マギの世界に転生?したようです。   作:フお

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10:満月の夜

 

 

【アリババ】

 

 

「あ〜〜〜もうちょっと!!俺後片付けしてんですからちょっとは手伝ってくれても、」

 

雑巾片手にそう叫ぶと酒を持って絡んできた師匠が鋭く睨む。

 

「いいのかぁ、アリババぁ、俺のきげんひとつで、えられるものと得られないものが、」

「あ!あれっ、マスルールさんじゃ」

「んん?!あっ、マスルールじゃあん!」

 

大きな男の人が見えたと思ったがマスルールさんだとは思わなかった。いつの間にやらアラジンを抱えている。

 

「先輩かえりますよ」

「んあー?なんだよ来てそうそう、まだまだ呑めるぜ飲みあかそぐふぅ!!」

「ちょっと静かになってもらいます」

 

…………鳩尾に一発。さて、あれはいったいどれくらいの強さなんだろう、師匠の体が心配になった。

マスルールさんはそのまま師匠も肩に担ぎ、俺に店を出ようと促した。

 

「あっ、マスルールさんまってください、アラジンは俺が!」

「ん、そうか、わかった」

 

ひょいとフニャフニャアラジンをおぶり店を後にする。代金は師匠とシンドバットさんもちである。

 

「あ、待ってくださいアマカを探してジャーファルさんとシンドバットさんが、」

「ああ、それなら問題ない、ジャーファルさん以外は帰ってきてる。俺は先輩を迎えにいけって言われてここにきたんだ」

「へっ、そうなんですか?」

「そうだ」

「じゃあ、ジャーファルさんは、」

 

先に出て行ったのはジャーファルさんだったんだけど、どこかですれ違ったんだろうか。

 

「ジャーファルさん待ったほうが、」

 

 

くいっと顎を動かし後ろを見ろ、とマスルールさんに言われてやっと気がつく。

 

「うわっ?!」

「……アリババくんまだまだですね。シャルルカンにもっと厳しくやってもらいますか」

「え、ええっ?!」

 

すぐ後ろにジャーファルさんが立っていた。

というか凄く…………、ボロボロじゃないか??

 

「あの、だ、大丈夫ですか」

「大丈夫ですよ私は全然大丈夫ですアリババくん」

「は、はぁ……」

 

笑顔がこわい。

 

「シャルルカンはどうしたんです、酔い潰れましたか」

「いや、俺が…」

「…………ふむなるほどそうですか……」

 

鳩尾に一発入っちゃってるんですよ、とは空気を読んで言わなかった。言わなかったけどジャーファルさん気づいてるんじゃないだろうか……?

ちらちら横顔を覗いているとジャーファルさんと目が合う。

にこぉっと笑顔を一つ。

 

「二人には申し訳ないんですが私はちょっと用事があったので今から行きます」

「えっ?!今から?!」

 

深夜だぞ!とか思うがジャーファルさんの顔をよく見るとなんていうか、…。

お怒りMAXみたいな…よくシンドバットさんにキレてる時の顔をしていた。

 

「では、二人はまっすぐ帰ってください心配は不必要ですよ」

 

うふ、うふふ、と今にも笑いそうな黒い笑顔でさらばと反対方向への道に。

…ジャーファルさん、大変そうだなぁ…………。

 

「…………、なにかあったんですかねジャーファルさん…」

 

マスルールさんにそう言うが反応がない。き、気まずい。

 

「ジャーファルさぁん?」

「おわっ、寝てろアラジン、連れっててやるから…」

「う、うふふ?そうかい、ありがとうアリババくん…」

 

すやぁ、と気持ち良さげに眠り落ちるアラジン。いや、ほんとお前って奴は……。

 

 

数分歩き、途中でマスルールさんと師匠と別れた。師匠はずっと気を失ってたようだけどあれはちゃんと生きてるんだろうか、大丈夫かな…。

 

 

「…………、アマカに明日あやまりにいかねぇとなぁ」

 

アラジンが言うには俺のせいだったらしい、酔っぱらいの言うことだからよくわからないがなにかあったのは確かだ。

 

とりあえず明日に備えて寝よう、師匠との訓練もあるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

【シャルルカン】

 

 

「先輩、いつまで寝てるんすか」

「…………」

「…………、落としますよ」

 

マスルールがそう言うとすっと手が離れる。

 

「う、おーい!先輩もっと丁寧に扱えよ!!」

 

と、地面に落ちる事なく無事着地する。ふぅと息を吐いた。

 

「起きてるじゃないっすか」

「いつ気づいた?」

「結構前から」

「あちゃあ」

 

ボリボリと頭を掻いて俺もまだまだかなと思うが、酔い潰れたふりの達人になりたいわけでもないから、いいか。

 

「なんで寝たふりを?」

「…………べっつにぃ?」

「なんすかその顔……」

「あ、顔といえばジャーファルさんどんな顔してた?」

「……最初から酔ったふりすか」

「いやいや酔ってたけどお前のパンチで冷めた」

「……、なんで気絶のふりを……」

 

何をしたいのかわからない、っていう顔かなぁ。マスルールの表情筋は硬い。

 

「疑問が多いぞぉ、……そりゃここまで歩くの面倒だったし……」

「…………ジャーファルさん、あなたに用があったんじゃないすか」

「さぁ、しらなーい。帰ろうぜ、まだ結構距離あんのな」

「……、俺が入ってくるのを見て絡んでいたの、今気がつきました。演技うまいすね」

「なんのことやらだな。酒が入るとイマイチ記憶がなぁ」

 

と、マスルールに背を向け歩き出す。後ろでついてくる気配がしてそのまま続ける。

 

「おっ今日満月じゃん、綺麗な女の子と見たかったなぁ〜…、」

 

……。

表情筋も硬いうえに、反応も鈍い。くそ、思わず振り向く。

 

「おい、無視かよ、」

「先輩、何隠してるんすか」

 

マスルールのいつもの顔が月明かりで影を作り出し、厳しいものに見える。

はぁ、俺なんか面倒な勘違いされてねぇ?

 

「何って?」

「…、あの時……、アマカの、先輩と飲みに行った後体調悪いのとか、知ってたでしょう、あれ、なんで嘘ついたんすか?」

「…………お前、なんかよく喋るな?」

「…………一応、俺の弟子でもあるんで」

「…………、ああ、なるほど、お前がそんなに弟子想いなやつだと思わなかったよ」

 

どうしようかな、と思う。

 

「まぁ、あれだ。そんなたいしたことじゃねぇよ」

 

焦らすな、って顔に書いてるの、読めちゃうぜ無表情さんよ。もっと訓練が必要じゃないか?……あ、いや、マスルールはこれが素だったな。

 

「確認したいことがあるんだよ」

「確認、すか」

「言えないんだけどお前にならいいかな…………、俺聞いちゃったんだよ、」

 

ああ、そうだ、あの日もこんな夜空の綺麗な日だった。

 

「アマカと王様が約束してるところをさ」

「…………約束」

「……いや、聞いたっていっても全部じゃないんだなこれが」

「…………」

「その約束の詳しいところだけがわからない。なんだかそれが凄く気になって、俺は色々してるってわけだよ、うん、そんな感じ。……今日は失敗したんだけど、」

 

主にアリババのせいだ。明日の訓練楽しみにしとけよあいつ。

立ち止まってるのもあれだとゆっくり歩き出す。

 

「……そうすか」

「そうだよ、そんな大したことじゃないだろ」

「……、いや、先輩がそんな回りくどく動いてるんすから、大したことなんじゃないすか」

 

…………、顔だけ振り向いてマスルールの顔を見る。

 

「お前いいやつだなぁ、俺のことよく分かってるじゃん」

「……そうすか」

 

うんうんと頷く。マスルールはこうでなくちゃあな。

 

 

…………、ほんと、盗み聞きなんてするもんじゃなかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーーーそれは、俺に殺してほしいって言ってるのか?』

『……要約すればそうなりますね』

『……はぁ、お前の話を信じないわけじゃないが、突拍子もない。俺は部下を見捨てたりはしないぞ』

『わかっています。わかっていますが……、国の危機、いや皆の命の危機となれば話は別でしょう、僕を生かす理由はない』

『……それはそうだが、…………』

『………………、誰か居るんですか』

 

 

『……、誰だっ!

 

え……、猫、か……。どっから入ったんだ……』

『……、アマカ、猫は食わずに逃がしてやれよ』

『食べるわけないでしょうが』

『そうかそれは安心した、……話は以上か?夜も遅いから部屋に戻れ』

『…………、はい、』

 

…………。

 

『…………、シンドバット王よ、くれぐれも、』

『わかっているさ』

『…………、夜遅くに失礼しました』

『ああ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あーあ、聞かないほうがよかったのかねー」

「なんすか」

「いやさ………。全部聞けてたらそりゃ聞いただろうけど、内容によっては聞かないほうが良いものもあるだろ、…………中途半端が一番やだよなぁ」

「しっかりしてください先輩」

「助けてくれよマスルールぅ」

「……それは知りません」

「先輩想いにもなってくれてもいいんだぞ、てかなれよ」

「…………」

「おい!!無言やめろ!ハイだろそこは!!」

 

 

 

 

 

そう叫ぶシャルルカンとマスルールの近くには、鳥が一羽飛んでいた。

それは弧を描き月の周りを飛ぶようにして。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

「アマカ」

「なんですか、僕もう戻りたいんですが」

「そういうな。約束のことだが、やっぱり聞かれてたようだ。まぁ全部ではないらしい、……俺も俺だが、お前も今日みたいな感じにならないように気をつけろよ」

「……約束…、やっぱりあの時ですか。はぁ…、なんか色々すいませんでした。…、というか便利な力ですね」

「まぁな」

「……、あの、僕何か叫んだりしてましたか」

「いや?何も」

「そうですか。……お酒には気をつけます。今日は関係もないのにありがとうございました」

「ああ、全然いいぞ。ゆっくりしろ」

「はい」

 

バタンと戸がしまる。一気に静けさが戻った。

 

……、確かに、綺麗な満月だ。

見上げたままため息を零す。

 

「……馬鹿だよなぁ、

 

俺も、ジャーファルも」

 

簡単に騙されるのは、よくないぞジャーファル。

もしかしたら、で行動しないと。約束なんて口から出まかせかもしれないのに、安易に信用しちゃダメだ。

 

実際今日の俺は口出まかせだったっていうのに。

 

「……"今日は関係もないのに"な。まぁそうだが、やっぱ馬鹿だよなぁ、」

 

どいつもこいつも隙だらけだ。

 

「……、ていうかジャーファルホモだったのかな、男だってわかって悲しくなったって、ホモって認めたくない、みたいなあれか。…………」

 

脳裏に浮かぶのは叫ぶアマカとそれに覆いかぶさるように居るジャーファル。

 

「……黙ってよう。愛の形はそれぞれだからな」

 

……、よし。

 

「寝よ寝よ」

 

 

 

 

ーーーー

どえらい勘違いだったが、近くも遠からずである。

アマカが女だったら、誤解は解かれるのだから。

 

こうしてそれぞれの夜が明ける。

 





…主人公、なんだかんだで女なのはばれません。
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