【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~   作:秋風

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今回はロックマンゼロ~ロックマンゼロ4での出来事をゼロが説明します
Xシリーズのことは恐らくゼロも覚えていないでしょうし、話がとんでもなく長くなるのでやめました
ちなみに、ロックマンゼロ4のサントラにあったドラマCDでのバイルの声を聞いていて、ビッグボスがイメージされてしまった私がいます

独自の解釈なども含みますので、そこら辺はご了承ください

感想、ご指摘、評価、お待ちしています


18「過去」

 昼食を済ませて一息ついた頃、八神家とその場にいたなのは、フェイトはゼロについて話を聞くことになった。それぞれがソファや床に座り、聞く準備が整ったところでゼロが口を開いた。

 

「さて…話、ということだが、何から話せばいい?」

 

「そうやな…ゼロは…レプリロイドって、どうして生まれたん?」

 

「…詳細を言えるほど覚えていないが、レプリロイドは人間に限りなく近い思考をすることで行動するロボットのことを指す。自立思考と言う点ではお前達のインテリジェントデバイスに近いだろう。人間の手で生まれ、人間を支えることを目的としている。俺のようなレプリロイドの他に、人型ではなく単純思考な連中をメカニロイドと呼ぶ」

 

 そう、本来レプリロイドとは『人間と共に歩む最良のパートナー』としての目的で生み出された存在である。人を支え、人のために生きることを第一に行動する。しかし、そんなゼロの説明にフェイトが首を傾げた。

 

「でも、ゼロの力は人のための力なの? ゼロの強さは、なんというか……純粋に戦うためだけの力だった気がする」

 

「そうだ。俺は戦闘に特化した戦闘型。本来はイレギュラーを倒すことを前提としている」

 

「イレギュラー?」

 

 また知らない単語が出てきたことに一同は首を傾げてしまうが、それを理解してか、ゼロは丁寧に説明を行う。

 

「多数例がある。電子的ウィルスの干渉を受けてバグが生じたレプリロイドや、メカニロイド、危険思想を持ったレプリロイド…そして、人間に害を加える目的で製作されたレプリロイド達…それがイレギュラーだ。奴らを狩る俺は、イレギュラーハンターと呼ばれていた」

 

「じゃあゼロさんは…」

 

「そうだ。俺は同じレプリロイドをこの手にかけてきた」

 

 人間の出した答えは残酷な物であった。同じレプリロイドは同じレプリロイドの手で処分させるという答え。別世界の人間であるなのはたちから聞けばこの時点でショッキングだが、ゼロはそのまま言葉を続ける。

 

「もっとも…俺自身が『イレギュラーハンター』と言う存在であったかは覚えていない」

 

「覚えてない? どうして?」

 

「俺は目覚める以前の記憶がない。忘却の研究所と呼ばれた場所で、100年近い眠りについていた。そのため記憶は欠落して俺自身が何者であったのかも目覚めたときにはわからなかった」

 

 もはや数年前の出来事だが、目を閉じればあの研究所でのことはいつでも鮮明に思い出せる。自分を目覚めさせ、自分に『助けて』と懇願した少女。彼女が自分にとって全ての始まりといえるのだから。

 

「そんな、なんでゼロはそんなことろで寝てたん?」

 

「…詳しくは知らん。だが、俺がいることで血塗られた歴史が繰り返される。夢で見た俺はそう言っていた」

 

 『血塗られた歴史』ゼロ自身は覚えていないだろうが、当時、ゼロの体は∑ウィルスに侵されており、イレギュラーハンターとして活動していたゼロ自身がイレギュラーを増やしてしまうという不運な出来事があった。それを知ったゼロは、自らその体を封じる道を選んだのだ。そんな話をすると、今度はシグナムが疑問の声を上げる。

 

「お前は次に目覚めたときに、と言ったが、何故お前は再び目覚めることになった? お前は言うなれば封印されていたのだろう?」

 

「ここから、少し話がややこしくなるが…まず、俺を目覚めさせたのはシエルという、レジスタンスのリーダーだ」

 

「レジスタンス?」

 

 なのはたちはその言葉だけならば聞いたことがある。レジスタンスは「抵抗」「障害」を意味する。『運動』と付け加えるのなら、侵略や専制などに対し、自由と解放を求める政治的抵抗運動のこと。フランス占領軍に対して行われたドイツの国民的抵抗運動や、ナチス・ドイツ占領下のフランスでの自由フランス、ベルギーでのコメットラインによる抵抗運動などが有名で、地球でもその言葉は知られている。

 

「俺が目覚めた当時、そこには人間の理想郷『ネオアルカディア』というものが存在した」

 

「理想郷?」

 

「そうだ。人間に絶対なる安全を約束し、戦争や貧困をなくした平和そのものを体現した場所だと言えるだろう」

 

「すごいね。ゼロの世界って…」

 

 と、驚いた表情のフェイト。恐らく彼女のイメージは人々やゼロのようなレプリロイド達が楽しく、平和に暮らしているイメージなのだろう。だが、現実は非情である。

 

「だが、レプリロイドにとってはそうも言えなかった」

 

「どうして? 平和な世界なんでしょう?」

 

 そうシャマルが言う。戦争や貧困、今この地球でも問題になるようなことが一切ないその場所で、レプリロイドたちが人間と同じく平和にならないわけがない。

 

「レジスタンスのメンバーは皆、不当な廃棄処分から逃れたイレギュラー指定のレプリロイドだ」

 

「どういうことや? 理想郷なんやろ?」

 

 確かに、理想郷は平和の象徴といえる場所である。レプリロイドが不当に処分される理由が見つからない。

 

「これは聞いた話だが、理由は2つ。1つは政府がレプリロイドのイレギュラー化を恐れての過剰なイレギュラー処分。ネオアルカディアは元々『イレギュラー戦争』…後に、『妖精戦争』と呼ばれたレプリロイドの90%、人間の60%を死滅させた戦争の犠牲から生み出された場所だった。二度と戦争をしないように、とな」

 

 そう、それこそΣウィルスと呼ばれたウィルスによってイレギュラー化したレプリロイドとの戦争。後に妖精戦争と呼ばれた悲しい戦いの結果、エックスが作り出した人々の安息の地だった。

 

「そして2つ目、エネルギー問題」

 

「エネルギー?」

 

「人間の生活を支えるにはエネルギーが必要になる。しかし、同じエネルギーを使用するレプリロイドが邪魔になる。最低限、必要な人員以外のレプリロイド達はイレギュラーと認定されて処分の対象になった」

 

 その政策によって、多くのレプリロイド達は悲鳴を上げる結果となった。人のためにと生まれたはずなのに、人のために殺される。そんな理不尽なことが何年も続いた。

 

「そんな中、人間であり後にレジスタンスのリーダーとなるシエルがそのイレギュラーと認定されたレプリロイド達を連れてネオアルカディアを出た。しかし、そんな彼らを政府が逃がすはずがない。彼らは生きるために、抵抗する道を選んだ」

 

「それが後のレジスタンス発足か。そして、政府という大きな組織を相手にするには力がいる」

 

「なるほど…お前の力が欲しかったわけだな」

 

 ゼロの説明に、ザフィーラとシグナムが納得する。彼らも歴戦の猛者。ゼロの会話を一番に理解している。なのはやフェイトたちには少し実感がわかないような話だが、生きるか死ぬかに追い詰められた彼らには大きな抵抗力が欲しい。それ故に、ゼロが必要となった。

 

「俺は先の大戦では“英雄”として祭り上げられた存在だったらしい。だからこそ、その力をシエルは欲し、俺を蘇らせた。だが、それだけではない」

 

「まだ理由があるのか?」

 

「当時、そのネオアルカディアを統括する男、エックスは俺の親友だった。同等の力を持つと言われていた俺に力を貸して欲しかったんだろう」

 

「なるほど、ゼロにエックスを止めようとさせたんだな」

 

 ゼロの言葉に、ヴィータが言う。ネオアルカディアを統治していた。すなわち、不要なレプリロイドをイレギュラーとして処分しようとする政策を承認しているのはそのエックスだ。そこに親友のゼロが止めに入れば、エックスはそれを受け入れるかもしれない。だが、ゼロは首を振る。

 

「だが、エックスは本物ではなかった」

 

「え!?」

 

「本物じゃ、ない?」

 

「エックスはネオアルカディアを創設してすぐに行方不明になったそうだ。それ故に、人間達にとっての平和の象徴であるエックス、コピーエックスをシエルが作り出した」

 

 当時、エックスの行方不明は政府のごく一部の人間にしか知られていない特秘事項であった。もし、人間達を平和に導いた英雄、エックスがいないと分かればイレギュラーの増加や、人間達の混乱が懸念される。それ故に、政府はエックスと言う“英雄”を作り出さなければならなかった。

 

「じゃ、じゃあ、そのコピーエックスが他のレプリロイドの人達を?」

 

「そうだ。無実のレプリロイドを大量に処理した上で作り出した平和。それを自分が人間のために作り出した平和であり、それを成した自分はオリジナルのエックスや、俺さえも超えた存在だと、そう言っていた」

 

 英雄だからこそ、自分は何をしても許される。自分は人間たちを平和に導くシンボル。そんな暴走した考えが、いつしかネオアルカディア全体に広まっていた。その言葉を聞いたフェイトはどこか様子がおかしくなっていたが、ゼロは説明を続けた。

 

「シエルの手によって蘇った俺は、シエルに協力することにした。眠っていた俺を蘇らせた理由を聞き、そしてレジスタンスのアジトで触れ合ったレプリロイド達を見て、心のどこかで、アイツらを守らなければと俺の頭の中に響いていた」

 

 自分は何者なのか、どうしてここにいるのかもわからない。目の前に必要としてくれた人間がいたからこそ、ゼロは自身の存在を確かめるために戦っていた。人間だけではない、レプリロイドを守るために。

 

「それで、その後はどうしたん?」

 

「俺が目覚めてからしばらくして、ネオアルカディアにレジスタンスのアジトの位置がバレることになった。アイツらの逃げる時間を稼ぐために、俺はネオアルカディアの中枢へと侵入。コピーエックスを倒してネオアルカディアに混乱を起こし、時間稼ぎをした」

 

 ネオアルカディアからの襲撃を受け、ゼロはネオアルカディアにいるコピーエックスを倒そうと決意する。記憶が無くとも、そんな自分に対して心のどこか、エックスはそんなことをする男ではない、そんな声が聞こえていた。だからこそだったのかもしれない。シエルから真実を聞いた時、自分の親友の目指した夢と違うことをする親友の紛い物に殺意を覚えていたのは

 

「コピーエックスを倒した後、俺はネオアルカディアの中枢を脱出。その脱出した砂漠で、俺は本物のエックスと再会した」

 

「本物のエックスさん? だって、行方不明だったんじゃ…」

 

 そう、コピーエックスがいたのは、エックスが行方不明となってしまったからであり、本物が出てくるのはおかしい。なのはの疑問に、ゼロは頷いた。

 

「アイツは体を失い、サイバーエルフとなって俺をサポートしていた。このZセイバーを投げてよこしたのもアイツだったし、ネオアルカディアの中枢プロテクトを解いたのもアイツだった。覚醒していない意識の中、エックスは、俺にこう告げた」

 

『君が僕を残し、この世界から姿を消してから…僕は100年近く、たった1人で途方もない数のイレギュラーと戦っていたんだよ…それは、つらく悲しい戦いの日々だった。しかし何よりも悲しかったのは…だんだんと何も感じなくなってくる自分の心だった。この世界のことは、しばらく君に任せたい。だからこの僕を…まだ、少しの間休ませて欲しい。ごめんね…』

 

 記憶はなくとも、初めて聞いたと思った親友の最初で最後の弱音。コピーエックスと戦ってエックスの記憶を思い出したゼロ。そのゼロの記憶にあったのは笑顔を絶やさず、人とレプリロイドのために戦っていた一人の男。そんな我儘をゼロは短く笑い、頷いて了承した。

 

「それから一年間…俺はレジスタンスが逃げるために囮となり、追っ手から逃げ続けた」

 

「一年も…」

 

 それは人間であるはやてたちからすれば途方もないことだろう。体がボロボロになり、使っていた武器は次々と使いものにならなくなっていく。そんなことを一年も常人ならばとてもではないが続けていられないだろう。だが、ゼロは理解していた。こんなことを親友は100年もしていたのだ。これくらいはどうということはない…と

 

「それからしばらくして、俺は新しいレジスタンベースへと辿りついた。偶然なのか、よくわからないが…何故か、俺はそこにいた」

 

 それに関しては、ゼロも詳しくは知らない。外に自分が倒れていた、とシエルは他のレジスタンスから聞いたのだという。だが、ゼロやシエルにとって過程などどうでも良かった。ただ無事、再会したことだけが嬉しかったのだから。

 

「でも、1年経ってもまだレジスタンスの人達は生きのびていたんだね」

 

「ああ、1年で不当処分を受けたレプリロイドも多かったらしく、俺の知らないメンバーも多くいた。そんな中、俺は新しい司令官を名乗る男と出会った」

 

 全てはレジスタンスの平和のために。レジスタンスの自由のために…そう豪語する一人のレプリロイド、その名はエルピス。

 

「シエルさんはどうしてたん?だって、無事に再会できたんやろ?」

 

「ああ、アイツは武力ではなく、科学によって戦いを終わらせようとしていた。新開発のエネルギーを作るために司令であることを降りてエルピスに指揮を任せていた」

 

「しかし、おかしな話だな…人を支えるために生まれたレプリロイド達が、自分達の平和や自由のために人間につくレプリロイドたちと対立するとは」

 

 ザフィーラの言葉に、ゼロは答えない。ゼロの最近思い出した記憶に、そんなことが前にもあった気がするからだ。

 

「それからどうなったんですか? エネルギー、できたんですか?」

 

「話はそう上手くいくものではない。開発が完成近くになったころだ。エルピスが大規模な作戦を発案した。それが“正義の一撃作戦”…ネオアルカディアへの総攻撃によってネオアルカディアにダメージを与えるというものだ」

 

「馬鹿かソイツは!?あくまでもエネルギー開発の時間稼ぎのレジスタンスによるゲリラなのだろう!?まさか、報復を人間に向けたのか!?」

 

 咄嗟にシグナムが叫ぶ。シグナムの言うとおりである。いくら人数が増えたとはいえ、それは組織に対してでは小規模以外の何物でもない。それにもかかわらず、『正義』と称して襲撃を行うなど、コレでは単なるテロ行為にしかならない。

 

「襲撃をかければ人間達は考えを改めると思ったのだろう。だが、人間を守るために戦うネオアルカディア・四天王の前にエルピス率いる部隊は敗北した。その作戦で何十人ものレプリロイド達が命を落とし、エルピスは司令官の座を降りる」

 

「自業自得だろ、それ…」

 

「まったくその通りね…そのエルピスという人も反省したの?」

 

 歴戦の戦士たちであったヴォルケンリッターから聞けば当然の結果だった。エルピスは正義を掲げ自身が彼らを救う救世主であるかのような振る舞いを見せていたのをゼロは覚えている。

 

「いや、その作戦の後、エルピスはレジスタンベースを離れた。シエルや他のレジスタンスの願いもあって、俺はあの男を追った。そこで見たのは、以前とは違うエルピスの姿だった」

 

 そう、とある遺跡の先でエルピスをゼロが見つけた時、そこに司令官エルピスはいなかった。狂ったように何かを求めようとする彼の態度は段々と変わっていった。

 

「奴はとあるサイバーエルフ達に唆され、エックスのボディに封印されたサイバーエルフを復活させて力を得ることを目論んだ。エックスが行方不明になったのも、そのサイバーエルフを封印するが故だ」

 

「あるサイバーエルフ?」

 

「そうだ・・・名を『ダークエルフ』」

 

「ダークエルフ?」

 

 その聞いた限りでは如何にも邪悪そうなサイバーエルフ。一同がチラリとクロワールを見る。サイバーエルフを知らない彼女達にとってはどのようなものなのかイメージし辛いのかもしれない。

 

「元々、イレギュラー戦争を終結させるサイバーエルフだったが、とある事情からダークエルフと呼ばれ、その危険性を懸念したエックスが自身に封印した。結局、その封印をエルピスは解いてしまう」

 

「まさか…」

 

 シグナムが予想したことを言おうとして震えだす。ゼロは頷き、口を開いた。

 

「エルピスは、エックスを破壊して力を得た」

 

『!!』

 

 ゼロは淡々と言うが、親友の本当の死を目の当たりにしたゼロはどれだけ辛かっただろう。ゼロは言葉を続ける。

 

「結局、俺は暴走したエルピスを止めるために奴を倒した…が、そのダークエルフの開放によって、恐ろしいレプリロイドが共鳴して蘇った」

 

「恐ろしい、レプリロイド?」

 

 そう、この戦いで目覚めさせてしまったのは厄災のエルフだけではなかった。そのきっかけが、さらなる闇を蘇らせる結果になるとは、この時は思いもしなかった。

 

「名をオメガ…そしてそれを作り出したドクターバイルの二人が復活し、ドクターバイルは俺が破壊したコピーエックスを復活させ、ネオアルカディアの統治を始めた。それだけならまだよかったが…奴らは逃亡していたダークエルフを得るために、そのオメガを乗せたミサイルを人間の居住区に落とした」

 

「そんな…」

 

「結果的に、オメガがダークエルフを吸収して力を得たが、連中はこちらが開発している新エネルギーを寄こせと言ってきた。そうすれば身の安全を保証する、と」

 

「信用できんな、そんなことをした連中が今まで敵対していたレジスタンスを受け入れるわけがない」

 

 ザフィーラがいうと、ゼロも頷いた。

 

「その通りだ。シエルは人間の居住区にミサイルを落とすような行為をする連中の言うことは信用できないと言い張った。それによって俺達はテロリストとして認定され、襲撃される前にと、こちらから出て、コピーエックスを討った。しかし、それもドクターバイルの予想通り。それを利用して今度はドクターバイルが統治者になった」

 

 それ故に、ゼロ達はドクターバイルを理解した。この男は危険である、と。

 

「今まで鎮静化していた互いの攻防戦が激化し、俺は再びネオアルカディアに向かった。バイルを倒すためにな。そこで俺は真実を知った」

 

「真実?」

 

「オメガは、俺自身だった…そして、俺は『ゼロ』ではなかったという真実だ」

 

「え? どういう、ことや?」

 

はやてが首を傾げるが、ゼロは言葉を続ける。

 

「エックスによると…俺はオメガにボディを奪われ、コピーの別の体にその記憶や精神、人間で言うなら魂をその体に入れられたらしい」

 

「っ…! そ、そんなことが!」

 

全員が驚いていたが、その中でもひと際フェイトが声を荒げる。何故驚いているのかゼロは理由を知っている。

 

「け、結局どうしたんですか? そのオメガっていう、ゼロさんの体を持っているレプリロイド」

 

「俺はそのままオメガを倒した」

 

「倒したって…自分自身の体だろ!?」

 

「戻りたいとは思わなかったのか!?」

 

 なのはの返答に答えたゼロだったが、その言葉にヴィータやシグナムが声を荒げた。彼女達の言うことはもっともだ。自分の体があるのなら、戻りたいと願うのが普通のはず。しかし、ゼロはそれを否定するように首を横に振る。

 

「あいつが、エックスが俺に言ってくれた…大切なのは心なのだと」

 

「心…」

 

「だから、俺はあいつを信じて全てに決着をつけた…それによって、ダークエルフも、バイルの呪いから解放され、マザーエルフと呼ばれた本来の姿に戻った」

 

「じゃあ、これで全てが終わったんですね?」

 

 なのはの言葉に、ゼロは「いや…」と首を振った。それに対して、なのはが首を傾げる。なのはだけではない、一同が思うだろう。これで全てが終わったのではないのか、と。

 

「確かにレジスタンスにとってはコピーエックスの消滅やオメガ、ダークエルフの消滅でネオアルカディアが機能しない故に自分達は救われたということになるだろう。だが、それ故に人間がここから地獄を見ることになる」

 

「人間が…って、あ!」

 

「そう…ネオアルカディアは、バイルが支配を続けていた」

 

 バイルが支配をするネオアルカディア。かつて理想郷と呼ばれた地獄。それを従える軍勢とゼロたち戦い続けながら、平和になる方法を探し続けていた。

 

「ある時、俺は一人のジャーナリストと出会った。名をネージュ。ネオアルカディアから逃げてきた人間のキャラバンだ」

 

「ネオアルカディアを抜け出した?」

 

「バイルは気に入らない奴を全て処分していたらしい。レプリロイドに限らず、人間までもな。そこで人間達はネオアルカディアを出て、とある場所を見つけた。『エリア・ゼロ』荒野や砂漠しかなくなった俺達の星で唯一存在する、自然があり、機械の管理もない場所」

 

 そこはかつて戦争の傷跡からでき、皮肉にも人が立ち入らなかった故にできた緑育むオアシス。理想郷には程遠いが、レプリロイドが一切いないその場所。そこは人間達には新しい理想郷に見えたに違いない。

 

「でも、それって…」

 

「人間が作って、勝手な都合で毛嫌いするなんて…」

 

「人間にとって最早、俺達は恐怖の存在でしかなかったのだろう。その後、俺達はエリア・ゼロのわずかな自然を守るためにバイルと戦うこととなった。シエルがきっとわかりあえると…そう願ったからな」

 

 人とレプリロイド…一度できてしまった傷は非常に大きく、深く刻まれていた互いの溝は少しずつ少しずつ…互いを理解し合って溝を埋めていった。

 

「互いに平和を求める気持ちは変わらない。俺達レジスタンスとキャラバンは次第に互いを理解することが出来るようになった。だが…」

 

 そう、事は簡単には運ばれない。その互いに分かりあっていたその時、どす黒い悪意が牙を向く。

 

「しばらくして、バイルのエリア・ゼロを消滅させる作戦、ラグナロク作戦が発動した」

 

「え…ゼロが止めたんやないの?」

 

「確かにエリア・ゼロへの攻撃は止まったが…それは囮だった」

 

「そう…本来のバイルの目的は宇宙から衛星砲台による地上無差別攻撃。完全にネオアルカディア以外に住む場所が無いようにしていたのよ」

 

 と、ゼロの説明にクロワールが続く。

 

「ねえゼロ?」

 

「どうした、クロワール」

 

「ここからは、映像があるの……私が見て、記録してきたすべてがそこにある」

 

 言いながら、クロワールは何やら小さな球体のような物を取りだした。

 

「………」

 

 ゼロは迷う。クロワールが言うその映像は、恐らくラグナロク突入後のシーンなのだろう。正直、明らかにショッキングだ。それを見せるか否かだが、ゼロはしばらく考えてからそれを見せることにした。もうここまで来たら、全てを教えるべきなのだろう。

 

「わかった、頼む」

 

「ええ」

 

 ゼロの言葉にクロワールが頷き、その力によってその映像が白い壁に映し出された。それは、ラグナロクのコアのある場所に辿りついた場面だった。その映像の左側にゼロが映っている所を見ると、それはクロワールの視点で撮影された映像と言うことらしい。

 

『これが、ラグナロク・コア……』

 

『クーックックックッ…ようこそ…破滅のショーの特等席へ…!』

 

 ゼロがラグナロク・コアを見つめていると、そこにガラガラした老人の声が響きわたった。

 

『その声、ドクター・バイルか…! あのラグナロクの攻撃の中で生きていたのか…!』

 

 映像のゼロの言葉に、一同が首を傾げる。ネオアルカディア以外の大地を破壊するためのラグナロクが、なぜドクターバイルのいるネオアルカディアに砲撃が向かったのかと。

 

「どういうこと?」

 

「バイルの配下にいたクラフトというレプリロイドが反乱を起こした。エリア・ゼロにいる人間、ネージュを守るためにまだ人やレプリロイドが残るネオアルカディアに砲撃をおこなった。クラフト曰く、道を誤った人間を誰かが正さなければならないという、それゆえの行動だった」

 

「え!? だって、そんな…」

 

当然、人類の殆どがそこにいることから、はやてたちは信じられないと言った様子でその言葉を聞く。そんな彼女達に、ゼロが補足の説明を加えた。

 

「結果的に砲撃発射前にレジスタンスが動いて大多数を保護した。しかし、中心部にいたバイルは死んだ…そう思われていた」

 

「続き、流すわよ?」

 

 クロワールの言葉と共に、止まっていた動画が動き出す。そこに現れる、一人の老人、ドクターバイル

 

『生きていた…? …違うな…死ねなかったのだよ…!』

 

『…その顔は!』

 

そこに映る老人、ドクターバイルの姿。それは皮膚が剥がれ、機械の顔をしたバイルの姿だった。その映像にはやてたちが絶句する。

 

『クックックッ…この機械の体に驚いたかね…? それとも…儂がレプリロイドなら戦えると安心したか?残念だったな…これでも儂は人間なのだよ…こんな体でも…儂は人間なのだ…!!』

 

『なんだと…?』

 

『ダークエルフによるレプリロイドの支配とイレギュラーの抹殺…のちに妖精戦争と呼ばれる争いを起こした儂は、妖精戦争が終わった時に当時の人間どもの手である改造を施された。儂の記憶の全てをプログラムデータに変換し…年老いた儂の体とともに、再生機能を持ったこのアーマーに押し込みおった……』

 

 そう、それは当時の人間たちからすれば、バイルに対して死以上の苦しみを与えたと思っていただろう。だが、これが後に大惨事を起こすということを当時の人間達は知る由もない。

 

『これがどういうことかわかるかね…? 歳をとり…儂の体が傷つくとこのアーマーがすぐに再生させる…戦争の後の…光も、自然も、何もない世界で死ぬことさえ許されず、永遠に苦しみの中で生き続ける呪いをかけ…人間どもはワシをネオ・アルカディアから追放したのだよ!』

 

 バイルは何もないその場所でもがき苦しんだ。いくら助けを呼ぼうとも、いくら命乞いをしようとも、誰も助けてはくれない。だれも救ってはくれない。バイルの体にはやがて巨大な憎しみと憎悪の渦が支配していく。

 

『………!』

 

『正義だと!? 自由だと!? くだらん! 実にくだらん! キサマらレプリロイドがこの地上で何をした! 機械人形のくせに自由を掲げ、遥か昔に戦争を始めたのは貴様らだろう! 貴様ら人間がこの儂に何をした! 正義などという言葉を吐き、この儂を追放したのは貴様らだろう!』

 

 バイルの怒りは止まらない。元を辿れば確かにバイルの言うとおり、悪いのは互いの存在。しかし、それらを利用してきたバイルには大罪がある。だがバイルはそれすら忘れ、己の復讐だけを燃やし続ける。その長きにわたる苦しみが、憎しみが、怒りがバイルを支配し、その悪意の炎を燃やしている。その炎は人間、レプリロイドいや…全ての存在に向けられていた。

 

『ゼロ! 貴様はそんなレプリロイドどもを救おうというのか!? そんな人間どもを守ろうというのか!? レプリロイドの支配など生ぬるい…! 人間の抹殺など一瞬の苦しみでしかない…! 生かさず…! 殺さず…! 儂と共に…永遠に…! 苦しみの歴史の中を歩き続けさせてやるのだ…!』

 

 バイルの体に、ラグナロク・コアが装着される。それはまるで憎しみを纏った鎧の化身。人々とレプリロイドが生み出してしまったこの世の本当の悪。

 

『!』

 

『クヒャーッハッハッハッハッ!この儂が教えてやろう…! 愚か者どもに逃げ場などないということを!豚どもの居場所はこの儂の元にしかないということを! このラグナロクを使ってなぁ!』

 

 そんなバイルに対してゼロがZセイバーを抜刀。そしてそれをドクターバイルに向け、ゼロは問い掛ける。

 

『それが…お前の理想か?』

 

『理想だと!? 戯言だ!』

 

 その言葉と共に、ゼロへと黒く光る弾丸が降り注ぐ。そしてバイルから放たれる数々の攻撃。激しいその憎しみの籠ったその攻撃。がむしゃらに放たれるそれは最早ゼロを捕えている様子はない。ゼロはそれを払いのけ、攻撃を続ける。そして、ゼロが高く跳躍してバイルの顔面へとZセイバーを叩きつけた。

 

『流石だなぁ! 英雄…!』

 

バイルが爆散してどこかへ吹き飛び、その衝撃によって周囲の壁が崩れた。そこから見えるのは蒼く美しい星。ゼロ達が住む星の姿。しかし、バイルを倒したのにも関わらずラグナロクの落下が止まらない。

 

『…クッ…! 落下が、止まらない…!?』

 

『ゼロ!もう限界高度だわ…!』

 

そこに入る、シエルの通信。バイルが妨害をしていたのだろう。ようやく繋がった、とシエルが小声で言っているのが聞こえた。

 

『これ以上落下スピードが上がったらゼロを地上に転送できなくなってしまう…! お願い! 戻ってきて!』

 

 シエルがゼロに必死に訴える。しかし、このままラグナロクを放置すれば、エリア・ゼロにラグナロクが落下することは確実だ。そこへ、ガラガラした声が響きわたった。

 

『まだだ…まだ終わらんよ…!』

 

『バイル…!』

 

 さらに機械の顔が露出し、見にくい表情をさらけ出すドクターバイル。バイルは高らかに笑う。

 

『クーックックックックッ…クヒャーッハッハッハッハッ!言っただろう!儂はこの程度では死ねんのだよ!最早ラグナロクの墜落は誰にも止められん!』

 

『ゼ、ゼロ…!もうダメ…!戻ってきて!早く!』

 

 ここで撤退を強いられるのか、と映像を見ていたなのはとフェイトは思う。しかし、はやてやヴォルケンリッターは知っていた。ここで、ゼロは何をしたのか?ゼロから一度だけ聞いたことのある『宇宙空間に放り出され、気が付いたらここにいた…』という言葉。

 

『…いや、まだ手はある…バイルごとコアを破壊さえすれば、ラグナロクは崩壊する…バラバラになれば…大気圏との摩擦で全て燃え尽きるはずだ…!』

 

『そんな…ゼロ! そんな事をしたら…あなたは…!』

 

 何を言うのか、とシエルがゼロに問い掛ける。そんなゼロの言葉に、バイルはさらに笑いだした。

 

『クヒャーッハッハッハッ!出来るかね!? 貴様にそんな真似が! レプリロイドたちの英雄である貴様が! 人間を守る正義の味方が! 地上の人間を守るためにこのワシを…守るべき人間であるこの儂を倒そうというのか! どうだ、この痛みは! 貴様に分かるかぁ!』

 

 最早、人として認識されるかも怪しいバイル。その体にラグナロクから伸びていたコードが幾重にも突き刺さる。そしてゼロの前に現れるのはラグナロクを纏った怪物。どんなレプリロイドよりもおぞましく、どんな人間よりも醜い顔を向ける怪物。しかし、ゼロは迷わずZセイバーを抜刀する。

 

『俺は正義の味方でもなければ…自分を英雄と名乗った覚えもない。俺はただ、自分が信じる者のために戦ってきた。俺は、悩まない。目の前に敵が現れたなら…叩き斬る…までだ!』

 

 英雄、ゼロの最後の選択。その言葉を聞き、シエルが叫ぶ。それは最早悲鳴というものに近いだろう。

 

『ゼロ…! ゼロ…!』

 

 まるで狂った人形のようにその名を呼ぶシエル。しかし、英雄ゼロはただ一言、シエルにこう言った。

 

『…シエル…俺を、信じろ!』

 

『ゼロ――――――!!』

 

 最後の戦いが幕を開ける。バイルから幾多の攻撃が繰り出される。しかし、ゼロはそれを避けながらZセイバーを振り下ろし、バスターショットを連射し続ける。その際、腕に、足に、肩に、バイルの憎しみの込められた攻撃がぶつかっていく。しかし、ゼロはそんなことをお構いなしにバイルへと向かって行く。振り上げられる翡翠の剣。バイルはその剣に斬られ、抉れ、その纏った武装が吹き飛んでいく。ゼロはようやく全てを払いのけると、何の迷いもなくそのバイルの顔が見えるガラスに向かってZセイバーを振り下ろした。

 

『おおおおおおおっ!』

 

 その一撃を受け、バイルを保護していたガラスが砕け散る。それと同時にラグナロクは崩壊を始める。それは、ゼロの勝利を知らせている。

 

『このワシが…人形ごときに…!滅び…滅んでしまえぇぇぇっ!』

 

 爆発がおき、ラグナロクが崩壊していく。ゼロの足場が崩れ、ゼロは宇宙空間に投げ出される。そしてラグナロクの破片がぶつかり、ゼロはラグナロクと共に地上へ向けて落下していく。

 

『……さよならだ、シエル』

 

 そこで、映像は切れるのだった。

 

「…これが、俺がこの世界に来る前の全てだ」

 

「ゼロ…」

 

「はやて?」

 

「うっぐ…ひっぐ…」

 

 ゼロに呼びかけたのははやて。しかし、そのはやては目から大粒の涙を流していた。はやてだけではない。そこにいた全員が涙を流していた。そして、シグナムがゼロの胸倉を掴む。

 

「シグナム?」

 

「何故貴様はっ…どうして、こんな…!」

 

「……」

 

 シグナムは思う。この男は何故こんなにも悲しい結末で世界と別れたのか、そんな選択肢を彼は何故選んだのかと。どうしてこんなにも救われない戦いを自身で続けてきたのかと。シグナムだけではない。今回のゼロの話を聞き、そして映像を見た全員が思ったことだろう。

 

「お前は、どうして…こんなに…」

 

「……」

 

 どうしてこんなに救われないのか。シグナムはそこまで言えなかった。別にゼロに対して文句を言いたいわけではない。それでも、不思議と悔しさと悲しみが込み上げ、そして涙が生まれる。一番近くで、家族と認識しているからこそ、ゼロのその生きてきた道のりが余りに不憫だと一同が思う。すると、ゼロは掴まれていたシグナムの腕を離して口を開く。

 

「言ったはずだ…俺は、俺の信じる者のために戦った…ただ、それだけだ」

 

「ゼロ…」

 

「お前達が悲しんでくれることに、俺もどう返せばいいかわからないが…これが俺だ。それをわかってくれれば、それでいい」

 

一同はただただ、落ちつくまで泣くことしかできなかった。

 

 




NEXT「高町なのは」

次回より、それぞれのヒロインたちのお話です
順番は

なのは
↓
フェイト
↓
すずか
↓
アリサ
↓
リインフォース
↓
はやて

…の予定です多分
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