【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~ 作:秋風
最近は卒業研究やその他諸々に追われている上、ブランクが酷いのでなかなか投稿できませんでした。申し訳ない
まあ、謝罪はさておき、今回はなのは、フェイト、はやてとかの話は全部無視して、リインフォースの話に飛びました。ぶっちゃけ、ヒロイン全員の話とか現状では厳しすぎるので、ご勘弁を…
では、どうぞ
ゼロの過去について明かされてから、1週間ほど経過した。それからも八神家では変わらぬ平和な生活が続いているが、ゼロの過去を聞いたはやてやヴォルケンリッターの心の隅には、どうにかゼロに幸せを与えてあげられないかという想いがあった。しかし、どうにもできないのが現状でもある。そして、ここは今日も平和な八神家のリビング。
「さすがに一週間も経つと、リインフォースのその格好も見慣れた感じやな」
「うん、すごく似合っているわ。そのエプロン」
「そうでしょうか?」
リビングで勉強中のはやての言葉にクロワールが頷き、リインフォースが首を傾げる。今のリインフォースは台所に立ち、食器洗いをしているところであった。彼女もまた一般常識や、人間のとる行動には若干疎い所がある。それをはやてやヴォルケンリッターがあれやこれやと教えることで、彼女も若干人間らしくなりつつあった。そして…
「はやて、廊下と俺の部屋の電球が切れている。変えはあるか?」
「こっちもこっちで、もうおなじみやなぁ」
「まったくね」
「…?」
部屋に入ってきたのは同じくエプロンをつけたゼロであった。手には掃除用具があり、ゼロもまた掃除の真っ最中である。こんな姿、元の世界にいるシエルたちが見たら驚くに違いない。
「それで…はやて、電球はあるか?」
「電球…電球…あー、せや、買い置き、この前買い損ねたんや。ゼロ、悪いけど後で買いに行ってもろうてもええ?」
「わかった」
と、頷くゼロ。すると、ゼロはそこではやてが何をしているのか気になる。勉強道具をそっちのけではやてが弄る空中に浮かんだディスプレイ。管理局の技術なのだろうが、そのディスプレイを使って何かを操作している。
「はやて、何をしている?」
「リインフォースの調整、もうちょっとで終わりそうやから」
「リインフォース?」
はやての言葉に、ゼロは首を傾げた。リインフォースは今、丁度食器を洗い終えて台所からはやての所に戻ってきたところだ。特に彼女が何かをされているような様子は伺えない。リインフォース本人も、首を傾げている。
「私がどうかしましたか?」
「ああ、リインフォースやなくて、リインフォースⅡのことや」
「Ⅱ(ツヴァイ)?」
はやての言葉に首を傾げるリインフォース。そんな様子の二人を見て、クロワールはクスクスと笑っている。どうやら、彼女はそのはやての言う意味を理解しているらしい。
「ほら、これや」
そう言って彼女がディスプレイのボタンを押した。そこには画像が表示されている。そこにはリインフォースに外見がそっくりな少女が眠っている姿が映し出されていた。
「これは…!」
「融合型デバイス、リインフォースⅡ(ツヴァイ)や」
「なるほど、お前が以前言っていたものか」
と、ゼロもはやての言っていることを思い出した。それは、はやてが管理局員となるのにデバイスがないという話になった時のこと。支給をするだけならばストレージデバイスで十分だが、はやてが魔法を使う場合、魔力の性質などでユニゾンデバイスを使うことが一番能力を発揮できるという結果が出た。そこで持ち上がったのが融合型デバイスの製作であった。融合機にリインフォースを使えばいいのだが、話はそう簡単には行かない。実は記録上『闇の書は消滅した』というデータを管理局にリンディが提出している。そのため、リインフォースは実質消滅したことになっている。コレはゼロ同様、これ以上リインフォースが何かに利用されないためにという処置だ。そこで、新しく作られた融合型デバイスにははやて自らがリインフォースⅡという名前を命名したわけである。
「しかしはやて、何故同じ名前をつけた? 不便だろう」
と、ゼロが疑問を投げかける。何故、今ここにリインフォースがいるのにもかかわらず、新しく生まれるデバイスにリインフォースという同じ名前をつけたのか、疑問が残る。
「ふっふっふ…コレも私が子供であるということを利用した巧妙な手やで」
「つまり…どういうことでしょう?」
リインフォースが首を傾げる。そんなはやての様子は、黒い笑みが浮かんでいた。若干、リインフォースは自分の主人がいつもと違うことに驚いていた。
「シナリオはこうや。私を守るために消えてもうたリインフォースを想い、私はその悲しみを忘れないために、新たな風と言う意味を込めて『リインフォースⅡ』を開発する! そしてこの先、管理局で働く! こうなれば、管理局のお偉い人達もまさかリインフォースが消えてないなんて思わへんやろ」
クックック…と、黒い笑みを浮かべているはやての様子はさながら、時代劇に登場するような悪代官のような笑みである。そんな表情はさておき、これははやての中では、悩んで悩んで、ようやく出した策であった。“リインフォースを消滅したことにする”というリンディの提案に、はやては当初反対だった。自分の家族を死んだような扱いになどしたくはないとはやては言うも、リンディははやてにこの先リインフォースを何かに利用させたくないのならば、受け入れなくてはならないと言った。世の中、綺麗なことだけではないのだと、汚い人間もいるのだと、はやてはリンディから念を押すように何度も言われ、その説得に応じることにした。
「しかしはやて」
「…? なんや?」
「確か、その新しく生まれる融合機の話はリインフォースに秘密にするという話ではなかったのか?」
と、ゼロがはやてに聞く。と言うのも、はやては八神家やゼロにこの話はリインフォースがビックリするのを見たいから秘密というのを自ら打ち出した提案だった。それを思い出したはやてはしまったという表情になった。
「あっ…!」
「ふふふ、別にいいじゃない。今ので十分驚いているみたいだし」
「え、ええ…かなり」
と、悔しそうなはやてに笑っているクロワールと、そんなはやてを見て苦笑しているリインフォース。自然に笑みを零す彼女はそんな主の様子にどこか嬉しそうだった。
「…そろそろ買い物に行く。はやて、いじけてないでメモを書いてくれ」
「うぅ…慰めてくれてもええやないか…まあ、しゃーない」
と、ゼロに文句を垂れながらはやてはスラスラと必要な物を書きとめ、ゼロに渡す。
「今日はちょっと多いでー…一人で持てる?」
と、渡したメモには多くの食材や日用品がたくさんある。もともとゼロを含めて7人と+1という大家族。ちょっとしたものを買いに出かけても膨大な量になる。
「大丈夫だ」
「ゼロ。私も行きます」
「……ああ、頼む」
と、ゼロとリインフォースはエプロンを外し、外へと出かけるのだった。
*
商店街を歩くゼロとリインフォース。流れるような美しい金髪の髪と、銀髪の髪の二人は商店街を歩けばとにかく目立つ。リインフォースはそんなチラチラと見られている視線が気になってしょうがない。耐えきれなくなったのか、リインフォースはゼロに声をかけた。
「ゼ、ゼロ…私達は、何か変なのでしょうか?」
「…単に目立っているだけだ。気にすることはない」
対照的に、ゼロはその視線をモノともせずに歩を進める。というのも、リインフォースが目覚める以前よりこの商店街でゼロはよく買い物に来ている。そのため、この視線にも慣れているし、商店街の人間ともある程度は顔見知りである。商店街を抜けて、スーパーを訪れたゼロは淡々とメモされた品を選び、カゴに入れて行く。もう慣れた手つきである。リインフォースはそんな様子に驚きながら、ただゼロの後ろをついて行く。
「ゼロ」
「なんだ、リインフォース」
「…あ、いえ、やっぱり何でもありません」
「?」
何か言いかけたようだったリインフォースだが、それを打ち消すリインフォース。その表情は、どこか悲しげである。その様子に気づいたゼロだったが、何も言わずゼロはリインフォースから視線を外した。
「…まあいい、行くぞ」
「はい」
この後、メモされた物を買って買い物を済ませ、二人は店を出る。その量は膨大で、大きな袋4つ分のものであった。そのうちの二つをゼロが、そして残りをリインフォースが持つ状態となる。
「リインフォース、重くないか?」
「はい。私は大丈夫です」
帰り道、商店街を抜けた道路。時刻は夕刻となり日が落ち始めたためか、道路は緋色に染まっている。そしてその道を歩くゼロとリインフォース。流石に量があるためか、リインフォースのその手は少し震えている。やはり、少々重いようだ。それを見たゼロは自分の持っていた二つの袋を片手に持ち、リインフォースの片方の袋を手に取った。
「お前はそっちだけ持てばいい、無理はするな」
「あっ…しかし…」
「これくらい、どうということではない」
そういうゼロだが、リインフォースは少しだけ悲しそうな表情になった。
「…ゼロ」
「今度はなんだ」
「……私は、必要とされているのでしょうか?」
「何?」
突然の言葉にゼロは困惑する。リインフォースを見ていないため、表情は見えないが、その悲しげな声は、先ほどスーパーでゼロに言いかけた時と同じ声。何か、思いつめていたような声であった。
「私はユニゾンデバイスです。私の存在意義はどこにあるのでしょうか…」
「……」
「主との融合機能を失い、魔法を使えてもそれは劣化した形でしかない。私と言う存在は、果たして必要なのでしょうか」
リインフォースは静かに、自身に秘めていた想いをゼロに問う。リインフォースは闇の書の呪縛から解放された代償として、はやてとの融合機能を失ってしまった。極端な融合適正の低下を示すそれは、リインフォースにとっては自身の価値を見失うに等しい。また、今新たに祝福の風を継ぐ者が生まれようとしている。それによって、リインフォースは本当に自分が生きている価値があるのかと悩む。
「私は…私は、本当にあの時生きながらえているべきだったのでしょうか」
「……」
ゼロは何も答えない。しかし、そんなことをお構いなしにリインフォースは言葉を続けた。
「私が生きている意味は何ですか? 私がここに在る理由はなんですか? 生きるとはなんですか? 今の私は、こんな風に弱音を吐くことしかできません。満足に買ったものの袋を持つことさえできません。教えてくださいゼロ…貴方は何故私を救ったのですか?」
少しの沈黙が、周囲を支配した。喋らないゼロとリインフォース。しかし、やがてゼロがゆっくりと口を開いた。
「リインフォース……お前は何か勘違いをしているようだ」
「ゼロ?」
ゼロの言葉に動揺するリインフォース。言いながらゼロはリインフォースに振り返った。少々、怒っているようにも感じられる鋭い視線。それがリインフォースに突き刺さった。
「あの時、あの場にいる全員がお前の消滅を望まなかった…それは何故かわかるか?」
「それは…」
「それは、お前が俺達の家族だからだ」
リインフォースが答えに詰まると、ゼロはそのまま真っ直ぐにリインフォースへ向けて答えを示す。ゼロはそのまま言葉を続けた。
「お前は確かに、魔導士を支えるデバイスとしては今では欠陥があるだろう。だが、はやてやシグナム達にとっては『そんなことはどうでもいい』」
「何故、ですか?」
「そこに在るだけで、お前ははやての心の支えになっているからだ」
幼少時代、早くに両親を亡くして天涯孤独だったはやて。だからこそ、新しくできた絆を誰よりも大切にしている。彼女自身、またどこかで絆を失うことを恐れている。だからこそ、はやてはリインフォースがただそこにいるだけで嬉しそうに笑顔を見せている。ゼロはそれを一番理解していた。
「だから、お前にも意味がある。ここにいる理由も、今を生きる意味も…それはきっと、俺がこの世界に導かれたことと同じように。だから、アイツの前でそんなことは言うな」
「……そう、ですね。すみませんゼロ」
ゼロの言葉に、リインフォースは今まで自分の中に溜まっていた何かがスッキリと抜け落ちていくことを感じていた。リインフォースの謝罪に対して、ゼロが短く笑った。
「わかったならそれでいい…帰るぞ」
「はい」
そうゼロの言葉に答えて、リインフォースはゼロの3歩後ろからついて歩く。その彼の後ろ姿はとても魅力的で、頼もしくも思える。そしてリインフォースは理解する。何故、自分の主であるはやてがゼロを大切に想うのか。シグナム達が何故ゼロを信頼しているのか。そして自分の中にある、温かい感情がなんなのか…
「リインフォース? どうした、早く帰るぞ」
「はい。待ってくださいゼロ…今行きます」
流れるような金髪の髪。常に自分の先を見据える黒く真っ直ぐな瞳…そして何よりも、家族を想っている強い心。リインフォースはそんなゼロが、自分の主と同じく大好きなのだ。リインフォースはそんな想いを秘めて、ゼロと共に帰路へとつくのだった。
いかがでしたか?
今回は少し短くなってしまいました…この後ダラダラやっても、続編に続かないので、後数話で切るつもりです
それまでどうか、お付き合いくださいませ…では