赤ずきんと狼は恋をする。   作:◇ 愛月 ◇

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家の中。

祖母の家は赤い屋根でとてもわかりやすい。

茶色くて丸い形をしたドアを開ければ、また奥で祖母が寝ている。

 

“なんだ、また来たのか”

 

そんなことを言われて、わたしは苦笑するのだ。

網カゴを握る手にぎゅっと力を入れて私はそのドアノブに手をかけた。

ひねると、少し錆びた音がしてドアが開く。

恐る恐る入ると、まず何だかいつもとは違う匂いがすることに気づいた。

 

……獣の臭い?少し、生臭い……

 

何なのかと部屋の中に入ってみると、家の中がひどく荒れていた。

冷蔵庫は空きっぱなしで買ってきた食べ物が床に散乱している。

置いてあった花も、床に落ちていて花瓶も割れてしまっている。

 

「酷い……」

 

握っていた網カゴをテーブルの上に置いて私は祖母がいる寝室に向かった。

何があったのかと慌てて祖母の寝室のドアを開ける。

 

「お、おばあちゃん……!」

 

もう罵られることなんて忘れていた。

ただ祖母のみに何があったのかわからなくて焦っていたのだ。

祖母の部屋も同様に荒れていた。

ただもっと注目したところは、

 

 

祖母がいなかった。

 

 

ベッドに寝ているはずの祖母がベッドにいない。

他のところにいるんじゃなくて、部屋自体に祖母がいないのだ。

どこにも祖母がいない。

そしてもう一つ驚いたこと。

それは

 

知らない人がいる。

 

人と言っていいのかわからない。

見た目や服装は人間だけど、全く違うのが耳と尻尾。

大きなグレーの耳と、ふさふさの尻尾が生えている。

こんなの人間にはない。

それは、まるで狼みたいだった。

怖くて、声が出なかった。

とりあえずこの場から逃げないと……

私はゆっくりとそのまま足を引いていく。

しかしーーーー

 

ーーーーーカラン……

 

かかとで何かを蹴ってしまった。

物音がして、狼のような彼はこちらを振り返る。

 

「……ひっ……!」

 

その目はひどく濁っていて、赤い目は何だか黒ずんで見える。

口の周りに少し赤い血のようなものをつけて、彼は私を睨んだ。

 

「や、やだ…来ないでっ…」

 

震える足に必死に力を入れて、私はドアに手をつけた。

走ろうとしても、力が入らない。

立っているのが精一杯で、今にも倒れてしまいそうだった。

怖くて、目には涙が浮かんでくる。

彼の口に見える牙は私なんかすぐ食べられてしまいそうで、このまま死んでしまうのかと怖くなった。

彼は、私をしばらく見たあとにこちらに歩いてきた。

その霞んだ瞳がどんどん近くまで来て、ついには私の目の前に立った。

 

食べられてしまう……。

足が、声が……何もできない。

壁に背がついてしまい、とうとう後ずさることも出来なくなってしまった。

彼は、私の顔をじっと見て、表情一つ変えない。

やっぱり顔は普通の人間で、狼っぽさなんて全くないのに。

 

震える口が、やっと初めて動いた。

 

「あなた…誰なの……」

 

私を食べるつもりなの?なんて怖くて言えなかった。

彼は、目線も動かさない。

返事も無くて、ただ私の目の前に立つだけだった。

 

「……お、おばあちゃんはどこなの?…まさか、食べてしまったの……?」

 

ごくり、とつばを飲み込む。

返事が怖くて顔を見つめていると、彼は唐突に口を開いた。

 

「お前のことも、食べてやろうか」

 

 

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