マギの世界に転生?したようです。 作:フお
【ジャーファル】
「…………はぁ、やっぱり止めるべきだったか、」
アリババくんが飛び込んできてからため息しか出していない気がする。
もちろん手を休ませたりはしないが、今すぐやっぱりやめようと言いに行くべきか迷っていた。
「…………でもなぁ…、」
アリババくんが言うには今日の夜、シャルルカンに懐いていた小さな子供の誕生日を祝うためだとかなんとか…、正直そんな子供見たことはないし、嘘なのはほぼ間違い無いだろう。
でも、そう、でもなんだ。シンが仕事を終わらせてたんだよなぁ…………。終わったらシャルルカンとでも飲みに行けばいいんですとか言わなきゃよかった…………。
「ああ…………気が重い……」
夜、王を止めきれるかどうか心配だ。
悩みながら仕事をしているともうすぐ日が沈みそうな時間帯にさしかかっていた。
「…………、気分転換に今日だけですよ」
そう呟く。
今日だけだ。ここ最近はいろんなことがあったし、今後も予定が立て込んでい…………、
「なんっ!!…、はぁ」
いつまでもあの人に王の自覚は生まれなさそうだ。
下には既に酒の入った王とシャルルカン、その後ろにもぞろぞろ3名ほどが。
「あ〜〜〜もう全くっ!!」
酒も入っていないというのに、頭がいたい。
【アマカ】
「…………、思った以上に煩い」
「そりゃあそうでしょう、馬鹿が集まって騒いでるんですよ」
隣に座っているのはジャーファルさん。目の前には酔っ払いが三名。王さまとシャルルカンとアリババくん。
「アリババくんはのんでなかったんじゃないんですか?」
「さっき間違えてお酒を飲んで以降あれですよ」
「…………なるほど」
悪い見本をありがとうという気持ちでちょびちょびジュースを飲む。
真っ赤な顔をして肩を組んで歌う様はなんていうか…………、こうはなりたくないが、見るぶんには楽しい。
「そういえばアマカは前までシャルルカンとよく来ていたそうですが、大丈夫だったんですか?」
「え??大丈夫って何がですか」
「シャルルカンはアラジンと比じゃないくらいスキンシップが激しいでしょう?」
「あーそれですか。あまり覚えてないですねぇ」
「覚えてない?」
「お酒飲まされた後って記憶が飛んじゃうんですよね」
「えっ、大丈夫なんですかそれは!!」
「大丈夫ですよ、今もこうしているし」
ぴらぴらとすぐ隣のジャーファルさんに手を振る。
それにそんなことがあったのも二度くらいだ。
「…………あなたもお酒禁止ですね」
「えっ、あっでも僕は自分から飲んだわけではなく無理やり、」
「無理やり飲まされたんですか!!!?」
ダンっ!!机にジャーファルさんの両手が打ち付けられすごい音がする。食器もがちゃがちゃと揺れた。
「あ、の?」
「シャルルカンに説教をしなくては」
こォォォオオと口から何か出てるような…、恐ろしい…………。触れぬが良さげだ。
ご飯食べて、ジュース飲んで、シャルルカンがジャーファルさんに怒られるのを見て、アリババくんもふらふら女の人口説いたりしてて、王さまが踊ってナンパしてはーれむつくってて本当にアホみたいだなと再認識して。…………こう並べるとあまり有意義な時間ではないなぁ。
けどまぁこんな雰囲気は嫌いではない。基本賑やかなのが好きなんだ僕は。
「アマカお兄さん」
「あっアラジンどうしたの、遊び疲れたかな?」
「えへへ、さっきからなんだかほわほわするんだ、なんかふわふわきもちいんだよぉ」
「…えっ、ちょっと、お酒入ってるんじゃないか君?!子供が飲んだらだめだよ!!!」
というかまず子供をこんなとこに連れ込むのはだめだったな!!ジャーファルさんに加勢すればよかった!!酔った王さまに良いじゃないかと押し切られるのは良くなかったな!
「き、気持ち悪くはない?!」
「だーいじょうふだよぉ〜」
…………だ、大丈夫じゃなさそう。顔が溶けそうなくらいふにゃふにゃだ……。
「ジャーファルさ…………、」
ジャーファルさんに伝えようと振り向くとシャルルカンと…何故か王さまも。三人で乱戦真っ只中だった。というかジャーファルさんお酒入ってないのにそれはどうなんでしょうか…。それに食器を武器に戦わないでください…………。
…よし、これは僕が解決する方が早そう。
「うん、僕と帰ろうかアラジン」
「かえる?かえるって、…カエルさん?カエルさんぴょこぴょこ〜〜!うふふ楽しいねぇ!!」
「わ、わー、楽しそうだなー」
こりゃ重症だ。
「あー、あーーーっと、帰るって言おうと思ったのにくそっ、まともに会話できる人がいない!」
ていうか焦って心の声が全部出てしまった!
しょうがない勝手に帰ろう!!
「アラジンおいで連れてって…………、」
…………どうやって連れて行こう。
「…………アラジン立て…………ないね、ふらふらだねぇ……あはは」
アラジンがふらふらしながら立って見せてくれるが危ないのですぐ横に座らせた。
「うーんどうやって連れてこう……諦めようかな…」
「えっ?連れてってくれるの?」
「え?」
はい?アリババくんの声がして振り向く。
「俺、もう疲れたよぉ〜、眠たい
…かえるよ…、連れっててくれぇ〜」
「えっ、はい?!アリババくんしっかりしてよ!というか、ちょっと、あんまりこっちに来ないで、」
ふらふらぁっとアリババくんが迫るし、すぐ横にはアラジンがいて、後ろは壁で、目の前にははテーブルが。挟まれた!!
「ちょちょちょ」
「うぅーーん、ねむいぃ〜〜」
アリババくんがなだれ込んでくる。
僕が取るべき行動は素早く机の上に飛び移ることだったけど、運が悪かった。
「うぁっ!」
ぎゅうと僕の腕を掴むアラジン。とっさに力が入らずにアリババくんを避けられなかった。
乗っかってくる酒臭いアリババくん、どうにか支えているけど僕が倒れるとアラジンがいつ下敷きになってもおかしくないし、それになんていうか、もう色々いっぱいいっぱいだった。
目の前がちかちかと光って見えた。呼吸も浅くなる。
アリババくんの下から抜け出そうとずるりと転がって机の下に落ちる。
「いっ!」
頭を打ったが、アリババくんはソファで呑気に寝たようだしアラジンは下敷きになることもなく座ってぽけーっとしている。
解決した…、と思った、
「ちょっと、アリババくん、てをはな、せ…」
アラジンに掴まれたと思ったら次はアリババくんだった。手首を掴んだまま離してくれない。
最悪だ、アラジンよりも数倍嫌な感覚だ。
大きいし、硬いし、力強いし、熱いし、男の人の手だ。
「はなしてっ、」
振ったりしたりもう片方の手で剥がそうとするけど、すごい力だった。それに今の僕はこれのせいで全力が出せない、最悪だ。
「アリババくんお願いだから、お、ねがっ、」
歯の奥がガチガチと震えてしまうしテーブルの下から這い出すことももちろんできない。
ガタガタとテーブルに頭を何度かぶつけて食器の倒れる音がした。
「くっ、誰か、たすふへぁ?!」
次の瞬間、どぱぱぱと頭の上から何かが降りかかってきた、大量の水、ではなくて。もちろんジュースでもない。
「酒、臭い…」
ツンと香るのはお酒の匂いだ。
【ジャーファル】
「くそっ!!見境なしか馬鹿ども!!!」
フォークとナイフでシンと…いや主にシャルルカンと応戦させられていた。
「へいへいへーいジャーファルさんそんなもんなんすかぁ?」
「酔っ払いすぎだろ!!」
シャルルカンはこの調子だし、シンはシャルルカン側について楽しそうに女性に囲まれてるし……。
「くっ、置いて帰るか……いやお店の人の迷惑だ……!!」
よし、全力で行こう。
「あんさつけんひっさつこうげきぃ!!」
と、酔っ払ったシャルルカンが迫ってきたので迷わず全力で避け、首に手刀をかました。
「ふげっ」
「酔っ払いが勝てるわけないでしょうが……っ!」
おーっ!とシンが拍手をしているのが見えたがもうそっちはどうでもいい。
「王よ、帰りますよ!!」
「えぇ〜、ジャーファル俺とも戦って勝ったらまだいてもいい?」
「いいわけないだろうが!!」
シャルルカンは転がしたまま王を引っ張って帰るように言う。
あとは三人だが、
「…………、アリババくんもアラジンもどうしたんですかこれは…………」
王もとりあえずほっぽいてふにゃふにゃのアラジンをまず心配する。
「あージャーファルさぁん、ぼくふわふわなんだよぉ」
「ふわふわというかふにゃふにゃですけどね……、ちょっとアリババくんも寝てないで起きて!!というかアマカはどこです?!」
周りを見ても酒と酒に溺れた男どもばかりだ。
「あーアマカおにいさんあっちだよぉ」
「えっどっちです?!」
「あっちさぁ、お外におでかけしちゃったよぉ」
「えっ?!」
立ち上がったアラジンはふにゃふにゃのまま、出入り口を指差した。アマカも心配だけど、アラジン本当に大丈夫か?!
「〜〜〜っ、アリババくん!起きてください!!」
「ふあっ?!…………え??ジャーファルさん?」
「あっ!よかった結構酔いが浅かったんですね、アラジンとその他お願いしましたよ!!」
「えっ…?!どういうことで、」
「私はアマカを探してきますから!!」
と、アリババくんにこの場を任せ、立ち上がり店員さんに見た人がいないかを聞いて外へ出る。
もう夜中で少しばかり肌寒く感じる。
「くっ、どこだ…」
高いところから探せばいいのではという考えで急いで上に上に上がっていく。
何もなければいいが。