時間は三時になった。
もう外に出て2時間は経ってしまった気がする。
めげずに祖母のことを探して叫んでいた喉もついに痛くなってきて、指先も感覚がないくらい冷えていた。
祖母は見つからないし、もう本当なら家に帰る時間だ。
両親に心配をかけたくないしもう帰らないといけないのに、私は何をやってるんだろう。
正直、信じたくはなかったが彼の言葉が頭から離れなくなっている。
“お前のばあさんは食った”
そんなはずはないって、信じて探してたのに…もう信じるしか選択肢はない気がして、必死に現実から顔を背けていた。
もしかしたら本当にもう祖母はいないのではないか、と何回も考えては首を振って探したのだ。
たかが2時間見つからないからと言って…心折れてちゃダメだ……。
息がだんだん切れてきて、走った後みたいに肩が上下していた。
疲れてるんじゃないのに、運動したわけじゃないのに…何でこんなに息が苦しいんだろう。
「お、おばあちゃん……っ!」
声も全然でない。
こんなんじゃ、人探しなんてできない……
どうしようか考えていると、無意識に足が家の方に向いていたのか、前を向くと少し先に出てきたはずの家があった。
いつの間にか方向感覚までなくなってしまったらしい。
しょうがなく家のところまで歩いて、窓からこっそりと中を覗いてみる。
「げっ…まだいる……」
家の中では乱暴に椅子の上に座って何かを食べている彼がいた。
もう出ているかと思ったけど、このままノコノコ家に帰って“ほらみろ”なんて言われたらなんか悔しいし、家には入りたくない。
でもこのままいたら凍え死んでしまいそうだ。
しょうがなくその場にしゃがんで手に息を吹きかける。
冷たくなった耳も手でこすって、とにかく体中を温めようとした。
唇もきっと真っ青だし、いくら雪が降ってないといえど、寒いところに大した防寒着も着ないで歩いていたら凍えるだろう。
「寒いな…どうしよう…」
マッチなんて持っていないし、温められる道具もない。
どんどん体は冷えていくし、勝手に涙が出てきた。
膝を抱えて必死に顔を隠した。
鼻水をすすっていると、突然背中に激痛が走る。
「いった…!?」
どうやら玄関の目の前に座り込んでいたらしく、向こうから開いたドアに思いっきり背中をぶつけてしまった。
慌ててその場から動いて、振り返る。
向こうもまさか私がここにいるとは知らなかったようで、ドアが止まってかなり驚いていた。
「…え、ここにいたの」
「あっ…ち、違う……!」
なんて説明したらいいかわからなくて目線を泳がせていると、彼が目の前にしゃがんできた。
「…寒かったでしょ」
「……」
そんなことない、なんて言えなくてつい黙り込んでしまう。
目は涙目になっているし、どう言い訳しても無駄なような気がしたのだ。
「これ、あげる」
頭の上に何か柔らかいものが乗せられて、ふと頭に手を置くと赤い布が置かれていた。
「……頭巾?」
「そ。家に布が余ってたから作ってみた」
可愛いでしょ、と言われるがまったくの無表情なので何を言いたいのかよくわからなかった。
「あなたが作ったの?」
裁縫ができるイメージなんて全くなかったからきょとん顔になってしまう。
「…ん」
コクン、と頷いて彼はそっぽを向いた。
少し照れているのかと思ったが、布を持っている手がだんだん暖かくなっている気がしてそのフードの部分を頭にかぶり、胸元で1つだけついているボタンを閉めた。
「…あったかい」
丈は胸より少し下くらいで、頭はすっぽり入ってしまう。
「ほんとに、貰っていいの?」
彼を見上げて尋ねると、彼はこちらを向いた。
「裁縫が趣味なんだ。暇つぶしに作ったやつだからあげる」
彼が一瞬だけの笑ったような気がして、私も無意識に笑みがこぼれていた。
「ありがとう。嬉しい…」
私の顔をちらっと見て、また彼はそっぽを向いてしまった。