【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~ 作:秋風
ここで本編のスタートラインか……今思えばよく完結させたなぁと思います
場面の切り替わりが激しすぎて、どーすればいいのか考えてます
05「蒐集」
ゼロが異世界へと来てから数カ月。ゼロ、そしてヴォルケンリッター達がこの世界に慣れてきた頃。それははやての検診の帰り。シグナムとシャマルは青ざめていた。その表情はいつもの彼女達とは思えないような表情を見せていた。
「どうした、調子でも悪いのか」
ゼロが尋ねると、シャマルは今にも泣きそうな表情で首を振り、シグナムは顔を伏せたまま反応を見せず、各々の部屋へと戻ってしまう。その次の日からか、シグナムたちはしょっちゅう家を空けるようになった。
「みんな忙しくなってもうたなぁ」
「……そうだな」
今ははやてとゼロが家にいる。しかし、いつもいたはずの4人の姿はない。はやては彼女達にも人間らしく忙しさがあるからこれもきっと良いことだというが、その笑顔は少し無理をしているとゼロは理解する。
「でもゼロはええんか? 家にずっといて」
「特別、何かすることが無い。今の俺にできるのは、お前を守ることくらいだ」
「わ、私を守る……」
ゼロとしては、謎の監視者がいることを考慮していった言葉なのだが、はやてもうら若き乙女。彼女にとっては別の意味に聞こえてしまったらしく、顔を赤くして両方の頬を手で押さえる。
「どうした、調子でも悪いのか?顔が紅いが……」
「ちゃ、ちゃうねん! なんでもない!」
はやてが大慌てで首を振る。そんな様子に首を傾げるばかりだが、隣に座っていたクロワールは呆れてため息をついていた。
「ゼロはもう……」
「?」
――数日後 午前0時
「よし、今日も行くぞ」
「ああ、目標まで達してねえからな」
「急ぎましょう」
「ウム」
シグナムの言葉に、ヴィータ、シャマル、ザフィーラが頷く。はやてにデザインしてもらった騎士甲冑を纏い、シグナムたちは海鳴のあるビルの屋上にいた。戦うことが無いから使うことはないとはやてに言われていた騎士甲冑。しかし、今日はイレギュラーがあった。
「待て」
「「「「!!」」」」
自分たちしかいないはずのビルの屋上。しかし、そこに自分達以外の声がかかる。そこにいたのは、真紅のボディに流れるような美しい金髪を輝かせたレプリロイド、ゼロ。
「ゼ、ゼロ!?」
「どうしてここに!」
「連日急にお前たちがいなくなれば、気にもなる」
ゼロは一歩前に出て、シグナムたちを見た。彼女達は突然のゼロの登場に戸惑っているが、ゼロは気にせず質問をする。
「……あいつを守護するために作られた服だな」
「……」
「それを着て何をしようとしている」
「そ、それは……」
「……蒐集か?」
「「「「!!」」」」
戸惑うシグナムに対し、ゼロの一言。そのゼロの全員が驚く。しかし、ゼロにも予感はあった。彼女達が長く家を開けること。そして『あの日』の二人の表情。何かをしなければならないとなれば、彼女達に出来るのは『蒐集』しかない。
「だが、蒐集はあいつに止められているはずだ。あいつの言うことに忠実なお前たちが約束を破るとも思えん。何かわけがあるのか? お前たちがあいつとの約束を破っても蒐集をする理由が」
「……私達の負けだ、ゼロ、頼みがある」
「なんだ」
「今から話すことは、主はやてには言わないでくれ」
シグナムが絞るような声で言葉を発し、ゼロは無言でソレを聞くことにした。
シグナムはゼロに話した。はやての身体が弱いが故に、闇の書の闇がはやての身体を蝕んでいること。そして蒐集してはやてが力を得ない場合、はやてが闇の書に蝕まれ死んでしまうこと。そしてここ数日、死ぬ気で魔力生物から魔導士にいたるまでがむしゃらにページを集めるために蒐集を続けてきたこと。彼女達からは悔しさを浮かべる表情があった。しかし、ゼロは表情一つ変えず、そのシグナムの話に耳を傾けていた。
「……我が主はもう永くない。闇の書の闇が蝕む限り」
「……」
「だから、私たちは行かなければならないんだ……」
シグナムが言う。ヴィータはいつの間にか泣きそうな表情で愛機「グラーフアイゼン」を握り締めている。
「だからゼロ、このことは主はやてに黙っていてくれ」
家族だからこそ、彼女に自分達の今を見せたくない。戦いを知らぬ彼女に、無垢な彼女に、約束を破る自分たちを見せて欲しくない。シグナムは懇願する思いでゼロに言う。しかし、ゼロから放たれた言葉は…………否定だった。
「断る」
「なんだとっ!?」
ゼロの言葉に、シグナムは激高する。しかし、ゼロは相変わらず表情を変えていない。しかし、その眼から感じ取ることが出来る怒気があった。怒っている。あの冷静沈着であるゼロが、今、自分達の家族と言える存在に。
「はやての命に関わることだ。何故お前たちは本人に話さない」
「そ、それははやてちゃんが駄目って言うだろうし……」
「本当にそうだろうか?」
「え?」
ゼロは表情を変え、シグナムたちを睨みつけた。その表情を彼女達は見たことが無い、怒りをあらわにした表情。ゼロは言葉を続けた。
「この数ヶ月。お前たちはいったいあいつの何を見てきた?」
「主の……?」
「少なくともあいつは、俺やお前たちを『家族』だと思っている」
闇の書が目覚めてから、はやてはずっと欲しかった家族を手に入れた。ゼロは知っている。はやてが自室で眠っていた時、悪い夢にうなされ、家族を求めていたこと。そしてここ数日で見せていた彼女の悲しい笑みを。
「心のどこかで、お前達ははやてを信頼しきれていない。本当に家族だと思うなら、全てを打ち明けてやるべきだ」
そんなゼロの一言に、ヴィータが思わず叫ぶ。
「違う! あたしは! あたしたちは! はやてを本当の家族だと思っている! 今までの奴らとは全然違う! だから…!」
ヴィータは長い時の中で生き、様々な主を見て来た。闇の書と呼ばれる強大で凶悪な力。その力に取りつかれ、自分たちを道具のように扱う今までの主達。しかし、今の主、はやては違う。だからこそ、はやてのために、自分達は戦おうとしている。
「なら何故、一つに絞る……他にきっと、道はあるはずだ」
「そ、それは……」
確かに、蒐集をしていることをはやてが知れば、はやては信頼されていないと思ってしまう。しかし、シグナム達にも想いがあった。やっと辿りついた平和。理想の主。その主のために、そしてその先の未来のために、自分達はやるべきことがある。だからこそ、そのゼロの言葉に押されつつも、シグナムは拳を強く握り、叫んだ。
「……それでも」
「……」
「それでも、主はやてと! お前と! 平和に暮らせる未来を作りたいのだ!」
シグナムが叫ぶ。ゼロはその言葉を聞くと、不意にエックスを思い出した。それはかつて、遠い日に聞いたエックスの言葉。人のために、レプリロイドのために、自分のことなどお構いなしに戦い続けた男の言葉。
――誰とでも手を繋ぎ合わせられる世界を作りたいんだ!
似ている、ゼロはそう感じた。あの時の、エックスの言葉に似ている。ゼロは彼女達に対し、ただはやての信頼を裏切る彼女達に怒っていたが、彼女達の想いを理解した。はやてのために、信頼を裏切ってまで、はやてと自分たちを想い、戦う。その想いを受け取ったゼロから生み出された答えは一つ。
「……わかった、お前たちのことはアイツに黙っておく」
「……え?」
シグナムたちが少し驚いた顔になる。ここまで自分たちに怒っていたゼロ。まさかここでゼロが引くとは思わなかったのだろう。
「ほ、本当か「ただし」……?」
「『最低限人間に迷惑をかけない』これを約束しろ。そして……」
ゼロは目を閉じ、決意を固め、目を開いた。
「……俺も、蒐集に参加させてもらう」
こうして、ゼロとヴォルケンリッターの蒐集が開始され、紅き英雄の運命はまた、ここから動き出した。
数日後、とある管理外世界
「はああああああああああっ!」
「ギャアアアアアアアア!」
砂漠に覆われた異世界で、ゼロは戦っていた。相手は巨大なムカデのような生物。ゼロの目的はその生き物にある魔力。魔法については詳しくないが、戦って相手を弱らせることはできるので、現在はシャマルのサポートとして戦っている。苦戦するゼロだが、ゼロのセイバーがチャージされ、それが振り下ろされた。
「てあっ!」
「―――――――!」
声にならないほどの咆哮が周囲に鳴り響き、ムカデはその場に崩れ落ちた。ムカデはピクピクと動いている。ゼロも、トドメは刺していない。するとそこに空中にいたシャマルが降り立つ。
「シャマル、蒐集だ」
「え、ええ……」
シャマルは参謀的役割だ。直接的な戦闘には向いていないなので、彼女の蒐集率は悪かったのだが、その魔力を持つ相手と戦う点でゼロがいることはこの上なく頼もしい。そしてゼロもまた、転移魔法を使うことが出来ないことから、転移魔法を使えるシャマル組んで蒐集をしている。
「どうだ?」
「6ページ……まずまずね」
「もう時間だ。合計で28ページ……十分な成果だろう」
それにこれ以上時間を使用すれば家を開けてしまい、はやてが心配するだろう。ただでさえ、夜間からゼロが外出することは珍しいため、はやてに疑われてしまう場合がある。
「そうね……え!?」
突然通信として活用する念話が入ったのだろう。シャマルが通信をする。そして驚いた表情になった。
「大変よゼロ! ヴィータちゃんが魔導士の子供を襲ったって、ザフィーラから!」
「なんだと!?」
ザフィーラからの通信によれば、ヴィータも自分の蒐集が少ないことを気にしすぎた故、ゼロとの約束を破り、子供を襲っているのだという。
「すぐに行くぞ。場所はどこだ」
「海鳴市みたい……急ぎましょう!」
「ああ」
こうして。二人は転移し、その場所を後にした。
海鳴市 某所
「くそ……まだだ、まだたりねぇ!」
ヴィータは焦りながら空を飛ぶ。ここ数日、一番蒐集が進んでいない彼女は焦りを感じていた。はやてといる時間が一番長いためか時間もないし、近所との交流で蒐集にさく時間が一番少ない。海鳴市に戻り、自宅へ帰ろうとするとき、市内で巨大な魔力を感じた。とてつもなく大きな魔力。ページに換算すれば10は超えうるその魔力。ヴィータの視線の先にいたのは一人の少女。ザフィーラがそれに気がつき、ヴィータに静止をかける。しかし、ヴィータはそれを無視して、少女へと特攻をかけた。
「お前に恨みはねーけど、魔力もらうぞ!」
「話を、聞いてってばぁ!」
魔力を回収しようとするも、攻撃が防がれる。歳に似合わず、手練れの魔導師のようだ。だが、ヴィータはそのまま力押しで少女を圧倒して魔力を手に入れようとする。だが、それは金色の光に遮られてしまう。慌ててヴィータは距離を取り、その襲っていた少女の前に降り立つ人物を見た。襲った少女と年違わぬ少女。苛立ちからヴィータは叫んだ。
「テメェ、仲間か!」
「友達だ!」
(こいつ、できる!)
目の前に現れた金髪の少女、そしてその隣に降り立った獣耳の女性。恐らく彼女の使い魔なのだろう。ヴィータは構えを取るが、3対2。ザフィーラもいるが、この状況はあまりよろしくない。
「私は時空管理局の嘱託魔導師フェイト・テスタロッサ。こっちはアルフ。今すぐ武装を解除して。そうすれば貴女は弁護の要請ができる」
「るっせぇ! そんなこと誰がするか!」
時空管理局、と聞いて焦るヴィータ。彼女達は世界を管理する組織であり、相手が悪すぎる。離脱を考えたその時、金髪の少女、フェイトが動いた。
「そう……なら、貴女を逮捕します!」
フェイトはヴィータが考えていた一瞬の隙をついて手にしていたデバイスで斬りかかる。一瞬反応が遅れたが防御の姿勢を取るヴィータ。しかし、その刃がヴィータに届くことはなかった。ヴィータの前に立ちふさがったのは翡翠の剣を持ち、紅い体と金髪を輝かせる男。ヴィータにとって自分の家族、ゼロ。そして、ゼロと一緒にシグナムが救援として駆けつけていた。
「ゼ、ゼロ!」
「ヴィータ、あれほど約束を守れと言ったはずだ」
援軍に喜ぶヴィータだが、ゼロから放たれたのはヴィータに対する怒り。それほど怒っているわけでもないが、怒り半分、呆れ半分と言う形である。ヴィータは思わず俯いてしまった。
「そ、それは……」
「話は後だ。シグナム、ヴィータを連れて行け」
「む……私も戦いたいのだがな……仕方がない」
シグナムはヴィータを抱え、戦線を離脱。転移魔法でその場を後にする。残ったのはゼロとザフィーラ。ザフィーラは遠くで既にアルフとの戦闘を開始している。そんな中、突然の援軍に驚きを見せながらも、フェイトは真っ直ぐにゼロを見つめる。
「あなたは?」
「……」
「私は時空管理局の嘱託魔導士、フェイト・テスタロッサ……聞かせて、何故こんな……」
「今、戦場(ここ)で、そんなことを聞いて…………どうする?」
凄まじい殺気がフェイトを支配する。その場の空気が凍てつくのを肌で感じ取る。そして直感した。この人に説得など通じない。力で抑えつけなければ……と。ゼロもまた、相手が不明ではあるものの、敵であることを理解し、構えを取った。
「あなたを、逮捕します……!」
「……やってみろ」
Zセイバーを構えたゼロは、空中に静止するフェイトを見据える。風が吹いた瞬間、両者が動いた。
――WARNING!
「はあああっ!」
「……!」
ゼロは空中から迫るフェイトにバスターを放つ。高速の機動によってそれを避けたフェイトは愛機「バルディッシュ」を振り下ろす。ゼロはそれに反応してすぐにZセイバーに切り替えると、それを受け止めた。
「……っ!」
「はあっ……!」
チャージされたセイバーによって、フェイトが吹き飛ぶ。その反動でバルディッシュにヒビが入った。
「……バ、バルディッシュ!」
長年連れ添った相棒が、敵の一撃でここまでになるとは、フェイトも予想がつかなかった。それだけ彼が放った一撃は強く、もしこの一撃が自身に当たっていたらとフェイトはゾッとする。すると、ゼロは持っていたZセイバーを納める。
「……ここまでだ」
「!?」
「もう限界だろう。これ以上戦う意味はない」
そう言って、ゼロはその場を離脱。その場に残されたフェイトはそのまま壊れてしまったバルディッシュを見つめることしかできなかった。
八神家
帰って八神家。時刻は既に2時を回っていた。はやては当然就寝中。この際、クロワールが一緒に付き添っているのではやてが一人になる心配はない。そして現在ヴォルケンリッターとゼロはリビングにいた。原因は当然、ヴィータの今日の行動。
「説明しろヴィータ……何故、約束を破った」
「……それは」
ヴィータは顔を伏せる。怒られることは覚悟していた。焦りで自分を見失い、約束だけではなく、時空管理局と言う組織にまで目をつけられてしまったのは確かに自分の責任だ。今回の落ち度は、確かにヴィータにある。しかし、ゼロがヴィータに対して咎めているのはそこではなかった。
「別に俺との約束を破ったことを怒っているわけじゃない」
「え?」
「『人に迷惑をかけない』というあいつの約束を何故破った」
「!」
ヴィータは思い出す。はやてが一番強く念を押していたことを。人に迷惑をかけてはいけない。魔導師を襲撃しないことを条件にはやてにこのことを黙っているゼロ。ゼロもまた、魔導師を襲ってはいけないという理由は彼自身の考えにあった。一つは人間を襲えば、その魔導師達が集まるような組織に連絡が行き、今後の蒐集が困難になること。そして、はやてとの約束を守らせたい、そんな考えだった。ヴィータは2つの約束を反故し、蒐集をしてしまったことになる。それにようやく気がついたヴィータは途切れ途切れに言葉を発する。
「だ、だって……はやくしないと、はやてが……」
「確かに、アイツが危ないのは分かっている。お前が焦っていたことも理解している。しかし、お前のその焦りが今後の蒐集に影響する……違うか?」
問い詰められ、今にも泣きそうなヴィータ。シグナムはそこでため息をついてゼロを止める。
「ゼロ、その辺にしておけ。確かにお前の言うとおりだ。ヴィータも含め、私たちは人間に多大な迷惑をかけた。だが、他人に構ってられる状況なのは、お前も分かるだろう」
「……確かに、他人に構ってはいられない。しかし、こうも約束を反故されては、俺もお前らを信頼できない。信頼を欠く行動はお前達の首を絞めることになる」
「っ……だが!」
「シグナム、ゼロも落ち着いて……!私達で争ってもしょうがないでしょう……?」
互いに言い合いになるシグナムとゼロの間に、シャマルが割って入り、その言い合いはそこで終わる。すると、今まで黙っていたザフィーラが口を開いた。
「それにしても、厄介なものに目を付けられたな」
「……時空管理局、という組織のことか」
ゼロもヴィータと戦うフェイトという少女が言う組織のこと。
「時空管理局……この世界では聞かないな」
ゼロはクロワールを通してネットワーク内の様々な情報を得ており、多くの組織や、国によっての活動などを知っている。それにも関わらず、聞かない組織が出てきたことに、ゼロは疑問を感じる。さらに言うなら、ヴォルケンリッター以外にも魔法を使えることにも驚いてはいるが。
「……多分管理外なんじゃないかしら? 時空管理局は元々色々な世界を行き来するけど、管轄外の世界もあるみたいね。この前襲った魔導師の持っていたデバイスから情報を抜き出した中にあったわ」
「管理外? 管理外でもあいつらは活動ができるのか?」
ゼロにとっては当然の疑問だった。何故、管轄外であるのにもかかわらず彼らはここに来たのか、と言うことである。
「多分……この世界に協力者がいるんだと思うわ……」
「……そうか。なら今後の蒐集は警戒を強めるしかないな」
今後、彼らが出てくる場合は蒐集がさらに困難になると言えるだろう。ゼロたちが今後の対策を取ると共に、夜は更けていくのだった。
時空管理局・巡航L級8番 次元空間航行艦船「アースラ」
「彼ら、何者なのかしら?」
ここは時空管理局の船、アースラ。そこにはヴィータに襲われた少女、高町なのはと、嘱託魔導士であるフェイト・テスタロッサがいた。なのはは脱出する際にリンカーコアを蒐集されてしまい、魔力をしばらく使えないという診断が出された。フェイトも傷は軽いが、バルディッシュはゼロの攻撃によって半壊。なのはの愛機「レイジングハート」もまた、なのはを守るためにヴィータの攻撃の盾となったことで半壊していた。現在、アースラのクルーたちがフェイトの持ち帰ったデータログを見て検証している。
「この4人は、魔力生命体のようだ。でも、これは……」
映像を見ながら唸る少年、クロノ・ハラオウン。その彼の目の先にはゼロがいた。
「解析した結果、彼は人間でも、魔力生命体でもない。機械……スキャン結果はそう出ているよ」
アースラスタッフ、エイミィ・リミエッタがクロノに告げる。その映像は変わり、その体の半分が映し出された。そこにあるのは人間の体ではない。鋼の骨格、大量のコードが映し出される。
「ロボット…」
「うん……でもあんな人に近い動き、行動、それに彼を構成している技術は、今の管理局でも、地球でも作れないよ……」
「もしかしたら、次元漂流者かもしれないわね……」
今まで黙って考えていたアースラ艦長、リンディ・ハラオウンがそう結論を出した。フェイトの話によれば、彼の使う武器などもデバイスとは見受けられず、明らかな質量武器を使っているが、地球にあんな武器はない。なら、彼はやはりどこか別の世界から来た存在と言うことになるのだろう。時空管理局本来の任務は時空間の安全を管理し、何かの原因によって違う世界に来てしまった人間などを保護し、元の世界へと返すことが義務となっている。その理論から行くとつまり、今映っている彼は保護の対象となる。
「でも彼は、フェイトに危害を加えている。彼は捕縛するべきなのでは?」
クロノがリンディに言う。確かに、フェイトを倒した彼が時空管理局の言うことを聞くとも思えない。多少強引なやり方ではあるものの、それが最善の策と言えるだろう。しかし、リンディはクロノの考えを肯定せず、手元にあった緑茶に砂糖とミルクをたっぷり入れてスプーンで回し始める。
「そうね、でも何か事情がありそう……一度話が聞ければいいんだけど」
「……それにしても、この本は」
画面を切り替え、クロノはシャマルが持っていた闇の書を見続けていた。まるで、何か怨みを募らせるような視線で。
アースラ デバイスルーム
そこには少女、高町なのはと、フェイト・テスタロッサの姿があった。その容器に入れられた2つの宝石、レイジングハートとバルディッシュを見つめていた。
「レイジングハート……」
「コアの損傷があるから、直るまではちょっとかかるって」
なのはは友人のユーノに説明を受ける。毎日特訓していたのに、一度の奇襲でボロボロにされたのだ。ショックは大きい。彼女は襲われた日も魔法を使う特訓に明け暮れ、その帰りに奇襲に遭っていた。
「フェイト、大丈夫かい?」
「うん……でも、あの人何者なんだろう」
フェイトはフェイトで、戦ったゼロのことを考えていた。凄まじい殺気と、力……あんなものに会ったのは初めてだ。
「フェイトちゃん、今度会ったら話を聞けばいいよ……きっと、何か事情があるんだし」
「うん。そうだね、なのは…………」
今日の二人の敗北は確かに二人に大きな衝撃を与えた。しかし、だからこそ立ち上がろうという気力を得た二人。二人には、新たな決意と目標が立っていた。
戦いの運命は動きだす。そして、これからが全ての始まりとなる。
NEXT「疑念」