【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~ 作:秋風
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静かな海鳴の夜に、轟音が鳴り響いていた。時空管理局と、夜天の書の主とそれを守るヴォルケンリッター…そして、異世界の戦士ゼロによる闇の書防衛プログラム殲滅作戦。作戦は闇の書防衛プログラムのコアを露出させ、その後に宇宙まで転移することで、衛星軌道上に待機しているアースラからアルカンシェルを発射して殲滅させるというものだ。高町なのはとヴィータが、シグナムとフェイト・テスタロッサが…ザフィーラが、ユーノが、アルフが…防衛プログラムに向けて強大な攻撃を放っていく。ゼロもまた同じように、バスターからの連射攻撃で防衛プログラムに攻撃をしている。そして…
「よし、最後の仕上げだ」
クロノ・ハラオウンが師より受け取ったストレージデバイス『デュランダル』を構えた。
「悠久なる凍土、厚き棺の内にて、永遠の眠りを与えよ!」
クロノの詠唱と共に、海一面が完全に凍り、防衛プログラムの再生力と動きを完全に封じる。ゼロは念には念をということで、はやて、なのは、フェイトと一緒に攻撃を仕掛けることになっている。ゼロはユーノのサポートで作られた魔法陣の上に立ち、彼女達を見る。
「タイミングは合わせる…行け」
「「「了解!」」」
3人が一斉にデバイスを構え、攻撃を開始する。
「全力全開!スターライト!」
「雷光一閃!プラズマザンバー!」
「ごめんな…おやすみな…響け終焉の笛!ラグナロク!」
「「「ブレイカアアアアア!!」」」
それぞれの砲撃が防御プログラムに向かって行き、激しい爆発を起こす。その結果、暴走を始めていた闇の書の防衛プログラムの動きは止まる。そしてそれを確認したゼロは最後の仕上げとして、魔法陣から跳躍。急降下してチャージを終えたZセイバーを振り下ろした。
「ハアアアアア! ハアッ!」
チャージされたZセイバーの斬撃によって、その防衛プログラムの核が飛び出した。それを確認して、ゼロは勢いで吹き飛ばされていたが、無事に海岸へと着地する。それと同時に、防御プログラムのコアがその姿を消す。後は、アースラのアルカンシェルの攻撃を待つのみ。数分、全員が空を見上げ作戦の成功を祈っていた。当然、ゼロもその上空を見つめている。すると、そんな彼女達の表情が笑顔になった。おそらくは無事に作戦が成功したのだろう……そう思い、ゼロははやてに作戦の結果を聞く。
「……終わったのか?」
「うん!成功やって!」
と、嬉しそうにはやてはゼロに抱きつき、作戦の成功を喜んだ。そんなはやてをゼロが受け止めたのを皮切りに、そこにいた全員がその成功を喜んでいた。だが、そんな喜びもつかの間……ゼロの腕の中で喜んでいたはやてが突如、気を失ってしまったのだ。どうやら初めて魔法を使ったのにも関わらず、無理な魔力放出の反動がでてしまったらしい。そんなはやてを見て、一同がゼロとはやての元へと駆け寄った。
「はやてちゃん!?」
「はやて!?」
「…安心しろ、気を失っただけだ」
そう言いながらゼロははやてを抱きかかえた。
「そっか…」
「よかったぁ」
一同、全員がため息をついた。闇の書から解放されたのにも関わらず何故倒れたのかという様子だったが、全員はゼロの言葉を聞いてようやく落ち着きを取り戻すのだった。
*
戦いを終えて、ゼロはアースラの医務室ではやての様子を見ている。診断によれば、魔力の使いすぎによるただの疲労ということらしい。ヴォルケンリッターや闇の書、否新たな名を得た祝福の風、リインフォースはなのはやフェイトと共にどこかへ行ってしまった。はやてがここに来て1日が経っている。未だに、はやては眼を覚まさない。
「……これで終わったのか? 全て」
ゼロの心のどこかに、何かが引っ掛かっていた。それは、ゼロが闇の書が作り出した夢の中で出会ったエックスの最後の言葉のことだった。
『これで『彼女達』を救える』
彼女達…達、ということは、複数形。まだ、何かが終わっていないのではないのか? ゼロは考えるばかりである。そんな風にしていると、はやてがゆっくりと起き上がった。
「ふぁー…ゼロ~? おはようさんや~」
「はやて、もう大丈夫なのか?」
「うん、もう平気や」
若干、まだ眠そうな元気そうな顔をしているはやて。それははやてが見せているいつもの笑顔と同じ。
「そうか……」
「ところでみんなは?」
「さあな……」
知らないと、首を振るゼロに対し、たった今笑顔だったはやての表情が、段々と不安な表情へと変わっていく。
「………」
「はやて?」
ゼロも流石に心配になったのか、はやての顔を覗き込む。すると、はやてが勢いよく顔を上げた。
「みんなを探して!」
「……?」
「何や、わからんけど! すごく嫌な予感がするんや! お願い!」
はやての必死の訴え。いつものはやてではない、そんな様子に対して、ゼロもその事態の重要さを理解したのか、頷く。
「わかった、しっかり捕まっていろ」
「わっ!」
突然、ゼロがはやてを抱き上げる。要するに、世間的に言うお姫様抱っこという奴である。すると、そんなことをされたはやての顔が真っ赤に染まっていく。
「わ、わ、こ、これってお姫様抱っこっていうやつ……」
「アースラから転移してから、海鳴に戻る。少し飛ばすから掴まっていろ」
「う、うん」
こうして、ゼロはクロワールのハッキングで転移。はやてと共にアースラを飛び出し、はやての魔力の探知を頼りに海鳴へと飛ぶのだった。
*
しばらく海鳴を走り続けるゼロ。はやてもそれによって感じる冷たい風を余所に、覚えたばかりの魔法で策敵を続ける。そして走り続けること10分。ようやく開けた場所へと辿りついた。そこは海鳴市の外れにある、山の丘。雪は積もり、広場は一面真っ白になっている。そこにははやてが呪いを解いた元闇の書、『祝福の風』リインフォースの姿があった。そして、ヴォルケンリッター一同と、なのは、フェイトがいる。なのはとフェイトに関しては、それぞれがデバイスを構えている状態だ。
「みんな、何をしているん?」
魔法陣が描かれた白い地面、その中心にはリインフォースが立っている。みんなは答えない…否、答えることができない。しかし、そんな一同を余所に、その魔法陣の中心に立つリインフォースが、口を開いた。
「主はやて、申し訳ありませんが…私は消えなくてはなりません」
そう、リインフォースが切り出した。
「何でや!?」
「説明してもらおう」
ゼロも真剣な眼差しでリインフォースを見た。リインフォースも頷き、説明を始めた。
「基礎構造が歪められたままなのです。このままではまた新たな防御プログラムを組み直してしまいます。その際、高確率で…主はやてはまた侵蝕されてしまいます」
全ては主を守るために自ら死を選ぶ。それがリインフォースの出した答え。そして、それしかないと、一同はリインフォースに説得されたのだ。しかし、その主であるはやてがそんなことを認めるはずがない。はやてはリインフォースに叫ぶ。
「駄目や! 防御プログラムなら私がなんとかする! だから!」
「主、どうかお聞き訳を……」
リインフォースとはやては言い合いを続ける。それは互いに互いを守りたいが故に生まれる平行線。それを見て、ゼロの脳裏にまた一つ、遠い記憶がフラッシュバックした。
*
『ゼロ!』
それはゼロ自身が再び『忘却の研究所』と呼ばれる場所で封印される、直前の記憶。エックスが叫ぶとゼロはゆっくりと顔を上げた。
『エック…ス…か…』
『君は…これでいいのかい!? 今までみんなのために戦ってきたというのに! こんなのって!』
エックスがゼロに問う。自分と共に、人のために、レプリロイドのために戦ってきたたった一人の親友。その親友は今まさに、静かに眠ろうとしている。今にも泣きそうなエックスの顔。しかし、ゼロは残り少ない稼働で首を振った。
『俺がいる限り…血塗られた歴史は繰り返される…』
『そんな…! 何言っているんだゼロ!』
『俺は…いつも考えていた…誰のために…何のために、俺達レプリロイドは殺しあわならないのかと…そんな時でも、お前は人間達のことを信じ続けていた…俺は友として…お前を信じている。だから、お前の信じる人間達の言葉を…信じたい…』
『最終カウントダウン5…4…』
『やめろ! 今すぐ封印をやめてくれ!!』
『いいんだ…エックス…あと…たの…』
『1…0!』
薄れゆく意識の中、自分の耳に、エックスの悲鳴が聞こえていた気がした。
*
「……駄目だ」
「「え?」」
言い合っていたはやてとリインフォース、その二人がゼロを見た。
「リインフォース、お前は死なせない…」
「しかし! このままでは…「話を聞け」!?」
リインフォースの言葉を遮り、ゼロは鋭いまなざしでリインフォースを見る。
「確かに、お前が消滅することではやては確実に助かるだろう…しかし、それだけで終わるような簡単なことじゃない。お前という『家族』が消えることは、はやてや、ヴォルケンリッター達全員が、お前を失うという深い悲しみの傷を背負うことになる」
「っ…!」
「ゼロ…」
かつて、自分が眠りについた後、親友であるエックスはいつしか同族であったレプリロイドの破壊に何の疑問も抱かなくなるまで戦いを続けた。今思えば、それはゼロという大切な『友』を無くした傷を隠すためだったのかもしれない。
「お前は、人間ではなくデバイスだ…構造は先ほどクロワールが解析し、おおよそを把握している」
「解析? それをして、一体何が…」
「俺自身の体を電子化させ、お前の体内に侵入…バグを排除する」
ゼロの言葉に、全員が驚いていた。そんなことをできるのか、と。これは実質、不可能ではない。ラグナロクのセキュリティ侵入時、ゼロは自らを電子化させ、ラグナロクのセキュリティにアクセス。防衛していたプログラムを破壊している。本来ならばトレーラーなどに配備された大型の転移装置を使うのだが、リインフォースの様に規模が小さいのならば、クロワールが転移魔法から学んだ構造を元に作る簡易転送でも応用が可能となっている。ただし、ゼロが長い時間それに耐えられるわけではないのだが。
「…クロワール」
「ええ、大丈夫よ! 問題ないわ」
すでに、クロワールがゼロの周囲に光の輪を作り出し、転送の準備を進めている。ゼロははやてをシグナムに預け、リインフォースの前に立った。
「シグナム、はやてを頼む」
「本当に、本当にそんなことができるのか?」
「ああ」
そうゼロが頷くが、話がそう簡単にいくはずがないと、はやてが不安そうにゼロを見た。
「ゼロ、それは…ゼロは大丈夫なん?」
はやての言葉に、ゼロは偽ることなく、そのまま事実を告げた。
「失敗すれば恐らく、俺が死ぬ」
『!』
一同が驚く。死というリスクがあるにも関わらず、ゼロは涼しい顔をしてその賭けを行おうとしている。ますます不安になるはやて。しかし、ゼロははやてに言う。
「はやて、俺を信じろ」
「ゼロ…」
信じろ。ゼロがはやてに言う。そのゼロの言葉は、はやての中に深く響いていた。その言葉を聞いてか、はやては無言で頷く。
「クロワール、転送を頼む」
「了解…3、2、1、転送!」
ゼロがリインフォースの中に転送される。ゼロにとってのラストミッションが始まった。
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