【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~ 作:秋風
話が長すぎたので一度区切りました。後編は頭の中では出来上がってますが、まだ文面に起こしてません
次はいつになることやら…
今回はフェイトのお話です
相変わらず続く平和な日々。ゼロは今日、次元航空艇『アースラ』へと訪れていた。
「久しぶりね、元気だった? ゼロ、クロワールちゃん」
「…まあな」
「お久しぶり、リンディさん」
ゼロとクロワールの前にいるのはリンディ・ハラオウンその人である。その横には、バリアジャケットに身を包み、愛機『バルディッシュ』を持ったフェイト・テスタロッサの姿があった。
「急なお願いだったのに、助かったわ」
「フェイトから直接頼まれた依頼だったからな…構わない」
ゼロの言葉に、満足そうな笑みを浮かべるリンディ。今回、ゼロはフェイトの任務に協力者として同行することになっていた。彼女は執務官候補生として嘱託魔導師を行う身であるが、いかんせん場数を踏んでいない。そんな彼女に現場の空気を感じさせるため、リンディが用意した任務。しかし、いくらアースラのバックアップがあるとしても、フェイト1人では流石に難しい。そこで、本来ならクロノや彼女の使い魔であるアルフを同行させるのだが、クロノはグレアムについての処遇を検討している最中。アルフはユーノのいる無限書庫の手伝い。さらに、なのはは協力者だが正式な局員でないため無暗に呼び出すことはできない。はやてたちはまだ事後処理に追われている。そんなわけで、一番暇そう、もとい、手が空いているゼロにフェイトとの同行を依頼されたわけである。
「今日の仕事は少し難しいけど、私達が全力でフォローするわ。だから緊張しないで、フェイトさん」
「は、はい…リンディ提督」
「リンディ・ハラオウン、任務の内容を教えてくれ」
「ええ、今回行くのはここ、惑星[アジラ]と呼ばれる星。世界番号としては666番に位置しているわ」
そう説明しながらディスプレイを映し出すリンディ。そこに広がるのは熱帯雨林の光景であった。
「元々、無人の星だったんだけど違法研究者たちの根城だということが先日わかったの。貴方達二人にはそこに人がいないかの調査、出来ることなら検挙が望ましいわね」
「私達3人で、ですか…?」
「見張りはいるでしょうけど、殆どは研究者たちよ。まだ私達が制圧しに行くことも気づいていない。本局から『増援は出せない』なんて一点張りだったからね…」
困ったように小さくため息をつくリンディ。ここでもやはり、人手不足が問題になっている。しかし、リンディはチラリとゼロを見た。
「でも、今回は百人力の彼がいるもの。非正規とはいえその実力はフェイトさんが一番分かっているでしょう?」
「はい…その、ゼロ。よろしくね」
少し不安そうに、フェイトがチラリとゼロを見る。ゼロもその視線に気がつき、静かに頷いて見せた。
「ああ、わかっている。この手の奇襲にも慣れているつもりだ」
「じゃあ、出撃は10分後。いいかしら?」
「はい!」
「わかった」
「了解っ」
リンディの指示のもと、フェイトは準備のために転送ポートへと駆けていった。それを見送ってから、ゼロはリンディに視線を向けず、静かに呟いた。
「先ほどの増援が出せないという点、本当に人手不足が原因か?」
「……」
「データを見た限り、外観だけでもかなり大きな施設だ。アースラのスタッフだけでは無理がある。お前はそこまで無謀な策を取るほど愚かではないはずだ」
ゼロの言葉に、沈黙するリンディ。そう、ゼロが渡されたデータの規模はもともと逮捕した違法研究者の持っていたデータであるため詳細がほぼ正しく載っている。そのデータにある施設の規模はそれなりに大きく、アースラのスタッフの少なさを考えても制圧するのはかなり難しい。いくら人手不足であっても、犯罪者を見逃せないリンディとしては、もっと強く局員の増員を望んだはずである。仮にも、養子に迎えようとしている少女を、今回検挙する違法施設に1人で送りだすほどリンディは薄情ではないとゼロは理解している。
「フェイトが、原因か」
「…ええ、人造魔導師と仕事は出来ないと要請した魔導師たちに突っぱねられたわ」
リンディは表情を曇らせた。リンディが頭を抱えるこのような差別は、別に珍しいことではなかった。別世界からの出身者で管理局員になっている者には、そもそも[人間]というカテゴリーに含まれない者達もいる。おとぎ話などに出てくるようなエルフなども有名であると言えるだろう。そんな種別の彼らの扱いも本局では奇異の目で見られることは珍しくない。リンディとしては別段、自分がフェイトのことで他人に責められるのはなんの苦でもない。しかし、フェイト本人はどうだろう。正しい生まれ方をしなかった人間、ただそれだけでフェイトは他の局員から差別を受ける。なのはやはやてたちもまた、管理局員として道を進むからフェイトはその輪の中にいればまだ楽だろう。しかし、彼女達全員が同じ道を歩くわけではない。執務官という道を1人で歩き続けることになる。いつかは、管理局内でもリンディの手の届く範囲外に行くことにもなるだろう。その時、フェイトは大丈夫なのか…? リンディはただただ、それが心配であった。
「リンディ・ハラオウン、今回は俺がいる。フェイトのことは任せろ」
「ええ、お願いするわ」
「任せろ」と、このゼロの一言はリンディを安心させるには十分な言葉だった。自分の娘になってくれるかもしれない少女を守る、1人の戦士。ゼロはスタスタとミーティングルームを出ていく。
「フェイトさんをお願いするわ…ゼロ」
もうゼロには聞こえていないであろう小さな声で、リンディはゼロにフェイトのことをもう一度頼むのだった。
*
アースラ 転送ポート
「あ、ゼロ、クロワール…」
「待たせたな」
「ううん、リンディさんと何の話をしていたの?」
二人がなかなか出て来なかったことが疑問だったらしく、首を傾げているフェイト。ゼロはどうしようか考える。
「リンディさんが、ゼロにフェイトを無茶させないで、だって」
「そっか」
クロワールの言葉に、フェイトは頷く。どうやら嘘をついた、とは思っていないらしい。別段、嘘と言うわけでもない。転送ポートに入ると、エイミィの声が響きわたった。
『じゃあ3人とも、準備はいい?』
「うん、エイミィ…サポートをお願い」
「こちらも問題ない、頼む」
「私もオッケー」
『りょーかいっ! お任せあれ。じゃあ、転送!』
周囲が光で包まれる。そして、二人は666番世界惑星『アジラ』へと転送された。
666番惑星 アジラ
「あ、暑い…」
アジラに到着した二人。フェイトの第一声がそれであった。水着のようなバリアジャケットを着ているフェイト。いくらバリアジャケットで保護されているからと言って、それを完全に防護できるというわけでもない。
『検知完了、外部気温40度、湿度70%です』
と、フェイトの愛機バルディッシュが答える。不快指数がすでに90を超えているこの場所。常人なら耐えられない暑さだろう。フェイトはバリアジャケットが守ってくれているおかげでまだ暑いと言っている程度で済んでいるが、バリアジャケットがなければすぐに倒れてしまうような環境である。
「…フェイト、こっちだ。行くぞ」
フェイトとは対照的に、暑さをものともしていないゼロが木の上に上がる。フェイトもそれに続いてフワリと空中に浮き上がり、その熱帯雨林を進んでいく。
「ゼロ、暑くないの?」
「俺はレプリロイドだ。体内変化の調節は自動で行われている。問題はない」
そう言いながらゼロもフェイトについて行くように木から木へと、まるで猿のように巧みに渡っていく。ゼロはもともと、ゲリラ活動を行う中で様々な場所へと戦いに赴いていた。荒廃した都市、灼熱の砂漠、機械に管理された熱帯雨林、火山活動が活発な山岳地帯、何百メートルもの深い深海の底、そして宇宙。ゼロは様々なそのような場所を多く経験しているため、今回のような熱帯雨林はわけがない。
「そうなんだ…ゼロってやっぱりすごいね」
「……」
感心するフェイトを余所に、ゼロがその着地した木で止まり、手を出してフェイトのそれ以上の進行を止めるように促した。
「ゼロ?」
「見えた、研究所だ」
そう言われてフェイトが止まり、ゼロの所に近づいてその先を見た。確かに、人工的な建物が立っている。明らかにこの熱帯雨林の中にあるのには相応しくない建物だと言えるだろう。
「クロワール、先に先行して内部の様子を見て来てくれ」
「ええ、わかったわ」
「え、クロワール1人で…?」
ゼロからすれば、この手の調査や潜入に関してはこういった手を使うことが望ましいのだが、それを知らないフェイトは不安そうにクロワールを見た。
「大丈夫よ、フェイト。私はこういう時のためにいるんだから」
「でも…」
「何かあったら連絡するわ。もう少し接近した場所で待機していて」
そう言ってクロワールはフワリと浮きあがるとその研究所へと向かって行った。フェイトは不安そうにゼロを見る。
「クロワール、大丈夫かな」
「クロワールはサイバーエルフだ。多くの機能が備わっている。この程度ならわけが無い」
「そう、なんだ…」
まだ緊張しているのか、フェイトは不安そうにその先へと飛んでいくクロワールを見つめるのだった。
*
研究所付近
研究所付近の草むらに待機するゼロとフェイト。そこで、ゼロにクロワールから通信が入った。
『ゼロ? 聞こえる?』
「ああ、聞こえている…状況は?」
『私が見る限り、数人の研究員と警備兵…質量兵器持ち。内部はそこまで複雑じゃないわ。あとでデータを送るわね。それと、警備兵は武器がアサルトライフル標準装備…に、加えてデバイス武装がいくらか。かなり重要施設みたい』
クロワールが教えてくれる内容にフェイトは驚きを隠せない。ゼロと隠れた時間はほんの数分。その数分の間に、クロワールは内部や敵の勢力まで把握してしまったらしい。
『それと…』
「どうした?」
『…フェイトは今回来ない方がいいわね。絶対に』
クロワールの言葉に、フェイトは首を傾げた。なぜ自分が来てはいけないのか? 危険だからか? しかし、自分は嘱託魔導師だ。何か危険が伴おうとも、自分が行かなければ。
「駄目だ、フェイトは連れて行く」
『え、どうして? だって中は…』
「これはフェイトの任務だ。俺達はそのサポートにすぎない」
『…そうね。今から3分後、一次的にこの施設のシステムをダウンさせるわ。その詳細の敵の数を把握して突入をお願い』
「「了解」」
クロワールの言葉にゼロとフェイトが返答する。クロワールから送られてきたデータを確認。フェイトはそれを見てから深呼吸し、その先にある研究室を見つめた。
「…よし!」
彼女なりに、腹をくくったのだろう。今まで緊張しっぱなしだったが、ここで緊張していても意味が無い。ならば、もう覚悟を決めて後は突っ込むのみ。フェイトの脳裏には、自分の親友のよく言っていた言葉『全力全開』という言葉が響き渡った。
「ゼロ、行こう!」
「ああ」
こうして、フェイトとゼロは違法研究所検挙のために研究所へと突入した。
*
違法研究施設
違法研究所内に突入したゼロとフェイト。研究所内にはアラートが鳴り響いている。そんな音を耳触りに感じながらも、フェイトはゼロと共にその研究所を駆け抜けていく。逃げようとする研究員、抵抗しようとする警備兵などを気絶、あるいはバインドをして無効化していく。そんなフェイトの横で、ゼロが淡々と行動する。自分の前を走り、銃を構える敵を気絶させたり、こちらに向けて発射される魔力弾や実弾を弾き飛ばしたりしている。
(す、すごい…)
改めて異世界の戦士ゼロの凄さを実感するフェイト。自分と対峙した時はあんなにも恐怖があった。しかし、闇の書の防衛プログラムと戦う時や、今ある現状では恐怖よりも安心感の方が大きかった。
『ゼロ、聞こえる?』
「ああ、問題ない」
『こっちはモニタールームを掌握したわ。そこで合流しましょう』
「了解」
フェイトはゼロに対して頼もしく感じるとともに、だんだん不安になってきた。今日、もしもゼロがいなかったとしたらここまでスムーズにこと運ばなかったのではないか? この先、自分ひとりで嘱託魔導師としてやっていけるのか、少しだけ不安になってきた。
「フェイト?」
「あ、ゼロ…なに?」
「いや、少し呆けているように思ったからな…大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
ゼロの言葉に頷き、笑みを見せるフェイト。クロワールとの合流地点についた二人。クロワールが手を振っているのが見えた。
「お疲れ様、二人とも」
「ここまでのサポート、助かった」
「ありがと、クロワール」
二人が礼を述べると、クロワールは『それが仕事だからね』と笑みを見せる。
「内部は大方掌握できたな。後は、実験室…この先だな?」
「ええ、まだ逃走している研究員が1人いるわ。立てこもっているみたい」
モニタールームにある鉄の扉。その先を見つめる。その男を逮捕すればこの任務は終了。フェイトはゼロに顔を向けた。
「行こう、ゼロ」
「分かった、行こう」
フェイトは言うと一歩前に出て、鉄の扉を開いた。この先の男を逮捕すれば任務終了。任務成功の報告をリンディにすることが出来る。そう思いながらフェイトは一歩、その扉の先へと足を踏み入れる。
「…っ!」
しかし、その足を踏み入れた先の光景。自分の視界に映るそれらを見て、フェイトは絶句した。
「これ、は…」
そこにあったのは無数のカプセル。そして、その培養液の中に浮いているのは人間の胎児の姿だった。他にも、人間の臓器らしきものがいくつか浮いている。
「…だから、フェイトは呼ばないほうがいいって言ったのに」
「コレが現実だ。フェイト、目を逸らすな」
クロワールはやっぱりか、という反応をする。当然だ。こんなショッキングなものを10歳の子供が見ていいわけがない。しかし、フェイトの目の前に突き刺さる現実はもう変えようがない。フェイトはゼロの声を聞いて、目を瞑るのをやめて前を見る。その先にいるのは1人の白衣の男だった。
「おやおや…もうここまで来てしまったのですか」
「…時空管理局です。違法研究容疑で貴方を逮捕します」
「くふふ…なるほど…君ですか、フェイト・テスタロッサ」
フェイトがバルディッシュを構えようとすると、研究員の男は笑いながらフェイトに問い掛けた。フェイトは疑問に思う。何故彼は自分の名前を知っているのか…と
「何故私が君の名前を知っているか疑問の様ですね…まあ、そうでしょう。私は君を資料でしか見たことが無い」
「資料…?」
「そう、プロジェクトFによって作られた、最初の成功例である君をね!」
「「!」」
何故、この男は自分のことを知っているのかと疑問に思う。自分は確かにプロジェクトFによって生み出された人造魔導師だ。だが、それを知っているのは管理局でもごく一部の人間だけ。なのに、なぜこの男は自分を知っているのか。男はフェイトの驚いた様子に笑いながら答える。
「何故知っているのか、という表情だね? 当然さ! 私はこの研究施設で『プロジェクトF』の研究を行っていたからだ。君を参考にね!」
男は狂ったように笑い続ける。フェイトは理解した。理解してしまった。この男は自分と似たような存在を作ろうとしているのだ。そして研究をしていた、ということは…つまり、自分のこの周囲にある培養液にあるのは…
「うぷっ…うげぇぇぇ…」
フェイトの喉にすっぱい味が口の中いっぱいに広がり、思わず吐き出してしまった。ビチャビチャと垂れる吐瀉物。その不快な匂いがフェイトの鼻を刺す。ゼロは戦闘がこれ以上困難と判断してフェイトの前に立つ。
「悪いが、これ以上お前の話に付き合う暇はない…少し眠ってもらうぞ」
「できるかな? 君たちにそれが!」
ガン、と男は近くにあったスイッチをガラスごと叩く。すると同時に、警報が鳴り響いた。
『警告、警告! 時限爆破装置が作動しました。職員は直ちに退避してください』
「…!」
「これで僕は失礼するよ…! この研究所だけだと思ったら大間違いだ!」
そう吐き捨てた男は、一目散に扉の奥へと走っていく。
「待て…!」
ゼロが追い掛けようとするが、ガラガラと施設の瓦礫が崩れ始めた。ゼロはその場にうずくまってしまったフェイトの手を取り走り出した。
「逃げるぞフェイト、走れ!」
「……」
しかし、フェイトに反応はなく、目は虚ろで焦点が合っていない。ゼロはフェイトを抱き上げると、出口へ向けて駆け出した。
「クロワール、転送を…!」
「む、無理! 強い電波干渉のせいで…!」
恐らく、あの男がこの施設を爆破する時に何か細工を仕掛けていたのだろう。
「走って脱出するしかないのか…!」
ゼロは言いながらその施設を駆け抜けていくのだった。
*
アースラ管制室
「フェイトさん!? ゼロ!? クロワールちゃん!?」
今までのことをモニターしていたアースラスタッフ一同。その光景に唖然としていた。突如として崩れる研究施設。再起不能だったフェイトを抱えたゼロが走る姿に、リンディが叫んだ。しかし、強い電波干渉のせいでその声が聞こえることはなく、ついには映像すら途切れてしまった。先ほどまでは捕縛した研究員、警備兵を転送するためにもモニターしていたのだが、今ではすっかり音沙汰が無い。
「か、艦長…! どうすれば…」
「至急、回線の復帰を急いで! 施設へは私が向かいます! 転送ポートの準備! あと、捜査隊の派遣をレティ提督に要請! 急ぐのよ!」
「は、はい!」
リンディの指示に、忙しくエイミィが動く。他の職員達も慌てて動き出した。リンディは駆け出し、転送ポートへと急ぐ。
「無事でいて、フェイトさん…」
もしかしたら自分の娘となってくれるであろう少女の安否を気にしながらも、リンディは転送ポートへと急ぐのだった。
話の内容的に、後にフェイトがこの研究員を追って、数年後にエリオと出会う…なんて妄想をしてたりしてなかったり…
ではまた
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