【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~   作:秋風

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前回後ちょっとだと言ったな…?アレは嘘だ

良く考えたら、それぞれキャラクターに対してヒロイン候補には話があるので、全然終わらなかったでござる…orz


14「夜天」

「!?」

 

 ゼロは気がつくと、空中へと投げ出された。そこはビル群の上…いつもと変わらない、海鳴市の夜だった。ゼロは空中で態勢を立て直そうとするが、なかなか上手くいかない。

 

「わっ! ゼロさん!」

 

「きゃ!? 大丈夫?」

 

 そこへ、なのは、フェイトが飛んで来てゼロをキャッチ。なのはたちはそのままゼロを近くのビルへと降ろした。

 

「お前達は…高町なのはと、フェイト・テスタロッサ?」

 

「はい、なのはです!」

 

「うん」

 

 ゼロの言葉に二人が頷き、そのままゼロの近くへと降り立った。今までのことは覚えているが、どうして空中にいたのかいまいち理解できていないゼロ。

 

「いったい、何が…?」

 

「あのね、突然闇の書さんが苦しみだして……」

 

「そしたら、いきなり貴方が飛び出して来たの」

 

 つまり、ゼロは闇の書が作り出した夢の中からの脱出に成功したということである。どんな物も、やはり体内に衝撃を与えれば苦しむのも当然。そんな闇の書は空中からゼロを見下ろしていた。

 

「なぜ……」

 

「?」

 

「何故、戻ってきたのです?」

 

「何?」

 

「あのまま眠っていれば望むもの…全てが手に入ったのに……」

 

 闇の書はゼロに問い掛ける。そう、あのまま眠っていれば、ゼロが望むものは全て手に入っていた。無くした物も、もう戻ることもないものも、そして叶わない理想さえ。しかし、ゼロは静かに首を振る。

 

「……夢は所詮、夢。現実ではない」

 

「…っ!」

 

 闇の書が驚いてゼロを見る。その言葉が本当に正気の相手が言っているのかと疑っているかのように。

 

「夢の中で叶えた理想など、夢とは呼ばん…叶えるからこそ、夢と呼ぶ」

 

 人間とレプリロイドの平和を夢見て、その理想のために己が身を犠牲にして戦い続けたレプリロイドがいて、絶望に打ちひしがれるレプリロイド達を、再び人間と共に歩ませようと夢を見て、そのために研究をし続けた人間の少女がいて…そして、そんな風に闇の中で必死に夢を追い続けるレプリロイドと人間を見続けた自分がいる。だからこそ、そんな彼らを見て来た自分も同じように夢を叶えるために歩き続ける。そんな彼らの夢が叶うように、と…

 

「俺は、俺の手で夢を掴む…それだけだ」

 

「…」

 

 ゼロの言葉に、黙ってしまう闇の書。しかし、一向に攻撃をしてくる気配がない。先ほどまであんなにも攻撃をしてきたのにも関わらず、そんな様子は全くなく、非常に大人しく見える。ゼロも、脱出できたがはやてをどうやって助けるかを考えていた。先ほどから闇の書がまったく動かないが、それだけではなんの解決にもならない。そんな時だ、隣でゼロの言葉を聞いていたなのはとフェイトが突然声を上げた。

 

「え!? はやてちゃん!?」

 

「はやて!?」

 

 二人ははやての名を口にし、驚いた様子だ。一体、何が起きているのかゼロにはわからない。

 

「…どうした?」

 

「今、はやてから念話が…」

 

「ちょっと待っていてください、ゼロさん」

 

しばらくした後、二人は笑顔でゼロのほうに振り向く。

 

「あのね、ゼロさん!」

 

「はやてを助ける方法、見つかったよ!」

 

 その言葉にどうやら偽りはないらしい。その証拠に、二人は満面の笑みをゼロに向けている。もっとも、こんな状況で嘘なんて言っている場合ではないし、嘘をつく必要性もないわけだが。

 

「本当か?」

 

「はい!」

 

「どうすればいい?」

 

「わかりやすく言うと、闇の書さんに魔力ダメージ…つまり私とフェイトちゃんの攻撃を当てればいいんだって!」

 

 要するに、非殺傷魔法の大型砲撃を持って、闇の書をKOすればいいということらしい。どうやら、それはゼロには出来ない、なのはとフェイトの仕事ということのようだ。それを理解したゼロは再びZセイバーを抜刀し、バスターを構えた。

 

「確か、お前たちは砲撃ができたな」

 

「うん。私もなのはもできる」

 

「なら、俺が砲撃をできる場所まで誘導する」

 

 そう言って少し離れた場所に指を向ける。そこは、海の上。ここからそう距離はない場所である。攻撃を防ぎながら、隙を見てリコイルロッドで吹き飛ばせば、おそらくその地点には軽々と吹き飛ぶだろう。

 

「そうしたら、そこに砲撃魔法を撃て」

 

「え?一人で闇の書の相手をするんですか?またさっきみたいになったら…」

 

 と、二人が心配そうな顔でゼロを見る。どうやら、さっきまで闇の書にゼロが取り込まれていたことから、それが心配なのだろう。もっとも、無理もないが。しかし、ゼロは譲らない。

 

「俺は大丈夫だ」

 

「「でも…」」

 

 二人も譲ろうとしない。だが、時間もないので、そんなことを言っている場合でもないのだ。ゼロは小さくため息をついた。

 

「俺はお前たちを信じている」

 

「え?」

 

「だから、お前たちも俺を信じろ…」

 

 今は敵同士ではない。今は、共に一人の少女を救うために戦う仲間であると。そして、仲間だからこそ、自分を信じて欲しいと。ゼロは二人に対して、自分の今の気持ちをはっきりさせる。すると、それを理解したのか、なのはとフェイトの顔が笑顔になり。ようやく頷いた。

 

「はい!」

 

「わかった、私たちもゼロを信じるよ」

 

「では行くぞ…お前達は地点まで移動し、砲撃の用意を頼む」

 

「「了解!」」

 

 なのはとフェイトが飛び、そのゼロと約束をした地点へと急ぐ。闇の書はそれに反応するが、ゼロがそれを許さない。跳躍し、Zセイバーを闇の書へ向けて振り下ろした。当然、それに闇の書が対応するも、その動きにキレがない。

 

「やはり、動きが鈍いな」

 

 闇の書は接近戦に対してもゼロの動きを真似たような動きで対応するが、先ほどよりも動きは鈍い上、直線的すぎる。ゼロは全てを回避しながら上手く砲撃が放たれる地点まで移動していく。そして、そこで闇の書に一瞬の隙が生まれた。ゼロは一旦闇の書の視界から外れ、そのまま背後に現れてリコイルロッドのチャージ攻撃を繰り出した。

 

「てあああっ!」

 

 クロワールによって強化されたその攻撃によって、闇の書は遠くにまで吹き飛ばされる。そこにはゼロの言った通り、丁度良くなのはたちが構えていた。

 

「今だ、撃て!」

 

「スターライトブレイカー!」

 

「プラズマ・スマッシャー!」

 

 なのはとフェイトの攻撃。桜色の閃光と黄色い閃光が闇の書に直撃し、闇の書を包み込んでいく。ゼロも近くのビルに着地し、その攻撃の成功を見守る。しかし、その時だった。

 

「ん?なんだあれは……」

 

 吹き飛ばされた闇の書から、なにか黒い物体が海へと飛んでいくのをゼロが確認する。すると、ゼロの近くまで降りて来て飛んでいたなのはが声を上げる。

 

「え、嘘!?」

 

「どうした…!?」

 

「闇の書の反応、消えてないって…!」

 

「何!?」

 

 確かに、二人ははやての指示通りに動いたようだった。しかし、それが終わっていないのはどういうことなのだろうか。ゼロには理解できない。

 

「後、あれには近づいちゃダメだって!」

 

 あれというのは、飛んで行った黒い物体のことなのだろう。しかし、いったい何がどうなったのか。それはゼロ、なのは、フェイトにもわからない。しかし、その時だ。ビルの上に一筋の光が立ち上る。そして、そこには一人の少女の姿があった。少女は手を広げ、静かに呟いた。

 

「……おいで、私の騎士達」

 

「……!」

 

 少女の言葉と共に、その周囲には4つの魔法陣が描かれる。そしてその光はそれぞれ形が出来上がり、人と成る。

 

「我等、夜天の主の下に集いし騎士」

 

 ピンク色のポニーテイルの髪に、剣士を思わせる騎士甲冑の騎士

 

「主在る限り、我等の魂、尽きる事無し」

 

 紅い三つ編みの髪に、身の丈ほどある鉄槌を持つ騎士

 

「この身に命在る限り、我等は御身の許に在り」

 

 金色の髪に、その全てを癒す力を見せる騎士

 

「我等が主。夜天の王、八神はやての名の下に」

 

 気高き狼の耳を持ち、その鋼の手甲を持つ、全てを守る守護獣

 

 そんな彼らの姿を見て、ゼロの中でサポートをしていたクロワールが思わずゼロから飛び出し叫ぶ。

 

「シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ! ゼロ! みんな無事だわ!」

 

 そう、それは間違いなく、闇の書の守護騎士『ヴォルケンリッター』である。そして、その彼女達の中心に立つ茶髪の少女、八神はやてがその手に十字架のついた本を掲げた。

 

「夜天の光よ、我が手に集え! 祝福の風リインフォース…セットアップ!」

 

 はやてがバリアジャケット否、騎士甲冑を装着した。その装着を終えたはやてに、騎士達が涙を零し、はやてに駆け寄っている。ゼロも跳びながらビルを渡り、はやての元へと辿りついた。

 

「お前達、無事か」

 

「あ、ゼロ!」

 

「…はやて、お前も無事で何よりだ」

 

 ゼロがそう言うと、はやてが不思議そうにゼロの顔を見た。そんなはやてに、ゼロが首を傾げる。

 

「どうかしたか?」

 

「ゼロ、初めて私のこと「はやて」って言うてくれた?」

 

「そうだったか?」

 

 そう、それははやてがゼロに自分の名前を呼ばれたこと。今までは何故か『はやて』と呼ぶ機会が無く。『お前』と呼ばれていた。何故かはわからないが。しかし、そんなことを気にせず、はやては嬉しそうに笑顔を向けた。

 

「そうや、初めて私の名前、呼んでくれた」

 

「そうか」

 

 どうやら名前を呼ばれたことが相当嬉しいらしく、ご機嫌な様子だ。そんなところに、なのはとフェイトも遅れてはやての元へと降り立った。

 

「はやてちゃん」

 

「はやて」

 

 そんな二人に対して、はやては申し訳なさそうな顔になっていた。

 

「なのはちゃん、フェイトちゃん、ごめんな。私の騎士達が迷惑かけてしもたみたいで……」

 

 はやてが謝罪する。はやては全てを知った。今まで自分達といてくれた家族が多くの時間家を離れる理由、そして自分の足がなぜ動かないのか? その訳を…そして、その上で二人だけではない。多くの人間に迷惑をかけてしまっていたことを。だが、そんなはやてに対してなのはとフェイトは笑顔であった。

 

「ううん、気にしないで」

 

「平気だから」

 

「そっか、ありがとな」

 

 どうやら、この3人のこともまとまったらしい。すると、ゼロは誰かの気配を感じる。上から黒いバリアジャケットを着た少年が現れた。そう、ゼロと一度戦ったことのある少年、クロノ・ハラオウンだった。その後ろには、ユーノとアルフの姿もある。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。和んでいるところ申し訳ないが、時間が無いのでこちらの話を聞いてほしい」

 

「お前か…」

 

「今こちらに敵意はない…その剣を納めてくれないか」

 

「…そうだな」

 

 そう言いながら、ゼロは持っていたZセイバーを降ろした。なのは、フェイトを信用したが、時空管理局を信用していなかったゼロだが、クロノの様子からして、本気で時間が無い上に、余裕がないということが分かった。

 

「聞いてくれ。あそこの黒い物体…闇の書の防衛プログラムが、後数分で暴走を始める。僕等は何らかの方法でそれを止める必要がある。停止させる方法は、現在二つ」

 

「その方法は?」

 

 ゼロの言葉に、クロノは頷いて説明を始めた。

 

「まず一つ目。極めて強力な氷結魔法での活動停止。つまり氷漬けだ。そして二つ目、衛星軌道上で待機しているアースラの魔導砲…アルカンシェルで消滅させる。僕達が出した案はこの二つ。これ以外に他にいい手は無いか? 闇の書の主とその守護騎士の皆に訊きたい」

 

 二つとも、可能な限りで考えられた策であった。しかし、はやてが首を振る。

 

「えっと……最初の氷付けにするのは多分難しいと思います。主のない防衛プログラムは魔力の塊みたいなものですから。それを凍結させても、コアが在る限り再生機能は止まりません」

 

 つまり、第一案は不可能であるという結論。残すのはアルカンシェルによる砲撃と言うことだが、そこでフェイトが声を上げる。

 

「アルカンシェルも絶対ダメだよ! こんなところでアルカンシェル撃ったら、ここ一帯がなくなっちゃう…!」

 

「そ、そんなに凄いの?」

 

 よほどの威力なのであろう。フェイトの焦りは尋常ではない。焦るフェイトになのはが首を傾げると、フェイトが説明をする。

 

「えっとね、発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を歪曲させながら反応消滅を起こさせる魔導砲…つまり、辺り一帯を吹き飛ばしちゃうの」

 

「あ、あの、私はそれ反対です!」

 

「同じく!」

 

 なのは、はやても手を上げて反対であるというアピールをする。そんな様子に、クロノも頷いた。

 

「僕もかあさ…いや、艦長も使いたくないさ。でも、あれの暴走が本格的に始まったら被害はそれよりずっと大きくなる…時間もない」

 

 最悪の場合、アルカンシェルを発射せざるを得ないが、それでは結界も持たず海鳴市は崩壊してしまう。そこで、今まで黙っていたゼロが口を開いた。

 

「ここに打ち込まないでも、戦艦の前で撃てばいい」

 

「え?」

 

「ゼロ?」

 

 今まで黙っていたゼロが口を開くのに一同が驚いているが、ゼロは気にせずに言葉を続けた。

 

「ここにこれだけの魔導士や騎士がいる。転移魔法など容易いはずだ。必要とあらば、クロワールの力もきっと役に立つ。その戦艦とやらは現在宇宙空間上にあるのだろう?」

 

「そ、そうだけど・・・」

 

「なら、あの闇の書の根源を転移させて撃てばここに被害は出ない」

 

 全員がポカンした表情になった。普段のゼロからは考えられないような策である。ゼロをよく知っているはやてや、ヴォルケンリッターが特にビックリしているが、それが最善の策であると一同が納得する。

 

「た、確かに…コアを露出させて宇宙空間に転送すれば…」

 

「被害は0で…」

 

「破壊ができる!」

 

「それで行くしかない…一発勝負や!」

 

 一同、ゼロの意見を採用。アースラのスタッフからもその作戦の許可が出た。こうして、ゼロ達の作戦が開始されるのだった。

 

 

 




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