「キノの旅」、だけど師匠メイン 作:ほう
薄暗い部屋がありました。
何十も並んだモニターの光だけが部屋の内装をどうにか映し出します。
簡素な部屋には特に何もなく、ひたすら複雑な機会音が延々鳴り響くばかりです。
モニターを見る人は居ません。
ただただ、おかしなものを映し出しているだけでした。
ーーーーー
「はっ、はっ、」
男は息を切らし、壁に背を当てながら胸の前には拳銃を構え、何処からくるか全く予想できないという恐ろしさを感じていました。
一つ息を吐き出します。
「はぁ、師匠、」
「……なんですか」
師匠の声が迷惑そうに返します。
「相手が幽霊だとしたらどうs、」
横にいる師匠に視線を向けてはいないもの、男は異様な威圧感に振り返ることも喋る事も出来ませんでした。
「…、かなり技術の進んだ国だったようですね。それなら納得がいきます」
「え?はぁ…、じゃあなんです?この国はその高い技術を僕らに向けてるのは。僕らを食べるんですかね」
「そうかもしれませんね」
そんなわけないだろ、と男は顔を複雑に歪めました。
と、そんな会話を終えた直後、突き当たりに来た男はポケットに入れていたハンカチを取り出し、突き当たりに向かって投げました。
チュンチュンチュンチュン
雀の鳴き声、ではなくハンカチが撃ち抜かれた音でした。
「……、貴方が言うように幽霊だったらなかなか面白いですね」
師匠がそんな事を言ってきて男は無表情のままハハと笑います。
「本当ですね。武器を扱うとか、現実にがんがん干渉しすぎの幽霊とは。いやー面白い」
全然面白くはありませんでした。
「あと師匠こんなに早く撃ち抜かれるとこれ以上進めないような、」
と、男の前を黒い何かが飛んで行きました。
「え、」
こん、
壁にぶつかったそれは、ハンカチと同様撃ち抜かれ、爆発しました。
「ウボァっ!」
師匠が絶妙な角度で投げ込んだおかげか、爆風は少なく、
「あちっ!」
少なくはあまりありませんでしたが、変な機械音が止まったことがわかりました。男が適当に物を投げ込むとそれは地面に転がり、撃ち抜かれることはありませんでした。
「……あの、師匠」
「なんですか。早く進んでください」
何か言いたげな男はそれ以上何も言いませんでした。機械や幽霊よりも怖いものが隣にいたことを失念していたようです。
数分前。
それは突然始まりました。
連続して鳴り響く轟音、いたるとこから飛び出てくるナイフ。二人をそういったものが襲ってきました。
避けては壊し。壊しては避け。その様子は鬼が二匹、いるようにも見えました。
「……どこがッ、お化け屋敷だ…………」
男がぼそりと呟きました。すぐそばを弾丸が唸るように飛んで行きました。
「…………はぁ、はぁ、さすがに、師匠、きついで、」
きついですね。そう男が言いながら、振り向こうとした時。背中を中心に小さな衝撃と重みを感じ、なぜか銃撃音ではなく女の人の小さな、聞き逃してしまいそうなくらい本当に小さな「あうっ、」というどちらかというと、可愛らしい悲鳴が聞き取れてしまった男は驚きを隠せませんでした。
久方ぶりの女性の声と、背中の重みに男は時間が止まったかのようにピクリとも動きません。正しく言うと動けませんでした。
「……………、は」
もぞりと何かが男から離れ、やっと時間が動きました。
辺りはシンと静まり返り、男がゆっくり振り向くと、うずくまる師匠が目に入りました。
その姿にさらに衝撃を受け、男が慌てふためきます。
「し、師匠?!大丈夫ですか師匠が銃弾を受けるなんてそんな?!ありえない!」
「…撃たれてはいません。あと、私は人間です、撃たれる時は撃たれます。まぁ可能性として低いと思いますが」
男は師匠が撃たれる状況というものを考えようとしましたが、世界大戦………、それでも果たして…、とここまで考え無駄だと気がつき思考を放棄しました。
「えっと、あの、」
ではなぜ蹲っているんですか、と男は言おうとしますが、なんとなく言えずにおろおろします。
「…というか師匠も女性らしいこえがで、」
「はい?」
「なんでもありません」
そっと思い出にしようと思う男でした。
「何か…、変な、」
師匠がポツリとこぼします。
「いえ、やっぱりなんでもないです進みましょう」
「え?はぁ…?」
男は納得がいかないというように小首を傾げましたが、師匠が進めと促したので進むことにしました。
扉がまたもありました。
鉄の扉、ですが不気味でした。赤い手形がびっしりと付けられていたためでしょう。それ以外ありませんでした。
「…………あー、行きたくないなぁ」
「奇遇ですね、私もです」
「……師匠にも行きたくないなぁって思う感情があったんですね…、」
「……私を何だと?」
「ろぼっ、あー、無機物よりは鬼側、」
「はい?」
「なんでもないです」
軽口を叩く程度の余裕はあるようでした。