【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~   作:秋風

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ヴォルケンリッター登場
個人的に4人の中ではシャマルが好き


03「闇の書」

『あなたがあの伝説のゼロなのね……?』

 

『ゼロ? 俺の名か? ……うぅ、思い出せん』

 

 赤い英雄は夢を見る。それは遠くも最近に起きた記憶。眠りにつき、2度目に目覚めたときの記憶。助けを求める少女に目覚めさせられ、言われるがままに戦った……

 

『エックスはもっと強かった!』

 

『旧型レプリロイドめ……僕を侮辱したことを後悔させてやる! 僕の真の力を、お前に見せてやろう!』

 

 ある時の敵はレプリロイドを苦しめていたのはかつて人とレプリロイドの平和を願った友の模造品。記憶になくとも、心に残る友の誇りのために、その模造品に立ち向かう。

 

『ゼロ、君にしばらくこの世界を頼みたい』

 

『……我侭は聞いてやろう。お前はゆっくり休め』

 

 戦いの果て、広大に広がる砂漠に姿を現したのは、肉体を失い、最早魂だけとなった友。そして友と再び、ゼロは約束を交わす。

 

『力を……もっと力を!』

 

 またある時の敵は英雄を夢見、戦い、敗北し、狂気に飲まれた男。破壊と言う力を求め、その破滅の力を前に、ゼロは立ち向かう。

 

『さよなら……シエル……さん』

 

『ゼロ……』

 

男に狂気と力を与えた暗黒のエルフ。それは自らの記憶のかけらを呼び出す者。

 

そして自分の全てを奪った男が現れる。

 

『ヒャーハッハッハ!』

 

『我はメシアなり!はーっはっはっは!』

 

 それは自分自身と戦い。戸惑い、剣を握る。しかし、友は言った。大切なのは体ではない。心なのだと。そんな言葉があったからこそ、ゼロは戦うことを決めた。

 

『俺は俺でしかない、俺は…………ゼロだ』

 

 新たな決意を胸に、自分自身に別れを告げてゼロは歩き始める。その先に続くのは新たな道。誰も知らない、自分の新しい道だ。

 

――ゼロ……ゼロ……

 

その道を歩いていると、ゼロは優しい声を聞く。

 

「ゼロ!」

 

「む……」

 

 ゼロは目を覚ました。どうやらソファーで眠っていたようだ。レプリロイドに睡眠は必要ないが、最低限エネルギーをカットするためである。無限大のエネルギー補給が可能でも、やはり習慣となったことはかかさずするべきだとそれを行っていた。

 

「ゼロ、こんな所で寝たらあかんよ?」

 

「……ああ」

 

 はやてがゼロを案じる。気がつくともう8時過ぎ、夜だった。ゼロは身体を起こし、周囲を確認する。何か、嫌な空気を感じた。それはそう、かつてDr.バイルに操られ、闇の妖精と化したダークエルフが現れた時と同じ。

 

「……」

 

「ゼロ、どうしたん?」

 

「いや、なんでもない……そういえば明日は病院へ行くのだろう。早く休め」

 

「うん、そうするな……せや、ゼロ」

 

「なんだ?」

 

 はやては手をモジモジとさせながら頬を紅くし、少し恥ずかしそうにゼロを見る。それを近くで見ていたクロワールはその様子を見て少しニヤニヤとその光景を眺める。どうやら、はやてがこうなっている理由を彼女は知っているらしい。

 

「今日、一緒に寝てくれへん?」

 

「何?」

 

 言われて、ゼロはよくわからなかった。はやてはいつも一人で寝ているし、ゼロも今までそんな要求を言われたことは一度もない。強いて言うならクロワールがはやてと一緒に寝るくらいだが。

 

「実を言うと、明日私……誕生日なんよ」

 

「……誕生日」

 

「だから、一度くらい家族と一緒に寝たいな……って」

 

 家族……ゼロに今までなかったものだ。そしてはやても、両親を早くに亡くしたことで人のぬくもりは欲しいと思っていた。しかし、ゼロにそんなことを言いたくてもきっかけがない。ならば、一年に一度、自分が生まれた日を祝うこの日に、そんな我儘を言ってみた。家族のぬくもり。それが人であれ、人でなかれ、その温もりをはやては求めていた。

 

「……わかった。いいだろう」

 

 この期間で少しだけ彼女をを理解したのか、ゼロは静かに頷く。それを見たはやては前に見せた子供相応の笑顔を見せる。ゼロははやてを抱えて二階へ運び、着替え終わるまで外で待つ。別にレプリロイドが人間に欲情するわけではないが、やはりはやても少女であるが女だ。ゼロという異性の存在に見られるのは当たり前だが気が引ける。

 

「入ってええよー」

 

 はやての言葉を聞いてゼロは部屋に入る。そこには寝る準備は万端と言わんばかりに笑顔でいるはやての姿。本来、ほとんど睡眠をとらないゼロにとってベッドはあまり必要のない物だが。そんなゼロを余所に、はやてはゼロに蹲り、嬉しそうに眠りについた。

 

 

午後11時59分

 

「…………?」

 

 次の日にちを迎えようとする一分ほど前、ゼロは違和感を覚えて目を開ける。今日の夜に感じ取った現象。はやては相変わらず気持ちよさそうに眠っているが、ゼロは机の上にあった本を見る。そこから何かの力の源を感じ取る。見ればその本からは何か禍々しい光を確認する。そして……

 

6月4日 午前0時00分

 

「……!」

 

 本が激しい光を放ち、地面に何か円のようなものが引かれる。その際、けたたましい音が周囲を響かせたため、先ほどまで眠っていたはやても驚いて飛び起きた。

 

「な、なんや……!?」

 

 ゼロはベッドの近くに置いていたバスターを手に取り、すぐさま構えた。そして近くにいたはやてはゼロの後ろに隠れ、しがみつく。

 

「「!?」」

 

 そして突如、円の上に4人の人間が現われた。一人はピンク色のポニーテイルの凛々しい女性。一人は金髪のショートカットの女性、一人は三つ編みの朱い髪の少女。そして犬耳のがっしりとした体をしている男。それぞれが黒い服を身に纏い、目を伏せて

 

「……闇の書の起動を確認しました」

 

 ポニーテールをしたピンク色の髪の女が喋りだすが、ゼロはそれから目を逸らさず、バスターを握ることをやめない。

 

「……闇の書?」

 

「我ら、闇の書の収集を行い、主を守る守護騎士」

 

「夜天の主に集いし雲――」

 

「――ヴォルケンリッター。何なりと命令を」

 

 というが、彼女たちは目を瞑っている。どうやらこちらが見えていないようだ。そんな光景を見ながらゼロは思考する。

 

(主とは、こいつのことか?)

 

「ところで、貴様は何者だ?」

 

 いつの間にか目を開けている女性は先ほどとは違った殺気のこもった声を出した。その鋭い目は真っ直ぐゼロを睨みつけていた。どうやらこちらに気がついたようだ。そして彼女も警戒していたゼロに気がついてか、腰に備えている剣へと手をかける。

 

「……」

 

「答えろ!」

 

「……人に名を聞くのに自分の名前を名乗ったらどうだ?」

 

 現状を良くわかっていない両名。ゼロは情報を得ることと、彼女に対しての皮肉として言葉を返す。

 

「私はヴォルケンリッター烈火の将、シグナム」

 

 彼女も彼女でゼロの予想とは違い、あっさりと返答してきたため、同じように名乗ることにした。

 

「……ゼロだ」

 

「……」

 

「あのよー……シグナム」

 

「なんだ、ヴィータ」

 

 両者、一触即発の空気の中、ヴィータと呼ばれた少女の気の抜けた声が部屋に響きわたる。

 

「いや、二人で盛り上がっているところ悪いんだけどさ……」

 

 言いながらヴィータがはやてを指差す。

 

「気絶してんだけど、そいつ」

 

 シグナムが覗き、ゼロもそちらを振り返った。

 

「ほえ~」

 

 そこでははやてが目を回している姿があった。

 

 

病院

 

 ゼロは気絶したはやての様子を考え、はやてが行っている病院へとはやてを運んだ。はやて自身は問題なかったのだが、別の問題があった。

 

「あの、ゼロ君?」

 

「なんだ」

 

「あの人たちは誰? この季節にあんな格好……まだ、早いと思うんだけど」

 

「……知らん」

 

 ゼロと話している白衣の女性ははやての足の病気を診ている女医、石田先生。石田先生とゼロは4人のことを見ながら話す。ちなみにだが、石田先生はゼロのことをはやての「親戚」と認識しており、何度か面識はある。そして彼女の視線の先にいるのはヴォルケンリッター4人。現代の常識を知らないらしく、6月のしかも低い気温の日に4人揃って同じ色で半袖やミニスカートであることに何の疑問も持たずにゼロについてきた。彼女ら曰く、自分達のことより主であるはやてのことが心配だという。

 

「あの、石田せんせ?」

 

「なあに? はやてちゃん」

 

「実はこの人たちも、私の遠い親戚なんです。私の誕生日にサプライズで来てくれたみたいで……」

 

(そんな言い訳が通るのか……)

 

 ただでさえ、ゼロが親戚であるということを石田先生に納得させるのにはやては苦労していたというのに、ゼロ以上に怪しさ満点の彼女達を納得させるのは難しいはずだ。しかし、そんなゼロの考えは外れることとなる。

 

「あら……そう、なの?」

 

 石田先生は若干、怪しんではいるようだが、そのはやての言い訳は通ってしまった。このあとはやてが何とかその場をまとめ、はやての自宅へと帰宅することになった。

 

「……というわけです」

 

 帰宅後、シャマルと名乗る金髪の女性が自分たちの存在、そして「魔法」という存在についてはやて、そしてゼロに説明した。

 

「魔法……」

 

 はやても驚いているが、既にゼロという存在を認知しているためそこまで驚いてはいない。そんな会話の後、シグナムがゼロを見た。相変わらず彼女はゼロに対しての警戒は強い。

 

「結局聞きそびれたが、お前は何者なんだ?」

 

「……ゼロだ」

 

「名前の方ではない。見たところお前も我らと同じように、人間ではないようだが……」

 

「……俺は人ではなく、レプリロイドだ」

 

 今度はゼロがヴォルケンリッターに自分のことを説明する。すると、シャマルが口を開く

 

「次元漂流者ってことね」

 

「次元漂流者?」

 

「何かの力によって空間が裂けて次元断層というものができるの。それによって巻き込まれて、次元を移動するというものよ……でも、よくそれに巻き込まれて無事だったものだわ」

 

「……というか、よく大気圏で燃えなかったな」

 

 ヴィータがあきれ半分、関心半分という感じで言う。話が逸れたが詰まる話、ゼロは世界規模の迷子というわけである。

 

「なるほどな……現状がしっかりと理解出来た。感謝する」

 

 ゼロはお礼をいうと、置いてけぼりとなったはやてを見た。魔法と言う未知の力を手にしたはやて。ゼロははやてが彼女達の話で言う『蒐集』を命じるとは思っていないが、大方彼女達の面倒を見るなどと言いそうだ。

 

「それで、お前はこれからどうするつもりだ?」

 

「せやねー……とりあえず闇の書の主として……」

 

 4人は先ほどの話の「蒐集」というものの命令を受けるものだと思っているらしく。真剣な表情だ。しかし……

 

「主として、みんなの衣食住、私がしっかり管理せなあかんということやね!」

 

「「「「……は?」」」」

 

拍子の抜けた声が、4人から出るのだった。

 




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