私がいつも買い物に行く街はとても活気のある街だ。
昼と夜では別の店が繁盛していて常に街全体が盛り上がっている。
今は昼過ぎなのでお昼ご飯の材料を買いに来る主婦がいない分人はまだ少ないほうだが、あまり道をふらふらと歩けるほど道幅が空いているわけでもなかった。
とりあえずフユが肉を食べたいと言っていたので私は精肉店へ向かう。
すこし高めだが親からは買い物用としてお金を貰っているので問題は無い。
精肉店のおじさんは愛想が良くて私が買い物に来るといつも「偉いね」と言ってサービスをしてくれるのだ。
この商店街でも人気のおじさんで、年は確か今年で60くらいだった気がする。
「おじさん、こんにちは」
「お、アカツキ久しぶりだな」
「今日もお肉を買いに来たの」
「またおばさんにかい?偉いねー」
私はその言葉については返事に戸惑ってしまった。
いつも通りお肉を買いに来てるのはいいが、お肉を上げる相手は祖母ではない。
ーその祖母を食べた狼なのだ…
心のもやもやを感じながら私はできるだけ笑顔でおじさんに顔を向けた。
おじさんはうんうんと頷いて私がいつも頼むお肉を取って袋に詰めてくれる。
「おばさんは確かこの肉好きだったよな」
そう言って渡されたのは鳥のもも肉。
確かに祖母の好物だった。
祖母に鳥のもも肉を使った料理をあげると珍しく嬉しそうな顔をして食べてくれたのだ。
そんなことを思い出してつい顔が悲しい笑みで溢れた。
ここでこんな顔をしては心配されると私は表情に力を入れて笑顔になる。
「うん、またくれるかしら」
「はいよ。いつものサービスもあげるから美味しい料理作ってあげな」
「ありがとおじさん」
お肉を受け取って笑うと、おじさんはふと目を丸くさせた。
「アカツキ、その頭巾はどうしたんだ?」
「えっ、あ…これ」
「おばさんに作ってもらったのかい?」
「う、うん。そうなの」
気まずく笑うと、おじさんはそれに気づく様子もなく嬉しそうにしていた。
「すごく似合ってるじゃないか。大事にしろよー」
「そ、そうするね」
私はおじさんにお金を払って足早に精肉店から離れた。
嘘をついてしまったという事実がじわじわと私の心を変なもやもやで埋め尽くしていった。
自然と足早になって、私はフユから貰った頭巾をぎゅっと握りしめて商店街を出ていく。
街を抜けると人は一気にいなくなる。
まるで全く違う場所に来てしまったみたいだ。
人の活気がなくなったせいか、少し寒さも増えている気がする。
結構フユを待たせてしまっているので急ごうと駆け足で歩いていると、軽くうつむいていたからなのか誰かにぶつかってしまった。
「んぶっ……!?」
鼻の痛みに顔をしかめつつ顔を上げると、私はその人を見て言葉が発せなくなった。
「…えっ……」
ぶつかった青年は私より15cmは大きいような身長だった。
そして片目は前髪で隠されていてほぼ見えないが、隙間から見える目は赤く光っていた。
そして隠すようにかぶっているフードからは獣のような耳が見える。
私を睨むような目に、ぶるっと体が震えた。
「あ、えっ…ーーーーーーーーーーーー」