【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~   作:秋風

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やっとここまで来たー…とはいっても、後7,8話ある…長い




日常編
17「対話」


 古代遺産『闇の書』を巡る事件、ヴォルケンリッター達からすれば約半年。時空管理局達からすれば発覚、そして終息まで約1カ月という形で幕を閉じた。この事件解決には魔道砲『アルカンシェル』の導入と使用。さらには管理局側のエースの活躍が注目される。しかし、それ以上に、事件に関わった彼らにとって、異世界から訪れた紅き輝きを放つ一人の戦士の活躍は大きかったと言えるだろう。

 

ハラオウン家

 

 事件解決に大きく貢献した異世界の戦士、ゼロは今、ハラオウン家を訪れていた。もともと次元漂流者であるゼロは、リンディ達に保護されるべき存在。そんな彼は今回リンディに招待されてそこを訪れた。

 

「久しぶりね…と言っても、数日ぶりかしら」

 

「…そうだな」

 

 リンディ達の地球での仮拠点ということであるこの家はフェイトの家とも差し支えない場所である。立地的にはなのはの家がすぐ近くにある。

 

「改めて自己紹介しようかしら。リンディ・ハラオウンよ」

 

「ゼロだ。こっちはクロワール」

 

 言いながらゼロはちらりと周囲を見る。見た所、部屋にはリンディのみ。しかし、時空管理局の技術をもってすれば盗聴、盗撮などは容易い。

 

「あら、警戒しないでも良いのよ? もう貴方とは敵対する理由もないし…盗聴、盗撮はないから。私が記録程度は取るけれど」

 

「……そうか」

 

 そう言いながらゼロはソファに腰掛ける。クロワールはゼロの肩に乗っているが。

 

「さっそく、聞かせてもらえる?貴方が何者か、はやてさんとどこで知り合ったのか…」

 

「ああ、かまわない」

 

 こうしてゼロは語る。人間から作り出された『レプリロイド』という自身の存在のこと。自分がどういった経緯でこちらへ来たのか?はやてとどうして知りあったのか?何故、闇の書蒐集に協力したのか?深くではなく、リンディが知りえる範囲の情報内で、ゼロは話す。

 

「なるほどね…説明してくれてありがとう。今後の件だけれど、貴方はどうしたいかしら?」

 

「というと?」

 

「貴方は、理由は分からないけど次元漂流者…時空管理局の立場としては保護する存在。こちらの保護を受けて自分の世界が見つかるのを待つことが出来る」

 

「その聞き方からするに、リンディ・ハラオウン、お前には何か別の考えがありそうだな」

 

 ゼロの言葉に、黙ってしまうリンディ。リンディは少し考えたようだが、静かに口を開いた。

 

「ええ、その通りよ」

 

「別の考えを聞こう」

 

「…知っての通り、私達の所属する時空管理局は素質がある者ならば年齢、人種、性別を問わないわ。組織に有益な存在なら…と。フェイトさんを見ても分かる通りね。それほどに、時空管理局は“人員不足”なのよ」

 

 そう、時空管理局は数多の世界を管理する組織である。当然、世界を管理するためには多くの人員が必要となる。しかし、世界はその管理局の人員の何十、何百、何千倍という数が存在しており、現在でもとても数え切れる物ではない。そんな物を管理しきれないからこそ、人員不足が発生し、地球などの非魔法文化世界は『管理外』と定められている。

 

「そんな所に貴方が現れた。人ではないけど、人に限りなく近い、ロボットである貴方が。そんな存在を知れば一部の局員、上層部の人間は思うでしょうね『便利な物が来た』と」

 

「……」

 

「私の考えが正しければ、貴方は間違いなく時空管理局の実験動物のような扱いになってしまう。当然よね、人間じゃないんですもの…どんなに人に近くても、貴方は管理局側からすれば『ロボット』という扱いになる」

 

 そう、時空管理局の人員不足を解消するのに、ゼロというレプリロイドの存在はうってつけであると言える。強力なエネルギーがいるとはいえ、それは時空管理局の技術をもってすればすぐに解消されてしまう。そして、ロボットであるのなら人権はない。非人道的実験など容易い上、簡単にゼロの量産などが出来てしまうのだ。

 

「だから、貴方にこのまま地球に残ってもらい…定期的に私達が貴方をサポートしようと思うの。今回の事件に、貴方は関与しなかったことにしてしまうけど…」

 

「その申し出はありがたいが、何故お前はそこまでしようとする?」

 

 ゼロの疑問はもっともである。ゼロという存在を時空管理局が手にすることは紛れもないアドバンテージになる。それを手に入れたリンディの株は間違いなく上がる。しかし、リンディはゼロを秘匿とし、なかったことにしようとしている。元々、栄光や武勲になど微塵も興味がないゼロにとってはありがたい話だが、そこまでする必要がどこになるのか

 

「理由は、2つね…1つは、貴方が私とクロノを救ってくれたからかしらね」

 

「…?」

 

「知っての通り、今回の事件で闇の書封印に動いていたのは管理局提督であるギル・グレアム提督…私と、私の夫の上司だった人よ」

 

「それはクロノ・ハラオウンから聞いている。彼は現在、身柄を拘束されたとも聞いたが…」

 

 クロノからある程度事情を聞いているゼロだったが、何故そこで彼の名前が出たのか首を傾げるゼロ。しかし、リンディは言葉を続けた。

 

「私の夫は、闇の書の暴走で命を落としたの」

 

「…!」

 

「心のどこかで、私も提督と同じように思っていた…夫を殺したあの古代遺失物に恨みを晴らしたいと…でも、貴方のおかげで私は私自身にけじめをつけることができた」

 

「?」

 

「最後の作戦で、アルカンシェルの発射をしたのは私…言いたいことは、わかるかしら?」

 

 そう、最後のゼロの作戦。リンディは実を言えばアルカンシェルを使わないつもりでいた。それは地球に被害が出ることを考慮してである。しかし、ゼロの作戦による闇の書の完全破壊の作戦でのアルカンシェルの使用。ゼロはリンディに闇の書に対する復讐の機会を与えたことに等しかった。

 

「けじめ…というのはおかしいわね、夫の仇を私自身の手で取ることができた。だから、貴方にはとても感謝しているの」

 

「別に俺はそんな意図で動いていたわけではないがな…」

 

「それでも、貴方がいなければ別の作戦になっていたかもしれない」

「それで、もう一つというのは?」

 

 一つは、リンディの個人的な理由。しかし、それだけではない。リンディは理由が2つと言った。つまり、もう一つ理由がある。

 

「もう一つはあの子…フェイトさんの存在が大きいわね」

 

「アイツが?」

 

「……ええ、あの子の母親はとある事件で行方不明、公ではほぼ死亡したと思っていい。そんなあの子も、少し特別な生まれをしているの」

 

「どういうことだ?」

 

 ゼロはリンディの言葉に疑問を投げかける。フェイトは人間であり、ゼロはレプリロイド。リンディが連想する意味合いがまったくと言っていいほどない。なのに、何故ここでフェイトが出てくるのだろうか。

 

「彼女は…その母親の本来の子供ではないの。その母親の娘のクローン…人間の技術で試験管から生まれた『作られた人間』」

 

「…!」

 

「フェイトさんはどこかで、普通の人間とは違うということを負い目に感じている。実際、事情を知っている管理局員の目は冷たい物よ…だから、私の所で嘱託魔導士をしている。私はね、そんなあの子を養子として迎えようと思っているの」

 

「作られた、か…」

 

「あの子の母親になろうとしている以上、貴方もまた私からすれば『人間』。ましてや、恩人の貴方に不当な待遇をしたくないのよ」

 

 リンディは言いながらお茶を飲む。ゼロは思う。リンディなりに、自分という存在を人間とする彼女もまた、変わった人間だ…と。自分の世界での人間は自分にそんなことをいうような人間はいない。しかし、だからこそ彼女のことも信頼できるとゼロは確信する。

 

「了解した…リンディ・ハラオウン、お前を信用し、今後のことは任せる」

 

「ええ、わかったわ。全力を尽くさせてもらうわね」

 

「それと、俺ではなく、ヴォルケンリッターやはやて、そしてリインフォースのことはどうなっている」

 

 ゼロとしては、今回リンディの所に訪れた理由はゼロ自身のことではなく、はやてたちのことを聞くために来たに等しい。事件にゼロという存在がないのならば、ゼロは事情聴取など当然することはない。

 

「ええ、ちゃんと事情聴取も受けているから保護観察処分で済みそうよ。魔導士を襲った人数が少なかったのが幸いね…過剰な人数だったらこんな待遇にはならないわ」

 

「だろうな」

 

「けれど…貴方と違って彼女達のことはそう簡単には行かない可能性がある」

 

「…どういうことだ?」

 

 リンディの鋭い口調に、ゼロはリンディの言葉に疑問を投げかける。

 

「今回の事件は、もう観察処分として処理されたことだけど…それ以前の事になれば、話は別ということよ」

 

「…お前や、ギル・グレアムのような人間がまだいるということか」

 

「そう…闇の書の闇、防衛プログラムとバグは消えた…でも、そんなことはきっと被害者たちからすれば『どうでもいい』こと。今後も、闇の書に復讐をするためにはやてさんたちは危険な目にあうかもしれない」

 

 そう、今回の事件で闇の書の闇の根源が消えたとはいえ、たんなるそれだけにすぎない。はやての前のマスターによる魔力蒐集ではシグナムたちは魔導師を襲ってリンカーコアを奪い、蒐集を繰り返していた。時には人をその手にかけたこともある。それ故に、恨みを持つ者も多い。

 

「…私の意見、聞いてくれる?」

 

「大方予想はついたが…聞くだけ聞こう」

 

「彼女達を時空管理局側に引き入れる…私が考えうる中では最善の選択ね」

 

「だろうな」

 

 ゼロも、リンディの考えを理解していた。そう、はやてたちを守るために、法を管理する管理局の中に入れてしまえばいい。そうすれば恨みを持った人間でも迂闊に手は出ない。さらに言えば、時空管理局の中に恨みを持つ者がいようとも、同じ局員であるなら手を出すこともない。そして、時空管理局は歴戦の戦士と、優秀な魔道師を手に入れることが出来るのだ。

 

「あの子を利用しようとは思ってない…けど、こんな形でしか、私達はあの子たちを守ってあげられない」

 

「それはアイツらも理解しているはずだ。長く生きてきたアイツらもそれなりの覚悟はあるだろう。はやても、守護者であるアイツらは家族であり、家族の罪は自分も償うと言っていた。俺から特に言うつもりもない」

 

 ゼロ自身、はやてが決めたことに口出しをするつもりはない。そんなゼロに、リンディが意外そうな顔をする。

 

「あら、反対されると思ったんだけど…意外ね」

 

「他人が決めることにとやかく言うつもりはない」

 

「そう、ありがとう。じゃあ、お話はこんなところね」

 

「そうか、また進展があれば連絡を頼む」

 

そう言ってゼロはハラオウン家を後にするのだった。

 

 

 

 

八神家

 

 

「今、戻った」

 

「ただいまー」

 

 ゼロとクロワールが八神家に戻り、リビングに入る。すると、今日は珍しく来訪者がいた。

 

「あ、ゼロさんお帰りなさい。お邪魔してます」

 

「お帰り、ゼロ」

 

 そこにいたのは茶髪のツインテールの少女、高町なのはと、金髪のツインテールの少女、フェイト・テスタロッサであった。

 

「む、お前達来ていたのか?」

 

「はい!今日ははやてちゃん達とご飯のお約束だったので」

 

 そんな話をしていると、はやてが部屋に入ってくる。

 

「ゼロ、クロワール、お帰り~」

 

「ああ、ただいま」

 

「リンディさんとの話終わったん?」

 

「ああ、まあな」

 

 そう言いながらエプロンをつけるゼロ。お昼の準備の時間ということでそれをするが、そんな様子になのはたちが少し驚いた顔をする。

 

「ゼロさん、料理するんだ…」

 

「ゼロは料理上手いで~」

 

 そんなわけで調理が開始される。なのはは喫茶店の娘ということから、フェイトもかつて師であるリニスに教わったこともあってか、はやてに劣らず順調に料理をこなしていく。

 

「お、二人とも上手いな~」

 

「えへへ、私は喫茶店店主の娘だからねー」

 

「私もリニスに教わっていたから、基本的なことはできるよ」

 

 そんなことを言いながら二人がゼロに視線を移す。

 

「でも、ゼロさん…すごいですね」

 

「うん、うん…」

 

「そうなのか?」

 

 そう言っているゼロの手元では鍋に入れる野菜が切られている。その切り方はシンプルなのだが、その切ってある形に問題があった。それぞれをはやての注文通りに切っている。例えば、星の形と言えばその通りに綺麗に切り、サクラの形を頼めば包丁を自在に操り、綺麗に切っていく。

 

「私が仕込んだだけあるわな~…ま、やりすぎやとも思うけども」

 

「でも、こんな綺麗に形作れないよー…」

 

「俺は普段から刃物を使っている。どんな刃物でも、自分の手足のように操る必要がある」

 

 と、はやてたちの言葉にゼロが返すも、クロワールが後ろでため息をついた。

 

「ゼロ、それはちょっと違うと思うわよ」

 

 そんな感じで、料理する時間は過ぎて行くのだった。

 

 

 

 

「おーし完成や。後は温めるだけや」

 

「「わー」」

 

 料理が無事に完成し、なのはとフェイトの二人が拍手する。途中色々あったが無事完成した。時刻は11時過ぎ。はやての話では、12時くらいには守護騎士とリインフォースも事情聴取などから解放されて帰ってくるということらしい。

 

「休憩だな。茶でも入れよう」

 

「あ、お願いな。二人も飲む?」

 

「うん、お願いします」

 

「私も」

 

 3人分のお茶をゼロが入れる。料理をしたり、こんな風にお茶を入れるすっかり家庭的となったゼロなど、ゼロの世界の人間たちが見たらどう思うだろうか。驚くのは目に見えているが。

 

「持ってきたぞ」

 

 そう言ってゼロがみんなに紅茶を配る。ゼロが給仕とは、なかなかシュールである。

 

「ありがとうゼロさん」

 

「ゼロ、ありがと」

 

「おおきに」

 

 言いながら紅茶を飲む3人。しばらく楽しそうに談笑していたが、はやてが思い出したように手を叩く。

 

「せや、ゼロ?聞きたいことがあんねん」

 

「なんだ」

 

「この前言っていた、シエルって誰や?」

 

 言いながらゼロの事をジト眼で見るはやて。お年頃の女の子であるはやては、あの時別の女性の名前がゼロから出て来て自分と間違えたことに興味を持っているらしい。

 

「シエルは俺の世界の仲間であり、俺を蘇らせたレジスタンスのリーダーだ。」

 

「レジスタンス?」

 

「蘇らせる?」

 

 どんな人なのか、ということを聞こうとしたのだが、まったく別の言葉がゼロから発せられる。思わずなのはやフェイトが聞き返して首を傾げる。そして、この時はやては初めて思った。自分たちはゼロのことを何も知らないのではないだろうか、と。今まで、レプリロイドという別世界の人間であるという認識はあっても、ゼロの事を詳しく知っているわけではない。はやては再びゼロを見る。

 

「なあ、ゼロ?」

 

「今度はなんだ?」

 

「教えてくれへんかな…ゼロのことや、ゼロの、世界のことを…」

 

 ゼロははやてに言われて考え始める。どうしたものか…と。別に話すことにはなんの抵抗もない。特に後ろめたいこともないのだが、自分の世界はショッキングなことが多すぎて、どこから話していいかもわからない。人間が生きるために殺されそうになって逃げていたレプリロイド達の味方をやっていました、なんてシレっと言えるわけがない。

 

「何故、そんなことを聞く?」

 

「家族だからや…家族だから、ゼロの事をもっと知りたい」

 

 はやては今までにないほど、真剣な目でゼロを見ていた。そして、対面の席に座っていたなのはとフェイトも、同じく真剣な表情である。彼女達も聞きたい、と言うことらしい。

 

「いいだろう。だが…あまりいい話ではない」

 

「わかっとる…あと、この話はリインフォースやシグナム達が帰って来てからでもええ?」

 

「ああ、そうだな」

 

 

こうして、はやてたちはゼロの過去を知る。

 




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