もとより一輝と八幡は、同程度の身体能力。一輝は一刀修羅、八幡は魔力によるブースト。それにより両者共、身体能力が跳ね上がっている。
だが、一輝のそれは全力。文字通りに、自身の全てを使い尽くして絞り出した力。対する八幡のそれは、ただの全力。一輝の全力と八幡の全力、これは一輝に軍配があがる。
加えて、互いのリーチの差。刀とナイフ、その差は歴然としている。
誰の目から見ても、どちらが有利かはっきりと分かる。
そんな勝負に、誰もが見入っていた。其処に剣士としての大事な何かがあるかのように。
しかし勝負とは勝者を。そして、敗者を決めるもの。この勝負にも勝者と敗者が誕生する。
それが決するのは、もはや数瞬後。
一輝が選ぶは第七秘剣、雷光。他の秘剣の様な小細工は無用。ただ、速さで勝負する。
対して、八幡が選ぶは全力の斬撃。ただ、相手よりも先に刃を届けようとする。
勝負は一瞬で決した。
届いたのは黒い鋼の刃。鈍く輝く白刃は、一輝の喉元に。八幡が手にするのが一輝と同じ刀だったら、勝者は八幡というところ。
それでも、勝者は一人きりで、敗者は独りきり。
静まり返った会場に巻き起こる歓声の嵐は、誰にも等しく届き、ただ一人を賞賛する。
『勝者は"無冠の剣王"黒鉄一輝選手です!比企谷選手も……比企谷?比企谷って誰でしたっけ?』
「比企谷君!?」
「何だよ、黒鉄。自分の存在感をいじって何ともない訳無いだろ?多分、今も俺の事をはっきりと覚えてる奴はお前位なもんだろうよ」
「そ、そんな……。もう、何もできないのかい?」
「さぁな…時間が経てば戻るかもしれないし、一生このままかもしれない」
「っ……じゃあ僕は覚えているよ。比企谷八幡という騎士の事を」
「……俺は騎士なんていう大層なものじゃない。俺は弱い自分を認めてやれる様になる為にに強くなろうとしただけだ」
「それでも、比企谷君は……比企谷?って誰だっけ……」
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一輝は勝利した。敗者不明という前代未聞の結果で。
公式には不戦勝とされているその試合、それが行われた事を覚えている者は一輝ただ一人だろう。
そして、そんな彼に敗北した孤独な騎士の事を覚えている者は誰一人としていない。
それは、選抜戦で《落第騎士》を苦戦させた全二十試合の内の一死合い。今やその死合いが記憶に残っているのは《無冠の剣王》ただ一人だろう。
これは、そんな死合いの物語………
これにて完結となります。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。気が向いた時にpixivの方と共に更新するかもしれませんが、その時はまたお願いします。