マギの世界に転生?したようです。 作:フお
「う、わぁ」
人の活気付いた賑わいというものは、同じ場所に居るだけで自分もその中の一員になれる気がする。
シンドリアというこの国は、明るく、くるくると踊るように表情を変化させ、懐かしさにも似た賑わいがあった。
ざわざわと人が行き来する。
僕はジャーファルさんの後に、というかジャーファルさんの緑のひらひらしたとこを握っている。さっき人の波に流されてしまったためだ。
「アマカ、大丈夫ですか。もし辛かったりしたら行ってください、一応この国にいるのなら貴方はお客ですからね」
「あ、や、大丈夫です」
「そうですか、なら良かった」
するすると人の波を通っていく。
ふとジャーファルさんを見上げるが、ジャーファルさんは背が高いなと思う。いや、そうでもない、のか。違うな、ジャーファルさんも適度に高いし僕は適度に低い。
ジャーファルさんの後頭部を見ていたがだんだん意識が離れて行きそうになったので慌てて他を見る。
「あ、れっ」
すぐ近くに姿見、…全身を写す鏡が目に入ってつい握っていたものが離れてしまう。
驚きで声も出ない。
「なん…、」
記憶はない。だから違和感も何も無いはずなのに……、でも、これが本当に僕なのか?!
鏡に近寄って、オレンジの髪色に、オレンジの瞳をしたすごく、中性的な、整った顔をした人と、目が合う。
見つめ合う。
これが僕なのか、と顔を恐る恐る触れる。
…………僕だ。
今気がつくが、僕はなんだかサイズを間違えたような黒くて大きなダボついた服を着ていた。上も下も黒い。
「どうなってるんだ」
《どうもこうもないよ、キミ、ちょっと聞いて》
「えっ」
体が金縛りにあったように動かない。目の前の、僕の顔が、変にゆがんでるように見える。
《男のフリをしろ。いいか、目的を忘れるな》
目的?!
僕の顔が恐ろしい表情をして、そう言った…、驚きと恐怖に開いた口はふさ、
「もがっ」
「……、アマカ来なさい」
ニコッと、見上げると恐ろしく冷たい顔をしたジャーファルさんがいた。
初めて触ったジャーファルさんの手は恐ろしく体温のない、冷たい手だった。
ーーーー
人通りの少ない、影のある路地に入った。ゴミがいくつか目に入り、野良猫も見えた。
ジャーファルさんに引っ張られなされるままここに連れてこられた。あとジャーファルさん一切しゃべってくれない。
「アマカ、体調どうなんです」
「え?体調は、大丈夫です」
「本当に?」
「ほ、本当に」
ジャーファルさんが振り返って、わ、わー。怒ってる。これ怒ってる。
「アマカ!!出会って数分、訳も分からない状態なのでしょうがあんな人がいるところで騒がれたらいろいろ大変なんですよ!!貴方の身元もわかってないとなったら……、そりゃ王も許してくれてるようですがあの人がおかしいのであって、皆が皆が受け入れるとは限らない!!」
「えっと」
「調子が悪いのなら言ってください、あんな表情して突っ立ってられたらひやひやします!!」
「え、あ、ごめんなさい」
あまりの勢いに口から謝罪が飛び出るが、……、僕はどんな顔をしていたんだろう。鏡を見ていたはずなのに、心のどこかであれは僕じゃないんじゃないかと思っている。
あ、れ……、
そういえば、なんて言ってたあの鏡。
《男のフリをしろ》
「男……、僕、は」
「……アマカ?」
《目的を忘れるな》
目的?
目的ってなんだ。
「アマカ、私がやっぱり急いで連れて行きましょう。いい医者を紹介します」
「えっいやあの、すいませんなんかぼーっとして……」
鏡、あれはなんだったんだ、るぅ!
「あっあのあの、この抱え方じゃないといけないんですか?」
「は?」
「……お姫さまだっこ」
「ははは、」
とジャーファルさんが笑った後、
「男だからといって恥ずかしがることはありません」
…………。
そうか男と認識されてたか、フリをする事もなかったわけだ。
あれっ、訂正すべきじゃないか。
あんな鏡の幻覚より、目の前のこの人の方が信頼できそうじゃないか?
でも僕はこの後、この嘘がどれだけ大事なのかを知ることになる。
ーーーー
ジャーファルさんに連れてきてもらった病院らしい施設。
「安心してください、ここにはいい医者がいますから。心配もあるとは思いますがあとはここの者に。私は行きますね」
「あ、ありがとうございます」
いろいろ手続き?のようなものを済ませてくれたジャーファルさんが去ろうとする。
「貴方のこの箱のことなのですが……」
「あっ……」
「記憶が戻ったらお返しします。いつでも取りに来てください」
そう残すと、ジャーファルさんは一瞬でいなくなってしまった。
身のこなしがなんとも軽い。
今までは僕のペースを考えてくれた上での早さだったんだなぁ。
「アマカさんこちらに」
「あ、はい」
よかったいつまで屋外に出されたままなのかと思っていた。
呼ばれた場所、建物の中には入り、一瞬で変な空気だと気がついた。
「君がアマカさんか、綺麗な顔をしてる」
目の前の太った人が、もうザ、おっさんみたいな油ののった奴がそういう。
この人本当にジャーファルさんの言っていた医者、か?
「……なんですか」
「おっとそう離れたままじゃなくてこっちに。診察しよう」
「……、すいませんが、他に人は?」
「警戒心丸出しだね、可愛い子猫ちゃん、じゃないのか男なんだっけ」
と、背後からぞろぞろどこから湧き出たのか分からない男が数人でてきた。
「……でもまぁ…、どうでもいいよね。可愛い顔ならそれでよしだよ。あれっ今はちょっと恐怖と緊張で凛々しい感じだなぁ」
「……っ、ここの医者じゃないな?!」
「まさか!医者だよ。今日からこういう方針になったんだすまないね」
ふらっと目眩のような、立ちくらみのようなものに襲われて座り込んでしまう。
「おっと、ほら立って立って、こんなとこじゃあ、」
腕を、掴まれる。
痛かった。
冷たい優しい手はなくて。暑くてごつくて痛い、気持ち悪い手に引っ張りあげられる。
すぐ横で、さっきの医者だと言った男が、耳元で呟いた。
「ここじゃ、ヤれない」
それを聞いて、嫌にも心拍数が上がる。
顔を上げれない、怖い。
掴まれた手は強く、ビクともしない。
「……僕は、男だぞ」
「医者の見立てじゃそれは嘘と判断するね、まぁ男でも穴はあるんだけど……、男のフリをするなら、しっかりやらないと。隙だらけだよ、」
ふっ、と耳に息を吹きかけられた瞬間、力が一瞬で入らなくなる。
ぞっとする気持ち悪さだ。
身を守るための、嘘をつけということだったのか。あの鏡は、それをいいたかったのか。
「っとぉ、またまた座り込んで……、もうここでヤる?まいいよいいよ、今日ひと居ないし…、やっちゃってーいいよ、代金はあとでね」
「は……、ふざけるな……」
がちがちっと歯が震える。
両手を掴まれ、男たちに囲まれる。黒い壁だ。
黒い壁が僕を囲む。
怖い、怖い怖い怖い、記憶もない自分が誰かもわからない、なのになんでこんな、大変なことばかり……!
記憶に何かが引っかかる。
あれっ
あれっあれっ、
強くてどうにもできない手を知ってる。怖い、思い出さないほうがいいだろう記憶が。少しだけ、思い出す。
僕は前にもこんな事をやられてるのか、?
ゾッとする、さっきのとは違った得体の知れなさと、男たちが僕の体に触れたからだ。
乱暴に、掴まれる。
「あ、やめ、っ」
喉の奥が震え、熱い何かがこみ上げて、
「あ、あぁああああ」
声が出て、
次の瞬間男たちも医者の男も、皆が僕を中心として吹き飛ばされていくのを見た。
すいません、時間としてはシンドバット達がバルバットへ行く少し前の話です。
もう少ししてからアラジン達が出てきます。
ジャーファルさん目線から書くことが増えるかと思います。そういうのが苦手な方は気をつけてくださると…。