孤独な英雄譚   作:どうしようもない

3 / 5
III

…あれ?僕は、誰と戦っていたんだっけ。思い出せない…勝ったのか?いや、此処までどんな攻防をしてきたのかは覚えている。

だけど、勝った記憶は無い。じゃあ、相手は何処に…

 

「っ!」

 

『おおっと黒鉄選手、ギリギリで防ぎました!先程までは互角に見えた戦いが一転、比企谷選手が優勢か?』

 

『へぇー』

 

『西京先生、どうなされたんですか?』

 

『ん?ああ。多分、今の黒坊には比企ちんが見えてない』

 

『へっ?…』

 

比企谷…僕の戦っている人は比企谷っていうのか…何で思い出せない!?その人に向けて立てたはずの戦術は思い出したのに、いつ使えば良いのか分からない。

いや、分からないのなら掴めば良いんだ。比企谷という人の剣を、戦いを、その人自身を…

なら見ろ、感じろ、そして考えろ。見えないのなら感じれば良い、感じられたら考えられる。考え切ったら見えてくる。

研ぎ澄ませ、感覚を。

…っ

 

『黒鉄選手、防戦一方です!』

 

まず、相手の武器は短剣やナイフなどのリーチの短い刀剣類。

攻撃の仕方は…死角からかと思ったら真正面から、武器での攻撃を餌にして拳や足を向けてくる…多分、性格が悪い。

それならそろそろ…

ガキンッ

『黒鉄選手、今度は完全に防ぎました。何か対策を見つけたのでしょうか』

 

『桐やんの時と同じ事をやろうとしてるな』

 

『それは、"完全掌握"という事でしょうか』

 

『そだな。まぁ、出来なくは無いだろ。前にルームメイトだった事が有るみたいだし』

 

『これは分からなくなってきました!この戦い、どちらが勝利を手にするのでしょうか!?』

 

…ルームメイト?ステラの前にルームメイトだった人は…優しかった、気がする。だけど

容赦は無かった、気がする。

「…そこにいるのかい?比企谷君」

 

君?僕は何で男だって思ったんだ?比企谷、君…

 

「はぁ…やっぱこの位が限界か」

 

っ!確かに聞こえた、声が。背後から。

『黒鉄選手、遂に反撃に出ました!遂に掴んだのでしょうか?比企谷選手の全てを!」

 

掴む?そんなのは無理だ…こんな、こんなに矛盾だらけの人を掴める筈が無い。

だけど…だけどっ!僕は、

 

「僕は諦めない、僕が僕である限り!」

 

「そうか、まぁそりゃそうだよな」

 

あ…思い、出した。比企谷君、彼はそういう人だった。矛盾だらけで不可解な人。でも、曲がっていても一本の芯が通っている。

「どうだった?相手選手が分からない状態での戦いは」

 

「いい経験になったよ。こんな事、学生じゃ中々出来ないからね。」

 

「はぁ…やっぱお前は主人公だよ。そして俺じゃあ力不足だ、お前の物語に参加するには。

だけど、その物語をより劇的にする為の障害くらいにはなってやるよ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。