【完結】魔法少女リリカルなのはA's~紅き英雄の軌跡~ 作:秋風
前に消されてしまった感想にありましたが、StS編に関しては一応投稿するつもりでいます
しかし、大筋は大体同じでも、細かい所が違ったり、前には出たり、活躍しなかったキャラクターたちを加えて修正しているので、かなり苦戦しています
こちらの投稿も、後半月弱で完了となる予定ですが、色々と用事のために遅くなることがございます。
ご容赦くださいませ
管理局との戦闘から数日。警戒していた仮面の男の気配は八神家周辺からピタリと消えた。どうやらゼロが警戒を強めていたことを知ったらしい。そんな中今日は、珍しく全員が揃うという日。いつもなら朝から蒐集に出ることもあったのだが、一家団欒。はやては嬉しそうにしていた。
「せや、今日は検診やったな」
「そうでしたね、急いで支度しましょう」
毎回、定期的に病院へと検診へ赴くはやて。その付き添いは毎回シャマルである。彼女が回復魔法を使うこともあってか、石田先生の話を一番理解できるということも理由の一つだろう。
「あ!」
しかし、そこではやてが思い出したかのように声を上げる。
「どうしました、主はやて」
「買い物のことすっかり忘れとった。今日タイムサービスやん」
「そういえば…」
聞いたシグナムも、その重要な行事を思い出す。八神家では現在、ゼロを除く5人が生活の中で食事をしている。今まで1人であった食事が5人分になるということは、結構な食費となっている。なので、はやては買い物をする時いつも極力安いものを選んでいる。どうしようかと唸っていると、他の4人も考え込む。
「でも今日はあたし老人会でゲートボール大会だし…」
「私は剣道の道場で稽古を指導することになっている」
「私ははやてちゃんについていかないと…」
「私では人型でも怪しまれる」
ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラはそれぞれの理由で買い物に行くことはできない。ザフィーラ以外、今日彼女達が家にいる理由は近所の人やはやてについての用事によって家にいるためだ。そんな話をしていると、5人の視線が一斉にゼロへ注がれた。
「…俺か?」
「ほかに誰がいる?」
「……」
シグナムの言葉に無言のゼロ。確かにそのようだ。この中で近所の付き合いが一番薄く、かつはやてと共に行動する利点が無い人物といえば、もはやゼロしかいない。ゼロは小さくため息をついた。
「メモと財布をよこせ、行ってくる」
「これも任務だと思えばいいのよ、ゼロ」
こんな理不尽な任務があってたまるかと、ゼロは内心で想う。メモと財布をはやてから受け取ると、ゼロは家を出るのだった。
とあるスーパー
「(次は人参。あの右はじの奴がいいかも)」
「あれか」
ゼロはクロワールをパーカーの下に入れて、どれがどれなのか言わせる。ゼロは普段料理の手伝いをしているが、食材などをしっかりと理解しているわけではない。しかしクロワールは普段からはやての手伝いをしているため食材の名称、質などを大体理解し、記憶している。高いか安いか、質はいいか悪いかもわかる。サイバーエルフにこんな使い方があったとは、驚きである。
「次は緑茶の茶葉…」
「(シグナムの愛用の茶葉は上から2番目、真ん中のメーカーよ)」
「砂糖とこれは…なんだ?」
「(シャマル、今度は何を作るのかしら…)」
ゼロが取ったその得体のしれない外国の食材。クロワールもそれを見て少しだけ声が震えていた。
とりあえず、メモされていた食材を一通り揃え終えたゼロは、レジで買い物を済ませた。こうして、はやてに頼まれていたお買い物(ミッション)は終わりを迎えたのであった。その帰路についた道で、騒ぎ声が聞こえる。
「・・・・?」
それは少し離れた人気のない場所。見れば女の子が数人の男性に連れ去られそうになっている光景だった。前にも似たようなことに遭遇したゼロ。
「(ゼロ、アレ!また誘拐かしら…)」
「そのようだが…」
「(ほら、助けてあげないと!)」
クロワールに言われ、ゼロはため息をつく。いつの間に自分は人助けの便利屋になったのだろうか。ゼロはその騒いでいた車にゆっくりと近づいた。
「やめろ」
車に少女を詰めようとする男の腕を掴む。その様子に男が驚いているが、そのまま男はゼロを倒そうと拳を振り上げる。
「な、なんだてめぇ!邪魔だ!」
男の拳がゼロの腹部にヒットする。
――ボキッ!
が
「いってぇ!」
殴ったはずの男の指が折れた。ノーガードだったゼロの腹部は合金。人間の手がぶつかればそうもなるだろう。
「フンっ!」
その痛がっていた男の手を掴み、一回転させて他の誘拐犯へとぶつける。それによって他の誘拐犯も吹き飛ぶが。ソレを避けた仲間の一人がナイフを取り出し、ゼロに襲い掛かる。
「死ねっ!」
「握りが甘い」
「え!?ぎゃあっ!」
ゼロはその向かってきたナイフを足で蹴ることで弾き飛ばし、そのまま唖然としている男の顎に目がけて拳の一撃を受けた。男はその攻撃をまともに受けてその場に倒れる。ピクピクとしているところから男は生きていることが確認できるが、今の一撃は間違いなくゼロが加減しなかったら顎が砕けていただろう。
「大丈夫か」
誘拐されかけていた少女は驚きながらゼロを見ていた。涙目にはなっているが、最後まで抵抗する強い目を見せている。金髪の少女は頷きながら何かを思い出した表情になった。
「え、ええ…あ、そうだすずか!」
聞いたことのある名前だった。ゼロがワゴンの中に視線を移すと、そこには手を縛られたはやての友人、《月村すずか》がいた。
「……(こいつはよく誘拐されるな)」
そんなことを思いながら、ゼロはすずかの拘束を解いて、そのワゴンに入っていたロープを使い、倒した誘拐犯達を電信柱に縛り上げた。
「大丈夫か」
「はい。また助けてもらっちゃいましたね」
と、顔を赤らめながらニッコリと笑うすずか。そんな様子のすずかに、ゼロは小さくため息をつく。
「お前はもう少し用心しろ」
「はい、気をつけます」
とすずかは頷いているが、そんな風に言う割にはゼロの言葉がすずかの耳には入っているようには見えない。そのゼロに助けてもらったということに嬉しさが彼女の中を満たしているらしい。そんな状態のすずかに、一緒に助けた少女がすずかに呼びかける。
「すずか、この人知り合い?」
「うん、私のお友達の親戚の人」
と、すずかが紹介する。すると、すずかの友人らしき少女が一歩前に出て、右手を出す。どうやら握手を求めているらしい。
「あたしはアリサ・バニングス。すずかの友達よ。助けてくれてありがとう。貴方何者?」
「…八神ゼロ。何者、と言われても困るが、すずかの友人の親戚だ」
そう言いながら、アリサと握手をするゼロ。ちなみに、このゼロの八神ゼロというのは、姓と名の両方が無いとこの世界では不便だから、というはやての提案によるものである。そのため、シグナム達守護騎士にも、姓には八神を名乗るようにということをはやてから言われている。握手を終えて未だにアリサは納得していない様子だが、すずかはクスクスと笑っていた。この後警察が来て、誘拐犯達は拘束。軽い事情聴取を受けてゼロたちは解放された。ソレを終えて、そのままゼロは立ち去ろうとする。
「ではな…」
「あ、ゼロさん!」
立ち去ろうとするゼロに対し、すずかがゼロを呼び止めた。
「その、お礼をさせてくれませんか?」
すずかとしては、2回も助けてもらっては、何かお礼をしなければ失礼だと考えたのだろう。しかし、ゼロは首を振る。
「いらん。俺が勝手にやったことだ。見返りを求めるためにやったわけではない」
「ちょっと、そういう言い方ないんじゃない?」
と、不機嫌そうにアリサがいう。どうやら、すずかのお礼がしたいという気持ちを一蹴されたことがどうやら気に入らないらしい。そのためか、アリサが「そんなに何かを急いでいるのか」とつっかかる。
「帰りを急ぐ」
「ちょっとくらいいいじゃない」
「食材が腐る」
「そんな長居させる気ないわよ」
「…だから」
「拒否権なし!とっとと来なさい!」
数回のやりとりでこの少女、アリサ・バニングスはテコでもすずかのお礼を果たさせようとしており、自分が了解しなければこのやりとりは終わらないとゼロは思う。アリサに言われたゼロは首を縦に振り、半強制的にアリサとすずかに引っ張られて連れて行かれることになった。先ほどのこともあり、危険を考えた上で現在は3人で大通りを歩いている。
「どこへ向かうつもりだ?」
「翠屋さんっていうケーキ屋さんです。とってもおいしいと評判なんですよ」
と、ニコニコ笑うすずか。実は、ゼロはその「翠屋」という名前だけは知っている。はやてが以前すずかに買って来てもらったケーキの名前だったはず。それをヴィータが食べたかったと愚痴っているのをゼロは覚えていた。
「ほら、ついたわよ」
大通りに出て数分。他愛のない会話をしている間についてしまった。翠屋と大きく看板に書かれたその喫茶店。もし、お茶を飲め、などと言われたらゼロとしては結構困る。水というものに対して機械は弱いため、レプリロイドのゼロも例外ではない。水中に行く任務などは水中では極力口を開かず行動することを心がけていた。水が体内に入れば、セルヴォによる厳重なメンテナンスなどを必要とする。現在、そんな機材がないゼロとしては非常に辛いのだ。
「…(離脱するか?)」
ともゼロは一瞬考えたが、ここでシャマルに連絡して転送などしたら、その時点で、色々と問題が起きてしまう。ゼロは仕方がなく、店に入ることにした。アリサ、すずかの後に入店すると、店員らしき小さな少女がトコトコとお盆を持って走ってくる。
「いらっしゃい!すずかちゃん、アリサちゃ…」
小さな店員…高町なのはがそこで言葉を止めた。そこにはいつもの親友、アリサとすずかがいた。だが、今日は一つだけ違う点がある。別の人物…否、自分たちが事件で追っている犯人が目の前にいるではないか。ゼロが武装形態でなくても、その金髪と鋭い目は彼女にとって忘れることはできない。
「あ、あの、すずかちゃん…う、後ろの人誰?」
「えっとね、こちらはゼロさん。私の友達の親戚の人で、さっき私たちのことを助けてくれたの」
「……」
明らかにパニックになっているなのはに対し、ゼロも同じように彼女に気がついた。あの日の夜、ヴィータが襲った少女なのだ…と。ゼロが視線を感じて目をやると、奥の席にはフェイトの姿も見つけてしまった。びっくりしたり、ゼロをジッと見ているフェイトにアリサが首を傾げる。
「フェイト?ちょっと、あんたさっきから何してるの?」
「ア、アリサ?ううん!なんでもないよ」
ここで逃げ出しても二人に不信感を抱かせてしまうだけなので、ゼロはとりあえず案内されるがままに席に着いた。すると、すずかがゼロにメニューを見せる。
「何食べます?」
「いや、食欲がなくてな…」
「あら?そうだったの?それなら、持ち帰りように包んでもらいなさいよ。私とすずかが奢るから。あ、お金は気にしなくていいわ」
「(ゼロ、私あの白いケーキに興味があるわ)」
「(お前はサイバーエルフだろう?食事が出来るのか?)」
「(ええ、なんだかEエネルギーより、人間の食事の方がエネルギー値も回復するの。なぜかね)」
クロワールの食事は本来エネルゲン水晶を得ることで食事となり、成長する。ゼロもクロワールに言われて首を傾げるが、クロワールが最近はやてと共に食事をしていたことを思い出した。そこで、ゼロは一つの仮説を立てる。サイバーエルフも進化する。プログラムであるはずの彼女が食事できるのは、異世界に来てその環境に適応するようになり、食事をエネルギー源に変換している可能性があるのではないかと。
「なら、この白いのをもらおうか」
「おや、お目が高いね。それは妻の自信作だ」
「…そうなのか(いつの間に背後へ?この男、ただものではなさそうだ)」
ゼロの座っている席の背後に、体格のいい男がやってきた。この店の店主だろう。店主はニコニコと笑っているが、ゼロは彼が只者ではないと確信し、少しだけ警戒しながらメニューに再び目を通す。
「あとは、あいつらにも買っていくか」
言いながら店主に数個ケーキを選んで包んでもらえるように頼む。すずかとアリサもケーキを注文して自分たちだけ申し訳ないといいながらケーキを食べてゼロと会話をする。その際、ゼロは相変わらずフェイトとなのはに見張られっぱなしだったが。時計をちらりと見て、すずかやアリサとの話をうち切ってゼロが立ち上がる。
「そろそろ失礼する」
「ゼロさん、もう帰るんですか?」
「ああ、夕食の支度があるのでな」
「そ。さっき言ったけどケーキのお金は私達が払うからいいわ。あと、今日はありがとね」
「気にするな。勝手にやったことだ」
そう言いながら席を離れ、会計の場所で店主の男からケーキを受け取る。その際、男は笑った表情で口を開いた。
「君は、何か…とても大きなものを背負っているようだね」
「…何?」
突然の店主の言葉に、ゼロは驚いて目を鋭くして店主を見た。しかし、相変わらず店主は笑顔でいる。
「何、君がなにやらウチの娘に似ていてね…何かを抱えているがそれを打ち明けていない。自分の中に押し殺して前を向き続けている」
「……」
「前を向き続けるのも悪くないが、たまには横でも見るといい。周りにはきっと、君を支えようとする人達もいるはずだからね」
店主の言葉に、ゼロは少し思うところがあるのか、無言でそのまま立ち去ろうとする。しかし、店の扉の前で足を止めた。
「……店主」
「なんだい?」
「感謝する」
そう一言言い残し、ゼロは見せを後にする。翠屋店主こと、高町士郎はそんな様子に小さくため息をつきながら、そんなゼロを見送るのだった。
海鳴市臨海公園
「……」
店を出てから、ゼロは帰りのコースを大きく外れ、海鳴市の臨海公園へと足を踏み入れる。なのはたちに悟られないように、遠回りで移動をしたが、そこで異変に気づいて足を止めた。夕方だからかもしれないが、周囲にはまったく人がいない。しかし、以前はやてとここに来た時には襲撃の前ではそこそこ人がいたことを覚えている。ゼロがそう思った瞬間、周囲が結界に覆われ、景色が暗くなった。
「……」
ゼロの目の前に、白い服を着た少女と、黒い服を着た少女が空からヒラリと現れる。その後ろには知らない少年と、ザフィーラが前に戦ったという黒い服の少女の使い魔と思われる女性が立っている。そして、白い服を着た少女が一歩前に出た。
「あ、あの!私、高町なのはって言います!」
後に、管理局のエースオブエース、白い悪魔と呼ばれる少女が紅き英雄の前に立ちはだかるのだった
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