【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~ 作:秋風
これでやっと小説とバイトに集中できる(オィ
まあ、今年就職活動だけど……ま、いっか!
管理局との邂逅から数日が過ぎた。ゼロは人目につきにくい管理外世界での活動を終え、帰宅。相方のシャマルははやてに頼まれた買い物を済ませるために商店街へと向かっている。
「おかえり~」
家に戻れば、相変わらずの笑顔ではやてが自分を迎えてくれる。最近、外で活動をするゼロに対して、はやては相変わらず何の疑問も抱かず、むしろ外で活動的になるのが良いことだと喜んでいた。ゼロはそんな彼女の心に気がつきながらも、静かに返答する。
「……ただいま」
「ゼロ珍しいやん、どこ行ってたん?」
「……気晴らしの散歩だ」
ゼロは我ながらこんな嘘をよく言えるようになったと思いながらリビングに入る。すると、今日は来客者がいた。
「あ、初めまして。おじゃましています」
ニッコリと笑い、ゼロに向けてお辞儀をする、紫色のウェーブをかけた少女。年齢ははやてとそう変わらないだろう。しかし、ゼロやヴォルケンリッター以外の人間がここにいるのは初めての出来事だ。
「…………お前は?」
「月村すずかです。はやてちゃんと最近知り合いまして……えーと」
「……ゼロだ」
はやての話によると、図書館で知り合ったのだという。はやてはいつも通り、ゼロの事を遠い親戚だと誤魔化す。どう見ても怪しまれるのだが、すずかは特に疑いもせず笑顔でそんな言葉に頷いていた。
「じゃあ、私はそろそろ。この後お稽古があるから」
「ゼロ、送ってあげてや」
「ああ、わかった」
はやての言葉にゼロは頷き、すずかと家を出た。すずかも最初は遠慮していたが、はやてとしては友達に自分の家族を知ってもらいたいし、またこの時間帯は夕方。子供の一人歩きも危ないだろう。
「あの、ゼロさんは……えーと」
「なんだ?」
「いえ、あの……歳はいくつなのかなって……はやてちゃんよりとても上のお兄さんに見えるので」
「……さあ、な。こうも年月が経ってはいちいち歳なんて数えていないのでな」
ゼロはもう数百年も前に生まれたレプリロイド。本人の年齢を数えることは不可能だろう。そしてゼロとしては記憶を失っていることから年齢なんて覚えているわけがない。まあ、普通の人間だったら驚くだろうが、そんな言葉にすずかはクスクスと笑う。
「面白い人ですね、ゼロさん」
「……そうか?」
「ええ、とっても」
すずかは楽しそうに笑い、ゼロもそんなすずかと会話をしながら歩く。すずか曰く、自分の家の迎えの車が来る場所があるのでそこまでで良いとのこと。そして、その場所に差し掛かろうとした、その時である。
――キキィィッ!
「「!?」」
ものすごい勢いで接近し、止まったワゴン。突然すずかがその黒いワゴンに連れ去られる。数人のマスクをした男たちがすずかを連れて車を発進させる。ゼロも動こうとしたが、一瞬キラリとすずかに突きつけらたナイフに足が止まる。車は一目散に道路を走り去ってしまう。
「チッ……!」
ゼロはその車をダッシュで追いながら、今まで隠れていたクロワールを呼ぶ。
「クロワール」
「うん、わかっているわ、彼女を追えばいいのね」
「ああ、頼む。場所を特定したら連絡を頼む」
「了解」
クロワールが、すずかがいるであろう位置をサーチするためにその車をものすごい勢いで追い掛ける。それに続くように、ゼロはただひたすら、その道を走り続けた。
とある廃棄工場
「くっくっく……月村家の令嬢か……」
「ああ、身代金を取るにはいい感じだな。何日も張っていて正解だったぜ」
そこは廃棄された工場である。そこですずかは手足を縛られ、口を塞がれていため、身動きすることが出来ない。しかしその男達に圧倒されてガタガタと震え、今にも泣いてしまいそうな表情である。
「さて、身代金の要求は済んだし……この子を売る算段たてようか」
「んー! んー!」
首領と思わしき男の言葉を聞いたすずかは首を振ってもがこうとする。しかし、相変わらず固く縛られたロープは外れることはない。男はそんな様子を見てニヤリと笑う。
「安心しなお嬢ちゃん、お嬢ちゃんくらいの可愛さなら、どこの奴らも悪くは……」
そう言いながら、男が手を伸ばした瞬間だった。
――バシュウン!
男の腕に向けて、何かのエネルギー弾がぶつけられた。それを喰らった男の腕は焼けるような嫌な匂いがすると同時に、その痛みに男はもがき苦しむ。
「ぎゃああああ! 俺の、俺の腕があああ!」
「誰だ!」
仲間がやられたことで一斉にそのエネルギー弾が飛んできた方へと男達が武器を構える。
「……」
そこにいるのは赤い閃光。金髪に、紅い装甲を纏ったレプリロイド、ゼロだった。先程までとは違い、いつもの戦闘服を身に纏うゼロ。ゼロは基本的に上着とズボンの下はいつも通りの戦闘服と人間で言う、肌の部分などを隠している。それに加えて、戦闘時にすぐこれを纏えるようにクロワールにヘルメットや武器を転送させたのだ。
「誰だテメェ!」
「……」
ゼロは無言で駆け出し、近くにいた男を蹴り飛ばす。銃から弾丸が放たれるも、ゼロはシールドブーメランでそれを弾ぎ、ゆっくりと前進してくる。残る仲間達は焦りながらも、銃を構える。
「な、なんだよアイツ! 弾が効いてねぇ!」
「構わねぇ! 撃て!」
男達が持つ銃は現代兵器の中でも優秀な物だった。普通の人間が一人でそれに向かって行けばまず助からないだろう。しかし、ゼロは普通ではないし、そもそも人間ではない。弾丸が発射されると同時にゼロは駆け出し、その弾丸を避ける。そして、残る男たちに接近して攻撃を加えた。
「ハァッ!」
「ギャッ!」
ゼロの飛び蹴りが炸裂し、男が吹き飛ぶ。通常ならこれで死ぬのだが、ゼロの最大限のパワーを抑えるという配慮により、気絶するだけで留まる。その後、同じように攻撃を加えられてボコボコにされる男たち……制圧には時間もかからなかった。
「大丈夫か」
男たちを縛り上げ終えたゼロは、言いながらすずかのロープを取り、猿轡を取った。すずかに怪我はないらしく、小さく安堵のため息をつきながらすずかを立たせた。
「は、はい……」
「すぐに警察を呼べ…そうすればこいつらの対処をしてくれるだろう。それと、俺の事は秘密にしてくれ」
「あ、あの……ゼロさん、あなたは、いったい……」
「……俺は、ゼロ。ただそれだけだ」
「……」
すずかの問いにそう言い放つゼロをすずかはしばらくの間、頬を紅く染めて、ただひたすらゼロの顔を見続けた。
すずかが警察に通報し、事が片付いた後、ゼロは帰宅。部屋に戻ると手にしていた武器を解体してメンテナンスを始めた。今回、本来ならばエネルギー弾はもっと出力が出てもおかしくはなかったのだが、どうも出力が弱かった。一応出力調整はしたのだが、ゼロが想定していたモノよりも弱かったことで、メンテナンスをすることにした。普段は仲間の技師であるセルヴォがやるものだが、この世界に彼はいない。慣れない手つきではあるが、ゼロは順調にバスターの調整を行う。
「ん?」
バスターをいじくっていると、そこから何かが落ちた。それは3枚のメモリーチップ。
「これは…」
炎、氷、雷のマークが入ったエレメントチップ。それぞれを組みかえることでそれに見合った能力が武器に効果として現れる優れものだ。オメガ戦以降使うこともなかったのだが、どうやら最終決戦前にセルヴォが入れていたらしい。もっとも、最終決戦でこのチップをゼロが使うことはなかったのだが……
「いずれ、使うだろう……」
ゼロはそう言いながらバスターからZセイバーにそれらを組み込みなおし、メンテナンスを続ける。すると、そこで部屋に来訪者が現れた。
――コンコンッ
「誰だ?」
「私だ」
声の主は凛とした女性の声。シグナムだ。どうやら、彼女も今日の蒐集を終えて帰ってきたらしい。
「入れ」
ゼロが言うと、シグナムが部屋に入る。少々疲れている様子も見受けられるが、ゼロはソレを気にせず、彼女に自分の部屋を訪れた理由を問う。
「どうした?」
「いや、ザフィーラに聞いたのだが……前に謎の人物らからの襲撃を受けたらしいな」
「ああ、一度な。それがどうかしたのか?」
「いや、ここ最近どうも妙な気配がある。結界を張ってはいるのだが……蒐集中にいくらか視線を感じることがあった。どう思う?」
最近はゼロが監視を強くしているため問題が無かったのだが、どうやらゼロ以外の守護騎士達に監視が回っていたらしい。ゼロは少し沈黙するが、答えを出した。
「闇の書を狙う者達の犯行かもしれないな」
「何?」
「いくつか思うものがある。まず一つ目。闇の書の存在を知る誰かが、その力を手に入れたいと思い狙っている。」
かつて、自分の世界にいたレジスタンス司令官エルピス…彼は「正義の一撃作戦」を実行するもネオアルカディア四天王の前に敗北。その後は闇の力を得るために暴走し、ダークエルフの娘達である「クリエ」と「プリエ」に唆されてダークエルフを解放しようとエックスのボディを破壊するという暴挙にまで出た。
「だが、闇の書は完成したら主はやてしか使えんぞ」
「……なら、二つ目だ。闇の書に恨みを持つものが狙っている」
「恨み……?」
「お前たちと闇の書は主を失えば次の主を探すのに動くと、以前シャマルに聞いた」
「あ、ああ……」
「ならあいつが主になる前のことはどうだ?」
「……」
シグナムはそこで黙った。確かに闇の書が起動するのはランダム。自分たちが何かをしたのか……いずれにしろそれによって誰かしらが死んだとしたら? その死んだ人間のために誰かが復讐しようと考え、動くかもしれない。
「シャマルに聞いたが、闇の書は破壊不可能。ならば、あいつごとどこかに闇の書を封印しようと考えているかもしれん。そのために詳しく観察し、見張っている」
かつてエックスがダークエルフとしてマザーエルフを封印したように、そんなことを考えている輩がいるかもしれない。
「……確かに考えられる。だが……」
「ああ、それを誰がしているのか……だな」
そう、闇の書を知り、ゼロがいったうちのどれかを実行しようとする誰か。それが誰なのかわからない。しかし、ゼロには一つ心当たりがった。
「誰かというよりも、組織……」
「組織?」
「時空管理局」
「何……?」
「何故、奴ら、時空管理局がこの世界に来たのか分からなかったが、この世界に干渉しているなら、理由も合うかもしれん」
確かに、とシグナムは考える。自分達がいくら行動していたとはいえ、シグナム達が人を襲ったのは数回。その後はすぐゼロから人を襲うことを禁止された。彼らが警戒をしていたかもしれないが、それなのにわざわざ魔法と言う概念がない地球に来るというのは何かがおかしい。もし、彼らの目的が闇の書であり、管理外で時空管理局を名乗り現われるなら、そういう理由かもしれない。
「組織的にこちらを攻撃していると?」
「さあな……組織的なのか、それとも組織にいる人間が複数あるいは個人で行っているのか……いずれにしろ」
言いながらゼロは立ち上がる。
「俺があいつも、お前たちも守ればいい」
「……ふふっ」
「どうした?」
「いや、頼もしいと思ってな……頼むぞ、ゼロ」
「ああ……」
シグナムは思う……ゼロは本当に、私たちを救ってくれるかもしれない……と。だからこそ、あんな風に自然と笑みが零れたのかもしれない。
NEXT「奇策」