だが、そこでゼロが気づく。彼女、闇の書の策略に

 

「待てっ!フェイト・テスタロッサ!」

 

「言うことを…え?」

 

ゼロは再び跳躍し、フェイトの腕を掴み、ゼロはそのままフェイトをなのはに向かって放り投げた。

 

「キャ!」

 

「わっ!」

 

放り投げられたフェイトをなのはがしっかりと受け止める。しかし、その次の瞬間、ゼロの背に何かが触れた。そして、その耳元には闇の書の囁き

 

「貴方も眠るといい…」

 

そう、それは闇の書の手。空中では逃れる術がないゼロは、見事に闇の書に捕まっていた。

 

「しまった…!」

 

ゼロの体が光に包まれていく。 それは今までの闇の書が放っていた禍々しい色の魔力とは違う、白い温かな光。

 

「私の中で…」

 

「あ…ゼロさん!」

 

「ゼロ!」

 

なのは、フェイトが叫ぶも、ゼロは意識を保つことが出来なくなっていく。

 

「こ…れ…は……」

 

「全ては安らかなる、眠りの中へ…貴方の望む、世界と共に」

 

ゼロの意識は、そこで途絶えるのだった。

 

 

 

 

「ゼロ…ゼロ…」

 

誰かの声が聞こえた。それは、ゼロにとって懐かしく、温かい声・・・

 

「ゼロ!」

 

「っ…!?」

 

先ほどよりも大きな声で自分を呼ぶ声に、ゼロは眼を覚ました。

 

「ここは…」

 

「ゼロが居眠りなんて珍しいね」

 

「…エックス?」

 

そこにはニッコリと笑う、自分の親友の姿があった。そう、蒼い光を放つレプリロイド、エックスである。そんなエックスを見て、ゼロは驚く。

 

「何故、お前がここに…」

 

「いったい何を言っているんだい?ゼロ。今ブリーフィングが終わったんだよ?」

 

彼の言葉の意味がまるでわからない。そんなことを考えていると、自分とエックスの目の前にかつて自分が倒した男、クラフトの姿があった。

 

「エックス様、ゼロ様…これより、パトロールに出撃します」

 

「うん、クラフト隊長。よろしくね」

 

「はっ!」

 

敬礼をし、クラフトが部屋を出る。ゼロはその場所に見覚えがあった。そこはかつて、偽りの親友と戦った場所。そう、そこは人々の理想郷『ネオアルカディア』だった。

 

「なぜ、俺がネオ・アルカディアにいる?そしてエックス、どうしてお前がここに?」

 

「何を言っているんだゼロ、僕と君で作り上げたんじゃないか」

 

「……俺と、お前が?」

 

ネオアルカディアはエックスだけで作られた理想郷。そう、ゼロが眠りについてから作られた、人々の理想郷のはず。ゼロ自身、酷く混乱する。すると、そこに一人の人物が現れた。白い白衣を身に纏う研究員。金髪の髪を一つに結わいた、ピンク色の服が可愛らしい、その少女。その少女に、ゼロは見覚えがあった。

 

「あ、エックス、ゼロ!」

 

「やあ、シエル」

 

「シ、エル…?」

 

そこにいるのは、自分がいた組織、レジスタンスのリーダーシエルだった。

 

「どうだい?研究は」

 

「ええ、もうすぐ完成するわ。これでエネルギー問題は解決する」

 

「それはよかった」

 

と、エックスが笑みを浮かべる。そのシエルの手には『エネルギー不足解消』と書かれた紙束が握られている。

 

「…エックス」

 

「なんだいゼロ」

 

「いや、なんでもない」

 

そう言い残し、ゼロは部屋を出る。部屋を出て少しすると、そこには人々とレプリロイドが平和に暮らす世界が広がっていた。人が楽しそうに談笑し、レプリロイドと人間が元気に遊んでいる姿。すると、一人の子供がゼロを見つけ、指を指す。

 

「あ!ゼロ様!」

 

「ほんと、ゼロ様よ!」

 

そんな言葉と共に、人間の子供や、レプリロイド達がゼロのところへ詰め寄る。

 

「ゼロ様、一緒に遊ぼう!」

 

「ゼロ様、どうかこの先も平和を…」

 

などと、人間やレプリロイド達はゼロに対して期待に満ちた目を向ける。ゼロはそれに戸惑い、思わずその場から走り去った。

 

「…っ、なんだ、なんなんだ…これは…!」

 

混乱するゼロ。自分は何故ネオアルカディアにいるのか?何故こんなにも人間やレプリロイド達が平和に暮らしているのか?ゼロにはそれがわからない。すると、そんな彼に声がかかった。

 

「ゼロ?」

 

「っ…!」

 

ゼロはその声を聞いて咄嗟に振り向く。それは遠い記憶の中で自分の腕に抱き抱えていたレプリロイド。

 

「アイ、リス…」

 

「ゼロ、どうしたの?どこか、調子が悪そうよ?」

 

「…いや」

 

いいながら、顔を逸らすゼロ。そんなゼロに対して、クスクスと笑顔を見せるレプリロイド、アイリス。そんな混乱する状況で、ゼロが呟く。

 

「なんなんだ、いったい…」

 

「はい、こちらアイリス…あ、ゼロ?ええ、近くにいるけど…ええ、わかったわ」

 

アイリスはそんなゼロを余所に誰かと通信をしている。その通信を切ると、ゼロを呼ぶ。

 

「ゼロ、エックスが呼んでいるわ。塔の最上階で待っているって」

 

「……そうか」

 

アイリスの言葉に頷き、ゼロがその足をネオアルカディアの塔へと進める。かつて自分が何度も攻め入ったその人々の楽園の中心へ

 

「あ、ゼロ…」

 

「なんだ?」

 

「いいえ、また後で会いましょう」

 

「……ああ」

 

そう言い残し、ゼロはその場を後にするのだった。

 

 

 

 

塔の最上階に辿りつくと、そこにはエックスとシエルの姿があった。その手にはなにやら美しい花があった。

 

「見てゼロ、ついに完成したの!これがシステマ・シエルよ」

 

「システマ、シエル…」

 

ゼロは知っている、かつてシエルが作り出したエネルギー媒体のこと。シエルはそれを嬉しそうにゼロに見せる。それは美しい輝きを放っていた。

 

「幻想的だね…コレがあれば、人とレプリロイドはもっと平和でいられる」

 

エックスが言いながらネオアルカディア最上階から見える景色を見ながらいう。

 

「ええ、まるで夢のよう…これからもきっと、平和が続く…安らかな、平和が」

 

シエルの言葉を聞いた瞬間、今まで黙っていたゼロが気づく。これは、夢なのだ、と。

 

「あいつは、たしか…」

 

――全ては安らかなる、眠りの中へ…貴方の望む、世界と共に

 

「そうか…そういうこと、か」

 

「ゼロ?どうしたんだい?」

 

いつの間にかそこにシエルの姿はない。いるのは、ゼロとエックスの二人きり。

 

「これは夢…そうだな、エックス」

 

「……」

 

ゼロの言葉に、エックスは答えない。だが、ゼロは言葉を続ける。

 

「これが、俺の望んでいた世界…」

 

「…そうだね、君が、そして僕が望んだ…人とレプリロイドが、本当に平和に暮らせる世界」

 

「だが、夢は夢でしかない…」

 

そんなゼロの言葉に、エックスは苦笑する。

 

「君は相変わらずだ…でもそうだね、夢は、夢だ。現実を見据えて、未来へ歩く。それは人もレプリロイドも同じこと」

 

「俺は、どうすれば戻れる?」

 

「やっぱり、戻るんだね?」

 

エックスの言葉に、ゼロは頷く。

 

「ああ、俺にはまだやることが残っている」

 

そう、いつまでも夢の中にはいられない。ゼロには多くの者達との約束がある。それを分かっていたのか、エックスはゼロの言葉を聞いて手にしていたものをそっと渡した。それはゼロの相棒

 

「クロワール」

 

「ゼロ…!」

 

「この子の力で『彼女達』を救える…そして、もう一度言わせてくれゼロ。『世界を頼む』」

 

そんなエックスの言葉に、ゼロは言われてハッとした、今自分の目の前にいるエックスは夢の中の幻などではない。

 

「僕はいつでも君を見守っているよ、ゼロ…君がどんな世界にいても…君の心の中で…」

 

そんな言葉のあと、エックスは蒼い粒子となってその姿を消す。その粒子が消えるのを見送ってから、ゼロはエックスが残したシステマ・シエルを見つめる。そこにわずかな切れ目があった。そこから光が漏れている。ゼロはZセイバーを抜刀し、構える。

 

「俺が眠りにつかなければ…こんな世界もあったかもしれないな…さらばだ、エックス」

 

Zセイバーにエネルギーがチャージされ、ゼロはそれを振り下ろした。

 

「はあっ!」

 

チャージされたセイバーはシステマ・シエルを直撃。システマ・シエルにヒビが入ると、ゼロは再び激しい光に包まれるのだった。

 




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