【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~   作:秋風

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1話目
クロスオーバーって、話の主役側をタイトルにすべきなのか……それとも、舞台となる世界を主軸にするべきなのか……どっちだろう


01「新たな出会い」

「…………」

 

 すべての役目を終えたと、すべてに終わりを告げたと、そう思ったゼロ。自身に意識があることを理解し、ゆっくりと眼を開けた。あの世、というものがレプリロイドにあるのかは不明だが、意識があってもあの状況では死んだことは自身の中で確定したといっていい状況であった。そう、ゼロは確信をしていた。しかし、そのゼロの考えは大きく裏切られる。眼を開けると目に飛び込んできたのは個室。机とベッドがあり、そして1冊の分厚い本が置かれている、生活感が溢れているような部屋だ。どう考えても、ここがあの世には見えなかった。

 

「ここは……いや、それよりも……」

 

 場所ということについては、ゼロとしてはどうでもいい。そんなことよりも、もっと大切で重要な……そう、当然の疑問がある。

 

「生きている、だと?」

 

 あの状況下で、あの状態で、生き残ることなど不可能に近い。ましてや、こんな部屋の一室にいることが不可解な事態である。

 ゼロは混乱するもすぐに落ち着きを取り戻し、周囲の確認を始める。あれほど酷かった体の傷はすべて回復していた。自身が活動するためのエネルギーも、問題がない。すると、次にゼロはヘルメットとZセイバー、バスターがあることも確認する。どうやら、ここはどこかの収容施設というわけではないらしい。ゼロは武器を収納し、ヘルメットを被って立ち上がった。大切なことは現状の把握。ここがエリア・ゼロからどれだけ離れた場所なのか、そしてシエルたちは無事なのか。それぞれを知る必要性と、警戒が必要となる。

 

――ガチャ

 

 ゼロが行動に移ろうとした直後、急に部屋にあったドアが開く。誰かがゼロを見に来たというのが妥当だろう。ゼロは素早く腰にマウントしていたバスターを構え、照準を合わせる。だが、そこにいたのは車椅子に乗った、人間の少女であった。

 

「ひゃ……!?」

 

 少女の手には武器などは一切なく、少なくとも驚いているだけで少女に敵対心などは感じられない。ゼロはそれを理解して無言でバスター降ろした。

 

「あ、あの……」

 

 武器を下ろしたゼロに対し、車椅子を動かして恐る恐る近づく少女。ゼロはとりあえず、少女から情報を得ることにした。

 

「お前は?」

 

「あ、えと……八神はやて、です。貴方は?」

 

「……ゼロだ」

 

 ゼロはバスターを腰に収納すると、はやてと名乗る少女を見た。人間ではあるが、キャラバンにいた人間とはまたどこか違うといった印象を受ける。それに、名前も変わった名前だ。明らかにゼロの世界では聞いたことがない。だが、それより前にこの場所がどこなのか聞く必要があると判断したゼロは、はやてに対して質問を投げかける。

 

「ここはどこだ?」

 

「ここは海鳴市ですけど……」

 

「ウミナリシ?」

 

 聞いたことのない名前だった。レジスタンスとして世界の場所をいくらか回ったことのあるゼロだったが、ゼロはその場所の名前を聞いたことがない。ゼロは考える。ここはどこなのか……と。

 

「……!」

 

 不意に顔を上げて見た窓の外を見て、ゼロは驚いた。そこに広がる世界の全貌。

 

「あれ?晴れとる……さっきまで雨やったのに」

 

「これが、世界の景色だと……?」

 

 そこに広がるのは住宅街と整備された道路……そして、外で楽しそうに談笑する人間の女性たち。楽しそうに走る人間の子供たち。何か煙の出るものを口にくわえ端末をいじくる人間の男性。ゼロは今までにない人間の姿を見た。エリア・ゼロの人間とはまた違う。何かに怯える事などない、気ままな生活を送る人間たちの姿を

 

「……」

 

「……あの?」

 

 わからないことがグルグルと頭の中で回り続けるゼロ。そんなゼロに、はやてが優しく声をかけた。ゼロもそのままはやてに不安を与えるわけにもいかず、それに対応することにした。

 

「……なんだ?」

 

「その、できれば事情を話してくれませんか?協力できることがあればしますから」

 

 にっこりと笑うはやて。その笑顔は、いつも自分の任務の帰りを迎えてくれた少女のそれにとてもよく似ていた。ゼロも特に隠すようなこともない。むしろ、ここにいる唯一接点を持った人間だ。ゼロはそれに同意して頷くことにした。

 

「……そうだな、事情を話したほうが早そうだ」

 

これが後に夜天の王と呼ばれる少女『八神はやて』と、紅き英雄『ゼロ』の出会いだった。

 

 

「……というわけだ」

 

 ゼロは話した。自分がどういうものなのか。そして今までの経緯。ここがまったく知らないゼロにとっての未知の土地であることも。ゼロもこの状況からうすうす考えていることがいくつかあった。この世界が果たして自分のいた世界なのか? と。仮にこの世界が自分のいた世界と異なった場所だったとして、それが事実であるなら大きな問題がある。目の前の少女、はやてだ。異世界の人間である彼女は、果たしてゼロの話を信じるのだろうか? それとも信じず、何かの冗談ではと笑うだろうか? それとも、ゼロの事情を聞いて恐れるか? あるいは怯えるか、それとも逃げ出すか? そこにいるゼロというイレギュラーに。そして、はやてがどんな反応を示したかというと……

 

「ほぇ~……世の中には不思議なことがあるものやね~……」

 

 ゼロの頬を突きながら感心していた。少女には恐怖もなければ、ゼロを何か敵対視するような様子もない。初めてシエル以外の人間に出会ったとき、レプリロイドを嫌う人間たちの目が非常に冷たく、卑下するような眼であったことをゼロは覚えている。しかし、現在そんなものはまったくない。

 

「話を聞いていたのか、お前は」

 

「うん、聞いとったよ~」

 

 いいながらゼロの頬をプニプニと触る。少女は楽しそうに笑顔でその行為を続ける。さすがに不快に思ったのか、ゼロがそれを止める。

 

「やめてくれ」

 

「へ~……ロボットなのに柔らか~い♪」

 

 ゼロははやての性格が掴めなかった。ふざけているのか、まじめなのか。しかし、はやてはコホンと咳払いをしてからゼロに向き直った。相変わらずの笑顔は変わっていないが。

 

「ま、話を聞いてわかったことがあります」

 

「……?」

 

「この先、行くあてがないって事やろ?」

 

 ゼロの身体にグサリと何かが刺さった。別に物理的にダメージを受けたわけでもないのだが、その少女の確信をいた言葉を言い返せないというのが事実である。決して表情には出していないが

 

「……そうだな」

 

 ゼロが答えると、はやてはゆっくりとゼロの手を取った。

 

「なら、別にええよ?ここにいても」

 

「何?」

 

 はやての言葉に、ゼロは驚いた。いきなり見ず知らずの人間に、正確にはレプリロイド、彼女からしたら未知の存在である自分をここに置くなどと考えるか? さらに言えば、ゼロはこのような人間に会ったのは初めてだった。シエルにしろ、エリア・ゼロの人間にしろ、どこか悲しみを背負い、表情にそれが出てしまう。だがはやては笑顔を絶やしていない。そんな中、それを考えながらはやてに次の質問をした。

 

「そういえば、俺はどうしてここに?」

 

 なかなか聞くタイミングがなかったが、当然の疑問だった。今こそ家のリビングにいるが、ゼロがいたのはベッド、言うなればはやての個室だったはずだ。

 

「実を言うとその、いきなり落ちてきたんよ……私の部屋に」

 

「何?」

 

 はやての話では、机に向かっていると急に自分の部屋にゼロが落ちてきたらしい。空間が裂けたという異常事態に初めは混乱したものの、倒れて気絶しているゼロを放っておくことが出来ず、必死にベッドに持ち上げて寝かせたのだという。彼女がゼロという未知の存在に驚かず、ゼロの話を素直に聞きいれた理由はそこにあった。ゼロはそれを聞いて少しこの少女は肝が据わっているという印象も受ける。そして、見かけによらず力があるということも

 

「行くところもないなら、ここにいたらええよ。気にせんとき」

 

「なぜだ?」

 

 疑問があった。この少女、はやては何故そこまで自分にいて欲しいと懇願するのだろうか? それがわからない。すると、はやての様子が少しだけ変わる。先ほどの笑顔は消えた。まるで、ゼロから離れたくないような様子を見せている。

 

「一人より二人のほうが寂しないから」

 

 言われてゼロは気がついた。なぜここにはやて一人しかいないのかということだ。自分のような不審者が現れたのなら、このような幼い少女ならまずは自分の両親になど連絡をとることが最優先となるだろう。混乱していても、自分を守ってくれる『親』という存在へ知らせるはずだ。ところが、ここにははやて以外に人がいない。ゼロはそれに気が付いて質問を投げかける。

 

「家族は……両親はいないのか?」

 

「うん……もうずいぶん前に……」

 

「そうか……」

 

 ゼロはその寂しい表情に、またしてもシエルの面影を見た。シエルも今、こんな顔をしているのではないだろうか? ゼロは少し考えた後。はやての言葉に頷いた。

 

「……ここにいてもいいか? しばらく、この場所を借りたい」

 

「ホンマ!?」

 

「ああ、現状頼れるのはお前だけだ。」

 

 ゼロの言葉に、はやての表情はパッと明るくなった。先ほどの友好的な笑顔とは別の、子供特有の喜びに対して見せる笑顔である。こうして、ゼロははやてと共に暮らすこととなった。そんな話を終えると、ゼロの体から光が漏れる。

 

「「!?」」

 

 驚く二人だが、その光の球体は徐々に形が作られ、それはゆっくりと目を開ける。そしてゼロとはやての前にあったテーブルの上に降り立った。

 

「う、ん……あれ? ここはいったい……ゼロ?」

 

「クロワール。お前も無事だったのか」

 

 クロワール。アルエットが開発した万能型サイバーエルフである。サイバーエルフとはゼロの世界に存在するレプリロイドを補助するためのプログラム機構の一つといえる。それらは1度使用するとレプリロイドに対して莫大なエネルギーを与えたり、何かしらの行動に対して負荷を与えたり、周囲に影響を与えることもできる。ただし、これらは一度使用すると消滅、すなわち死亡してしまう。しかし、年を重ねるごとにその技術は進歩し、それらのサイバーエルフの力をコピーし、それらの能力を1つの形として統合されたサイバーエルフがこのクロワールであった。

 

「えっと、私達……生きている、のよね? でも、ここはどこなの?」

 

 不思議そうにキョロキョロと周囲を見渡すクロワール。ゼロと同じく、彼女にとってもそこには知らない世界が広がっているというのは間違ってはいないだろう。ゼロはそんなクロワールへ現状について説明する。はやてはそのクロワールを驚きの様子で見ていた。

 

「ほぇー……また不思議なもんが」

 

「私はクロワール。最新型の万能サイバーエルフなの! よろしくね」

 

「私は八神はやて。よろしゅうに」

 

 にっこりと笑うクロワールははやての膝の上に立ち、手を出す。握手を求めているようだ。はやてもにっこりと笑い、その小さな手を取った。

 

「そういえばゼロ、これを見て」

 

 クロワールの腕が光ると、その光はそのままゆっくりとゼロの体の中へと消えていく。

 

「これは……エネルギーが回復した?」

 

「ええ、私の中に何故か無限大のエネルギー機構が備わっているの。それに、貴方の欠陥した部分を自動的に治すことができる機構まで備わっているわ。誰かが、私にそれを付けたようなんだけど……」

 

 そう言いながらクロワールは体に無限大の形をした機構があることを見せる。ゼロは普段セルヴォやシエルからメンテナンスを受けている。だが、これがあるのならメンテナンスなどは必要がない……これはゼロにとっては非常に大きい。ゼロの体は精密な、『限りなく人間に近いロボット』である。ロボットは精密機械。普段からのメンテナンスは欠かすことはできない。ゼロの場合、ボディはゼロたちの世界から100年前にあったものをシエルらなどが改修しながら持たせたボディであるため、不備が起きないはずがない。定期的なメンテナンスがなければすぐに壊れてしまうだろう。だが、これらの機構が存在するのなら人間でいう『食事』が必要ないし、点検を受けず常に万全の体調を整えておくことができる。

 

「誰がいじったかはわからないが……とりあえず、感謝しておこう。この世界ではありがたいことだ」

 

「うー……よーわからん、さっぱりや」

 

 わからない単語ばかりをクロワールと話し合うゼロ達をいまいち理解できないはやてだが、それはともかく、と、はやては車いすを動かしてメジャーを持ってくる。

 

「ちょっとじっとして」

 

「む?」

 

 そういいながらゼロに屈むように言って背後に回ると、身長や肩幅などを測るはやて。ゼロは何をしているのかという疑問を持つ。

 

「その格好じゃ色々と困るやろ? この世界にはレプリロイドなんておらへんし、人間に近いなら服装も人間のと同じにせなあかんよ」

 

「……」

 

 確かに、今のゼロの格好はこの世界では受け入れられないだろう。機械部分を覆う黒いボディースーツに、それぞれ防御などを行うための手甲やヘルメット。それぞれ脱着ができるので外すことはできる。しかし、それでは黒タイツの変態となってしまうのだ。はやてはひとまず自分の父親の遺品から服を取り出してそれを着せる。ゼロの体格では少しぶかぶかのようだが、着ていないよりはましであろう。

 

「ほな、買い物行こ。クロワールは……せやねぇ、私の膝の上で静かにできる?」

 

「いいよ。この世界にはサイバーエルフもいないんでしょ?」

 

「それはおろか、しゃべれる人形はおらへんよ……」

 

 というわけで、膝の上で人形のように固まり、目を閉じるクロワール。自らを一時的にシャットダウンすることで、何をしても反応しないおもちゃの人形のようになった。

 

「ほな行くで~」

 

 そういいながら自らの車いすを漕ぐはやてだが、その後ろをゼロがつかむ。

 

「ほぇ?」

 

「押してやろう。これでいいのか?」

 

 ゆっくりと車いすを押すゼロに驚いた様子のはやては、何故か若干嬉しそうだ。

 

(初めて、男の人に車いす押してもろうたなぁ……ちょっと新鮮)

 

「うん、ありがと……外でたら右をまっすぐや」

 

「……了解した」

 

 そう言ってはやてと共に家の外へと出たゼロ。そしてはやて。春の風が温かく吹き抜ける。

 

「いいお天気やなぁ……」

 

「……」

 

 初めての外の世界の印象は、ゼロとしては『心地が良い』というものだった。圧迫感のない蒼空と、気持ちの良い風。周囲には人間が歩いている。その雰囲気はいずれも穏やかで、不快に感じるようなものはない。

 

「ほな、行こか」

 

「ああ」

 

そんな互いに新鮮な感触を得ながらゼロとはやては外を歩くのだった。

 

 

……それらを見る、二つの影があるとも知らずに

 




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