【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~ 作:秋風
次回から事件後の話…しばらくのお話をお送りします
その後にはお約束通り、StSに行きます
「…ここが、リインフォースの内部」
ゼロが転送され、降り立った場所。そこはいくつもの本がぎっしりと立ち並んだ場所。サイバー空間と似た世界がそこにはあった。そここそ、クロワールによって視覚化されている、リインフォースを構成している内部である。
「…ミッションを開始する」
―MISSION START!―
ゼロはその空間を駆け抜けた。クロワールから送られていた構造を読み込みながら、その道を進んでいく。途中でリインフォースの内部を守護するためにあるプログラムの攻撃を避けながらゼロは進む。本来なら排除するのだが、流石に純粋にリインフォースを守ろうとしているプログラムを破壊するわけにもいかない。しかしそこで、ゼロは黒い異物を見つけた。
「…あれは、バグの欠片か?」
その黒い物体は周囲を浸食しており、禍々しい空気を漂わせている。それを見たゼロは迷わずZセイバーでそれを切り捨てた。するとどうだろう。その周囲は清浄されたように輝きを見せている。どうやら、アレらはバグということで間違いないらしい。しばらくすると、その黒い物体達はゼロを阻むように、出現してゼロに襲い掛かった。
「……邪魔だ」
ゼロは問答無用でZセイバーを振るい、バスターを連射して黒いバグ達を排除していく。そのまま奥へと進むにつれて、敵の数が増えて行くが、ゼロの力によってそれは跡形もなく殲滅されていく。かれこれゼロがミッションを開始して一時間…が過ぎた。ゼロはその通路を走り続ける。一向にゴールが見えない。すると、その通路の途中で突然現れた黒い異物がゼロに付着した。
「ちぃっ!」
それにダメージはなく、ゼロはそれを払う。すると、それは通路の中へと溶けて消えてしまう。若干の疑問を持ちながらも、ゼロは奥へ、奥へとその道を進んでいく。するとようやくか、そのリインフォースを構成しているらしい中枢へと辿りついた。
「…これは」
そこにあるのは巨大な扉。ゼロはそこを開き、中へと入る。そこにあるのは、リインフォースを構成する心臓の部分。しかし、それには黒い異物が付着していた。しかし、その異物はボロボロと外れると、スライムのように動きをしながらゼロの前にまで来た。黒い物体は形を作り始める。そして、それは一つの人の形が現れた。
「…お前は!」
ゼロはその姿に驚愕する。それは、ゼロにあまりに酷似した姿だった。燃えているかのような真紅の装甲に、流れるような美しい金髪の髪…手には透き通る宝石のような剣。そして鋭い眼差し。しかし、その者の目と剣は紅い光を放っている。それはゼロにとって忘れることのできない最大の宿敵。超えなければならない、最強にして、最凶の“英雄”
「我は、メシアなりっ!ハーッハッハッハ!」
それはゼロが忘れるはずもない、見間違えようがない、かつての己自身(オメガ)だった
――WARNING!――
「セイッ!ハッ!トウッ!」
オメガが紅いZセイバーを抜刀し、ゼロに襲い掛かる。かつてゼロが体得していた三段斬りを放つ。ゼロも同じくZセイバーを抜刀してそれを受け止め、斬り返した。
「せあっ!」
「滅びよ!」
攻撃を滅閃光が阻み、オメガから放たれたエネルギー弾がゼロに直撃する。一瞬吹き飛びそうになったゼロだったが、それでも怯まずに突っ込む。
「はあっ!」
「うおりゃ!」
ゼロがチャージを放つと、オメガも同じようにZセイバーに力を込めてそれを振り下ろす。互いのチャージセイバーが激突し、激しい光が迸った。しかし、同じ技であるにも関わらずゼロだけが吹き飛ばされた。その様子を見て、オメガは優越な笑みを浮かべている。状況では明らかなパワー負けをしているゼロ。しかし、ゼロには一つ分かっていることがあった。
「………」
クロワールがいない以上、身体機能を底上げをしてオメガに追いつくことは不可能。しかし、それはオメガも同じこと。オメガにもダークエルフ否、マザーエルフの援助がない。本来、ダークエルフの力を得ることでそのオメガ自身のボディの力を極限にまで引き出すのがオメガの真価である。しかし、それなしでの攻撃によって、大きすぎる威力の反動が響いて所々に損傷が見られた。オリジナルボディであればそんなことはないだろうが、あのバグはゼロの情報から『オメガ』の技、そして威力だけを吸収してしまったらしく、耐久性を考えていないようだ。だが、オメガはそんなことをお構いなしに攻撃を繰り返す。
「セイハッオリャ! ハットウ! オリャ! ハァ!」
ゼロに対して、周囲を巻き込みながら乱舞をして突っ込んでくるオメガ。ゼロも距離を取りながら、構えを取って隙を伺う。
「やはり、凄まじい威力だ…だがっ!」
ゼロはその損傷によってオメガが無意識に動きを修正したことを見切り、Zセイバーを逸らしてそこへ一撃を入れる。
「ぐっ!」
オメガが一撃を喰らい、その場で距離を取る。大した一撃ではなかったのだが、その攻撃は非常に有効だったらしい。それもそのはず。ゼロはその崩壊を始めていたオメガの傷口に一撃を入れていた。オメガは悔しそうにゼロを睨みつける。
「ぬっ…ぐ…」
「所詮貴様はあいつを模した存在だ…」
実際ゼロの体も同じくオメガの体を模した存在だが、相手はそれすら劣るデットコピー…ゼロの敵ではなかった。それも当然だ。目の前にいるのはただのプログラム。凶悪な戦士としての魂もなければ、それを導く悪の妖精もいない。ゼロからすれば、ただのガラクタ。
「グッ…オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
オメガが怒りの表情でゼロに突っ込んでくる。最早、でたらめの力を振るい、Zセイバーをゼロに向けて振り下ろす。しかし、そんな単純な攻撃がゼロに通用するはずもない。
「……………セアッ!」
オメガが繰り出した攻撃、そしてその力の流れを読み切り、オメガの一閃を避けてゼロはZセイバーでチャージされたその一撃をオメガに与えた。それを受け、オメガは吹っ飛び、そのまま爆散する。
「ミッション、完了」
――MISSION COMPLETE!――
「……よし、帰還する」
ゼロの言葉と共に、転送機能が作動する。ゼロの視界が真っ白になり、そこで意識が途切れるのだった。
*
英雄はまた、夢を見る。それはつい最近ながら、どこか遠くに感じてしまう昔の夢。
『私はネージュ、人間よ』
出会ったのは、自由を求めた人間たち、彼らは自分たちを「キャラバン」と名乗った。レプリロイドになど頼らない…そんな言葉が彼らの口癖だった。
『違う! 俺は、俺はそんな人間たちのために戦ったんじゃない!』
そんなキャラバンたちを追うのは、狂気の科学者の配下であり、そして人を守ることに疑問を持ったレプリロイド。最後の最後まで、自分に向けて人とは、レプリロイドとは何なのかを聞く男。
『死ねん! この程度では死ねんのだぁ!』
全ての元凶…その狂気の果て、人間達の過ちと、人間の罪が生んだ永遠の憎しみの業火。その業火は止まることなく燃え続け、その矛先は自分へと向いた。
『バイル…!』
『クーックックックックッ…クヒャーッハッハッハッハッ! 言っただろう! ワシはこの程度では死ねんのだよ!もはやラグナロクの墜落は誰にも止められん!』
落下する『ラグナロク』。そしてその上に立つ自分と、狂気の科学者。巨大な衛星砲台が落下する。コレを止める方法は、ただ一つしかない。しかし、そこで自分を蘇らせた少女の悲鳴が聞こえた。
『ゼ、ゼロ…! もうダメ…! 戻ってきて!早く!』
『…いや、まだ手はある…バイルごとコアを破壊さえすれば、ラグナロクは崩壊する…バラバラになれば…大気圏との摩擦で全て燃え尽きるはずだ…!』
『そんな…ゼロ!そんな事をしたら・・・あなたは…!』
少女は最後まで言えないが、自分でもわかっていた。何もない宇宙空間。星の引力に引かれている以上、自分にも同じものが働いている。自分も同じ結末を迎えることは分かっている。そんな自分の言葉に、科学者が笑う。
『クヒャーッハッハッハッ! 出来るかね!? 貴様にそんな真似が! レプリロイドたちの英雄である貴様が! 人間を守る正義の味方が! 地上の人間を守るためにこのワシを…守るべき人間であるこのワシを倒そうというのか! どうだこの痛みは! 貴様に分かるかぁ!』
憎しみの業火がさらに激昂する。それは最早、自分の知る“人間”という存在ではなかった。復讐に燃え、悲しく叫ぶだけの化け物。それでも、自分は迷わなかった。
『オレは正義の味方でもなければ…自分を英雄と名乗った覚えもない。オレはただ、自分が信じる者のために戦ってきた…オレは、悩まない。目の前に敵が現れたなら…叩き斬る…までだ!』
自分の選択を聞き、少女が叫ぶ自分の名を叫ぶ。その声は最早悲鳴であった。だが、それでも、地上にいるその少女と、人間を守るために、自分は戦う。
『ゼロ…! ゼロ…!』
そんな少女に自分はただ一言、こう言った。
『…シエル…オレを、信じろ!』
『ゼロ――――――!!』
『ゼロ…ゼロ!』
声が聞こえた…
『ゼロ! 目を開けて! お願い!』
そんな声を聞き、ゼロがゆっくりと目を開ける。それは夢の終わりを意味していた。そして、ゼロの目の前には金髪の少女、自分を蘇らせた少女、シエルの姿が…
「シエル?」
「なに言うとんねん!ゼロ!しっかりしぃ!」
シエルが突然訛った口調で叫ぶ。つまり、この少女はシエルではない…この少女は
「はやて?」
「ゼロ!」
はやてが涙を流しながら、ゼロに抱きついていた。ここは先ほどまではやてが眠っていたアースラの医務室。先ほどと立場が逆になってしまっていた。
「俺は…」
ゼロは泣きじゃくるはやてを支えながら、ゆっくりと体を起こした。はやての隣には、リインフォースが立っていた。
「ゼロ、その…大丈夫ですか?」
「ああ…お前はどうだ?」
ゼロが言うと、リインフォースは微笑み頷いた。
「はい、貴方のおかげです…体の淀みは消え、正常に稼働しています。」
「……そうか」
と、言ったところで、ゼロが後ろに倒れる。随分とゼロの体が軋んでいた。おそらくオメガと戦ったことと、無理なプログラムによってリインフォースの中に入ったのが原因だろう。
「だめよゼロ、まだ寝てなきゃ…一日安静にして」
「わかった、少し休ませてもらおう」
クロワールの言葉に頷き、再び横になるゼロ。すると、リインフォースがはやてをゼロの寝るベッドに降ろした。
「おい、何の真似だ?」
「今の主はやての望みですので」
「えへへ、ゼロ。一緒に寝よか」
はやてが言いながらゼロの腕を絡ませた。ゼロは首を傾げる。
「何故そうなる?」
「ええやん、せっかく全てが終わったんや…今日ぐらい…な?」
何が「な?」なのかわからないゼロは、思わずため息をつく。
「勝手にしろ」
「ふふっ、お休みゼロ、リインフォース」
「はい、我が主」
「ああ…」
こうして、はやてが眠りについた。リインフォースも、いつの間にか椅子で座って眠りについている。
「………」
ゼロは幸せそうに眠るはやてを見る。自分が救った、今回の戦いの結果全て。ゼロも体力的に疲れがあったのか、この時は珍しく眠くなっていた。
「終わったぞ、エックス…」
そう言って、ゼロははやての温もりを感じながらも、眠りにつくことにした。
悲しき運命を背負った少女は、紅き英雄によってその運命を辿ることなく、救われるのだった。
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