【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~ 作:秋風
今回はちょっと、急性膵炎で入院してまして…結構頑張って書きあげてました
ようやく退院したので、うpです
フェイトの話、後編でございます
ちなみに、ゼロをこの前pixivで書きました。まあ、相変わらずですがよかったら見てやってください
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=37320188
では、本編をお楽しみください
ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております…
とある場所に1人の女の子がいました。女の子には優しい母と、その母の従者、そして女の子の双子の姉がいました。彼女達だけが暮らす世界、彼女達だけがいる場所。女の子は幸せでした。いつも笑ってくれる母がいる。いつも一緒にいてくれる姉がいる。それを支えてくれる従者がいる。その3人と共にいるだけで女の子は幸せな気持ちになれたからです。女の子は願います。どうか永劫、この時がいつまでも続きますようにと。そして思います。自分はなんて幸せなのだろうかと、なんて自分は恵まれているのかと…
「…ここは」
少女、フェイト・テスタロッサは目を覚ました。そこは夢のような、居て心地よい場所ではなく、瓦礫が散乱した、今にも崩れそうな建物の中であった。
「目が覚めたか、フェイト」
「ゼロ…」
金髪の髪を揺らし、紅い装甲を身に纏う異世界の戦士ゼロがそこにいた。
「私…」
「研究所を脱出する際、退路が絶たれた。お前が目覚めるまでここで待機していた」
ゼロに言われて思い出すその今までのこと。自分の生まれた技術と同じように生み出された者達が浮かぶ場所。いわば自分の兄弟と言っても過言ではない者達がいた場所。その研究員の言葉…フェイトはまた吐き気を感じるが、先ほど吐いてしまったためもう何も出てはこなかった。
「まだ少し休んでいろ。今クロワールが脱出ルートを探している」
「うん…でも大丈夫、私は「無理なことをしても、誰も喜ばない」…ゼロ」
「今、無理をしているのは分かる。お前の目的は任務の達成だが、お前が倒れてしまっては何の意味もない。覚えておけ」
「……ごめんね、ゼロ」
そう言って、ゼロの言葉に甘えてフェイトはその瓦礫に腰を降ろした。そして互いに続く沈黙。静かな研究所後で、フェイトとゼロは二人きりである。流石のフェイトもこの沈黙には耐えきれなかった。そして今は二人きり…だからフェイトは言うことにした。自分のことを
「ねえ、ゼロ…」
「なんだ」
「驚いた、よね…」
「……何がだ?」
「……私が、普通の人間じゃないってわかって」
自分のことを知られてしまうのに嫌悪していたフェイト。過去に自分のことを知った時のショックは大きかった。管理局内部でも、そのフェイトという存在に差別的な目で彼女を見る者もいた。逆になのはのようにそれでも接してくれる人間がいた。だからこそ怖い。ゼロが前者のような態度になることが。信頼していた人間に裏切られることが…それが、かつての自分の母と同じなことが。そんな考えがグルグルと頭の中で回っていた。だからこそポツリ、ポツリと自分のことをゼロに話し始める。プロジェクトFと呼ばれる技術から生まれた自分のこと。母のこと。そして母の使い魔との魔法の練習。PT事件のこと…そして、今の自分のこと。ゼロは一切口を挟まず、そのフェイトの会話を聞いた。この全てを聞いて、ゼロはどんなふうに反応するだろうか。驚くか、恐怖するか…後者はないにしても、驚きはするだろう。そう思っていたフェイトだったが、ゼロから帰ってきたのは意外な言葉だった。
「別に、対して驚くことではない」
「えっ…」
ゼロらしい反応、といえばそこまでかもしれない。普段から感情をあまり表に出さないゼロ。だからこそ、彼なりの配慮なのかとも思ったフェイトだったが、ゼロは言葉を続ける。
「お前たちに俺の話をした時のことを覚えているか?」
「うん」
「その中での、レジスタンスのリーダーを覚えているな?」
「シエルさん、だよね」
最後の最後、通信でゼロに対して必死で叫び続けた少女のこと。フェイトはしっかりと覚えていた。彼女にとっての希望だったゼロ。その彼のために最後まで叫び続けていた、クロワールから通して見えた彼女の泣き顔。フェイトはそれを忘れることはできなかった。
「アイツも、お前と同じように生まれた存在だ」
「え…私と、同じ?」
「そうだ。大昔の天才科学者のDNAから生み出された人間、ソレがシエルだ」
言いながらゼロはシエルが語ったことを思い出す。オメガを倒し、自分と決別したあの頃に、シエルがゼロに明かした話。
(私ね、実は普通の人間じゃないの…)
(…?)
(私はとあるプロジェクトから生まれた、とある科学者のクローン、その唯一の成功例。その知識故に子供の頃はパズルのように兵器の設計図を作っていた)
おかしいわよね、と苦笑しながらポッドに映る自分を見るシエル。その表情はどこか寂しげだった。
(コピーエックスを作って、そのコピーエックスがやってきたことを見てようやく自分の過ちに気がついたの。自分は平和を望んでなんかいない。自分の技術の成功が見たかっただけだった)
(だが、お前は不当廃棄されるレプリロイド達を守るためにここまで戦ってきたはずだ。前にも言ったが、お前が責任を感じる必要はない)
(確かにそうよ、でも違う。私は責任を背負ってみんなを助けたんじゃない。私がしたかったのは、きっとレプリロイドを守ろうとすることじゃない。私が本当にしたかったのは………ただの、罪滅ぼし)
シエルの頬に、一筋の涙が零れ落ちる。後悔の涙。それは涙を流さないレプリロイドであるゼロでもわかる涙だった。
(私が生まれなければ、レプリロイド達は平和な道を歩めたのかもしれない。私がコピーエックスさえ作らなければ、こんな歪んだ秩序はネオアルカディアにはなかったかもしれない。私さえ、私さえいなければ…)
(シエル…)
(ごめんなさい、変な話…しちゃったわね。忘れて、ゼロ)
(シエル、確かにお前のやってきた過ちは罪滅ぼしで消えることではない。過ぎ去ったことを今更掘り返しても何も起きない)
(ゼロ…)
(だが少なくとも今、ここにいる奴らはお前に感謝をしている。それは、俺もだ)
密かな想いを、ゼロはシエルに伝えた。かつて忘却の研究所で眠っていた自分。少しずつ記憶を取り戻しつつあったゼロは思った。あの時、眠ったままだったらどうなっていたのかと。一生起きることはなかったかもしれない。風化した歴史の遺産として正しく目覚めることが無かったかもしれない。だからこそ、あの時のシエルの行動に、昔の自分はただ流されるままに動いていたが、それでも今は感謝していた。
(お前にも、生きている意味はあるはずだ。お前がいるからこそ失われた物がある。だが逆に、お前がいたからこそ救われた物もいる)
エックスに言われた言葉“大切なのはその心”。自分自身の考えで、その先の答えを見つける。ゼロ自身がそう思うように、シエルにもそう思う権利はある。
(お前は科学者のクローンではない。お前はお前だ、シエル)
(……そうね、ありがとうゼロ)
シエルはまた涙を零し、その身をゼロの胸へと預ける。その時のシエルの表情は、儚く、寂しげで、しかしどこか救われたという表情だった。シエルとフェイト…この二人はどこか似ている。そうゼロは感じていた。この目の前にいる少女もまた、酷く苦しんでいる。
「…お前とシエルは似ている」
「それは、同じクローンだから?」
「違う。お前も、シエルも、苦しいことをだれにも打ち明けずに抱え込む所がある。もっと周りを頼ってみろ。お前が思っているほど、お前の住む世界はお前に厳しくはない」
そんな話をしていると、光がこちらに来るのが分かる。どうやら、偵察からクロワールが戻ってきたようだ。
「ゼロ、抜けだせそうなルートを見つけたわ。フェイトも目が覚めたのね」
「クロワール」
「よかった、心配したのよ、フェイト」
「ありがとうクロワール」
そんな会話を交わし、フェイトが歩き始めた。ゼロがまだ休むように促そうとするが、フェイトはその前に首を振る。
「もう大丈夫だよ、ゼロ。私も、私だから…私なりに、頑張ってみたい」
「……そうか」
「行こう、すぐに脱出しないと」
こうして、二人は崩れかけた研究所を駆け抜けるのだった。
*
一方 研究所の外
「フェイトさん! ゼロ! いたら返事をして!」
研究所の外では、リンディが1人で必死にフェイトたちに呼びかけていた。現在、局員に救援要請を頼んではいるが本局とこの世界の距離から救援が遅れることは明白だった。アースラとの通信状況は回復し始めたが、未だにフェイト、そしてゼロとの連絡は取れない。
「どうか無事でいて…」
二人の無事を祈りながら捜索をするリンディ。すると、遠くの方で爆発音が聞こえた。巨大な爆発音。無数にある爆発音だ。先ほどまで静かだった研究所付近。その研究所から少し離れた場所での戦闘。嫌な予感がする。リンディは直感的にそれを感じ取っていた。
「こちらリンディ…爆発から戦闘が行われていると判断します。現場へ急行するわ」
そう言ってリンディはその背に魔力で展開した翼を広げ、その爆発地点へと飛ぶのだった。
*
研究所の暗い道のりを辿るフェイト、そしてゼロとクロワール。歩きながらフェイトはゼロにこんなことを投げかけた。
「ねえ、ゼロ」
「どうした、フェイト」
「ゼロはどうして、そんなに強いの?」
なぜ、ゼロは強いのか? そんな素朴な疑問をフェイトはぶつけた。そんな彼女の表情は、ゼロを少しだけ羨ましく見るような目でもあった。
「……俺はレプリロイドだ。人間とは生まれ持って力が「そうじゃなくて」…?」
「ゼロも…ゼロも、自分が自分じゃないって知っているのに、どうしてそこまで強くいられるの?」
「……」
自分が自分でないこと。ソレはつまり、ゼロがオメガではないことの話だろう。ゼロが自身の過去を話、オメガとのことを話した時にフェイトは一番早く、そして強く反応を示していた。今思えば、フェイトは自分自身のこととゼロの事を重ね合わせていたのかもしれない。
「俺は……俺は、俺でしかない」
「え?」
「確かに、俺の身体はゼロではない。だが、俺が俺であろうとする限り、俺はゼロだ。身体など関係ない。大切なのは、心…そう、俺の友は言った」
――覚えておいて欲しい、大切なのは心なのだと
ゼロに向けて、エックスが言った言葉だった。コピーエックスを倒した後にエックスが言い放った言葉。ゼロが目覚めたときからエックスは知っていたのだろう。その体が、映し身の体であるということを。しかしそれでも、ゼロが自分を見失わないようにエックスはゼロを支え続けていた。
「“君の身体は確かにコピーだけど…心はまぎれもなく本物だよ。”俺が、オメガを破壊するきっかけになった言葉だ。俺はどんなになろうと、俺でしかない。俺はゼロであり、それ以上でもそれ以下でもない。だからフェイト、お前もそうだ。お前はフェイト・テスタロッサであり、アリシア・テスタロッサにはなれない。お前はお前だからだ…」
「ゼロ…」
「フェイト・テスタロッサとして生きようと思えるなら、お前はいつまでもフェイト・テスタロッサでいることができる。それを理解した時、お前は強くなる」
「……ゼロ………ありがとう」
フェイトがポツリ、と小さな声でゼロにお礼を言った。ゼロに聞こえたかどうかは怪しい声だったが、それ以上声が出なかった。簡単なことだった、とフェイトは思う。自分はフェイト・テスタロッサであり、アリシア・テスタロッサではない。PT事件の時にも、自分が母に向けて言った言葉だった。プロジェクトFという概念に押しつぶされてそんなことはすっかり忘れていた。自分は自分、それ以上の理由はいらない。
「出口だ」
ゼロの視線の先には、光の差し込む壁があった。ゼロはフェイトに下がっていろ、と促すと、バスターを構えてチャージ、発射して壁を撃ち抜いた。それによって大きな穴があき、ゼロが叫んだ。
「行くぞ、飛べ!」
「うん!」
ゼロの合図と共に、フェイトが飛翔する。ゼロも壁を蹴り、その穴のあいた天上へと抜ける。それと共に、バスターの衝撃でガラガラと瓦礫が崩れた。二人はそれを避けて離れる。間一髪と言うところだが、無事に二人は元の森へと脱出できた。
「やっと、出ることができたね」
「フェイト。アースラに連絡を取れ。長時間通信が回復していなかったからな。アースラのスタッフも心配しているはずだ」
「うん」
ゼロの言葉に頷き、フェイトが通信を取ろうとする。しかし、その時だった。地面に衝撃が走る。自身、にしてはあまりにも突然過ぎるうえ、かなり大きい。そのゼロとフェイトがいる地面が崩れ始めてゼロとフェイトがその場を離れる。その地面から出てきたのは巨大なロボット兵器であった。
「――――!」
「これって…」
「シンニュウシャヲ…ハイジョ…警戒レベルMAX!戦闘開始!戦闘開始!」
「この研究所の警備ロボットか!」
かるく15メートルはあろうという人型のソレはゼロとフェイト達めがけてその両手を振り下ろした。地面に衝撃が走り、周囲の木々がなぎ倒される。
「フェイト、空中へ飛べ!」
「でもそれじゃあゼロが!」
「俺はいい、飛べ!」
フェイトはゼロに言われて空中へ飛ぶ。ゼロはZセイバーを抜き放ち、そのロボットの手へと一閃をするが、固い。傷こそ負わせたが、今まで幾度となく敵を切り裂いていたはずのZセイバーの斬撃が通っていない。
「チィッ…!」
「ゼロ、来るわよ!」
クロワールの言葉に反応して再び避ける。今度はバスター武器を変えて発射するが、それもやはり通らない。するとお返しと言わんばかりに数個の爆弾が数個のミサイルらしきものが発射される。ゼロがソレを避けると、ミサイルは爆発を起こす。
「ナパーム弾…!」
「フェイト!」
「分かってる! サンダー…レイジ!」
フェイトの魔法が警備ロボットにヒットする。しかしその時だ、フェイトの脳裏に何かが走った。
――イタイ、クルシイ、タスケテ
「えっ…?」
誰かの、子供の声が走る。フェイトは一瞬呆けてしまうがすぐに我に返って再びバルディッシュを構えながらゼロの近くに戻る。
「ゼロ、私が大型の呪文を撃つから、それまで堪えて」
「了解した。敵は機械だ…電撃で動きを止めるなら後は容易い」
「う、うん…」
ゼロの言葉に頷き、再び空中へフェイトが舞う。そう、敵は機械。なのに、どうしてだろうか? こんなにも胸が苦しい。フェイトはそう感じていた。地上でゼロが時間を稼ぐ間にフェイトは魔法陣を展開し、バルディッシュを警備兵に向けた。
「バルディッシュ」
『ロードカートリッジ』
カートリッジがガシャン、と音を立ててロードされ、フェイトの魔力が高まる。
「トライデント…スマッシャー!」
『トライデントスマッシャー』
三又の雷の槍が巨大な警備兵を貫かんと迫る。しかし、そこで再びフェイトの頭に声が走った。
――イタイヨ、クルシイヨ……“オカアサン”
「…っ!」
頭に走る言葉に動揺し、トライデントスマッシャーは警備兵の頭部をかすって消えてしまう。しかし、そのすさまじい威力の砲撃は確実なダメージを与えていた。頭部を掠めたことで爆発するロボットの頭部。しかし、その頭部の爆発によって生まれた煙が晴れた時、フェイトは驚いて目を見開いた。そこにあったのは機械ではない。ポッドの中に入った、人間の脳みそであった。
「…! 嘘、アレって…」
フェイトの動きが止まる。それを見たゼロも思わず警備ロボットの頭部を見て、気がついた。
「…!」
「ゼロ、あれってまさか…!」
そう、ここは生体研究施設。そして、その生体の研究対象はプロジェクトF。つまり、あの脳みそはプロジェクトFによって生まれた研究の一部であることを示していた。
「あ、ああ…」
再びトラウマを思い出すフェイトは空中で止まってしまった。ロボットはそのまま動き、腕に備え付けられた銃を構えている。
「フェイト…!」
空中へ飛ぼうとするゼロだが、木を壁蹴りで登った所でフェイトの位置へは間に合わない。ゼロが叫ぶもフェイトは反応しない。その時だ、翡翠の閃光が飛来した。
「フェイトさん!」
その光はフェイトを包むように空中で止まっていたフェイトを動かした。それによって空中に向けて発射された銃の弾丸は空を切る。呆けていたフェイトだったが、我に返って目の前を見た。温かい何かが自分を包んでいる。フェイトの瞳に映るのは緑色の髪に、蒼い服に身を包んだ女性の姿。間違いなく、自分の上司であるリンディ・ハラオウンであった。
「フェイトさん、無事でよかったわ」
「リンディ、提督…?」
「ええ、そうよ」
リンディがギュッとフェイトを抱きしめる。それはまるで母が娘を抱擁するかのような光景でもあった。
「リンディ・ハラオウン、何故ここに」
ゼロ達もそこへ駆けつける。その問いに、リンディは笑顔で答えた。
「もちろん、フェイトさんたちが心配だったからよ」
「私、を…?」
「当たり前でしょう? 私は貴女の母になるかもしれないのよ? 娘が危ないかもしれないのに、放っておく親がどこにいるのかしら?」
リンディの言葉に、ただただ驚くフェイト。しかし、この時フェイトはゼロの言葉を思い出した。
――お前が思っているほど、お前の住む世界はお前に厳しくはない
なのは達のような、友達だけではない。こうして自分を心配してくれる大人がいる。そう思えた瞬間、フェイトの目から涙が溢れた。
「フェ、フェイトさん!? どうしたの? どこか怪我をしたの?」
「ち、違うんです…大丈夫、大丈夫です…」
言いながら涙を拭い、フェイトはその自分たちを捕捉して再び動こうとするロボットを見据えていた。
「…リンディさん、あそこにいるロボットのことなんですけど」
「私も一瞬見えたわ。人間の脳が積まれているわね。大方、ロボットに人間のような動きをさせようとした結果なんでしょうけど」
「……」
リンディの言葉に、息がつまりそうになる。でも、自分が思ったことを言わなければならない。フェイトはその言葉を言った。
「あの子は…きっと、私と同じように生まれてきたんです。私と同じプロジェクトFの技術で。でも、あんな姿になったあの子はもう、助からない」
子供のフェイトにですら、それはすぐに分かった。かすれるような意識があるが、最早アレはプログラムされたものに対して忠実に動く兵器と化してしまっていた。そんなロボットが人間に戻ることは出来ない。そして、そのロボットを停止させることの意味をフェイトは理解していた。
「私が、楽にしてあげます」
「フェイトさん…」
「ゼロも、クロワールも、手は出さないでね」
「……わかった」
そう言って、ゼロは一歩下がる。クロワールも少し戸惑った様子ではあったものの、ゼロと同じように下がる。
「私が決着をつけます。自分自身に…」
「…ええ、わかったわ」
リンディもフェイトの言葉を察したのか、そのままゼロのいる所まで下がり、フェイトはそれを見てから空を飛ぶ。ロボットを見据えてフェイトはバルディッシュを構えた。
「バルディッシュ、ザンバーフォーム」
『ザンバーフォーム』
ガシャン、と再びカートリッジがロードされ、バルディッシュの形状は斧から大剣へと変化する。一度目を閉じ、もう一度開いてそのロボットを見据えた。頭の中には、相変わらず助けて欲しいという声が響きわたる。しかし、フェイトはそれを遮るように声を上げた。
「私は管理局執務官候補生、フェイト・テスタロッサ! プロジェクトFの技術で生まれたテスタロッサ家の次女であり、プレシア・テスタロッサの娘。あの人の娘として、アナタを…私自身を倒す者!」
フェイトの声に反応してなのか、ロボットはその動きを止めてフェイトを見据えていた。そのフェイトの言葉は、どこか今までの自分と決別するかのような言葉
「アナタの分まで、私はフェイト・テスタロッサとして生きる! だから、だから…!だから…アナタはもう、休んでいて…!」
言いながらフェイトはザンバーモードのバルディッシュを振りかぶる。再び、カートリッジがロードされる。それと同時に、フェイトはザンバーを振り下ろした。
「ジェット、ザンバアアアアアアアアアアアアアっ!」
ジェッドザンバーがロボットに向かって行き、その脳のあった付近へと突き刺さった。爆発が起き、ロボットはその場に倒れる。
――ありが、とう
そんな言葉が、フェイトの耳に聞こえる。その次の瞬間、ロボットは大爆発を起こし、炎に包まれるのだった。
「……さようなら、ごめんね」
フェイトはそう呟いた。
*
「これから貴女を養子として受け入れるけど…本当にいいのね? フェイトさん」
「はい。よろしくお願いします」
事件の後、ハラオウン家でフェイトはリンディと自分の想いを打ち明けた。自分が今まで迷っていたこと。その原因、そしてその迷いをふっ切ったこと。
「私が今更言うのもなんだけど、私でいいの?」
「はい。私は確かに、フェイト・テスタロッサです。そして私の母さんはプレシア・テスタロッサ…でも、リンディさんは私をずっと心配してくれて、助けてくれて…私を、フェイト・テスタロッサとして受け入れてくれたリンディさん。そんなリンディさんと、これからも一緒にいたいんです」
「…そう、ありがとうフェイトさん。私、とても嬉しいわ」
そう言ってリンディはフェイトを強く抱きしめる。フェイトも嬉しそうにリンディを抱きしめた。フェイト自身が自分を認め、そして一歩を踏み出すことが出来たのは、フェイト自身の強さ、そしてゼロの言葉があったからだろう。
――お前はお前だ
(…ありがとう、ゼロ)
大きな一歩を踏み出せたフェイトは、母のぬくもりを感じながら、静かにゼロへ礼を言うのだった。
というわけで、第21話でした。いかがでしたか?
それにしてもゼロが喋る喋る…こんなゼロ、ゼロと呼んでいいのだろうかと疑問に思ってしまいます(汗
次回はなのはのお話を書こうかと思います。まあ、どうなるかは毎度のごとく分かりませんが…
それにしても、シエルの裏設定知ってる人ってどれくらいいるんでしょうね。オフィシャルコンプリートワークスを持ってらっしゃる方はわかると思いますが、実はシエルもまたクローンなんですよね
シアールもそうなんだっけ?あれ?あれは漫画の設定だっけか…
と、ともかく、もうすぐこの小説も終わりです。続編のStS編も並行して進めているので更新は遅れるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします
ではノシ
NEXT「もしも、貴方と出会わなかったら?」